ドビュッシー:「牧神の午後への前奏曲」聴き比べ
ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。
昔から知ってはいましたが、
なんともいえないけだるげな(官能的な)感じがそれほど好きではありませんでした。
ドビュッシーの作品自体、あまり好きではなかったです。
曖昧模糊、まさに「雲」のようなとらえがたい音楽とでもいいましょうか・・・
しかし最近ようやく、ドビュッシーの「海」が好きになり、
「海」のCDやSACDを集めるようになりました。
(後日、聴き比べ記事を書く予定です。)
その中の1枚、ショルティ指揮シカゴ交響楽団の演奏(SACDシングルレイヤー、後述)で、
もともと敬遠していた、「牧神の午後への前奏曲」が冒頭に収録されていました。
なんとなく、ついでだから聴いてみたのですが・・・
結構、ステキな曲なのだな、と実感しました。
そこで、家にあるドビュッシー関連のCDや、
カラヤン、ムラヴィンスキーのオムニバス盤などをいろいろ調べたら、
7盤(2017年7月5日現在)に収録されていました。
(もともと10分程度の曲ですので、
この曲のために新たに盤を集めることはしませんでした・・・)
ところで、ドビュッシーがこの曲を作曲する際に、
感銘を受けたというのが、
マラルメの詩「半獣神の午後」という詩です。
(「牧神」も「半獣神」も、どちらも原語(フランス語)では、
"Faune"ですが、慣習的に、ドビュッシーは「牧神」、
マラルメでは「半獣神」と訳される、とのことです。)
その詩の訳文を掲載しているブログ記事を見つけましたので、
興味のある方はどうぞ。
→「牧神の午後」(ブログ名:ムッシュKの日々の便り)
なお、本記事では、タイトルの「牧神」あるいは、
元となった詩の「半獣神」を使わず、
原語のカタカナ読みの「フォーン」で統一表記します。
(タイトルは別ですね・・・)
話を戻して・・・
それでは、聴き比べです。
録音年月順に紹介します。
指揮者、オケ名、レーベル、録音年月、
スペック(通常CD,SACD ハイブリッドorシングルレイヤー)、
(2ch Stereo or Surround etc...) 、
カップリング曲の順です。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
◯ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(SCRIBENDUM)
1965年2月
通常CD
※The Art of Mravinsky in Moscow 1965 & 1972(7枚組CDBOX)
☆3.0
09:54
ムラヴィンスキー・イン・モスクワ (The Art of Mravinsky in Moscow 1965 & 1972) Box set
通常のイメージで言えば、緑がうっそうと茂る中でフォーンがまどろんでいる、
という感じですが、
この演奏だと、氷に閉ざされたようなイメージでした・・・
1965年2月28日のコンサートの記録です。
このCDBOXのオマケと考えた方がいいかも・・・
◯ブーレーズ指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(SONY)
1966年12月
通常CD
※ドビュッシー:管弦楽曲集
☆4.0
09:41
ドビュッシー:管弦楽曲集
醒めた演奏ですが、細部が明晰なので、
まるで陽光降り注ぐような明るい森で、
フォーンがまどろんでいるかのようです。
ただ、この曲については、あまりに明晰すぎるよりは、
後述のデュトワ盤のような曖昧模糊の演奏や、
カラヤン盤のようなムード音楽にしてしまう方が、
味わいがあるのかもしれませんね・・・
◯ショルティ指揮シカゴ交響楽団(DECCA)
1976年5月
SACDシングルレイヤー(SACD 2CH)
カップリング: 「海」、ラヴェル「ボレロ」
☆4.0
10:50
ドビュッシー:交響詩「海」、ラヴェル:ボレロ、他 Limited Edition, SACD
ブーレーズ盤と同じく、細部が明晰ですが、
ブーレーズ盤よりは淡い感じがします。
この曲の良さを改めて認識させてくれた演奏です。
今回の聴き比べのきっかけになりました。
◯カラヤン指揮ベルリン・フィル(WARNER)
1977年1月
通常CD
※Monumental Karajan!(カラヤンの演奏のオムニバス盤)
☆4.0
10:11
Monumental Karajan!(CD3枚組)
※1枚モノならこちら↓
ドビュッシー:海 牧神の午後への前奏曲 ラヴェル:ボレロ(SACDハイブリッド)
カラヤンらしい優美なレガートで甘美に聴かせる名演です。
ムード音楽としては最高峰かも?
◯カラヤン指揮ベルリン・フィル(DG)
1985年12月
通常CD
※「アダージョ・カラヤン」
☆4.0
09:52
アダージョ・カラヤン DX(2枚組)
1枚ものならコチラ↓
ドビュッシー:交響詩「海」、牧神の午後への前奏曲/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ、ダフニスとクロエ
上記で紹介したのは、2枚組になったバージョンですが、
元々は1枚モノのCDでバカ売れしたアルバムでしたね・・・
「いかにも・・・」のムード音楽で、耽美的です。
演奏そのものは、WARNER盤の方が優れていると思いますが、
聴かせどころタップリです。
◯デュトワ指揮モントリオール交響楽団(DECCA)
1989年5月
通常CD
カップリング:「海」、「遊戯」、「夜想曲」
☆4.5
10:44
ドビュッシー:海/牧神の午後への前奏曲/夜想曲/遊戯
今回紹介した盤の中で、最も「曖昧模糊さ」を感じる演奏です。
作品のタイトルと最もマッチしています。
ファースト・チョイスとしてオススメですが、
曖昧模糊がニガテなら、ブーレーズ盤かショルティ盤をオススメします。
あるいは、ムード音楽系なら、カラヤン盤か・・・
◯ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団(DG)
1991年3月
通常CD
※Boulez Conducts Ravel and Debussy Box set, CD, Import
☆3.5
08:54
Boulez Conducts Ravel and Debussy Box set, CD, Import
明晰さは旧盤よりイマイチ・・・
旧盤が「前衛」、「モダン」としてのドビュッシーを強く感じるのと対称的に、
新盤は、「古典」としてのドビュッシーを安心して聴ける、という違いでしょうか。
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コメント
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影の王子様、コメントありがとうございます。
ブーレーズ指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団によるドビュッシーの「海」(SONY)は、同曲の演奏の中で最高ランクです。
ストラヴィンスキーやドビュッシーでは、DG録音よりもSONY録音の方が素晴らしいですね。ただ、老境になってからのブーレーズ指揮では、マーラーの交響曲全集と、バルトークのピアノ協奏曲全集は凄いと思っています。
投稿: てんしちゃん | 2017年7月 9日 (日) 21時43分
こんばんは。
ブーレーズのSONY盤が一番好きです。
私もドビュッシーの音楽自体に苦手意識がありましたが
ブーレーズの管弦楽曲の2枚組を聴いて一変しました。
とにかく音楽が語り掛けてくるかのようです。
全般的にブーレーズはSONY>>>DGな気がします。
投稿: 影の王子 | 2017年7月 7日 (金) 03時16分