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2017年2月 5日 (日)

J・S・バッハ:チェンバロ(ピアノ)協奏曲第4番BWV1055聴き比べ5盤〜癒し系か、栄養ドリンク系か・・・

2016年の12月末から現在(2017年2月上旬)にかけて、
なぜか聴くのはもっぱらロシア音楽ばかり・・・
プロコフィエフ(ヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲)、
チャイコフスキー(交響曲と「くるみ割り人形」組曲)、
ストラヴィンスキー(火の鳥、春の祭典)、
ショスタコーヴィチ(ピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲)、
おまけでグラズノフ(ヴァイオリン協奏曲だけですが・・・)。
そんな中で、例外的に聴いているのが、
バッハのチェンバロ(ピアノ)協奏曲集と、
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番(特にシャコンヌ)です。

私事ですが・・・
ロシア音楽や、ベートーヴェンやマーラ−などの曲を聴いていると、
結局、聴くだけでほかのことは手が付かずに終わってしまうことが多い・・・
しかし、バッハの曲だけは、聴いていると、
「やる気」が出て来るのです!
まさに神様からのプレゼント!
家庭での日常的な仕事や片付けなど、
停滞している事柄があれば、
バッハの曲を聴きながら、
「よし、やるぞ!」という感じで次々と処理していくことができます。
私にとっては一種のカンフル剤みたいなものです。
バッハの名言として、
音楽は精神の中から、日常の生活の塵埃を除去する。
というのがあるのを、だいぶ昔にどこかで読んだことがあります。
音楽は麻薬のように日常を麻痺させるのではないのだよ・・・(うっ、実に耳が痛い!)
多産なバッハ先生が微笑んでいるようデス・・・

ところで、バッハのチェンバロ協奏曲は、断片(BWV1059)を除けば、
全部で7曲あります。
どれも、ヴァイオリン協奏曲やオーボエ協奏曲などからチェンバロ用に編曲されたもの、
とのことです。
(第6番はブランデンブルク協奏曲第4番の編曲)
その中で、一番取り上げられるのは、第1番BWV1052です。
続いて、第2楽章ラルゴが有名な第5番BWV1056。
この2曲、私ももちろん好きですが、
チェンバロ協奏曲集の中で私が最も好きなのが、
今回紹介する第4番BWV1055です。

以前から、曲自体は知っていたし、何度も聴いたことがありました。
しかし、聴き比べしようとまでは思わなかった存在でした。
ちょうど先月、何か適当にバッハの曲のCDを聴こうと思い
(→やらなければならない家での仕事があったので\(;゚∇゚)/)、
たまたま手にとったのが、昨年9月にタワレコで入手したものの、
ほとんど聴いていなかった、グールド盤(後述)でした。
改めて聴くと、
この短さ(マーラーなどの曲であれば、1つの楽章の演奏時間中に、
バッハの協奏曲1曲分がまるまる入ってしまいますね・・・)で、
この充実感はなんだろう・・・
家にあった、もう1枚の盤、ペライア盤(後述)も改めて聴いてみました。
えっ、こんなにステキな曲だったの・・・・
宝の持ち腐れに気付いてしまったかのような感覚でしょうか?
なんという美しさ・・・
ペライア盤では思わず涙がこぼれました・・・
ここで、聴き比べ熱に火がつきました。
とはいえ、実はグールド盤とペライア盤があればもう十分すぎるほどで、
あとは、参考(というか、ダメ押し的)にもう1盤、ピアノでの演奏と、
チェンバロ盤(リヒターと誰か)があれば、もうそれ以上知る必要もないかな、
と思うぐらい、グールド盤とペライア盤はスバラシイのです。
(これ、フライングですね(*^-^))
ちなみに、リヒター盤はかなり前に買って聴いていましたが、
いつの間にか手放していたので、今回買い直しとなりました。

バッハの時代には、現代のピアノは存在しなかったわけで、
あるのはチェンバロ(ハープシコード)。
だからオリジナル楽器の方が正当性がある・・・
理屈はわかりますが、結局、音楽は愉しい、快ければいいわけで、
私はどちらかというと、この曲はチェンバロよりもピアノの方が心地よく感じます。
それに、バッハの音楽は、楽器を変えても成立する、
不思議な生命力があるのです!

それでは、聴き比べです。
今回は、録音年順に紹介します。
ソリスト名、楽器名、指揮者・オケ名、
レーベル・録音年月・
スペック(今回はすべて通常CDです。) 、
カップリング曲の順です。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
(今回は全部が推薦盤です)

あと、今回に限り、特別な分け方をしました。
すなわち、「癒し系」か「栄養ドリンク系」です。
なんのこっちゃ?
リラックスを味わいたい→癒し系
気分をリフレッシュさせてやる気を出したい→栄養ドリンク系
(かなり強引でスイマセン(*´v゚*)ゞ)

◯グレン・グールド(ピアノ)、
ウラディミール・ゴルシュマン(Vladimir Golschmann)指揮コロンビア交響楽団(SONY)
1969年2月
通常CD
カップリング バッハ:チェンバロ協奏曲第1番〜第7番(第6番を除く)※2枚組
栄養ドリンク系(癒し系)

J.S.バッハ:ピアノ協奏曲第1番~第5番・第7番(期間生産限定盤)

☆4.5
第1楽章 4:09
第2楽章 5:44
第3楽章 4:10

喩えるなら、「爽やかな休日の朝のモーニング珈琲」みたい?
グールドが弾く「ゴルトベルク変奏曲」が「不眠症の子守唄」にならないのと同様に、
(チェンバロで「ゴルトベルク変奏曲」を聴くと確かに退屈シマス・・・)
精神をシャキッとさせる躍動感があります。
第2楽章は静かなので、グールド特有の「声」が少し聴こえてきますが、
これはご愛嬌ということで・・・
第2楽章途中のヴァイオリン・ソロの孤独な叫びのような響きが、
今回紹介する中では最も優れています。


◯カール・リヒター(チェンバロ、指揮)、ミュンヘン・バッハ管弦楽団(ARCHIV)
1971年10月
通常CD
カップリング バッハ:チェンバロ協奏曲第1番、第5番、
2台のチェンバロのための協奏曲第1番、3台のチェンバロのための協奏曲第1番
栄養ドリンク系

バッハ:チェンバロ協奏曲集

☆4.0
第1楽章 4:58
第2楽章 5:08
第3楽章 4:26

聴いていて、身が引き締まるような思いがする演奏です。
リラックスする感じはあまりありませんが、
バッハの凛とした美しさを堪能することができます。
モダン・チェンバロは確かに時代遅れなのかもしれませんが、
リヒターの演奏はそんなのを吹き飛ばす存在感があります。


◯マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)、
ミシェル・コルボ指揮リスボン・グルベンキアン財団室内管弦楽団(ERATO)
1974年6月
通常CD
カップリング バッハ:ピアノ協奏曲第1番、第5番
癒し系

バッハ:ピアノ協奏曲集

☆4.0
第1楽章 4:50
第2楽章 5:08
第3楽章 4:32

参考用にあえて買ったCDです。
全体的に、録音は少しパリッとしない感じがありますが、
演奏はしっとりと聴かせてくれます。
地味ですが、滋味があるというか・・・(シャレ?)
朝、シャキッと目を覚ましたい、というよりは、
もう少し布団でゴロゴロしたい時にいいのかも?(^-^;


◯トレヴァー・ピノック(Trevor Pinnock)(ハープシコード、指揮)、
ザ・イングリッシュ・コンサート(ARCHIV)
1980年2月
通常CD
※ピノックのバッハBOXの1枚
癒し系(栄養ドリンク系)

Brandenburg Concertos/Orchestral Suites/Concertos

☆3.5
第1楽章 4:15
第2楽章 5:42
第3楽章 3:34

☆3.5としましたが、他の盤に劣る、ということではないです。
リヒターのモダン・チェンバロと、「精神性」は重たいし、
バッハならやっぱりピアノではなくてチェンバロでしょう?
という方にオススメが、軽やかなピノック盤です。
ただ、この演奏、爽やかな朝、というよりは、
宮廷での夜のパーティーをなんとなく連想させます。
カツラをかぶった紳士淑女がワイン片手に楽しげに談笑するような光景が、
なんとなく見えてきそうです。
ハープシコード’(チェンバロ)がキラキラしていて愉しげです。


◯マレイ・ペライア(ピアノと指揮)、
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ(SONY)
2000年5月
通常CD
※ペライアのバッハBOXの1枚
癒し系

PLAYS BACH - THE..

☆4.5
第1楽章 4:01
第2楽章 4:52
第3楽章 4:25

バッハの曲なのに、
まるでモーツァルトの曲を聴いているかのような錯覚が起きるほど、
或いは、モーツァルトその人がピアノでバッハの曲を弾いているかのような・・・
モーツァルトのピアノ協奏曲を弾くタッチでバッハを弾いているので、
とても甘美です。
第1楽章から聴いていて、あまりの美しさに、
いつの間にかうっすら目に涙が・・・

欲を言えば、第2楽章中盤の、ヴァイオリン独奏の孤独感を出すところ、
もう少し強くてもよかったのでは、と思うぐらいで、
非の打ち所のない癒し系CDです。

昨年10月にこのCDBOXが発売されたので、
今まで持っていたペライアのバッハの単独CDを手放して、こちらを入手しました。
ペライアが演奏するバッハは、グールドの演奏するのとは違った意味で、
どれも絶品ですよ。

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