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2017年2月の7件の記事

2017年2月24日 (金)

J.S.Bach:小フーガ ト短調(Fugue in G minor)BWV578編曲版3種〜オーケストラ版、チェンバロ版、ピアノ版

先日、BS11で、
「宇宙戦艦ヤマト2202」2.25発進記念!! 愛の特別番組
というのを放映していました(2017年2月21日OA)。
「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」と「宇宙戦艦ヤマト2」のリメイク版、とのこと。
映画の冒頭12分を番組中で公開していました。
「ヤマト2」といえば、あの「白色彗星」のテーマ!
もろもろのアニメのインスト曲の中でも、出色な恐怖感・威圧感ですね。
あのパイプオルガンの音を聴いているうちに、
なんとなく、バッハの「小フーガ」をふと思い出してしまいました・・・
(全然似ていない、と言われればそこまでなのですが・・・(゚ー゚;)

(参考)
さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち [Blu-ray]


宇宙戦艦ヤマト2 DVD MEMORIAL BOX


YAMATO SOUND ALMANAC 1978-II「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 音楽集」 Blu-spec CD

(参考)
アニメ映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」映画館で皆が泣いた感動の名シーンまとめ。

ちょうど先日、ストコフスキーによるバッハの編曲モノのSACDを入手しました。
「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」のオーケストラ編曲版は知っていましたが、
このSACDでは、その曲は入っておらず、
代わりに「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番」BWV1004中の有名な、
「シャコンヌ」の編曲版も入っていました。
今回紹介する、「小フーガ」もオーケストラ版として収録されています。
オルガン原曲のおごそかな世界が、
まるで「スター・ウォーズ」みたいな壮大な音宇宙になっていました!

Stokowski / Wagner (SACD) Import, SACD

◯レオポルド・ストコフスキー指揮ロンドン交響楽団(DUTTON)
1974年4月※原盤はSONY。
SACDハイブリッド(SACD Multi-ch、SACD STEREO、通常CD)
※カップリングは省略します。
3:28

ところで、実は我が家には、オルガン曲(だけ)のCDは数枚しかありません。
オルガン曲といえばバッハ、ついでフランクですが、
バッハのオルガン曲はカール・リヒターの東京公演のSACDが1枚あるばかりです。
他は、セザール・フランクのオルガン曲CD(2枚組)があるだけ・・・

何故かと言うと、オルガンをCDで聴いてもあまり美しく感じないからです。
私が初めてパイプオルガンの生音を聴いたのは高校生のときで、
場所はスイスのルツェルンの教会でした(確かカトリック・・・)。
オルガンの練習中だったようですが、教会全体が楽器として響き渡る体験をしました。
この音に比べると、どれだけ高級なオーディオ裝置をもっていようとも、
CDの音は貧相なものだな、と思いました。
その印象は今でも変わりません。
(教会やコンサートホールで演奏されるなら、聴きたいと思いますが・・・)
というわけで、かつてはバッハのオルガンのCDを何盤も持っていましたが、
手放してしまったワケです。

オルガンによる「小フーガ」は今(2017年2月24日現在)手元にありませんが、
チェンバロ版と、ピアノ版はあります。

チェンバロ版は、曽根麻矢子の演奏です。

シャコンヌ~バッハ・チェンバロ名曲集

上記は通常CDですが、我が家にあるのはSACDハイブリッド盤です。

◯曽根麻矢子(チェンバロ)(avex-classics)
2004年4月
3:45

オルガンとはまた違った、キラキラした響きで、
聴いていて疲れない演奏です。

ピアノ版は、タチアナ・ニコラーエワの演奏です。
残念ながら、廃盤のようですので、
ダウンロード版と少し怪しげな輸入CDを紹介しておきます。

◯タチアナ・ニコラーエワ(原盤:ビクター・エンタテイメント)
髙橋悠治編
5:34


MP3ダウンロード版
Tatiana Nikolayeva plays Bach


Nikolayeva Tatiana: Plays Bach Piano Mu CD, Import

ニコラーエワの演奏はCDが廃盤になったせいか、
すっかり忘れ去られつつあるのが残念です。
精神性を感じさせるバッハの代表盤ではないかと思っています。
オルガンにも負けない、バッハの精神世界に迫る名演奏です。
深い沈滞感が魅力です・・・

2017年2月14日 (火)

NHKBSプレミアム・プレミアムシアター:ドキュメンタリー 「カラヤン ~ザ・セカンド・ライフ~」(2017年2月13日放送)

私がクラシック音楽を本格的に聴くようになったきっかけは、
父親が買ってくれたCDラジカセと、
カラヤン指揮ベルリン・フィルによる、
ベートーヴェンの交響曲第5番・第8番のCDでした。

クラシック音楽好きになったきっかけはカラヤンでも、
カラヤンを正当に評価できるようになるまで、
結構な時間がかかりました。
故宇野先生を代表とする、アンチ・カラヤン(その他、小澤征爾やアバドなど)こそ、
芸術の真の理解者だ、みたいな風潮に、私も長年毒されてきました。
でも数年前ほどから(ちょうど故宇野先生の評論も揺らいできたあたり)、
評論家AやBがどう言おうと、レコ芸でどう評価されていても、
あるいはAmazonやHMVのレビュー、
果てはクラシック音楽の諸々のブロガーがどう言おうとも、
自分なりの基準で、名演かどうか、様々な聴き比べを経て、
ようやく自信をもって言えるようになってきたと思います。

そういう中で、モノラル録音期ならフルトヴェングラー、
ステレオ録音期なら、バーンスタインを代表とする、
極めて主観的な演奏(良く言えば個性的すぎる)への評価が、
私の中では下がり、
反対に、ブーレーズやジョージ・セル、フリッツ・ライナーといった、
スコアを忠実に再現するのを第一とする指揮者が再評価されるようになりました。
そういう一環で、カラヤンやアバド、小澤征爾といった指揮者も、
いいものはいい、と言えるようになってきました。


それはさておき、
2017年2月13日に、NHKBSプレミアムの「プレミアムシアター」で、
「カラヤン ~ザ・セカンド・ライフ~」というドキュメンタリー番組が放映されました。
(2013年頃一度NHKBSプレミアムで放映されたことがあるそうです。)
カラヤンの膨大なレコーディングに関する、
本人へのインタビュー及びリハーサル・録音風景と、
録音技師やベルリン・フィル団員、
ヴァイオリニストのアンネ・ゾフィー・ムターや、
メゾソプラノのブリギッテ・ファスベンダーなどへのインタビューを交えた映像作品です。

NHKのHPによると、
出演者は次のとおりです。


(引用)
ベルリン・フィル:クラウス・シュトール
エーベルハルト・フィンケ
クシシュトフ・ポロネク
音楽評論家:ペーター・ユーリング
バイエルン国立管弦楽団:クラウス・ケーニヒ
独グラモフォン社 元プロデューサー:ハンス・ヒルシュ
バイオリニスト:アンネ・ゾフィー・ムター
独グラモフォン社 元録音プロデューサー:ハンス・ウェーバー
EMI 元プロデューサー:ペーター・アルヴァルト
オルガン奏者/テープ編集者:デーヴィッド・ベル
神経科学者:エルンスト・ペッペル
メゾ・ソプラノ:ブリギッテ・ファスベンダー
元バランス・エンジニア:ウォルフガング・ギューリヒ
アヴァルト社 記録保管係:ゴーデハルト・プルーイン
アヴァルト社 バランス・エンジニア:アンドルー・ウェートマン

(引用終)


カラヤンの演奏又はリハーサル風景としては、
マーラーの交響曲第5番や、ストラヴィンスキーの「春の祭典」などが、
かなり多く取り上げられていました。

カラヤンが録音で何度も取り上げたチャイコフスキーは全然なく、
ベートーヴェンもほんのちょっと。
しかし、カラヤンのレパートリーとしては当時画期的だった、
シェーンベルクやマーラーの録音を取り上げていたのは慧眼だったと思います。
(シェーンベルクらの「新ウィーン楽派作品」の録音は、
カラヤンの膨大な録音の中でも、非常に価値のあるものの一つですね。
とはいえ、私も結局、シェーンベルクの「浄夜」しか価値がわからなかったのですが・・・)

(参考)
シェーンベルク:浄夜/ベルク:叙情組曲

録音の際のエピソードは興味深く見入ってしまいました。
カラヤンの偉大さを改めて認識できた番組でした。
なお、このドキュメンタリーは、DVDでも出ていますし、
ベルリン・フィルの「デジタル・コンサート・ホール」サイトでも視聴可能のようです。

Karajan: The Second Life [DVD] [Import]

ドキュメンタリー『カラヤン~セカンド・ライフ』

(参考)
カラヤンのレコード人生を記録した映像作品(ブログ名:児童文学と音楽の散歩道)

2017年2月12日 (日)

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番聴き比べ補遺

先日、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番Op.19と、
ヴァイオリン協奏曲第2番Op.63の聴き比べ記事を書きました。
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番聴き比べ14盤
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番聴き比べ16盤

今回は、上の2つの記事を書いた後に入手した盤について、
聴き比べ補遺として書きます。

それでは、聴き比べです。
今回は、録音年順に紹介します。
ソリスト名、楽器名、指揮者・オケ名、
レーベル・録音年月・
スペック(今回はすべて通常CDです。) 、
カップリング曲の順です。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
(今回は全部が推薦盤です)
なお、(VC1)=ヴァイオリン協奏曲第1番、(VC2)=同第2番の略記です。


◯(VC1)エリック・フリードマン(Erick Friedman)(Vn)、
エーリッヒ・ラインスドルフ指揮ボストン交響楽団
1964年4月
◯(VC2)イツァーク・パールマン(Vn)、
エーリッヒ・ラインスドルフ指揮ボストン交響楽団
1966年12月
(SONY)
※"Erich Leinsdorf conducts Prokofiev(6CD)"の1枚(CD5)

Erich Leinsdorf Conducts Prokofiev-Son

(VC1)☆4.0
第1楽章 9:29
第2楽章 4:09
第3楽章 8:00

(VC2)☆4.0
第1楽章 10:04
第2楽章 09:16
第3楽章 06:06

元々このCDBOXは、プロコフィエフの交響曲とピアノ協奏曲を聴くために入手したもので、
ヴァイオリン協奏曲2曲はオマケでした。
しかし、期待していなかった割に、2曲ともすばらしい演奏・録音でした!

(VC1)冒頭からしてどストライク!
ヴァイオリンの弱音やオケの細部がはっきりと聴こえます。
第2楽章途中のヴァイオリンソロが、怪鳥の鳴き声のように聴こえるところがユニークです。
(後述のパールマン&ロジェストヴェンスキー盤や庄司紗矢香盤は、
もっとなめらかに聴こえます。)
オケの響きはステロイド増強した筋肉質のアスリートみたいな感じです。
(VC2)
パールマンのヴァイオリンの美音がすごくよく生かされています。
オケも細部までよく聴き取ることができます(通常CDでも!)。
オケの低音の迫力がすごいです。
第3楽章最後のところは、酔っぱらいが倒れるのでもなく、
舞踏家が踊る様子でもなく、
あえて言えば、音のダンスといったところでしょうか。
(具体的なイメージが浮かびませんでした。)


◯(VC1)(VC2)イツァーク・パールマン(Vn)、
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮BBC交響楽団(WARNER)
1980年10月
カップリング なし

プロコフィエフ: ヴァイオリン協奏曲 第1番&第2番≪クラシック・マスターズ≫

(VC1)☆3.0
第1楽章 9:34
第2楽章 3:45
第3楽章 8:31
(VC2)☆3.5
第1楽章 10:46
第2楽章 09:43
第3楽章 06:05

(VC1)
冒頭のオケのさざめきはほぼ聞こえません。
パールマンのヴァイオリンの美音以外は印象に残りませんでした。
(VC2)
全体的にオケが弱くしか聞こえません。
第2楽章の優美なメロディを奏でるヴァイオリンの音色は、
まさに「蕩けるような」という表現がふさわしいです。
第2楽章だけなら☆4.0か、☆4.5をつけられそうです。
ただ、第1楽章、第3楽章は良くも悪くも「標準的」です。

◯(VC2)イツァーク・パールマン(Vn)、
ダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団(WARNER)
1993年5月
※The Erato & Teldec Recordings(2枚組)

The Erato & Teldec Recordings

※AmazonではMP3の扱いしかないようです。
1枚ものCDなら下記で。

Violin Concerto in D Major / Violin Concerto No 2 Import

☆3.5
第1楽章 10:06
第2楽章 09:15
第3楽章 06:13

少し残響が多めです。
パールマンは全体的にロマンティックに歌い上げています。
問題ありとすれば、バレンボイムのテンポのとりかたでしょうか。
「せかせかしているなぁ・・・」と感じるところが何ヶ所かありました。
特に第2楽章途中からの展開は、明らかに少し急ぎ過ぎの感じが・・・
ちなみにこのCDでのカップリングは、ストラヴィンスキーのVn協奏曲です。

◯(VC1)庄司紗矢香(Vn)、
ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団(DG)
2012年9月
カップリング プロコフィエフ(VC2)

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番

☆4.0
第1楽章 9:45
第2楽章 3:54
第3楽章 8:29

このCD、(VC2)の聴き比べ記事では既に取り上げていますが、
(VC1)の記事を書いた後に我が家に到着したので、
今回ここで取り上げます。
冒頭から、オケ、ヴァイオリン独奏ともに、
神秘的(ミステリオーソ)な響きをうまく醸し出しています。
第1楽章終盤の、高音域の弱音で奏でられるヴァイオリン・ソロは、
実にキラキラしていて、雪が降り注いでくるよう・・・
第3楽章ラストは、ソロ、オケともにとても美しく、
見事なまでに幻想的な世界を描きだしています。


(参考)
(VC2)聴き比べ記事での、
庄司紗矢香&テミルカーノフ盤への私の評価

(引用)
☆3.5
第1楽章 11:01
第2楽章 9:51
第3楽章 6:18

庄司紗矢香のソロはそれほど自己主張を感じることなく、
ソロとオケが渾然一体となって美しいハーモニーを響かせようとしている、
という印象でした。
第2楽章後半部のソロの高音部はすごく美しく響いてきました。

(引用終)

2017年2月10日 (金)

ブラームス:交響曲第1番、SACDで聴き比べ6盤

ブラームスの交響曲第1番については、以前聴き比べ記事を書きましたが、
(→ブラームス:交響曲第1番聴き比べ12種〜カラヤン盤5種を中心に・・・
今回は、通常CDではなく、SACD限定で聴き比べをしてみました。

それでは、聴き比べです。
オススメ順に紹介します。
指揮者・オケ名、
レーベル・録音年月・
スペック(SACD ハイブリッドorシングルレイヤー)、
(2ch Stereo or Surround etc...) 、
カップリング曲は今回省略します。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
(今回はどれも推薦盤です。)

◯シモーネ・ヤング(Simone Young)指揮
ハンブルク・フィルハーモニカー(Philharmoniker Hamburg)(OEMES CLASSICS)
2007年5月
SACDハイブリッド(Surround、Stereo、通常CD)

ブラームス:交響曲第1番(ハンブルク・フィル/ヤング)

☆4.5
第1楽章 17:39
第2楽章 9:38
第3楽章 4:59
第4楽章 17:27

今回紹介した中で、唯一のサラウンド盤です。
そのせいか、録音でポイントを稼いで、見事1位です!
(余談ですが、SACDシングルレイヤーはサラウンドが付かず、
SACDハイブリッド盤だとサラウンドが付く事が多い、
というのはどうも納得がいかないと思いませんか?
シングルレイヤー盤はハイブリッド盤の1.5〜2倍ぐらいの値がついているのに・・・)
以前、ブルックナーの交響曲第3番の聴き比べ記事を書いた際、
第1稿の演奏(と録音)がすばらしかったのと、SACDとしては安価だったので、
入手してみました。
第1楽章冒頭から、往年のカラヤン指揮ベルリン・フィルみたいな、
重戦車が通り過ぎて地響きを立てるような、力強い響きに驚かされます。
第4楽章冒頭のティンパニの響きも凄く、床が重低音で振動するほどです。
響きの豊かさ、細部の煌めき、音が原色で聴こえる感じ・・・
まるで往年の巨匠の演奏が、最新の録音で現代に蘇ったかのようです。
第1楽章から第3楽章まで、
「ここはこういう風に響かせてほしい!」という理想的な響きと音楽的展開があります。
欲を言えば、第4楽章のみ少し落ちる感じがします。
ほんのちょっとだけ、さらに高揚感が欲しいところです。
しかし、これだけの演奏を聴かせられる、シモーネ・ヤングはまさに逸材です。
女性指揮者は21世紀になってもまだ珍しい方ですが、
結局のところ、指揮者が男性か女性か、なんてことはどうでもよくて、
いかに素晴らしい演奏を聴かせてくれるかだけが大事なのです。
ちなみに、シモーネ・ヤング指揮ハンブルク・フィルハーモニカーによる、
ブラームスの他の交響曲のSACDも既に入手済みです。
(冷やかし程度かな、と思っていた盤が、意外にも本命になってしまった・・・)


◯クルト・ザンデルリンク指揮ドレスデン・シュターツカペレ(DENON)
1971年3,6,11月
SACDハイブリッド(SACD STEREO、通常CD)
※ブラームス交響曲全集

※タワレコ限定

☆4.0
第1楽章 14:22
第2楽章 9:50
第3楽章 5:05
第4楽章 17:15

これぞブラームス、という、自分にとって基準となる演奏です。
幾分くすんだ音ですが、心持ちCDよりも輝かしく聴こえます。
第4楽章の歓喜の主題は、作為がないのに感動的に歌い上げているところが見事です。
何度でも聴きたくなる演奏です。

◯オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団(WARNER)
1956年10月、1957年3月
SACDハイブリッド(SACD STEREO、通常CD)
※ブラームス交響曲全集

ブラームス:交響曲全集(SACDハイブリッド)

☆4.0
第1楽章 14:06
第2楽章 9:25
第3楽章 4:42
第4楽章 16:00

決して微笑まないし、愛想はよくないけれども、
真実を伝えている、そんな印象の演奏です。
例えて言えば、スクリーン上の高倉健?(^-^;
取り立てて甘美なところはない、むしろ辛口ですが、
また聴きたくなるような不思議さがあります。


◯小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ(DECCA)
2010年12月
SACDシングルレイヤー(SACD STEREO)

奇蹟のニューヨーク・ライヴ ブラームス:交響曲第1番

☆3.5
第1楽章 13:38
第2楽章 9:03
第3楽章 4:53
第4楽章 17:55

病癒えてからの復帰コンサート、といった先入観は抜きで評価します。
録音は少し引き気味。第2楽章のソロ・ヴァイオリンは実に清らかで美しいです。
全体的にスマートな感じの演奏です。
第4楽章の盛り上がりは、「流石!」と思わせるところがあり、
第4楽章だけなら前述のシモーネ・ヤング盤以上かもしれませんが、
その他は良くも悪くも「標準的な」演奏かな・・・


◯ズデニェク・マーツァル指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(EXTON)
2005年10月
SACDハイブリッド(SACD STEREO、通常CD)
※ブラームス交響曲全集


ブラームス:交響曲全集・大学祝典序曲・悲劇的序曲

☆3.5
第1楽章 12:58
第2楽章 8:49
第3楽章 4:42
第4楽章 17:00

まるで大自然そのものがシンフォニーを奏でているかのような、
いい意味でどこにも力みや作為や引っかかるところが見られない、
自然体のブラームスです。
あっさりした中でも、響きは充実しています。
流してなんとなく聴くには最適かも・・・


◯カール・ベーム指揮ベルリン・フィル(DG)
1959年10月
SACDシングルレイヤー(SACD STEREO)

ブラームス:交響曲第1番


☆3.5
第1楽章 12:39
第2楽章 9:31
第3楽章 4:31
第4楽章 16:33

いざ、という時の音の迫力は流石ベルリン・フィル!という感じです。
第2楽章のヴァイオリン・ソロは、今回紹介した中では、
小澤盤に次いで美しいです(コンマス→ミシェル・シュヴァルベ)。
ただ、全体として淡々としたところが多いかも・・・

2017年2月 5日 (日)

J・S・バッハ:チェンバロ(ピアノ)協奏曲第4番BWV1055聴き比べ5盤〜癒し系か、栄養ドリンク系か・・・

2016年の12月末から現在(2017年2月上旬)にかけて、
なぜか聴くのはもっぱらロシア音楽ばかり・・・
プロコフィエフ(ヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲)、
チャイコフスキー(交響曲と「くるみ割り人形」組曲)、
ストラヴィンスキー(火の鳥、春の祭典)、
ショスタコーヴィチ(ピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲)、
おまけでグラズノフ(ヴァイオリン協奏曲だけですが・・・)。
そんな中で、例外的に聴いているのが、
バッハのチェンバロ(ピアノ)協奏曲集と、
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番(特にシャコンヌ)です。

私事ですが・・・
ロシア音楽や、ベートーヴェンやマーラ−などの曲を聴いていると、
結局、聴くだけでほかのことは手が付かずに終わってしまうことが多い・・・
しかし、バッハの曲だけは、聴いていると、
「やる気」が出て来るのです!
まさに神様からのプレゼント!
家庭での日常的な仕事や片付けなど、
停滞している事柄があれば、
バッハの曲を聴きながら、
「よし、やるぞ!」という感じで次々と処理していくことができます。
私にとっては一種のカンフル剤みたいなものです。
バッハの名言として、
音楽は精神の中から、日常の生活の塵埃を除去する。
というのがあるのを、だいぶ昔にどこかで読んだことがあります。
音楽は麻薬のように日常を麻痺させるのではないのだよ・・・(うっ、実に耳が痛い!)
多産なバッハ先生が微笑んでいるようデス・・・

ところで、バッハのチェンバロ協奏曲は、断片(BWV1059)を除けば、
全部で7曲あります。
どれも、ヴァイオリン協奏曲やオーボエ協奏曲などからチェンバロ用に編曲されたもの、
とのことです。
(第6番はブランデンブルク協奏曲第4番の編曲)
その中で、一番取り上げられるのは、第1番BWV1052です。
続いて、第2楽章ラルゴが有名な第5番BWV1056。
この2曲、私ももちろん好きですが、
チェンバロ協奏曲集の中で私が最も好きなのが、
今回紹介する第4番BWV1055です。

以前から、曲自体は知っていたし、何度も聴いたことがありました。
しかし、聴き比べしようとまでは思わなかった存在でした。
ちょうど先月、何か適当にバッハの曲のCDを聴こうと思い
(→やらなければならない家での仕事があったので\(;゚∇゚)/)、
たまたま手にとったのが、昨年9月にタワレコで入手したものの、
ほとんど聴いていなかった、グールド盤(後述)でした。
改めて聴くと、
この短さ(マーラーなどの曲であれば、1つの楽章の演奏時間中に、
バッハの協奏曲1曲分がまるまる入ってしまいますね・・・)で、
この充実感はなんだろう・・・
家にあった、もう1枚の盤、ペライア盤(後述)も改めて聴いてみました。
えっ、こんなにステキな曲だったの・・・・
宝の持ち腐れに気付いてしまったかのような感覚でしょうか?
なんという美しさ・・・
ペライア盤では思わず涙がこぼれました・・・
ここで、聴き比べ熱に火がつきました。
とはいえ、実はグールド盤とペライア盤があればもう十分すぎるほどで、
あとは、参考(というか、ダメ押し的)にもう1盤、ピアノでの演奏と、
チェンバロ盤(リヒターと誰か)があれば、もうそれ以上知る必要もないかな、
と思うぐらい、グールド盤とペライア盤はスバラシイのです。
(これ、フライングですね(*^-^))
ちなみに、リヒター盤はかなり前に買って聴いていましたが、
いつの間にか手放していたので、今回買い直しとなりました。

バッハの時代には、現代のピアノは存在しなかったわけで、
あるのはチェンバロ(ハープシコード)。
だからオリジナル楽器の方が正当性がある・・・
理屈はわかりますが、結局、音楽は愉しい、快ければいいわけで、
私はどちらかというと、この曲はチェンバロよりもピアノの方が心地よく感じます。
それに、バッハの音楽は、楽器を変えても成立する、
不思議な生命力があるのです!

それでは、聴き比べです。
今回は、録音年順に紹介します。
ソリスト名、楽器名、指揮者・オケ名、
レーベル・録音年月・
スペック(今回はすべて通常CDです。) 、
カップリング曲の順です。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
(今回は全部が推薦盤です)

あと、今回に限り、特別な分け方をしました。
すなわち、「癒し系」か「栄養ドリンク系」です。
なんのこっちゃ?
リラックスを味わいたい→癒し系
気分をリフレッシュさせてやる気を出したい→栄養ドリンク系
(かなり強引でスイマセン(*´v゚*)ゞ)

◯グレン・グールド(ピアノ)、
ウラディミール・ゴルシュマン(Vladimir Golschmann)指揮コロンビア交響楽団(SONY)
1969年2月
通常CD
カップリング バッハ:チェンバロ協奏曲第1番〜第7番(第6番を除く)※2枚組
栄養ドリンク系(癒し系)

J.S.バッハ:ピアノ協奏曲第1番~第5番・第7番(期間生産限定盤)

☆4.5
第1楽章 4:09
第2楽章 5:44
第3楽章 4:10

喩えるなら、「爽やかな休日の朝のモーニング珈琲」みたい?
グールドが弾く「ゴルトベルク変奏曲」が「不眠症の子守唄」にならないのと同様に、
(チェンバロで「ゴルトベルク変奏曲」を聴くと確かに退屈シマス・・・)
精神をシャキッとさせる躍動感があります。
第2楽章は静かなので、グールド特有の「声」が少し聴こえてきますが、
これはご愛嬌ということで・・・
第2楽章途中のヴァイオリン・ソロの孤独な叫びのような響きが、
今回紹介する中では最も優れています。


◯カール・リヒター(チェンバロ、指揮)、ミュンヘン・バッハ管弦楽団(ARCHIV)
1971年10月
通常CD
カップリング バッハ:チェンバロ協奏曲第1番、第5番、
2台のチェンバロのための協奏曲第1番、3台のチェンバロのための協奏曲第1番
栄養ドリンク系

バッハ:チェンバロ協奏曲集

☆4.0
第1楽章 4:58
第2楽章 5:08
第3楽章 4:26

聴いていて、身が引き締まるような思いがする演奏です。
リラックスする感じはあまりありませんが、
バッハの凛とした美しさを堪能することができます。
モダン・チェンバロは確かに時代遅れなのかもしれませんが、
リヒターの演奏はそんなのを吹き飛ばす存在感があります。


◯マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)、
ミシェル・コルボ指揮リスボン・グルベンキアン財団室内管弦楽団(ERATO)
1974年6月
通常CD
カップリング バッハ:ピアノ協奏曲第1番、第5番
癒し系

バッハ:ピアノ協奏曲集

☆4.0
第1楽章 4:50
第2楽章 5:08
第3楽章 4:32

参考用にあえて買ったCDです。
全体的に、録音は少しパリッとしない感じがありますが、
演奏はしっとりと聴かせてくれます。
地味ですが、滋味があるというか・・・(シャレ?)
朝、シャキッと目を覚ましたい、というよりは、
もう少し布団でゴロゴロしたい時にいいのかも?(^-^;


◯トレヴァー・ピノック(Trevor Pinnock)(ハープシコード、指揮)、
ザ・イングリッシュ・コンサート(ARCHIV)
1980年2月
通常CD
※ピノックのバッハBOXの1枚
癒し系(栄養ドリンク系)

Brandenburg Concertos/Orchestral Suites/Concertos

☆3.5
第1楽章 4:15
第2楽章 5:42
第3楽章 3:34

☆3.5としましたが、他の盤に劣る、ということではないです。
リヒターのモダン・チェンバロと、「精神性」は重たいし、
バッハならやっぱりピアノではなくてチェンバロでしょう?
という方にオススメが、軽やかなピノック盤です。
ただ、この演奏、爽やかな朝、というよりは、
宮廷での夜のパーティーをなんとなく連想させます。
カツラをかぶった紳士淑女がワイン片手に楽しげに談笑するような光景が、
なんとなく見えてきそうです。
ハープシコード’(チェンバロ)がキラキラしていて愉しげです。


◯マレイ・ペライア(ピアノと指揮)、
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ(SONY)
2000年5月
通常CD
※ペライアのバッハBOXの1枚
癒し系

PLAYS BACH - THE..

☆4.5
第1楽章 4:01
第2楽章 4:52
第3楽章 4:25

バッハの曲なのに、
まるでモーツァルトの曲を聴いているかのような錯覚が起きるほど、
或いは、モーツァルトその人がピアノでバッハの曲を弾いているかのような・・・
モーツァルトのピアノ協奏曲を弾くタッチでバッハを弾いているので、
とても甘美です。
第1楽章から聴いていて、あまりの美しさに、
いつの間にかうっすら目に涙が・・・

欲を言えば、第2楽章中盤の、ヴァイオリン独奏の孤独感を出すところ、
もう少し強くてもよかったのでは、と思うぐらいで、
非の打ち所のない癒し系CDです。

昨年10月にこのCDBOXが発売されたので、
今まで持っていたペライアのバッハの単独CDを手放して、こちらを入手しました。
ペライアが演奏するバッハは、グールドの演奏するのとは違った意味で、
どれも絶品ですよ。

2017年2月 4日 (土)

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番聴き比べ16盤

2017年1月下旬に、
プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番の聴き比べ記事を書きました。
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番聴き比べ14盤
今回は、同じくプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番の聴き比べ記事です。

ところで、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番と第2番、
どちらが好きですか、と問われたら、どう答えますか?
模範解答は、「どちらも好き」か、第1番、第2番どちらかを挙げますよね。

第1番の方は、まさに青春のきらめきのようです。
かなりアバンギャルド、前衛的な感じがします。
よほどの奏者でないと、真価がわからないかもしれません。
(私の聴き比べ基準で言えば、☆4.0以上?
第1楽章、第3楽章の各終盤で、天上的な響きを出せたら合格点です。)
対して第2番の方は、より古典的です。
少なくとも第3楽章の前半までは、
それなりの腕前のヴァイオリニストと指揮者・オケなら
十分素晴らしさを引き出せると思います。
だから、親しみやすいのは、第2番の方かな、と私は思っています。
この記事を書いている時点では、私は第2番の方が好きです。
(ころころ変わりますけど・・・(^-^;)

第2番の第1楽章のイメージは、長い冬の夜のロシアです。
第2楽章は、美しい白銀の雪景色。
第3楽章は、ロシアを飛び出してスペインへ!
スカートをひらひらさせて踊るスペイン舞踏、という感じです。
第3楽章の後半は、演奏によってイメージが違ってきます。
ともすると、踊りながら酔っ払って最後は倒れ込む・・・
みたいな感じに聴こえるのが多いです。
一方では、ソロの踊り手と、手拍子の掛け合いが見えてきます。
ちょうど往年のアメリカのミュージカル映画の、
タップダンスのシーンみたいな感じか、
あるいは、ジャズのセッションみたいな感じでしょうか・・・

聴きどころは、第2楽章の甘美な抒情性と、
第3楽章後半をどう展開するか、だと思っています。
第2楽章では、中間部からの甘いカンタービレで、
雪景色が広がるような感じなら合格点。
第3楽章は、酔っ払って倒れるのでも、
ダンサーがセッションしているのでも、
とにかく何らかのイメージが出てくればOKだと思います。
(第3楽章後半でよくないのは、音の迷路になってしまうこと・・・)

第2番は、第1番のカップリングとして収録されている場合が多いですが、
ヤッシャ・ハイフェッツを代表として、第2番しか録音しない場合もあります。
少し残念・・・

それでは、聴き比べです。
オススメ順に紹介します。
ソリスト名、指揮者・オケ名、
レーベル・録音年月・
スペック(通常CD,SACD ハイブリッドorシングルレイヤー)、
(2ch Stereo or Surround etc...) 、
カップリング曲の順です。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
(今回は盤数が多いので、「とりあえず1枚」なら、
☆4.0以上の盤をオススメします。)


◯ダヴィッド・オイストラフ(Vn)、
アルチェオ・ガリエラ指揮フィルハーモニア管弦楽団(WARNER)
1958年5月
SACDハイブリッド(2chSTEREO、CD)
カップリング プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、ヴァイオリン・ソナタ第2番

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番他(SACDハイブリッド)

☆4.5
第1楽章 11:00
第2楽章 10:25
第3楽章 6:26

自然に「歌」が溢れ出てくる演奏です。
後述のコパチンスカヤ盤のような、手練手管の限りを尽くさずとも、
この曲はこのような自然体で(もちろん深い技巧に裏打ちされて、ですが・・・)演奏した方が、
豊かにのびのびと響くのだよ・・・
と言っているような感じですね。
演奏者を忘れて、曲そのものの美しさが語りかけてくる、
あるいは、作曲者プロコフィエフその人が、
親しく語りかけてくるかのような・・・・
第2楽章後半は涙が出てくるほどの美しさがあります。
第3楽章後半〜最後のみ、曲の方向性を見いだせない感じがしますが、
(そういう意味で合格は、後述のシャハム盤とシュタインバッハー盤)
それ以外は、実に完璧な演奏だといえます。
文句なく、この曲の代表盤に選びます。


◯ギル・シャハム(Vn)、アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団(DG)
1995年6月
通常CD
カップリング プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ

Violin Concertos / Solo Sonata Op 115 CD, Import

☆4.5
第1楽章 10:26
第2楽章 9:43
第3楽章 6:19

プレヴィンによるオケのサポートが充実しており、
豊麗な響きがずっと続きます。
ギル・シャハムのヴァイオリンも甘美でロマンティックです。
この演奏で特にすばらしいと思ったのは、第3楽章です。
途中でのヴァイオリンとオケの掛け合いが実に見事です。
ジャズのセッション演奏みたいな熱気があります。


◯リディア・モルドコヴィッチ(Lydia Mordkovitch)(Vn)、
ネーメ・ヤルヴィ指揮スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
(現:ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団)(CHANDOS)
1988年9月
通常CD
カップリング プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、ヴァイオリン・ソナタ第1番

Violin Concertos Nos 1 & 2 / Violin Sonata No 1

☆4.0
第1楽章 10:23
第2楽章 9:23
第3楽章 5:50

残響が多めなのが、幻想的な響きを醸しだしてプラスに働いています。
特にすばらしいのは第1楽章と第2楽章。
第2楽章前半の、ヴァイオリン・ソロの線の細さも好印象につながっています。
第2楽章後半部は、オケがソロに寄り添い、夢想的な世界を作り上げていきます。
第3楽章は標準的、かな・・・
後述のグルズマン盤と同じく、指揮者N・ヤルヴィの名サポートを聴く盤です。


◯ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)、
シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団(RCA→SONY)
1959年2月
SACDハイブリッド(SACD Multi-ch、SACD Stereo、CD)
カップリング シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲

Violin Concertos (Hybr)

☆4.0
第1楽章 9:02
第2楽章 7:59
第3楽章 6:11

第1楽章は今回紹介した中で最速で、
ストレートに曲に切り込んでいきます。
それでいて、素っ気ないとか、機械的、というところは皆無で、
余計な解釈をしなくても素材そのものの味が素晴らしいのだよ、
と言わんばかりの演奏です(北海道料理?(*^-^))。
プロコフィエフを聴く、というよりは、
ハイフェッツを聴く盤、と割り切った方が楽しめると思います。
オケも、聴きどころが明快です。
私にとっては、この曲の魅力に気付かされた演奏です。


◯パトリシア・コパチンスカヤ(Patricia Kopatchinskaja)(Vn)、
ウラディミール・ユロフスキ(Vladimir Jurowski)指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(AVEX)
2013年5月
通常CD
カップリング ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲

プロコフィエフ&ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲集

☆4.0
第1楽章 11:03
第2楽章 10:06
第3楽章 6:15

ヴァイオリン・ソロの孤独な響きで始まる第1楽章から、
他の盤と異なった、思い入れたっぷりな響きが聴こえてきます。
今回紹介する中で、最も個性的なソロといえます。
やり過ぎとみるか、「もっとやれ!」と快哉を叫ぶか、
あとは好みの問題でしょうね。
(私は中間ぐらい・・・)


◯アラベラ・シュタインバッハー(Arabella Steinbacher)(Vn)、
ヴァシリー・ペトレンコ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団(PentaTone)
2012年1月
SACDハイブリッド(SACD Multi-ch、SACD Stereo、CD)
カップリング プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ

2 Violin Concertos Hybrid SACD, SACD, Import

☆4.0
第1楽章 11:20
第2楽章 10:06
第3楽章 6:12

第3楽章が特にすばらしいです。
特に後半のところは、なんだかフォルムがよくわからなくなる演奏が多い中、
聴きながら、フラメンコのステップを踊るようなイメージが見えてきそうです。
録音が優秀です。


◯ヴィクトリア・ムローヴァ(Vn)、
アンドレ・プレヴィン指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(DECCA)
1988年6月
通常CD
カップリング ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番

☆4.0
第1楽章 10:39
第2楽章 9:43
第3楽章 6:18

当時のムローヴァの硬質な響きが、曲にピッタリとしており、
それでいて、第2楽章のカンタービレが実に美しいです。
プレヴィンのサポートも充実しています。
(よくよく考えると、プレヴィンの名は、
ギル・シャハム盤、チョン・キョンファ盤にも出てきますね。)


◯チョン・キョンファ(Vn)、アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団(DECCA)
1975年10月
通常CD
カップリング プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、
ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲集

☆3.5
第1楽章 10:52
第2楽章 9:54
第3楽章 6:15

プレヴィンのオケのサポートが充実しているし、さすがはチョン・キョンファ!
と思わせるところも随所にありますが、
全体としては、曲の美しさ、優美さを引き出すところまでは至っていないのかも?


◯神尾真由子(Vn)、
トーマス・ザンデルリンク指揮ハレ管弦楽団(RCA→SONY)
2010年6月〜7月
通常CD
カップリング チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲

☆3.5
第1楽章 11:06
第2楽章 9:08
第3楽章 6:29

全体的にすっきりとした演奏です。
ソロの骨太さが印象的でした。
録音も優秀で、万人向きかも・・・
第3楽章のオケの鮮明さが印象に残りました。


◯庄司紗矢香(Vn)、
ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団(DG)
2012年9月
通常CD(SHM-CD)
カップリング プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番

☆3.5
第1楽章 11:01
第2楽章 9:51
第3楽章 6:18

庄司紗矢香のソロはそれほど自己主張を感じることなく、
ソロとオケが渾然一体となって美しいハーモニーを響かせようとしている、
という印象でした。
第2楽章後半部のソロの高音部はすごく美しく響いてきました。


◯ヴァディム・グルズマン(Vadim Gluzman)(Vn)、
ネーメ・ヤルヴィ指揮エストニア国立交響楽団(BIS)
2015年7月
SACDハイブリッド(SACD Multi-ch、CD)
カップリング プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ

Prokofiev: Violin Concertos Hybrid SACD, SACD, Import

☆3.5
第1楽章 10:25
第2楽章 10:02
第3楽章 5:59

N・ヤルヴィの名サポートが光りました。
第2楽章後半は、少し早めのテンポで、
春を迎えた喜びを表しているかのようでした。
グルズマンのソロは若干線が細く、
控えめな感じでした。
これはソロよりもオケを聴くべき盤かもしれませんね。


◯ジェイムズ・エーネス(James Ehnes)(Vn)、
ジャナンドレア・ノセダ指揮BBCフィルハーモニック(Chandos)
2012年6月、2013年2月
通常CD
※プロコフィエフ:ヴァイオリン作品全集(2枚組)

Complete Works for Violin CD, Import

☆3.5
第1楽章 10:35
第2楽章 9:37
第3楽章 6:10

ヴァイオリンの高貴な響きがすばらしく、惚れ惚れするほどですが、
オケは伴奏の域を出ていない感じでした。
エーネスのソロで、巨匠級の指揮者+メジャーオケで聴いてみたいです。


◯テディ・パパヴラミ(Tedi Papavrami)(Vn)、
アントニ・ヴィト指揮ポーランド国立放送交響楽団(Naxos)
1996年1月
通常CD
カップリング:プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ

Violin Concertos 1 & 2 CD, Import

☆3.5
第1楽章 10:32
第2楽章 10:05
第3楽章 6:27

第1楽章のみ、なぜか気乗りしていない感じがしますが、
第2楽章、第3楽章と進むにつれて徐々に高揚感がでてきます。
ただ、完成度は第1番ほどではないと思います。

なお、昨年(2016年)に、ソリストのパパヴラミの自叙伝が日本でも出版されました。
興味のある方はどうぞ・・・

テディ・パパヴラミ『ひとりヴァイオリンをめぐるフーガ』(藤原書店)

※私は未読です。かなり値が高いのが難点・・・

◯ダヴィッド・オイストラフ(Vn)、
クルト・ザンデルリンンク指揮ベルリン交響楽団(現:ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団)
(harmonia mundi)
1965年3月
通常CD
※5枚組CD”Berliner Sinfonie-Orchester KURT SANDERLING"のうちの1枚。

Various Symphonies/Concertos Box set, Import

☆3.0
第1楽章 10:28
第2楽章 9:55
第3楽章 6:06

録音でかなり損しているように思われます。
もう少しハリのある録音であれば、☆4.0はつけられるのかも?
収録の際の雑音もマイナスです。
さすがはザンデルリンク、というところもいくつかあるのですが・・・


◯フランク・ペーター・ツィンマーマン(Vn)、
マリス・ヤンソンス指揮フィルハーモニア管弦楽団(WARNER)
1991年8月
通常CD
カップリング シベリウス:ヴァイオリン協奏曲

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番

☆3.0
第1楽章 10:33
第2楽章 9:53
第3楽章 6:09

当時のEMI特有の録音がマイナスになっているようで、
音がせり出してくる感じがしません。
ただし、第1楽章と第3楽章の終盤では、
我が家の壁を揺るがすような重低音が響いてきました。
全体的に、標準的な演奏、という以上の感想はないかも・・・
ヤンソンスの指揮も特に印象に残りませんでした。


◯マキシム・ヴェンゲーロフ(Vn)、ロストロポーヴィチ指揮ロンドン交響楽団(TELDEC)
1994年7月
通常CD
カップリング ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番

プロコフィエフ&ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番

☆3.0
第1楽章 11:35
第2楽章 10:44
第3楽章 6:14

標準的な演奏。オケも存在感に乏しいかも・・・


ここで、第1番と第2番、私の点数比較です。
オイストラフ新盤、チョン・キョンファ盤、ヴェンゲーロフ盤、
シュタインバッハー盤、パパヴラミ盤、モルドコヴィチ盤、
ギル・シャハム盤、グルズマン盤、エーネス盤の以上9盤は、
同じ指揮者・オケで録音しています。

オイストラフ新盤 第1番☆4.5 第2番☆3.0
チョン・キョンファ番 第1番☆4.0 第2番☆3.5
ヴェンゲーロフ盤 第1番☆4.0 第2番☆3.0
シュタインバッハー盤 第1番☆4.0 第2番☆4.0
パパヴラミ盤 第1番☆4.0 第2番☆3.5
モルドコヴィチ盤 第1番☆4.0 第2番☆4.0
ギル・シャハム盤 第1番☆3.5 第2番☆4.5
グルズマン盤 第1番☆3.0 第2番☆3.5
エーネス盤 第1番☆3.0 第2番☆3.5

こう並べてみると、☆評価が変わらないのは、
モルドコヴィチ盤と、シュタインバッハー盤の2盤です。
あとは、どちらかが向き不向きがあるのかもしれないですね・・・

2017年2月 1日 (水)

2017年1月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧

2017年1月のページビュー(PV)数ベスト10記事は以下のとおりです:
(※トップページ及びカテゴリを除く)
ベスト3までは記事リンクをつけています。

一位.インクルーシブ(インクルージョン)教育は子どもにとって本当に幸福なのか?~
おすすめブログ記事「脱インクルージョン教育」(ブログ名:斜に構えてみる)

二位.ブラームス:交響曲第1番聴き比べ12種〜カラヤン盤5種を中心に・・・
三位.「学び合い学習」は日本の義務教育崩壊を招く!
~おすすめ記事『【解答乱麻】 TOSS代表・向山洋一 亡国の教育「学び合い学習」』
(MSN産経ニュース2012年11月24日掲載)

四位.どの聖書が一番いいか?(新約聖書編)
五位.オキナワ旅行記リターンズ2015夏(その1)〜旅行の経緯と1日目〜
六位.マーラー:交響曲第7番聴き比べ14種類
七位.ピアノ五重奏曲の甘口辛口〜ドヴォルザーク、シューマン、フォーレ、
ショスタコーヴィチ、ブラームス、フランク・・・

八位.2016-2017 年末年始のクラシック音楽番組あれこれ
九位.希望の讃美歌~「一羽の雀(心くじけて)」(新聖歌285)※midi付
十位.ホルスト「惑星」(The Planets)聴き比べ
〜メータ、ショルティ、カラヤン、ボールト、レヴァイン

先月はクラシック音楽関係の記事が6本ランクインでした。
インクルーシブ教育についての記事も根強く読まれています。

先日、こんな話を聞きました。
小学校に入学する前に、「就学時健診」や、「新1年生1日入学」が行われますが、
明らかに発達に問題があると思われるお子さんに対して、
「就学時健診や新1年生1日入学を、理由をつけて休んで、
普通学級に入らせてしまいなさいよ」などとアドバイス(入れ知恵?)する、
何がなんでも「インクルーシブ教育」推進の団体があるとか・・・

せっかく、「特別支援教育」というすばらしい教育があるのに、
親が子の現実をごまかしてしまおうとすることや、
世間体から普通学級に入れてしまって、
無関心か、頑なにその子どもにあった教育を拒絶するか、
あるいは「ダメなら特別支援学級(学校)に入れればいい」みたいな安易な考えは、
子どもに深い傷を残すことになるかもしれませんね・・・
ましてや、「普通学級に入れさえすれば、あとは時が解決」
なんていうのもありえません。

特別支援教育と、通常学級を服でたとえたら、
通常学級は、せいぜいL、M、Sの3つのサイズしかない既製服で、
特別支援教育は、その子の能力・発達に応じたオーダーメイドの、
世界に1着しかない服のようです。
どちらが優れているか、よりも、どちらがお子さんの能力をより伸ばし、
社会化できるか、というのを考えた方がいいと思います。

(参考記事)
我が子が“発達障害”…「就学時健康診断」で親に突きつけられる現実

暦の上では「立春」ですが、
北海道はまだまだ深い雪の中です・・・
今月もご愛読よろしくお願いします。

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