シューマンの交響曲の代表作といえば、なんといっても、第4番です。
では、一番の不人気作といえば?
人によって違うかもしれませんが、表題がついた第1番「春」や第3番「ライン」よりも、
やはり第2番を挙げるのが妥当だと思います。
シューマンらしい、躁鬱の差が激しい作品です。
第1楽章の威容から、第2楽章は早くも幻想的な世界へ。
第3楽章はラフマニノフやマーラーも顔負けの沈鬱さ・・・
なんとかトンネルを抜けて、一応ハッピーエンド?の第4楽章で終わります。
第4楽章は、第4番の第4楽章のような輝かしいカタルシスまでには至りません。
なんかこう書くと、いいところがあまりなさそうですが、
第4番とはまた違った、独特の魅力があるのも事実です。
初めてこの曲(の一部)を聴いたのは、何十年も前です。
レナード・バーンスタインが、PMFを指揮して、札幌の地でこの曲を演奏しました。
そのリハーサルの様子のレーザーディスク(死語!)で、
特に第2楽章、第3楽章がすごく印象的でした。
第3楽章の並外れた暗さ・・・
もう、ほとんどマーラーかショスタコーヴィチ並?
(バーンスタインの音楽への愛、人々への愛がすごく伝わる貴重な映像資料だと思いました。)
ただ、一方で、シューマンの交響曲第2番=鬱すぎる作品、として、
聴くのを敬遠する要因となったのも事実です。
(参考)バーンスタイン/与えるよろこび The Last Date in Sapporo 1990 [DVD]
今回、聴き比べをしてみよう、というきっかけは、
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮ロンドン交響楽団のSACDを入手したことでした(後述)。
最初はもっぱら第4番ばかり聴いていましたが、流し聴き程度に、
カップリングの第2番を聴いているうちに、なかなかいいな、と思えるようになりました。
今回紹介するのは7盤です。
(2018年までなら、第4番の聴き比べをした時のように、
全集だけで10種類以上あったと思いますが、今年になって大幅に処分したので、
現在は7盤だけになってしまいました・・・)
それでは、聴き比べです。
オススメ順に紹介します。
指揮者、オケ名、レーベル、録音年月、
スペック(通常CD、SACD ハイブリッドorシングルレイヤー、Blu-ray)、
(2ch Stereo or Surround etc...)、カップリング曲の順です。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
〇カラヤン指揮ベルリン・フィル(DG)
1971年2月
SACDシングルレイヤー(SACD Stereo 2ch)
シューマン交響曲全集
☆4.5
第1楽章 10:48
第2楽章 7:02
第3楽章 10:39
第4楽章 7:53
あたかもブラームスの曲のようなシンフォニックな響きを見事に引き出しています。
それでいて、第3楽章でも深刻になりすぎず、鬱な世界さえ心地よく感じられます。
シューマンはオーケストレーションがイマイチ、なんて風評を吹き飛ばしてくひびかせれます。
〇ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮ドレスデン国立管弦楽団(WARNER)
1972年9月
SACDハイブリッド(SACD Stereo 2ch)
シューマン交響曲全集
☆4.0
第1楽章 12:31
第2楽章 6:39
第3楽章 10:18
第4楽章 7:56
サヴァリッシュ、といえば、N響アワーで安全運転な演奏を聴かせる指揮者、
ぐらいの認識しかありませんでしたが、
この全集を聴くと、必ずしもそうでもない、ということがわかりました。
彫りの深い演奏を聴かせてくれます。
〇サー・ジョン・エリオット・ガーディナー指揮ロンドン交響楽団(LSO)
2018年3月
SACDハイブリッド(SACD Stereo 2ch、SACD Multi-ch、通常CD)
カップリング シューマン:ゲノフェーファ序曲、交響曲第4番(1841年版)
☆4.0
第1楽章 12:11
第2楽章 7:06
第3楽章 9:14
第4楽章 8:13
モダンオケでの演奏にも関わらず、古楽的なきびきびとした演奏に仕上がっています。
音響だけでいえば、後述のパーヴォ・ヤルヴィ盤と並んで充実しています。
カラヤンの演奏のような脂ぎったものが苦手ならオススメです。
〇ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団(SONY)
1960年10月
SACDシングルレイヤー(SACD Stereo 2ch)
カップリング シューマン:交響曲第4番、ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
※現在入手しづらいですので、下では交響曲全集の方で紹介しています。
☆4.0
第1楽章 10:41
第2楽章 6:41
第3楽章 11:07
第4楽章 7:52
あっさりとした演奏にも関わらず、何度でも聴いてみたくなるような、
音楽そのものの美しさを十分に引き出した演奏といえます。
モーツァルトの曲を聴くような感覚でシューマンの躁鬱世界を堪能?できます。
〇パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン(SONY)
2011年4月
SACDハイブリッド(SACD Stereo 2ch、SACD Multi-ch、通常CD)
カップリング シューマン序曲集(4曲)
☆4.0
第1楽章 11:48
第2楽章 7:28
第3楽章 10:00
第4楽章 8:11
勢いのある、若々しさを感じられる演奏です。
後述のBlu-rayとどちらを取るか迷うところです。
ライブ感でいえば、後述のBlu-rayの方をオススメします。
〇パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン (C major)
2012年
Blu-ray(PCM Stereo、DTS-HD MA5.1)
シューマン交響曲全集
☆4.0
第1楽章 11:56
第2楽章 7:28
第3楽章 9:41
第4楽章 8:15
基本的には、前述のSACD盤とあまり大差ありません。
好みの問題の範疇でしょう。
〇サー・ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティック (ARCHIV)
1997年
通常CD
シューマン交響曲全集
☆3.5
第1楽章 12:03
第2楽章 6:58
第3楽章 10:05
第4楽章 8:23
演奏は従来のモダンオケ演奏と一線を画した、すがすがしい印象です。
あとはせいぜい、音質のことぐらいでしょうが、あまり気にならないなら、
この盤でも十分満足です。
ところで、今まで「聴き比べ」記事を書いてきましたが、
もうそろそろ、「聴き比べ」記事を書くことはやめようと考えました。
理由は、書くのにかなり時間がかかることと(この記事を書くまでに至るので1か月ぐらいかかりました。)、
聴いて新鮮な印象のうちに書いた方が書く私としても楽しいからです。
よって、今後は、1盤1盤ごとに記事を書くようにしたいと思います。
これからもよろしくお願いいたします。
最近のコメント