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2017年8月17日 (木)

書評 松岡圭祐『黄砂の籠城』(上・下)(講談社文庫)〜歴史モノのバイオハザード?

松岡圭祐の『万能鑑定士Qの事件簿』シリーズが好きだったので、
(全巻読みました。
あと、『特等添乗員αの難事件』シリーズ、『水鏡推理』シリーズといった、
「人の死なないミステリー」というジャンルが好きです。)
読んでみました。
中国・清朝末期の「義和団の乱」(1900〜1901)の中で、
襲いかかる義和団と清国軍の前に、
北京の公使館区域に立て籠もって勇敢に戦った日本人、
柴五郎中佐(階級は当時。実在の人物。1860-1945)と、
この小説の主人公である櫻井隆一伍長の活躍を中心に描く歴史小説です。
上巻・下巻とも一気に読んでしまいました。

歴史的事実の考察はともかくとして、
次々と襲いかかってくる紅巾(義和団)の描写は、
さながらホラー映画のバイオハザードみたいな感じでした。
籠城を取り囲む圧倒的な数の紅巾と、
一歩外に出たら無残な死骸(手足バラバラなど・・・)とされる恐怖・・・
読んでいて気持ちが悪くなるほどの絶望感を味わいました。
途中からは、誰が内通者なのか、という、
推理小説としての要素も非常に面白い展開で、物語に引き込まれました。

キリスト教の立場からは・・・
事実だから仕方ないのですが、
漢人クリスチャンたちがカトリックとプロテスタントで分裂していた、とか、
宣教師が高圧的だった、というのも残念なところです。
(実際、そうだったのでしょうね。)

最近よくある単純な「日本・日本人バンザイ」の本ではなく、
歴史に埋もれた事実に光を当てる良作だと思いました。

あえて難点をいえば、上巻の最初の話(現代の話)が、
最後まで回収されなかったのが残念でした。
(こういうすばらしい日本人がいたのだ、というのを描ききったことで、
「回収」された、とも言えるのかもしれませんが・・・)

柴五郎の話や、歴史モノをさらに読んでみたいな、と思いました。

黄砂の籠城(上) (講談社文庫)

黄砂の籠城(下) (講談社文庫)

※2冊そろえるとタイトルを描いた一つの絵となります。

この籠城の話は、ハリウッド映画化されていたのですね。

北京の55日 [DVD]

※アメリカ映画なので、アメリカ人がヒーローになっていますが、
史実は日本人とロシア人が中心だったそうです。

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