最近、いろいろな作曲家の「ピアノ五重奏曲」をよく聴いています。
ピアノ五重奏曲で最も有名なのは、
シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」D667,Op114ですが、
実はこの曲、一般的な「ピアノ五重奏曲」と編成が違います。
一般的なピアノ五重奏曲とは、
ピアノ+弦楽四重奏団(ヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ1)です。
シューベルトの「ます」の場合は、
ピアノ+ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスと、
やや変わった編成です。
シューベルトの「ます」については以前記事を書きましたので、
今回は取り上げません。
一応「ピアノ五重奏曲」とも言える、
モーツァルトとベートーヴェンの「ピアノと管楽のための五重奏曲」も、
同様に今回は割愛します。
(過去記事)
→五重奏曲(クインテット)の名盤CD3枚~モーツァルト、ブラームス、シューベルト
今回取り上げるのは、一般的な「ピアノ五重奏曲」の編成によるものです。
記事タイトルに「ピアノ五重奏曲の甘口辛口」とつけました。
「甘口」とは、誰にでも親しみやすそうなもの、甘いメロディが魅力的なもの。
「辛口」は通好み、多少晦渋さがあるもの。
こんな定義にしてみたいと思います。
「甘口」筆頭は、ドヴォルザークの作品です。
ドヴォルザークはピアノ五重奏曲を2曲残していますが、
第1番の方はほとんど演奏されず、もっぱら第2番をもって、
「ドヴォルザークのピアノ五重奏曲」と称しています。
今回取り上げるのも第2番の方です。
まるでショートケーキのような音楽とでもいいましょうか・・・
理屈抜きで楽しめます。
一番ステキなのは第3楽章です。
ここ数日、すっかり頭の中でこの楽章が自動BGM的に流れています。
第4楽章も魅力的です。
私が持っているのは、
ヤン・パネンカ(ピアノ)+スメタナ四重奏団の1986年録音のものです。
(カップリングはシューマンのピアノ五重奏曲)
ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲
次なる「甘口」は、シューマンのピアノ五重奏曲です。
ウィーン名物のザッハトルテ?
この曲については以前記事を書いています。
→田部京子&上海クァルテットによるシューマン:ピアノ五重奏曲〜NHKBSプレミアム・クラシック倶楽部 - 上海クァルテット 演奏会 -(2013年1月14日放送)
もちろんおすすめCDは、田部京子(ピアノ)+カルミナ四重奏団のものです。
録音が超優秀です。
みずみずしさではピカ一で、田部さんのピアノははまるで
クララ・シューマンが弾いているのでは、と思えるほどです。
ピアノが自己主張しすぎずにうまく全体をまとめています。
NHKBSで観た上海SQ以上に、この曲の美しさをあますところなく表現しています。
カップリングはシューベルトの「ます」で、
こちらも名演・美演といえます。
以前はブレンデルのCDがベスト盤でしたが、
このCDによって用済みとなってしまいました・・・
シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」 [Hybrid SACD]
※SACDシングルレイヤー盤もあります。
「甘口」編最後は・・・
「甘口」というよりは「ほろ苦」という感じもしますが、
優美さではイチオシとしたいです。
高級なチョコレートボックス?
フォーレのピアノ五重奏曲第1番OP89、同第2番OP115です。
どちらも大好きですが、あえて1曲と言われれば、
迷わず第2番の方をとります。
今回紹介する中で最も好きなピアノ五重奏曲です。
シューマンやブラームス、ドヴォルザークの作品ほど知られていませんが、
フォーレの作品の中でも最高傑作の部類に入ると思います。
フォーレの2曲のピアノ五重奏曲は、「絵画を聴く」ような感じがします。
アルフォンス・ミュシャが描く美人画や、印象派の絵がなんとなく思い浮かびます。
初めて聴いたのは、確か高校生の頃だと思います。
美しい乙女の金色の長い髪が風にそよいでいる・・・
そんなイメージが、第2番の第1楽章を聴いていて思い浮かびました。
第2番で最も好きなのは、やはり第1楽章です。
第1番の第1楽章は、魔法の世界から聴こえてくるような感じです。
一番好きなのは、フィナーレの第3楽章です。
ルノワールやモネが戸外を描いた作品が見えて来るような気がします。
フォーレのピアノ五重奏曲の決定盤は、
やはりジャン・ユボー(ピアノ)+ヴィア・ノヴァ四重奏団のCDです。
フォーレ:室内楽全集第1集
※2枚組CD。1枚目はピアノ四重奏曲第1番、第2番で、
2枚目がピアノ五重奏曲第1番、第2番。
ピアノ四重奏曲の方は1度聴くので十分かな・・・
※SHM-CD仕様もあります。
近年、フォーレ室内楽全集という5枚組のCDが出まして、
安いから私も買ってはみたものの、音質にがっかりして、
すぐ手放してしまいました。
演奏者は結構いいのに。
参考までに・・・
(参考)
Faure: Complete Chamber Music For Strings And Piano [Box Set, CD, Import]
次に、「辛口編」に移ります。
「辛口」筆頭は、ショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲OP.57です。
かなりクセがあるカマンベールチーズ?
「辛口」といっても、彼の弦楽四重奏曲には及ばず、
むしろ、ショスタコーヴィチの室内楽入門に最適な曲です。
多少深刻なところはありますが、どんなに重苦しくとも、
音楽を聴く喜びがあります。
暗いのがニガテなら、ぜひ第3楽章から聴いてみてください。
ほろ酔い加減で上機嫌なショスタコーヴィチを見出すかもしれません。
20世紀の室内楽の名曲なのに、現役盤が少ないのは残念です。
私が持っているのは、リヒテル(ピアノ)+ボロディン四重奏団のCDです。
ショスタコーヴィチ: ピアノ五重奏曲
続いての「辛口」は、ブラームスのピアノ五重奏曲Op.34です。
70年代のサスペンスドラマのBGMみたいな、
内に秘められた情熱がこもった作品です。
焦燥感たっぷり・・・
ブルーチーズみたいな感じ?
この曲は、モノラル録音のウィーン・コンツェルトハウス四重奏団+デムス(P)のが、
とても印象的で、今でも頭に残っています。
残念ながら手元にはなく(図書館で借りて聴いたものです)、
それで、ポリーニ(P)+イタリアSQ、Akiko Yamamoto(P)+Quatuor Ebeneで
買って聴いてみましたが、どちらもイマイチでした。
ステレオ録音でようやく気に入ったのが、
シューマンのピアノ五重奏曲と同じ、
田部京子(P)+カルミナ四重奏団の演奏です。
こちらも録音は優秀です。
家にはあと、「ブラームス室内楽全集」BOXの中にある、
レオン・フライシャー(P)+エマーソンSQのがあります。
弦はすばらしいですが、ピアノはイマイチです。
ブラームス:ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲第3番 [Hybrid SACD]
(参考)
Collector's Edition: Complete Chamber Music [Box Set, CD, Import]
最後は、フランクのピアノ五重奏曲です。
知る人ぞ知る、という作品です。
3回ぐらい虚心坦懐に聴いてみて、ようやく味がわかるのかもしれません。
そういう意味では、「するめ」みたいな曲かも?
1度聴いたぐらいでは、良さがなかなかわかりませんが、
聴くたびに、少しずつ良さを発見することができるかもしれません。
我が家にあるのは、Alice Ader(P)+Ensemble Aderの盤です。
Chamber Music (Dig) [Import]
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