シューマン:交響曲第4番ニ短調op.120聴き比べ(その1)1950〜1960年代まで
シューマンの交響曲は、本当につい最近まで、苦手でした・・・
おそらく、故・宇野センセイが「シューマンの交響曲は暗くて苦手・・・」
といった感じの記事を書いたのが「刷り込み」になり、
どうも敬遠していました。
(たとえば、『改訂新版 宇野功芳のクラシック名曲名盤総集盤』(講談社)には、
シューマンの交響曲第3番のところで、
(引用)
シューマンは四曲のシンフォニーを書いたが、本書では一番、三番のみを扱った。一般には四番の人気が高いが、あのように暗い音楽は僕には耐えられない。レコード雑誌の月評用にまわってくるCDは聴かざるを得ないが、曲目を自由に選べる単行本ではかんべんしていただきたい。四番をとるくらいなら、僕は二番に指を屈する。
(同書P.200から引用終)
とまで書いています。
また、シューマンのオーケストレーションといえば、
かのマーラーが手を加えた「マーラー版」があるほど、
シューマン=オーケストレーションがイマイチ、というイメージがつきまとっていました。
N響のコンサート放送などで視聴したときも、
なんとなくイマイチな感じでした。
シューマンの交響曲の真価に気付かされたのは、
ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏(後述)によってです。
シューマンの交響曲だから、というよりは、
ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団のSACDだからコレクションしてみた、
という感じでした。
最初に買ったのが、交響曲第1番&第3番の方でした。
あまり期待せずに聴いてみると、「結構いい曲なのでは?」と思えるようになりました。
それから次々とSACDを中心に買い集め、
気づけばあっという間に交響曲全集だけで10種類以上(2017年6月上旬現在)・・・
シューマンの交響曲は、
シューベルトとブルックナーの架け橋のような存在なのかな、
などと勝手に思っています。
シューベルトほど旋律の美しさはなく、
ブルックナーほどの壮大さはありませんが、
「クラスで2,3番目にカワイイ女の子」みたいな、独自の魅力があります。
それはさておき、シューマンの交響曲で一番親しみやすいのは、
宇野センセイの意見はさておき、やはり第4番でしょう。
全4楽章で、30分ほどの曲ですが(マーラーならこれだけで1つの楽章!)、
初めて聴くなら、思い切って第3楽章と第4楽章だけを聴いてみるのがいいのかもしれません。
(私は特に第3楽章→第4楽章が好きです。)
鬱屈した第1楽章〜第3楽章を経て、
いきなり陽光が燦燦と輝く第4楽章を聴くと、
一種のカタルシスを感じます。
今回から、聴き比べ記事は、一度に十数盤を取り上げるのではなく、
幾つか(だいたい4〜6盤ずつ)に分割して書くことにしました。
シューマンの交響曲第4番は、年代ごとに、
4つに分割して記事を書くことにします。
今回は第1回目、フルトヴェングラーの名盤(後述、1953年録音)から、
1960年代までの録音4盤を取り上げます。
それでは、聴き比べです。
録音年月順に紹介します。
指揮者・オケ名、レーベル、録音年月、
スペック(通常CD,SACD ハイブリッドorシングルレイヤー)、
(2ch Stereo or Surround etc...) 、
カップリング曲の順です。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
(今回は全てSACDです。)
◯フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(DG)
1953年5月
SACDシングルレイヤー(MONO)
カップリング マンフレッド序曲
☆4.5
第1楽章 11:51
第2楽章 05:20
第3楽章 05:55
第4楽章 07:54
シューマン:交響曲第4番 Limited Edition, SACD
宇野センセイ風に表現するなら、
「切れば血が出るような」というのがピッタリです。
楽器がどうのこうの、というよりは、
音楽そのものが躍動感をもって鳴り響いている・・・
オケが一丸となって燃えているのがよく伝わってきます。
モノラル録音ですが、鑑賞には全然差し支えありません。
往年の巨匠の芸に只々圧倒されるばかりです。
通常CDもロングセラーですが、
これは高くてもSACDで聴くのをオススメします。
◯カラヤン指揮ベルリン・フィル(WARNER)
1957年4月
SACDハイブリッド(MONO)
カップリング ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」第1幕への前奏曲と愛の死、
「タンホイザー序曲」、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
☆3.5
第1楽章 10:33
第2楽章 04:27
第3楽章 05:20
第4楽章 08:18
ワーグナー:管弦楽曲集&シューマン:交響曲第4番 SACD
フルトヴェングラー盤を聴かなければ、それなりの結構立派な演奏ですが、
線の細いモノラル録音を超えてまではみ出てくるものが少ないかな、とも思いました。
カラヤン好きな方ならともかく、カラヤン指揮ので聴きたいなら、
70年代・80年代のDG盤の方をオススメします。
ただし、モノラルながら、聴きやすいですよ。
◯クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団(WARNER)
1960年5月
SACDハイブリッド(2chSTEREO,CD)
カップリング メンデルスゾーン:交響曲第3番、第4番、「フィンガルの洞窟」
☆4.5
第1楽章 11:26
第2楽章 03:54
第3楽章 05:18
第4楽章 07:44
Symphonies No.3 & 4 SACD, Import
エソテリック盤はとんでもない値段・・・
国内盤
メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」、シューマン:交響曲第4番
もっとお得なら・・・輸入盤CDBOXを!
重量級のパンチが冒頭から繰り広げられます。
極めて重厚な演奏で、まるでブラームスのように響いてきます。
クレンペラーのこの演奏は、
シューマンの交響曲第4番の素晴らしさを迫力ある音で引き出しています。
◯ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団(SONY)
1960年3月
SACDシングルレイヤー(2chSTEREO)
カップリング 交響曲第2番、ウェーバー:「オベロン」序曲
☆4.0
第1楽章 08:40
第2楽章 03:51
第3楽章 05:10
第4楽章 07:35
シューマン:交響曲第2番ハ長調&第4番ニ短調ほか Limited Edition, Blu-spec CD
※AmazonではSACDシングルレイヤー盤が売り切れのようです・・・
便宜上、Blu-spec CDを挙げておきます。
シューマン:交響曲全集
クレンペラー盤と比べると、実に軽やかであっさりしています。
それでいて、響きの充実は素晴らしく、聴き疲れしません。
フルトヴェングラーやクレンペラー盤のような重量級はちょっと・・・という方に、
ぜひオススメします。
私も、ジョージ・セルの指揮だからこそ、
すんなりとシューマンの世界に入れたのかもしれません。
何度でも聴いてみたくなる演奏です。
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影の王子様、コメントありがとうございます。
確かにフルトヴェングラー盤はお気楽に聴ける盤ではありませんね・・・
モノラルながら、ここまで燃えた演奏というのにすっかり圧倒されました。
投稿: てんしちゃん | 2017年6月 8日 (木) 23時07分
この中ではフルトヴェングラー盤しか聴いたことがありませんが
これは好きな盤ですね。LPも持っていました。
さすがに「お気軽に」聴ける演奏ではないですが。
フルトヴェングラーはウィーン・フィルよりもベルリン・フィルとの
録音の方が好きですね。
投稿: 影の王子 | 2017年6月 8日 (木) 08時04分