ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番聴き比べ3盤〜圧倒的なGiltburg盤!
ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲は2曲ありますが、
有名なのは第1番の方ですね。
録音もたくさんあります。
では、第2番の方はというと・・・
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番のような日陰者扱いかもしれません。
私もつい最近まで全然聴いたことがありませんでしたし、
聴く気もなかったです。
昨年(2016年)の12月に、
アレクサンダー・メルニコフ(Alexander Melnikov)のピアノ独奏、
テオドール・クルレンティス(Teodor Currentzis)指揮
マーラー・チェンバー・オーケストラによる、
ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番、同第2番、
ヴァイオリン・ソナタのCDを購入しました(後述)。
実はこのCD、ピアノ協奏曲第2番は私としてはオマケと考えていたのですが、
「結構愉しい曲だな・・・」と、曲の魅力に気づきました。
それと、これもある意味たまたまだったのですが、
ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番の聴き比べ用に買ったSACDの中に、
バーンスタインによる指揮とピアノによる、
ピアノ協奏曲第2番が入っていました(こちらも後述)。
これも私としてはオマケだったのですが、
意外に愉しい曲だと思いました。
そこで、もう1盤買ってみることにしました。
ボリス・ギルトブルク(Boris Giltburg)のピアノ、
ヴァシリー・ペトレンコ(Vasily Petrenko)指揮
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団によるNAXOS盤です。
(2017年1月25日に発売されたばかり!)
個々のCDの評はあとにして、
この曲の聴きどころは・・・
第1楽章は、実に愉しい感じで始まります。
私のイメージとしては、なんだか「トムとジェリー」のようです。
調べてみると、この第1楽章は、
ディズニー映画「ファンタジア2000」で、
アンデルセン童話「すずの兵隊」のアニメーションに使われた、とのことです。
(参考)
→ショスタコーヴィチ 「ピアノ協奏曲第2番」とディズニーの「ファンタジア2000」 ~ クラシック音楽と美しいアニメーションの合わせ技にうっとり。
(ブログ名:Mum's the word ! 新米ママの独り言。)
確かに言われてみれば、「キューピー3分クッキング」的な雰囲気もありますね(*^-^)
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第2楽章がこの曲の白眉です。
そのロマンティックさは、なんとなくベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番と、
第5番「皇帝」のアダージョ楽章(第2楽章)を連想するほどです。
第1楽章のおどけた楽想とは対象的に、シリアスさを感じさせます。
第3楽章は、第1楽章と同様に再び楽しげな世界に戻ります。
全体で20分程の可愛らしい曲です。
第1番と同等ぐらいの扱いになってほしい、隠れた名曲といえましょう。
なお、曲については、以下のサイトを特に参考にしました。
→ショスタコーヴィチ ピアノ協奏曲第2番---ショスタ家の休日2 ---
(DAINASHI MUSIC)
それでは、聴き比べです。
オススメ順に紹介します。
ソリスト名、指揮者・オケ名、
レーベル・録音年月・
スペック(通常CD,SACD ハイブリッドorシングルレイヤー)、
(2ch Stereo or Surround etc...) 、
カップリング曲の順です。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
(今回は盤数が少ないですが・・・)
◯ボリス・ギルトブルク(P)、
ヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団(NAXOS)
2016年1月
通常CD
カップリング ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番、
弦楽四重奏曲第2番第3楽章(ギルトブルクによるピアノ編曲版)、
弦楽四重奏曲第8番(ギルトブルクによるピアノ編曲版)
☆4.5
第1楽章 7:30
第2楽章 6:59
第3楽章 5:30
本日(2017年1月29日)届いたばかりです。
Amazonではジャケット写真がありませんが(2017年1月29日現在)、
ジャケット写真がなかなかイケメンですよ(o^-^o)
Amazonの商品紹介サイトから、曲の説明について引用します。
(引用)
およそ30年のブランクを経て書かれたショスタコーヴィチの2つのピアノ協奏曲。1933年に作曲された第1番はトランペットがピアノと同等に活躍する「二重協奏曲」であり、もともとトランペット協奏曲としてかかれた後、ピアノ・パートを書き加え、全体のバランスを取ったという成立経緯があります。また自作や他人の作品からの引用も多く、全体的には同時期に書かれた「ムツェンスク郡のマクベス夫人」と雰囲気が似ています。ピアノとトランペットは時に対立しながらも、第2楽章では美しく陰鬱なワルツを歌い上げます。第2番は1957年の作曲で、彼の息子マクシムのピアノ練習用として書かれました。
第3楽章の「ハノン(代表的なピアノの練習曲)」の引用が有名ですが、この曲も第2楽章に美しいワルツが置かれており、ギルトブルグはこれを意識し、“ワルツの作曲家"としてのショスタコーヴィチに焦点を当てることを目論みました。そして彼自身が「弦楽四重奏曲」第8番の第4楽章と、第2番の第3楽章をピアノ独奏に編曲し、そのの繊細なリズムの揺れを表現しています。協奏曲での華麗なタッチとともに、こちらの編曲の妙もお楽しみください。
なお、このアルバムのブックレットの詳細な楽曲解説はギルトブルグ自身が執筆しています(英語のみ)
(引用終)下線部は筆者による。
録音が非常に鮮明です。
第1楽章が始まってすぐに、部屋がコンサートホールになったかのように、
芳醇で豊麗な音響に包まれます。
この演奏で聴きどころは、第2楽章です。
ショスタコーヴィチの曲で「泣ける・・・」と初めて思いました。
なんという甘美さ!
いつもの皮肉屋のショスタコーヴィチが、ロマンティックに夢想している・・・
そんな感じでしょうか?
たくさんの盤を聴き比べての感想ではないですが、
おそらく、このギルトブルク盤があれば、他はいらないかもしれませんね・・・
カップリングの第1番も名演ですが、こちらはまだ比較の余地があると思います。
◯レナード・バーンスタイン(Pと指揮)、ニューヨーク・フィルハーモニック(PRAGA)
1961年11月
SACDハイブリッド(Bi-channel、CD)
カップリング ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番、ヴァイオリン協奏曲第1番
ショスタコーヴィチ: チェロ協奏曲第1番、ピアノ協奏曲第2番、ヴァイオリン協奏曲第1番 (Dmitri Shostakovich : Three Concertos - No.1 for Violin / No.1 for Cello / No.2 for Piano) [SACD Hybrid] [輸入盤]
☆4.0
第1楽章 7:02
第2楽章 6:09
第3楽章 5:21
第2楽章はやはりギルトブルク盤には及びませんが、
第1楽章、第3楽章の愉しさは魅力的です。
◯アレクサンダー・メルニコフ(P)、
テオドール・クルレンティス指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ(harmonia mundi)
2010年11月〜12月
通常CD
カップリング ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番、ヴァイオリン・ソナタ
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲、ヴァイオリン・ソナタ (Shostakovich : Piano Concertos, Sonata for Violin & Piano Op.134 / Alexander Melnikov, Isabelle Faust)
☆3.5
第1楽章 7:10
第2楽章 7:42
第3楽章 5:36
ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番の愉しさを教えてくれた盤です。
でもさすがに聴き比べてみると、少し印象が薄くなりました・・・
通常ならピアノ協奏曲第1番→第2番の順に収録されると思いますが、
この盤では、第2番→ヴァイオリン・ソナタ→第1番の順で収録されています。
よほど、第2番の方に自信があったのでしょうね。
なお、この盤の日本語解説付きが、
Amazonでなんと9万円の値がついていた(2017年1月29日現在)のにはビックリ!
何故に?
(参考)
なお、映画「ファンタジア2000」で使われている、
ブロンフマン盤は、現在廃盤のようです。
(中古でも高値・・・\(;゚∇゚)/)
(参考)
ショスタコーヴィチ : ピアノ協奏曲 第1番、第2番(ブロンフマン盤)
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「題なし」の及川様、コメントありがとうございます。
ブロンフマン盤は興味ありますが、中古でしか手に入らない(らしい)というのが残念です・・・
タワレコあたりで再販してくれるのを期待したいところです。
(中古CDには手を出さない主義?なので・・・)
「題名のない音楽館」サイト、マーラーとショスタコーヴィチの記事を書く際には重宝しています。
投稿: てんしちゃん | 2017年2月23日 (木) 23時28分
てんしな?日々さん
「題なし」の及川です。ご無沙汰しています。
拙稿を参照いただきありがとうございました。
単にお礼の書き込みという気にはならなかったので、お薦めに従ってギルトブルク盤を聴いてみました。
中々活気に溢れた演奏で好感は持てましたが、少し力みすぎの感もあり、バーンスタイン盤やブロンフマン盤と比べてどうかと言うと微妙・・・ですかね。もう少し聴き続けてもます。
ともあれ、なぜか録音が余り出回っていない曲ですので、貴重なご紹介、ありがとうございました。
投稿: 「題なし」の及川 | 2017年2月22日 (水) 18時06分
影の王子様、再コメントありがとうございます。
早速ギルトブルク盤をお聴きになったのですね!
「クラシック音楽館」情報もありがとうございます。
投稿: てんしちゃん | 2017年2月 1日 (水) 23時41分
ギルトブルグ盤を聴きました。
録音の良さ、恰幅の大きさは素晴らしいですが
情感の豊かさはバーンスタイン盤に軍配を挙げたいです。
「刷り込み」盤であるから、公平に聴けてないかもしれません。
個人的には第1がより優れています。
が競合盤多いので1番ではなさそう。
第1は今週のクラシック音楽館で放送されますね。
プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番も3/12に放送。
http://www4.nhk.or.jp/ongakukan/
なお、その第1852回定期公演を
3回のバラバラで放送するのはセンスなさすぎ・・・
投稿: 影の王子 | 2017年2月 1日 (水) 21時12分
影の王子様、コメントありがとうございます。
バーンスタイン盤の録音年はSACDのブックレットに書かれていたものをそのまま転記しただけですが、実際はどうなのでしょうね(既存の録音をSACD化しただけのように思われますが・・・)
ご指摘、感謝します。
投稿: てんしちゃん | 2017年1月31日 (火) 00時28分
この曲大好きです。
両端楽章の優越感はもちろん、第2楽章の感傷、最高ですね。
なにかこう昔を懐かしむというか、過ぎ去った青春の後悔
を連想させます。
当然ですが、ギルトブルク盤は未聴です。
カップリング曲にも惹かれます。
バーンスタイン盤でこの曲の魅力を知りました。
なお、所有のソニー盤では1958年1月6日録音となっています。
メルニコフ盤は第1の方が名演だと思います。
切れ味の良さはこちらが映えてます。
投稿: 影の王子 | 2017年1月30日 (月) 04時56分