パトリシア・セントジョン(Patricia M. St John)(作)『雪のたから』~世界名作劇場「アルプス物語 わたしのアンネット」の原作
世界名作劇場「わたしのアンネット」(1983年放送)の原作である、
パトリシア・セントジョン(Patricia M. St John)の『雪のたから』。
以前から読んでみたいと思っていましたが、
ようやく最近、新訳が出たので、買って読んでみました。
雪のたから (CLASSICS FOR A NEW GENERATION)
Amazonでは高額取引なので、一般サイトとキリスト教書店のサイトで紹介します。
雪のたから (801763)中村和雄、発売:いのちのことば社 発売日:2019/12/15(いのちのことば社通信サイトWINGS)
雪のたから 著者パトリシア・セントジョン (著),中村 和雄 (訳),Fumiko Onslow (訳)(honto)
旧訳(現在絶版)
世界名作劇場・完結版 アルプス物語 わたしのアンネット [DVD]
アルプス物語 わたしのアンネット (絵本アニメ世界名作劇場)
仲良しだったアネット(アンネット)とルシエン。
ふとしたきっかけでケンカをしてしまい、
それが元でルシエンはアネットの弟ダニーにひどいケガを負わせてしまいます。
ダニーは一生歩けないと宣告されてしまいます。
アネットはルシエンを憎み、ルシエンは村の人々から疎まれます。
そんな中、ルシエンは森の中である孤独な老人と出会い、
木彫りを習い、上達していきます。
罪滅ぼしのために、ルシエンはダニーを喜ばせようと、
「ノアの箱舟」の木彫りを作りますが、
アネットに壊されてしまいます。
ここからのアネットの葛藤、ルシエンの苦悩、
そしてアネットの改心とルシエンとの和解、ルシエンの勇気・・・
原作前半は正直に言うと、それほど面白さを感じていませんでしたが、
後半になると、キリスト教色が強くなり、それ故苦手な人も出てくるでしょうが、
私にとっては静かな感動に満たされました。
特に心に残ったところを引用しましょう。ルシエンの作ったノアの箱舟を壊してから、クリスマスを祝った後のくだりです。
(クリスマスの後で)「おばあちゃん、イエスさまが、私たちの心のドアーをたたいているって(注:ヨハネ黙示録3:20参照)、どういう意味なの?」
「それはね、こういうことなのよ。」おばあさんは(中略)アネットに向かい合った。「お前の生き方には間違ったことと、悪い考えが一杯だって、救い主イエスさまには分かっているのよ。イエスさまは、この地上にやって来られて、十字架におかかりになった。間違った行いや悪い考えの罰を、お前に代わって受けるために。その後、救い主はもう一度、いのちを取り戻されたから、お前の心に入り、イエスさまの聖霊によってお前の中に住むことがおできになるのよ。イエスさまは、こういう悪い考えをみんな滅ぼして、代わりにお前がイエスさまの良い、愛に満ちた考えで、考えるようにさせることができるのよ。それはちょうど、イエスさまが汚れた、暗い、ほこりまみれの家のドアーをたたいて、言っておられるようね。『お前がわたしを入れてくれれば、ごみや暗やみを取り去って、きれいな、明るい家にしてあげる。』けれど、いいこと。イエスさまは自分から押し入ってくることはされないのよ。ただ、入ってもいいか、聞くだけなのね。これが、ドアーをたたくっていうことの意味よ。お前は、『はい、主イエスさま、わたしには、あなたが必要です。お入りくださり、私の中にお住まいください』って、言うことが必要よ。これが、ドアーを開けるっていうことね。」(中略)
「けど、おばあちゃん。」アネットは(中略)言った。「もしだれかを憎んでいるとしたら、イエスさまにお入りくださいって、お願いすること、できないでしょう?」
「もしお前がだれかを憎んでいるのなら、イエスさまに入ってきてもらうことが、絶対に必要なのよ。部屋が暗ければ暗いほど、光がそれだけ必要なんだから。」
「けど、わたし、ルシエンを憎むのを止めること、できないの。」アネットは(中略)そっと言った。
「そう、それは本当にそうね。だれでも自分では、悪い考えを止めることはできないのよ。自分で止めようとするのは、決していい考えじゃないわ。けど、アネット。朝になって下へ降りてきてみたら、窓に雨戸が閉まっていて部屋が暗かったら、お前はこう言うの?『暗闇と影を追い出さなければ。それがすんだら、雨戸を開けて、日の光を入れよう。』お前は、暗闇を追い払おうとして無駄な時間を使うのかい?」
「もちろん、そんなことはしないわ」とアネット。
「じゃあ、暗闇をどうやって追い払うのかい?」
「もちろん、雨戸を開けるのよ。そうしたら、光が入ってくる。」
「けど、暗闇はどうなったのかい?」
「知らないわ。光がやって来た時に、闇は行ってしまったのよ。」
「それこそ、お前がイエスさまにお入りくださいって頼んだ時に、起こることよ。イエスさまは愛なのよ。愛が入って来られたら、憎しみや、自分勝手や、不親切は、愛に居場所をゆずるのよ。ちょうど、お前が日の光を入れたら、闇が居場所をゆずるようにね。けど、憎しみだけを追い出そうとするのは、暗い部屋から闇を追い出そうとしているようなものね。それって、時間の無駄ってこと。」
(中略)
「それって、間違いなく本当だわ。」アネットは自分に言い聞かせた。「イエスさまに入ってきてくださいってお願いすれば、ルシエンと友達にならなきゃならないわ。そんなの、したくない。それに、わたしがルシエンの彫刻を壊したって言わなきゃならないんだわ。そんなの、決して、決してできないわ。ドアーをたたく音のことは、なんとかして忘れるようにしなければ。けど、このみじめさと言ったら・・・・・。」
主イエスさまがドアーをたたく音を聞いて、締め出したままにしておく者は、幸せも締め出してしまうことを、アネットはまだ知らなかった。
(『雪のたから』P.201~204から引用)
ホルマン・ハント(William Holman Hunt)(1827-1910)作「世の光」
この頑なな心を開いたのは、御言葉です。
その御言葉とは、
ヨハネの手紙Ⅰ4:18です。
「全き愛は恐れを締め出します。」(新改訳2017)
※小説中は違う訳になっています。
それにしても、罪とゆるし、改心といった、典型的なキリスト教的文学を、
よくぞ世界名作劇場で取り上げてくれたなぁ~と改めて感心しました。
ちなみに、アニメ版の方は、完結版でしか見ていません。
(過去記事)→アルプス物語 わたしのアンネット(完結版)
(参考記事)世界名作劇場 アルプス物語 わたしのアンネット
(参考記事)『雪のたから』あらすじ
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