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2017年11月 4日 (土)

実は名曲?〜ショスタコーヴィチ:交響曲第12番ニ短調『1917年』Op.112

ショスタコーヴィチ(以下「ショスタコ」)の15曲の交響曲中、
最も有名で人気が高いのは、疑いなく第5番です。
では、ショスタコマニアの間で評価が高いといえば、
第4番や第8番、あるいは第10番あたりですね。
しかし私としては、それらは今のところどうも好きになれません。
今までは、第5番以外では、軽やかな第9番と、
第7番「レニングラード」の第1、第2楽章、
それと第10番の第2楽章だけが、ショスタコの交響曲で好きなところでした。

2017年9月30日放送の、BS日テレ「読響シンフォニックライブ」で、
川瀬賢太郎(以下敬称略)指揮読響による、
ショスタコーヴィチの交響曲第12番
の演奏がありました。
2017年6月7日ミューザ川崎シンフォニーホールにて収録されたものです。
録画して放送日のしばらく後に観ました。

ショスタコの第12番は、タイトルと各楽章のタイトルを見ただけで、
なにかウンザリするような、政治的で「革命バンザイ!」、
共産党体制に阿るニオイがプンプンしているので、
もともと聴くのを敬遠していた曲です。
ショスタコファンの方のいろいろなブログ記事等を拝見しても、
「空虚」「映画音楽」「中身が薄い」「駄作」・・・等々否定的な見解が多いようです。

観る前は、
「なんだ、今回の『読響シンフォニックライブ』は、ショスタコの第12番か・・・」と、
つまらなかったらさっさと録画消去するつもりでした。
しかし意外にも、聴き始めてみると、豪快でなかなか愉しげな曲でした。
第4楽章のクドすぎるフィナーレには、さすがに辟易しましたが・・・

ようやく興味をもって、我が家にあるショスタコの交響曲全集(2セット)から、
盤を取り出して聴いてみました。

我が家にある、ショスタコの交響曲全集は、2017年11月現在、
以下の2セットです。

◯ルドルフ・バルシャイ指揮ケルンWDR交響楽団(Brilliant Classics)
※通常CD11枚組

ショスタコーヴィチ:交響曲全集 (Shostakovish: Symphonies) Box set, CD, Import

◯ドミトリー・キタエンコ指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団(CAPRICCIO)
※SACDハイブリッド12枚組

ショスタコーヴィチ:交響曲全集[SACD-Hybrid] SACD, Box set, Import

最初に聴いたのが、キタエンコ盤でした。
これがどストライク!!!
第1楽章のカッコよさ、多少沈滞気味の第2,3楽章を経て、
クドすぎるけど迫力満点の第4楽章!!!
すっかりハマってしまいました。
メロディの親しみやすさ、わかりやすさは、映画音楽みたいです。

ショスタコの作品、特に交響曲は、
政治的なものと結びついて語られることが多いです。
確かにそのとおりなのでしょう。
しかし、たとえばベートーヴェンやワーグナーがどういう政治哲学をもっていたか、
そんなことはどうでもいいように(作品そのものが素晴らしければいい!)、
ショスタコの作品も、
そろそろ20世紀の政治的呪縛から解放してあげてもいいのではないでしょうか。

この第12番、各楽章のタイトル(第1楽章「革命のペトログラード」・・・)を全く無視して、
そもそもの曲のタイトル「1917年」すら無視して、
音だけを何の固定観念をもたずに聴けば、
ショスタコの交響曲第5番に次ぐポピュラリティをもっていると私は思います。
長過ぎる「レニングラード」や、軽やかすぎる「第9番」よりも!
ハリウッドの冒険映画のサントラを聴いているような感覚です。
第4楽章のクドすぎるフィナーレも、聴くたびに好きになりました。

ショスタコの本質は、救いようのない暗さであって、
第12番のような作品は不本意なものだ、と言いたい方がおられるかもしれません。
でも私は、どうもそういう暗さが苦手だし、好きではありません。
得体の知れない絶望感とか・・・
(そういうのは、現実だけでたくさんだ、と思っています。
何も芸術でそういうのに付き合いたいとは思いません。)

あと、この曲を「映画音楽的だ・・・」と貶している方もいるようですが、
映画音楽はそんなに価値がないものなのでしょうか?
ジョン・ウィリアムズの「スター・ウォーズ」その他の映画音楽や、
伊福部昭の「ゴジラ」の曲、あるいはニーノ・ロータやモリコーネの映画音楽と、
20世紀後半のいわゆる「ゲンダイオンガク」では、
後世まで聴く人が絶えないのは、映画音楽の方だと思います。
わかりやすくて大スペクタクル、万々歳です!
音楽は、やはり聴いて愉しい、ウキウキする、高揚感があるものこそ、
私にとっては価値があります。

ところで、バルシャイ盤の方も聴いてみたのですが、
第1楽章の最初で聴くのをパスしました。
キタエンコ盤と比べると、白黒とカラー、
あるいは2Dと3Dくらいの違いがありました。
媒体(CDとSACD)の差が如実に出た結果といえます。

この曲の初演者、ムラヴィンスキー盤も機会があれば聴いてみたいとは思いますが、
私にとっては暫くはこのキタエンコ盤があれば十分です。
録音優秀です。

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コメント

影の王子さま、コメントありがとうございます。
人それぞれ、価値観が違う訳ですし、その人それぞれのこだわりを知る、というのは興味深いものです。
教えていただきありがとうございます。

ムラヴィンスキーが初演したショスタコーヴィチの最後の交響曲であり
また、彼の最後の録音がこの曲でした。
その最後の録音でこの曲を知りました。

駄作とまではいいませんが、終楽章コーダが第5のリフレインなように思えます。

ショスタコーヴィチの交響曲はその後の第14番「死者の歌」と最後の第15番が最高傑作だと僕は思います。
ただ、お書きになられたように「絶望的な暗さ」を好む僕には名曲ですが
そうでなければ共感いただけないでしょうね。

この記事へのコメントは終了しました。

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