カテゴリー「立ち読み日記」の30件の記事

2018年1月17日 (水)

CD イリーナ・メジューエワ (P)「京都リサイタル2017 (ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30,31,32番)」

ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ、第30番、第31番、第32番は、
私にとっては、ベートーヴェンのピアノ作品で最も好きな作品です。
初めて聴いたのは、確か高校生の頃だったと思います。
特に好きなのが、第31番の第3楽章と、第32番の第2楽章です。
第31番の第3楽章では、「嘆きの歌」からフーガが現れ、
精神を再構築して(私はそう思うだけですが・・・)aufheben(止揚)する・・・
そのカタルシスがすばらしいです。
第32番の第2楽章は、
トーマス・マンの小説『ファウストゥス博士』の説がロマンティックですね。
天に引き上げられていくかのような・・・
(あえて文学で言えば、ゲーテの『ファウスト』第2部の最後あたり?・・・)

一番最初に聴いた演奏は、アシュケナージによるものでした。

(参考)

その後、バックハウスやブレンデル、ゼルキン、グールドその他の演奏で聴きました。
変わり種なら、ウゴルスキ盤(ただし第32番のみ)とか・・・
しかし今回、イリーナ・メジューエワの演奏を聴いて驚愕しました!

京都リサイタル2017 (ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30,31,32番)メジューエワ

「今までこういう演奏をした人はいなかったのでは?」
第30番の第1楽章の情報量の多さから驚異でした。
盤を最初から最後まで聴いて、それからもう一度繰り返して聴いてみました。
その後に、我が家にあるベートーヴェンのピアノ・ソナタのCDを引っ張り出して、
とりあえず第30番だけで聴き比べてみました。
(3つのソナタのうち、最も演奏時間が短いからです。)

前述のアシュケナージ盤はもとより、バックハウス、リチャード・グード、
バレンボイム、HJリム、田部京子・・・と聴いてみましたが(今回は一つ一つ紹介しませんが)、
メジューエワ盤と比較すると、どれもムード音楽の域を出ないように思えました。
(唯一、バレンボイム盤がかなりロマンティックに弾いていましたが・・・)

そういえば、メジューエワは昨年(2017年)、
講談社現代新書から、『ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ』という本を出しましたね。

ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ (講談社現代新書)

私は立ち読みしただけで、相当スコアに詳しくないと読みこなせないと思わされました・・・
そういうスコアの読みの深さが、見事に演奏に反映されている、
稀有な録音だと思います。

第32番の第2楽章、広々とした天空の世界に引き上げられていくような最後の部分、
その美しさを、高校生の時に聴きふけった時のように味わうことができました。
それでいて、演奏者の個性よりも、ベートーヴェンの音楽そのものしか感じさせない、
そういうところが素晴らしい盤です。

2016年8月 1日 (月)

2016年7月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧

2016年7月のページビュー(PV)数ベスト10記事は以下のとおりです:
(※トップページを除く)
ベスト3までは記事リンクをつけています。

一位.オキナワ旅行記リターンズ2015夏(その1)〜旅行の経緯と1日目〜
二位.インクルーシブ(インクルージョン)教育は子どもにとって本当に幸福なのか?~
おすすめブログ記事「脱インクルージョン教育」(ブログ名:斜に構えてみる)

三位.「学び合い学習」は日本の義務教育崩壊を招く!
~おすすめ記事『【解答乱麻】 TOSS代表・向山洋一 亡国の教育「学び合い学習」』
(MSN産経ニュース2012年11月24日掲載)

四位.オキナワ旅行記リターンズ2015夏(その2)〜2日目・古宇利島とホテル近くの黄昏時〜
五位.オキナワ旅行記リターンズ2015夏(その3)〜3日目・渡嘉敷島でシュノーケリング!〜
六位.算数の問題解決型学習~学力「崩壊」の決め手
七位.どの聖書が一番いいか?(新約聖書編)
八位.「学びあい」という美名の下の教育の堕落~
NHKEテレ・ETV特集「輝け二十八の瞳 ~学び合い 支えあう教室~」(2012年2月5日放送)

九位.ブラームス:交響曲第1番聴き比べ12種〜カラヤン盤5種を中心に・・・
十位.尾高忠明指揮、札幌交響楽団による、武満徹作曲『波の盆』のCD(CHANDOS)

1〜4位までは2016年6月とまったくランキングは変わらず。
私どもの沖縄旅行記を読んで下さる方が多くいて嬉しい限りです。
教育関係の記事もまた4本ランクインしました。

最近、「アクティブ・ラーニング」なるものが教育界ではトレンドのようです。
先日紀伊國屋書店に行ったら「アクティブ・ラーニング」関連の本が結構出ていました。
文科省も積極的に進めていますし。
しかし、それなら私の書いた批判記事が忘却の彼方に行くはずでは?
よく読まれているのが皮肉なものです。
「水素水」とか怪しげな健康法・健康グッズ並のものにすぎないのでは?
文科省のお役人や教育委員会・学校関係者は、
「キラキラ輝く瞳」のような曖昧模糊としたものから脱却し、
『「学力」の経済学』のような、科学的根拠・統計に基づく議論から、
教育政策を進めていってほしいものです。

中室牧子著『「学力」の経済学』、
すごくオススメです!
教育界のもっともらしい意見という「王様」は、実は裸にすぎないことを、
見事に暴く痛快さがあります。

中室牧子著『「学力」の経済学』

9位のブラームスのCD聴き比べ記事は、
私自身、この記事がランクインするとは全然思っていませんでした。
意外・・・

2016年7月31日に、元横綱千代の富士・九重親方が逝去されました。
突然のニュースに絶句・衝撃・・・
私にとっては子供時代のスーパーヒーローでした。
ご逝去を悼み,謹んで哀悼の意を表します。

7月は涼しかったですが、ようやく蒸し暑い夏が札幌にも来ました。
今月もご愛読よろしくお願いします。

2014年3月17日 (月)

シューマンのピアノ協奏曲イ短調Op.54聴き比べ〜本命はグリモー旧盤とリパッティ盤・・・

先日、大型書店のクラシック音楽に関する書籍コーナーで、
ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた』という本を見つけました。
著者は青山通という方。出版社はアルテスパブリッシングです。
(↑著者によるブログ記事あります。ブログ名:東京エンタメ日記
ウルトラセブン関連の記事が多数あります。他に、コンサートの記録などです。)


 



 


 


内容は、著者が7歳の時にリアルタイムで放送していた、
「ウルトラセブン」の最終話に使われていた音楽である、
シューマンのピアノ協奏曲の第1楽章の音源を探し当てるまでの奮闘がメインです。
(ウルトラセブンが好きな人にはオススメかも・・・)
当時はインターネットはおろか、VHSビデオさえまだ存在しない時代です。
そんな中で試行錯誤しながら、なんと7年もの年月をかけて、
ようやく探し当てたのが、
リパッティのピアノ、カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏だった・・・
その執念には敬服しました。
リパッティの演奏については後で述べるとして、
確かに幼い頃再放送で見たウルトラセブン最終回では、
シューマンの音楽が始まると同時に、光と影のコントラストになり、
非常に忘れがたいものがありました。
今回改めて動画で見ても、特撮の名場面の一つではないかと改めて認識しました。


 


 


ウルトラセブンとシューマンのピアノ協奏曲イ短調


 


 


さて、本題の、シューマンのピアノ協奏曲の聴き比べに移りましょう。
つい先日まで我が家にあるシューマンのピアノ協奏曲のCDは4種類でしたが、
上記で紹介した本に触発され
(結局本は買っておらず、立ち読みで済ませたわけですが・・・)、
リパッティ(P)/カラヤン指揮フィルハーモーニア管弦楽団盤も買って、
5種類となりました。


 


録音の古い順→各楽章の演奏時間を記載します。


 


リパッティ(P)
カラヤン指揮フィルハーモニア管(1948)MONO EMI
1;14:24
2;05:05
3;10:12


 


アニー・フィッシャー(P)
クレンペラー指揮フィルハーモニア管(1960、1962)EMI
1;15:16
2;05:39
3;11:21
(クレンペラーの「協奏曲集」CDBOXに収録)


 


ネルソン・フレイレ(P)
ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘン・フィルハーモニック(1968)
1;15:16
2;05:34
3;10:46
(カップリング;グリーグ:ピアノ協奏曲)


 


エレーヌ・グリモー(P)
ジンマン指揮ベルリン・ドイツ交響楽団(1995)
1;14:54
2;05:05
3;10:30
(カップリング;R・シュトラウス:ブルレスケ)


 


エレーヌ・グリモー(P)
エサ=ペッカ・サロネン指揮シュターツカペレ・ドレスデン(2005)
1;15:00
2;05:40
3;10:26
(カップリング;クララ・シューマンの歌曲、ブラームスの曲)


 


この曲に思い入れがある人なら、
たぶんアルゲリッチ盤とか、リヒテルやツィメルマン盤を挙げるかもしれません。
実は、リパッティ盤とグリモーの旧盤を除けば、
シューマンの曲を聴きたいからではなく、
カップリングでシューマンのピアノ協奏曲が入っていた、という程度でした。


 


アニー・フィッシャー(P)クレンペラー盤は、
一回聴けば十分かな・・・
胃もたれするようなテンポ感で、ブラームスの曲みたいです。


 


グリモーの新盤は、結構期待していたのですが、
オーケストラが冷たすぎるというか、
美しいけれど血が通っていない演奏です。
(1枚のCDを構成するやり方はグリモーの美学があって独特ですが・・・)
この2枚については推薦なしです。


 


意外によかったのが、ネルソン・フレイレ(P)、
ケンペ指揮ミュンヘン・フィルハーモニク盤です。
このCD、グリーグのピアノ協奏曲を聴くためだけに買ったもので、
今回初めて、このCDのシューマンのピアノ協奏曲を聴きました。


 



 


 


ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」に対して、
「ピアノ協奏曲の女王」的なイメージ
(初演者がクララ・シューマンだし・・・)があるのは事実です。
しかしこのCDは、きわめて剛毅な、男性的な演奏です。
なおかつ繊細さも併せ持つ、隠れた名演ではないでしょうか。
オーケストラ伴奏も質実剛健です。


 


グリモーの旧盤は、長らく私の愛聴盤でした。
この曲の素晴らしさに初めて気付かされたCDです。
特に第2楽章から第3楽章への高揚感、
第3楽章終盤の美しさは何度聴いてもすばらしいものです。
(シューマンのピアノ協奏曲で一番好きな楽章は、
第3楽章です。特に終盤、
だいたい9:30〜10:00ぐらいのところは、
美しい夕焼けをバックに川のそばを走っていく人が見えるようです。
たぶん、青春のイメージなのでしょうね・・・)
ちなみに、カップリングのR・シュトラウス;ブルレスケは、
未だに聴いていません・・・


 



 


 


リパッティ盤は、第1楽章、第2楽章が名演です。
もちろん第3楽章も、前述のところ以外なら名演といえます。
(その部分だけちょっと残念・・・)
モノラル録音とは思えないほど状態のいい録音です。
ピアノの素晴らしさでは他を圧倒すると思います。
カラヤンの指揮もスケールが大きく、見事なサポートとなっています。


 


リパッティの名前は以前から知っていましたが、
モノラル録音というのがネックになって、
どうも敬遠していました。
(演奏が素晴らしくても、
たとえばパブロ・カザルスによるバッハの無伴奏チェロ組曲などは、
音が悪くて聴くのが苦痛です・・・)
今回手に入れた7枚組のCDBOXでは、
EMIに残された録音の集大成となっています。
今回紹介したシューマンのピアノ協奏曲や、
ショパンのワルツなどは絶品です。
(モノラル録音であるのも忘れるほど・・・
時々音の濁りが出てふと現実を思い出しますが・・・)


 


2014年2月22日 (土)

溜め込まない・溜め込めない生き方〜CDと本の強制断捨離術・・・

先日、書店で、ベストセラー小説『永遠の0』などで知られる、
百田尚樹氏の『至高の音楽 クラシック 永遠の名曲』(PHP研究所)
という本を立ち読みしました。

至高の音楽 クラシック 永遠の名曲

百田氏は、昨年(2013年)の12月に、
クラシックの老舗番組「題名のない音楽会」に、
ベストセラー作家・百田尚樹~“海賊”流音楽のススメ
として出演されていました。
R・シュトラウス、ワーグナー、ブルックナーについて、
音楽と作曲者の実像をかなり毒気づいて語っていたのが印象的でした。
実はこの方、「探偵!ナイトスクープ」などの放送作家でもある、
というのを初めて知りました。

さて、立ち読みした本に戻りましょう。
ちょうど開いたページが、ベートーヴェンの「エロイカ」についての記事でした。
正確な引用ではないですが、
「私は「エロイカ」のCDだけで100枚以上持っている」
というのを読み、頭に一発ガツンと来た感じがしました。
その先、では、おすすめCDはというと、
確か「カラヤン指揮ベルリン・フィル」(他に数枚)と書いてあったと思います。
私はそこで立ち読みをやめてしまいました。
(枚数の文章でノックアウトされてしまったので、
「読めなかった」が正解かも?)

「エロイカ」だけでCD100枚か・・・
私が「第9」を10枚ほど持っているぐらいで、
いくつもブログ記事書いているレベルではないのだな・・・
では総数でどれだけのCDを持っているのだろうか・・・
しばし羨望と多少の嫉妬の念にとらわれましたことを正直に述べます。

でも待てよ!
仮に、「エロイカ」の演奏時間の標準が、約50分として、
50分☓100枚=5000分。
5000分÷60分=約83時間
そんなに聴いてられるかな・・・
それよりも、それだけCDを持っていて、
オススメ盤が、カラヤン指揮ベルリン・フィルか・・・
たいしたことないな〜(開き直り!)
なんて思ってしまいました。

我が家は今のところ、あまりモノを置くスペースがないので、
本やCDのたぐいは、必要性がないとすぐ処分(たいていブックオフ)してしまいます。
実際、私の所有CDは、200枚前後しかありません。
高校生の時からもしCDを1枚も売らずにとっておいてたとすれば、
たぶんその10〜20倍の枚数になると思います。
しかし断言できますが、家にある私のCDに、凡演、駄演は1枚もありません!
(CDBOXは除きますが・・・)
どれでも、いつでも、皆様にオススメできるものばかりと思っています。

本棚も然りです。相当な本を買って読んでいますが、
本棚に残るのはわずか数百冊だけ。
実は近々、ダンボール箱3箱分の本とCDをまた処分します。
本棚とCDの棚にまた空きができました・・・

本棚とCD棚のスペースに合わせて、モノを処分するという、
私の「断捨離」・・・
溜め込まない(溜め込めない)生き方でスッキリです!
(とはいえ、CDBOXとか、ついつい安いと買ってしまうんですね・・・
「♪わかっちゃいるけど ヤメラレナイ」
愛する妻ちゃん、ゴメンナサイ・・・)

2013年9月15日 (日)

ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第1番聴き比べ6種類

ベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲のうち、
どの曲が一番好きか、順位づけするとしたらどういう順にするか、
と問われたら、皆さんならどう答えますか?

今の私なら、
1番→2番→5番→4番→3番と答えます。
特に1番と2番はよく聴きます。
最も優れているのは5番「皇帝」というのは確かですが、
私にとっては気楽には聴けないかな・・・
本を読みながら、テレビ観ながらの「ながら聴き」ができないほどの、
堂々とした作品だからです。
3番、4番も同様です。

その点、ベートーヴェン初期の作品は肩肘ばったものではなく、
モーツァルトやハイドンの作品にみられるのと同じような愉悦感があります。
聴き流すには最適です。

今回から連続記事ではありませんが、
ベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲の聴き比べ記事を書いてみようと思います。
第1回目は第1番についてです。

その前に・・・
我が家にあるベートーヴェンのピアノ協奏曲(集)のCDは以下のとおりです。
・ピアノ協奏曲全集
(プレトニョフ/ガンシュ/ロシア・ナショナル管弦楽団)DG
・ピアノ協奏曲全集他
(アラウ/コリン・デイヴィス/シュターツカペレ・ドレスデン)DECCA
※タワーレコード限定版
・ピアノ協奏曲全集他
(バレンボイム/クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団)EMI
・ピアノ協奏曲全集他
(内田光子/クルト・ザンデルリンク/バイエルン放送交響楽団他)PHILIPS
※現DECCA
・ピアノ協奏曲全集他
(バックハウス/シュミット=イッセルシュテット/ウィーン・フィル)DECCA
・ピアノ協奏曲全集※Blu-ray
(バレンボイムの弾き振り/シュターツカペレ・ベルリン)EUROARTS

・ピアノ協奏曲第4番他
(エレーヌ・グリモー/クルト・マズア/ニューヨーク・フィル)TELDEC
※現ワーナー
・ピアノ協奏曲第2番・第5番
(ルービンシュタイン/バレンボイム/ロンドン・フィル)RCA

盤の表記は、いちいち上記のように書くのも煩わしいので、
原則はピアニスト名で表記します。
ただし、バレンボイム盤だけは2種類あるので、
指揮者名(クレンペラー、バレンボイム)とします。

第1番の各楽章の演奏時間は以下のとおりです。
第1楽章を「1;」、第2楽章を「2;」、第3楽章を「3;」と表記します。
(並び方は演奏の古い順→新しい順です。)

・バックハウス盤(1959)
1;13.41
2;09.15
3;08.53

・クレンペラー盤(1967)
1;16.17
2;13.13
3;09.20

・アラウ盤(1987)
1;17.41
2;11.07
3;09.42

・内田光子盤(1997)
1;18.15
2;10.46
3;09.28

・プレトニョフ盤(2006)
1;13.38
2;10.20
3;08.49

・バレンボイム盤(2007)
1;15.43
2;12.07
3;11.41

どの盤を買ってもオススメですが、
あえて順位をつけるとしたら・・・
1位:クレンペラー盤
2位:バレンボイム盤
3位:内田光子盤
4位:プレトニョフ盤
5位:アラウ盤
6位:バックハウス盤

以下は全て、ピアノ協奏曲全集です。
クレンペラー盤

バレンボイム盤(DVD)

バレンボイム盤(Blu-ray)

内田光子盤

プレトニョフ盤

アラウ盤(タワーレコード限定)
→タワーレコードのサイトでどうぞ。

バックハウス盤

クレンペラー盤は、オーケストラの充実感が最高です。
最もシンフォニックな響きがします。
第1番でも、あたかも第5番であるかのような、
堂々とした響きが魅力的です。
中世の城や大聖堂がそびえ立つような感じさえします。
バレンボイムのピアノもロマンティックで見事です。
これぞベートーヴェン!という決定版ではないでしょうか。

バレンボイムの弾き振り盤は、CDも出ていますが、
せっかくなら、映像付で視聴した方がすばらしいです。
まるでベートーヴェン自身が弾き振りしているかのような錯覚さえ抱くほどです。
バレンボイムはベルリン・フィルとの弾き振り盤もありますが、
今ではやはりこちらの方がオススメです。
1曲でモーツァルトとベートーヴェンを一緒に聴くような感じがします。

内田光子盤は、クレンペラー盤、バレンボイム盤を手に入れる前までの愛聴盤でした。
ザンデルリンクが指揮するバイエルン放送響の響きがすばらしかったですが、
上記2枚を手に入れてからは、あまり聴く機会がなくなってしまいました・・・

プレトニョフ盤は、
宇野センセイの近著『ベートーヴェン 不滅の音楽を聴く』を
立ち読みしていた時に知りました。
宇野センセイ激賞モノです。

ベートーヴェン 不滅の音楽を聴く

実際、聴いてみると、確かにプレトニョフのピアノは、
今回聴き比べした中で最も個性的です。
特に第1番の第2楽章冒頭などは、まるでラフマニノフの曲かと思うほど、
甘美に弾いています。
ピアノの至芸を聴くなら、プレトニョフ盤はオススメですが、
オーケストラがあくまで「オマケ」的な感じがするのがマイナスです。

アラウ盤はピアノに鋭さこそないものの、
音を慈しむように弾いているところと、
シュターツカペレ・ドレスデンのオケの響きが渋いです。

バックハウス盤は録音のせいなのか、
ピアノ・オケどちらも少しぼやけ気味に聴こえてしまうのが難点です。

ピアノ協奏曲第1番を初めて聴いたのは、確かNHKFMでした。
ちょうど第3楽章がかかっていて、
初めはモーツァルトの曲かな、と思ったほどでしたが、
最後の手前で、「モーツァルトではなくこれはベートーヴェンの曲だ!」とわかりました。

全3楽章のうち、最も好きなのは第2楽章です。
その甘美さは、ベートーヴェン初期の作品の中では、
悲愴ソナタの第2楽章と双璧をなすのではないでしょうか。
もちろん第1・第3楽章の楽しさも大好きです。
第3楽章の音楽が止まりそうになってから、
また突然勢いを取り戻して終わる仕掛けなどは何度聴いても楽しいものです。

2013年7月13日 (土)

テレビ東京系・たけしのニッポンのミカタ!「知らないと怖い…TPP加盟は善か!?悪か!?」(2013年7月12日放送)〜日本がTPP参加すると起きるであろう悪夢・・・

先日、書店をぶらぶらしていると、こんなタイトルの本がありました。
庶民は知らないアベノリスクの真実 』(角川SSC新書)
エコノミストの森永卓郎さんの著作です。
もはや「アベノミクス」ではなく、
アベノリスク」なのですね・・・

庶民は知らないアベノリスクの真実 (角川SSC新書)

※Amazonでは評価が低いようなので、
もう一冊、「アベノリスク」がタイトルにある本を紹介します。
植草一秀著『アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪 』です。
こちらはAmazonでも高評価です。

アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪


自民党のポスターには、「日本を、取り戻す。」と書かれていますね。
しかし私には、
日本を、売り渡す。(アメリカに)」としか思えません。
TPP推進、経済至上主義の考え方は、結局亡国のではないでしょうか?

2013年7月12日にテレビ東京系で放送された、
たけしのニッポンのミカタ!
知らないと怖い…TPP加盟は善か!?悪か!?」は好内容でした。
TPP参加のメリットも一応伝える一方、
デメリットの部分を多く取り上げていました。
1時間番組ながら、わかりやすく具体的でした。

「遺伝子組み換え食品」表示の撤廃
(遺伝子組み換え食品を食べ続けたラットの実験は驚愕、いや恐怖でした・・・)、
フカヒレが食べられなくなるかもしれない事(日本の伝統的食文化の崩壊・・・)、
著作権保護で自由にモノマネができなくなるかもしれない事、
そして最悪は、日本が世界に誇る制度である、
「国民皆保険」が崩れ、ささいな風邪で病院にかかっても高額請求されたり、
離島・過疎地などの病院が今以上に無くなってしまうこと・・・
番組ではやみくもに反TPPを訴えるような一方的な立場の主張はされませんでしたが、
やはり交渉は避けられないことだけは共通理解となっていました。
これでも、TPPに両手を挙げて賛成できるでしょうか?
私は中野剛志氏や、番組中で浜矩子氏が述べていたように、
TPP参加は日本にとって大いにマイナスになると考えています。

中野剛志:TPP亡国論 (集英社新書)

TPP 黒い条約 (集英社新書)


ちなみに、番組中で紹介されていた、
遺伝子組み換え食品をラットに2年間食べさせ続ける実験を取り上げた映画は、
世界が食べられなく日」というフランスの作品です。
映画公式サイト
予告編


ところで、2013年7月21日の参議院選挙はもうすぐですね。
私は不在者投票を済ませてきました。
(あえて、どこに投票したかは書きませんが・・・)
少なくとも私にとっては(北海道民の多くにとっては)、
TPPを積極的に推進しようとする党に一票を入れることは、
自分の首をしめるようなものだと考えます。

民主党は嘘つき・口先だけの政党でしたが、
再び返り咲いた自民党は結局、
昔ながらの公共事業頼み・強者の味方の政策しかできません。
(弱者いじめをして庶民の気をそらす程度でしょう・・・)
共産党や新党大地のような政党を除けば、あとは似たり寄ったりです。
大勢は自民党に票が行ってしまいそうですが(日本の愚民化の成功ですね・・・)、
少なくとも我々は、No!を示すことはできるのではないでしょうか?

投票に行かない、というのは、
自分の人生どうなってもいいよ、というのに等しいですね。
投票を放棄するような人は、政治がどんなにひどくなっても、
文句を言うべきではないと思います。
「政治が悪い」のではなく、悪い政治家・政治体制を選んだのは、
ほかならぬ我々自身なのです。
我々が変わらなければ、政治は変わらないのです!

2013年3月14日 (木)

立ち読み日記〜諏訪哲二著『いじめ論の大罪 - なぜ同じ過ちを繰り返すのか? 』(中公新書ラクレ) 〜批判はするけど、処方はなし・・・

新聞広告で見たので、興味を持って立ち読みしましたが・・・
今回取り上げるのは、
諏訪哲二著『いじめ論の大罪 - なぜ同じ過ちを繰り返すのか? 』(中公新書ラクレ) です。
著者は「プロ教師の会」代表です。

いじめ問題の解決案については、百花繚乱状態が続いていましたが、
今や教師の体罰問題の方が取り上げられることが多くなって、
少し影が薄くなってきていますね。

著者は第3部「主要ないじめ論を検証する」として、
尾木直樹氏や大阪市の橋下市長、宮台真司氏、内藤朝雄氏らのいじめ対策案を批判します。
批判するなら、では、著者の意見は?といえば、なんともよくわからない・・・
結局、現場教師は耐え忍ぶしかない・・・みたいなことしか書いてなかったと思いました。
(立ち読み程度だから、もしかすると、どこかに書いているのかもしれませんが・・・)

批判のための批判でしかない、というなら、某日●組や北●組と大差ありません。
固定観念の枠組から一歩引いたところから、意外な解決法が出るのかもしれませんね。
ただし、著名人をとにかく批判して憂さ晴らしをするのが楽しみ、
という人なら、本書を読んでも大いに得るところがあるでしょう。
傷のなめあいみたいなものですが・・・
いじめ対策がなぜ後手後手になるのか、
そのできない理由づけをする思考を分析するにも最適かもしれません。
(結局、現場教師にいじめ対策を任せても、
できない理由づけをして終わってしまうのはなぜでしょう?)

いじめ論の大罪 - なぜ同じ過ちを繰り返すのか? (中公新書ラクレ)

2012年10月13日 (土)

2012年10月13日の札幌・脱原発デモとその報道

今日(2012年10月13日)の午後、
妻と一緒に札幌駅の近くを歩いていると、
脱原発デモの一団に遭遇しました。
かなり大規模なデモで、推定何千人かの行列になっていました。
いろいろな労働組合や、
あまり見たくない「北教祖」の旗までたなびいていました。
(こういう時は存在を認めてあげましょう・・・)
沿道から時折拍手も聞こえていました。
私の妻は珍しく、デモ団に拍手していましたよ。
(私はただ見ているだけ・・・)

脱原発の主張は、昨年の福島原発事故を見れば当然であって、
原発事故を完全に防ぐことはできないことや、
核のゴミの捨て場がない以上、原発を稼働させるのはおかしいのです。
既にある泊原発、これから建設されようとする青森の大間原発・・・
いまや民主主義の敵となった民主党も、脱原発を推進すれば、
まだ救いようがあるのですが・・・

ただ、脱原発デモ団が原発の代替エネルギーとして挙げていた、
「再生可能エネルギー」の推進、というのには、私は同意できません。
太陽光や風力その他は、安定した電力供給ができない大きな欠点があります。
天然ガスを中心としたエネルギー供給、
というのが現実的に可能な「脱原発」の道筋でしょう。

帰宅してから、ふとこの脱原発デモについてどう報道されているか、
ネット上で検索すると・・・
なんと、このデモをニュースとして扱っているのは、
東京新聞や、中日新聞、その他道外の新聞社のサイトばかりでした。
(22時現在、朝日・読売・毎日では取り上げられていない様子・・・
ただ、東京での脱原発デモは取り上げられていました。)

札幌で泊、大間原発反対集会 1万2千人参加 2012年10月13日 19時27分
(東京新聞の記事)
札幌で泊、大間原発反対集会 1万2千人参加 社会/2012年10月13日 19:18
(岐阜新聞の記事)

地元新聞の北海道新聞では、
東京の脱原発集会についてのニュース報道をしていましたが、
札幌のニュースについては、13日22時現在、掲載されていません。
東京で脱原発集会 大江さんら呼び掛け 6500人に参加
(10/13 17:19、10/13 20:06 更新)

(北海道新聞の記事)

なお、主催者発表では、札幌のデモは1万2千人の参加、とのこと。
本当に事実なら(デモの参加数はたいてい水増しなのですが・・・)、
東京のデモよりもスゴイ!ということになりますね。

私どもはデモが行われる中、北海道新聞社の本社横を通っていました。
十分、デモのシュプレヒコールが聞こえる距離でしたが、
(100mぐらい離れていても十分聞こえるし、長蛇の列はかなり派手でした)
スポンサーに遠慮した道新の社員には聞こえなかったのかもしれませんね・・・

最近、書店で見かけて、少し立ち読みした本です。

「本当のこと」を伝えない日本の新聞 (双葉新書)

そのうち読んでみる価値がありそうです。

書評記事:
『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』
【読書感想】「本当のこと」を伝えない日本の新聞
参考記事:
突如消えた日経ビジネス記事に思う―「権力のチェック機構のチェック機構」の必要性

2012年9月14日 (金)

悪質な『キリスト教入門』(島田裕巳著、扶桑社新書)~タイトルに偽りアリ!

書店の新書コーナーの新刊本をざっと眺めていると、
こんな本がありました。

キリスト教入門

タイトルを見て、「誰が書いたのだろう?」と手にとってみると・・・
著者は宗教学者の島田裕巳氏。
なぜこの人が、『キリスト教入門』なる本を書いたのか、アヤシイと思いましたが、
やっぱり予想通りでした・・・

キリスト教入門

タイトルこそ『キリスト教入門』となっていますが、
タイトルに偽りアリで、惑わされてはなりません。
ざっと立ち読みしただけでも、これは『()キリスト教入門』なのでは?と思いました。
タイトルと中身が乖離した、悪質な本です。
これなら、『キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』』(講談社α新書)
といった本の方がまだマシでしょう。
タイトルを見て、キリスト教信仰を求めようとする人なら買わないと思うからです。
(ニーチェの本の意訳本みたいですね。ニーチェ思想の方がよっぽど危険なのに・・・)

(参考)
キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』

楽天ブックスに、この本の主な内容と章見出しが出ていますので、転載します。

第一章 なぜキリスト教は上から目線なのか
第二章 ユダヤ教から生まれたはずなのに
第三章 イエス・キリストとは何者なのか
第四章 キリスト教は本当に一神教なのか
第五章 キリスト教のマーケティングとイノベーション
第六章 プロテスタントのイノベーションの仕組み
第七章 なぜキリスト教はイスラム教と対立するのか
第八章 キリスト教はどうして日本で受け入れられなかったのか

著者はまず第1章で、聖書の日本語訳において、
神(主)、キリストに「敬語」を使っているのがおかしい、と食ってかかります。
それを「上から目線」、「選民思想」などといって、攻撃をしかけます。
日本にキリスト教が広がらない原因の一端だ、みたいな指摘をして、
あざけっているかのように思えました。

それなら、仏典や『論語』では、
お釈迦様や孔子先生に敬語を使わないのでしょうか?
今、手元にある『現代語の法華経』(庭野日敬著)という本をパッと開いただけでも、
お釈迦様や○○菩薩の数々に、きちんと敬語を使っています。

(参考)
現代語の法華経


そもそも、日本語では、目上の方にきちんと敬語を使うのが基本です。
目上の人が発言したなら、「言われた」や「おっしゃった」と表現すべきものです。
ましてや、神様や仏様が発言された(ここでも敬語を使いますが)なら、
最上級の丁寧な言葉を使うべきものでしょう。
なんでもフラット、直訳にすべき、というのは、研究者のメモ程度ならイザ知らず、
広く普及すべき文書としては不適切です。

確かに、聖書にはいろいろな読み方があります。
文学や歴史書としての読まれ方も認められるものでしょう。
しかし、聖書そのものは、
イエス様の言葉にあるとおり、
あなたたちは聖書の中に永遠の命があると考えて、聖書を研究している。
ところが、聖書はわたし
(=イエス・キリスト)について証しをするものだ。
(新約聖書ヨハネによる福音書5:39新共同訳)
すなわち、信仰を前提にして初めて、真価を表すものですし、
聖書そのものがキリストを指し示す、キリストを明らかにする書なのです。

島田氏はオウム真理教でさえ肯定的に評価するぐらいの人です。
宗教学者といいながら宗教オンチの人なのではないでしょうか?
的外れな批判と言えます。

この本は、
「キリスト教はいかに私(=島田氏)にとって魅力のない宗教か」
というのを書いただけの本です。
(第八章などは特にひどい・・・)
おそらく、『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書)のヒットを知って、
キリスト教で一儲けしようか、程度で書いたのかもしれません。
島田氏の著作の傾向や過去のオウム真理教支持発言を知る人なら、
キリスト教の本として、まともに相手にする価値のない本だといえます。
(もっとほかのタイトルなら、気にもしないし、
勝手に言いたい放題言っていても、私は気にしなかったでしょう。
この本の最大の問題点は、タイトルそのものです。
せっかく「キリスト教って、どんな教えだろう?」
と手にとった初めての本がもしこれなら・・・)

たぶん、島田氏にとっては、
イエス様の言葉
わたしは道であり、真理であり、命である。
わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない。

(新約聖書ヨハネによる福音書14:6新共同訳)
のような言葉こそ、鼻持ちならないのでしょうね・・・

ちなみに、『ふしぎなキリスト教』は「ふしぎに」ヒットしていますね。
立ち読みしただけですが、なかなか面白い視点・論点はあります。
しかし、生きた信仰というよりは、死んだ信仰を取り扱っているだけで、
表層的な内容だと思いました。
(ただし、上述の『キリスト教入門』よりははるかにマシです。)

ふしぎなキリスト教

2012年8月 3日 (金)

ショッキングピンクなミスターゆとり教育?~寺脇研著『ロマンポルノの時代』 (光文社新書)

ある書店で、新書の新刊コーナーをざっと眺めていましたら、
こんなタイトルの本が・・・

ロマンポルノの時代』 (光文社新書)

タイトルだけなら、どこかのスケベさんが書いたのでしょう、で済ませたところでした。
気にとめる価値のないものです。
ふと著者名をなにげなく見ると、そこでびっくり仰天!!!w(゚o゚)w
著者は「寺脇研」と書いてありました。
えっ、「寺脇研」って、
ゆとり教育を推進した「ミスターゆとり教育」の人?
まさか?!別人でしょう?ウソ~?(゚0゚)

急いでその本を手にとって、著者肩書きを読んでみました。
本に書いてあるのと、Amazonで掲載されているものは同じですので、
引用します。
(引用)
【著者略歴】
寺脇研(てらわきけん)
映画評論家、京都造形芸術大学教授、NPO法人ジャパン・フィルム・コミッション理事長。
1952年福岡市生まれ。
東大法学部卒業後、文部省に入省。
初等中等教育局職業教育課長、広島県教育長、高等教育局医学教育課長、生涯学習局生涯学習振興課長、
大臣官房審議官などを経て、2002年より文化庁文化部長。2006年退官。
『「フクシマ以後」の生き方は若者に聞け』(主婦の友社)、『権力、価値観、天下り……「官僚」がよくわかる本』(アスコム)、
『2050年に向けて生き抜く力』(教育評論社)、
『百マス計算でバカになる』『さらば ゆとり教育』(以上、光文社ペーパーバックス)、
『韓国映画ベスト100』(朝日新書)など著書多数。

(引用終)

おいおい・・・
ゆとり教育の濫觴は、実はピンク映画だったのか~
よく教育者が使うセリフとして「教育はロマンだ」というのがありますが、
まさに「教育はロマン(ポルノ)だ」?
強烈なカミングアウト!教育者としても「アウト」?

Amazonのレビューに、著者への痛烈なコメントが書かれています。
私も同感です。

ロマンポルノの時代 (光文社新書) [新書]


(引用)

5つ星のうち 1.0
「教育者」にあるまじき本 2012/7/18

By 岸

「童貞坊や」であった19歳からロマンポルノをひたすら鑑賞し続けてきた著者による、ロマンポルノ私論。それだけならば、「エロおやじ」の「昭和うんちく話」として、楽しく読み流せるのかもしれません。

しかし、著者は、「ミスター偏差値」「ミスターゆとり教育」などと呼ばれた元文部官僚であり、現在も大学教授や「コリア国際学園」の理事などを務める「教育者」です。

そんな彼が、本書で「私のロマンポルノ・ベスト45」として挙げている作品には、心底驚きました。
『犯され志願』
『襲われる女教師』
『課外授業 熟れはじめ』
『母娘監禁 牝<めす>』
『人妻暴行マンション』等々

「ベスト○○」を挙げさせることにより、その人の人格や趣向が分かると言いますが、よくもまあ、こんな非倫理的・犯罪的・暴力的・反教育的なテーマの作品を「ベスト」に挙げるもんですね。女性や教師の尊厳をどう考えているのでしょうか?

しかも、これらの作品は、彼が文部官僚として教育をリードしていた時代のもの。こういう人物が、国や地方(広島県の教育長)の教育の頂点にいたとは…。

別に強姦や淫行ものの映画が好きであっても、鑑賞してニヤニヤする限りは何の問題もありません。しかし、それを口に出すことは、問題をはらんでいます。性被害にあわれた女性や子ども、妻子を強姦殺人で失った人などもおられる中で、こんな作品を「ベストだ」などと吹聴することは、ポリティカル・コレクトネスを完全に欠いている。教育者失格だと思いますね。

もっと驚くべきことは、発言だけにとどまらず、文化庁に在職中、『女教師 汚れた放課後』等の作品を、日本を代表する映画として、税金を使って韓国の映画祭に出展したことです。

当時から批判があったようですが、彼は、これを右翼・左翼の学者・文化人による差別的意識のあらわれだ、もっと猥褻な一般映画もある、などと一蹴しています。

私は、右でも左でもない者ですし、ロマンポルノ=低俗なもの、というプロトタイプなものの見方もしていません。しかし、女性や教師の尊厳を傷つけるようなインモラルな作品を、税金を使って海外に広めるのは、「恥の輸出」としか思えません。

本書は、日本の教育、文化行政に対する信頼を失墜させる、とても愚かな本だと思います。
(引用終)

ぜひ、「文部科学省推薦」してほしい本ではないでしょうか?(皮肉な意味で・・・)
宮崎駿や黒澤明の映画と並ぶ、これぞ日本映画という「ロマンポルノ」!
国民の血税と使って海外輸出デスカ?

個人がワイセツ映画を観るのは自由ですし、それは個人的嗜好というものです。
その点で私は寺脇研氏を非難するつもりはありません。
しかし、個人的で人に言えないような趣味嗜好のものを、
税金を使って「恥の輸出」をしていた、というなら、
これは国辱ものではないでしょうか?
ミスターゆとり教育さん、
あまりにも大胆なカミングアウトでしたね・・・
(ある意味勇気があるとも言えますが・・・)

もちろんこの本は手にとって立ち読み(著者略歴のところ)しただけです。
(買う気にならないのはもちろんのこと、かなりショックでした・・・)

寺脇研氏の著作です。
ロマンポルノの時代』と同じ著者だとは信じがたい!
(ウソだと言ってくれ~と言いたいほど・・・)

それでも、ゆとり教育は間違っていない

2050年に向けて生き抜く力

百マス計算でバカになる (光文社ペーパーバックス)

韓国映画ベスト100―「JSA」から「グエムル」まで (朝日新書 47) [新書]

berkeley さんという方のブログ「アーバン・ダイアリー」でも、
この件を取り上げていますので、ぜひご一読を!
ゆとり教育推進と、「生類憐れみの令」制定を天下の愚案と断じています。
ゆとり教育の推進者であった元文部省官僚の寺脇研が『ロマンポルノの時代』を著した愚

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