NHKEテレ・クラシック音楽館 「N響コンサート 第1847回定期公演」(2017年1月8日放送)〜グレツキ:交響曲 第3番 作品36“悲歌のシンフォニー”と、アニメ「フランダースの犬」のラストシーン・・・
NHKEテレの「クラシック音楽館」。
2017年は深い悲しみの曲から幕を開けました・・・
2016年11月9日、サントリーホールでのN響第1847回定期公演の放映です。
曲目は、
モーツァルトの「クラリネット協奏曲」と、
20世紀後半に活躍したポーランドの作曲家、
ヘンリク・ミコワイ・グレツキ(1933−2010)の代表曲、
「交響曲 第3番 作品36“悲歌のシンフォニー”」でした。
我が家では録画して視聴しました(裏番組のドラマを観ていたため。)。
モーツァルトの「クラリネット協奏曲」へのコメントはパスします。
グレツキの作品「交響曲 第3番 作品36“悲歌のシンフォニー”」は、
思い入れのある曲です。
グレツキの名を、
普段「ゲンダイオンガク」や、クラシック音楽をあまり聴かない人にまで知らしめたのが、
上の盤です。
今回N響を指揮した、デーヴィッド・ジンマン指揮ロンドン・シンフォニエッタ、
ドーン・アップショウ(S)の独唱です。
英国では、1993年に発売されてミリオンセラーになったとのこと。
日本でも、結構売れたはずです。
(私も持っていました・・・)
そのジンマンが、N響を指揮してこの曲を演奏するのだから、
期待度大でした。
第1楽章は、中世のラメント(哀歌)をテキストにした、
聖母マリアが息子イエスの受難を嘆く内容。
最も有名な第2楽章は、
ゲシュタポ収容所の壁に書かれた言葉をテキストにしています。
第3楽章は、息子を失った母親の嘆きをうたった民謡がテキストです。
第1楽章は25分ほどで、
とても低くて小さい音がゆっくりと、だんだん結集して、
まるで音のカーテンを作るようです。
音の頂点で、声楽が入ります。
そして嘆きのクライマックスの後、
音は今度は逆に、
だんだん遠ざかるように小さくなっていきます。
初めてこの曲を聴いた時は、まるで山登りのように思えたのですが、
今回N響の演奏で聴くと、
聖母マリアが定点に立って、
イエス様の十字架の道行きを見届けるかのような印象を受けました。
つまり、十字架の道行がだんだん近づいてきて、
歌のところで目の前を通り、
また遠ざかっていく・・・・
そういう意味では、
バッハの「マタイ受難曲」の冒頭のような構造なのかもしれませんね。
第2楽章、冒頭の和音を聴いただけで、
条件反射的に泣きそうになってしまいました・・・
冒頭の響きは、「あの世」からの響きなのでしょう。
すぐさま苦しみの響きに戻り、
実に苦しげな声が聴こえてきます。
うめきの中から、かろうじて書かれた、
おそらく母への遺言なのでしょう・・・
同じテキストが、曲の後半から、
冒頭の天上的な響きと共に清らかに歌われます。
おそらく、「あの世」から自分の母に呼びかけているかのように・・・
ふと連想したのが、
アニメ「フランダースの犬」のラストシーンです。
よく、アニメで最も泣けるシーンとして選ばれることが多いですね。
救いようのない悲劇の中にも、天上的な視点からの救済が描かれています。
(私はテレビ版よりも、劇場版の方が好きです・・・)
劇場版フランダースの犬(DVD)
もう第2楽章だけでも涙腺崩壊?
第3楽章は、オマケかダメ押しのようなものです。
演奏自体は、独唱のヨアンナ・コショウスカが
(失礼ですが)それなりの年齢ですので、
第1楽章、第3楽章にはぴったりでしたが、
第2楽章は、やはりドーン・アップショウの凛とした歌唱の方が優れていると思いました。
(テキストを書いたのが、若い女性だったようです・・・)
なお、この曲の録音はそれほど多くないですが、
上記ジンマン盤の他にいくつかあります。
今回独唱したヨアンナ・コショウスカが1983年に録音した盤です。
指揮:カジミェシュ・コルト
管弦楽:ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団
ソプラノ:ヨアンナ・コズウォフスカ(コショウスカ)
クラシック音楽ファンの間では、ジンマン盤より評判がいい(らしい)盤。
ジンマン盤のヒットを受けて、1994年に録音。
ゾフィア・キラノヴィチ(ソプラノ)
ポーランド国立放送交響楽団
アントニ・ヴィト(指揮)
Antoni Wit Conducts Henryk Gorecki CD, Import
※3枚組の1枚目に収録されています。
1枚ものならコチラ
グレツキ:交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」/3つの古代風小品
なお、グレツキの交響曲第3番については、既に記事を書いていますので、
よろしければお読みください。
(ジンマン盤のCDジャケットの写真を探してみて、
見つけて読んでみたら自分の記事でした(*^-^))
→悲しみが結晶した音楽~グレツキ・交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」
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