シューベルト:交響曲第7(8)番ロ短調D759「未完成」(Unvollendete)聴き比べ14盤〜トップは意外にもクレンペラー盤!
2016年12月19日に、NHKBSプレミアムで、
2016年のウィーン・フィル来日演奏会が放映されました。
2016年10月1日・2日 サントリーホールでの収録です。
指揮者はズービン・メータと小澤征爾。
(2016年10月下旬に1度放送されたものですが・・・)
このコンサートの中で、
小澤征爾がシューベルトの未完成を指揮していました。
印象としては・・・
「立派な」演奏なのかもしれませんが、
老いぼれてしまったシューベルト、という感じでした。
疾風怒濤の暗い情熱が渦巻くようなのが、
この曲の第1楽章なのかな、と思っています。
シューベルトの「未完成」は、
よくベートーヴェンの交響曲第5番とカップリングされてCD販売されることがあります。
(最近ではシューベルトの「ザ・グレート」とカップリングされる方が多いと思いますが。)
いわゆる、クラシック入門曲、という位置づけだと思います。
しかし、果たして「クラシック入門曲」としてふさわしいのか、
私にとっては甚だ疑問です。
というのも、私の経験で言えば、
第1楽章はなんとか退屈しないで聴けるものの、
第2楽章は退屈な印象が否めません。
たとえば、ベートーヴェンの交響曲第5番と、
シューベルトの「未完成」の第1楽章を比較するならば・・・
ベートーヴェンの方は、わずかなテーマを壮大に変奏することができていますが、
シューベルトは旋律そのものこそ美しいものの、
ベートーヴェンで見られる「展開・発展・変奏」という要素がほぼなく、
あるのは冗長な反復だけです。
この「反復」の魅力は、私にとっては、ブルックナーの曲を理解してから、
ようやくわかるようになりました。
クラシック音楽を聴き始めた頃に「退屈」と思った第2楽章も、
だんだんわかるようになってきました。
今ではステキな曲だと心から思えます。
それでは、聴き比べです。
オススメ順に紹介します。
指揮者・オケ名・レーベル・録音年月・
スペック(通常CD,SACD ハイブリッドorシングルレイヤー)、
(2ch Stereo or Surround etc...) 、
カップリング曲の順です。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
◯オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団(WARNER)
1963年2月
ハイブリッドSACD(2ch Stereo)
カップリング:交響曲第8(9)番「ザ・グレイト」D944
なお、通常CDでOKというなら、下記10枚組CDBOXがお得です。
☆4.5
第1楽章 13:35
第2楽章 11:38
クレンペラー盤は、あまり期待していなかったのですが、
第1楽章の立派さに脱帽でした・・・
ある意味、シューベルトと言うよりは、
ブルックナーかブラームスのような感じです。
豪華な古い城のような構築性があります。
第2楽章は少し落ちる気もしますが、
第1楽章のあまりの素晴らしさで☆4.5をつけました。
◯ヨス・ファン・インマゼール(Jos van Immerseel)指揮
アニマ・エテルナ(Anima Eterna Brugge)(Zig-Zag Territoires)
1996年9月
通常CD
※シューベルト交響曲全集
1枚ものならコチラ(カップリング 交響曲第5番)
☆4.5
第1楽章 13:46
第2楽章 9:49
実にフレッシュな「未完成」です!
ローソクの灯火で煤けていた、
ミケランジェロの「最後の審判」を修復したら、鮮やかな色が現れたような、
細部が光る盤です。
◯デーヴィド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団(RCA→SONY)
2011年5月
通常CD
カップリング ロンドD438、ポロネーズD580、
ヴァイオリンと管弦楽のための小協奏曲D345
※私が所有しているのは、50枚組CDです。
Great Symphonies.The Zurich Years 1995-2014
1枚ものならコチラ(カップリングは上記と同じ)
☆4.0
第1楽章 11:42
第2楽章 9:23
ジンマンの指揮した盤は、たいてい期待できないのですが、
時々すごくいい演奏が出てきます。
何か特別なことをしているわけでないのに、
ヘタな指揮者の解釈以上に、
音楽そのものが美しく語りかけてきます。
こちらも構築性というよりは、細部の美しさが光っていました。
なお、カップリングの曲も実に魅力的です。
◯ブルーノ・ワルター指揮ニューヨーク・フィルハーモニック(SONY)
1958年3月
通常CD
カップリング 交響曲第5番D485
カップリングにこだわらないなら、こちらの方が入手しやすいです。
(カップリング ベートーヴェン:交響曲第5番)
☆4.0
第1楽章 11:01
第2楽章 13:58
古くからの名盤として知られていますね。
古きよきウィーンの(実際はニューヨーク・フィルですが・・・)響きがします。
万人にオススメできる演奏といえましょう。
◯エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
(Altus)
1978年6月
SACDシングルレイヤー(2ch Stereo)
カップリング ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
☆4.0
第1楽章 14:45
第2楽章 11:32
先日、タワレコの「訳ありセール」でSACDシングルレイヤーを入手しました。
SACDらしい鮮明な録音か、といえば???ですが、
ムラヴィンスキーの至芸を堪能できます。
ワルターの指揮の対極にあるような、
極北のシューベルト、という感じです。
◯カール・ベーム指揮ベルリン・フィル(DG)
1966年2月
通常CD
カップリング 交響曲第8(9)番「ザ・グレイト」D944
☆4.0
第1楽章 11:31
第2楽章 11:29
重厚なドイツ的演奏の典型といえるような演奏です。
何度も聴くのは少し重たいかも・・・
◯カルロ・マリア・ジュリーニ指揮バイエルン放送交響楽団(SONY)
1995年4月
通常CD
カップリング 交響曲第4番「悲劇的」D417
☆4.0
第1楽章 16:29
第2楽章 13:05
全体的にゆったりとしたテンポで、
じっくりと慈しむような響きで聴かせてくれます。
カップリング曲も見事です。
◯レナード・バーンスタイン指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(DG)
1987年10月
通常CD
カップリング 交響曲第9番「ザ・グレイト」D944
☆4.0
第1楽章 13:45
第2楽章 12:51
バーンスタイン晩年の演奏というと、脂ぎった感じを連想しますが、
このシューベルトは、意外にもあっさりとしています。
◯ギュンター・ヴァント指揮ベルリン・フィル(RCA→SONY)
1995年3月
通常CD
カップリング 交響曲第9番「ザ・グレイト」D944(2枚組)
☆3.5
第1楽章 15:33
第2楽章 12:45
ベームのドイツ的演奏の延長にあると思いますが、
硬すぎて愉しむには向かないかも・・・
◯オットー・クレンペラー指揮ウィーン・フィル(TESTAMENT)
1968年6月
通常CD
※クレンペラー&ウィーン・フィルBOX(8CD)
クレンペラー&ウィーン・フィルBOX(8CD)
☆3.5
第1楽章 15:27
第2楽章 12:30
フィルハーモニア管の方が曲の威容を伝えています。
◯ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン(BERLIN Classics)
1978年2月
通常CD
※シューベルト交響曲全集
シューベルト交響曲全集(私がもっているのは輸入盤ですが・・・)
1枚ものならコチラ(カップリング 交響曲第9番「ザ・グレート」D944)
☆3.5
第1楽章 11:27
第2楽章 12:39
素朴な演奏です。
和食あっさりテイスト(でも、噛みしめればきっと味わい深いのでしょう・・・)。
◯カラヤン指揮ベルリン・フィル(WARNER)
1975年1月
通常CD
※Monumental Karajan!というアルバム。
Monumental Karajan!(3枚組)
1枚ものならコチラ
☆3.5
第1楽章 12:22
第2楽章 13:39
第2楽章の美しさは特筆に値します。
もしかすると、今回紹介した中で最美かもしれません。
第1楽章はムード音楽で終わっているようにも思えます。
◯カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィル(DG)
1978年9月
Blu-ray Audio (Surround)
※
☆3.5
第1楽章 14:06
第2楽章 10:42
通常CD
SACDシングルレイヤー(私はもっていませんが・・・)
流麗ですが、所詮はスポーツ感覚という感じですね。
スポーツカーに乗ったイケメンシューベルト?
◯カルロ・マリア・ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団(DG※タワレコ限定)
1978年3月
ハイブリッドSACD(2ch Stereo)
カップリング マーラー:交響曲第9番(2枚組)
以下は通常CD輸入盤です。
☆3.0
第1楽章 15:24
第2楽章 12:20
カップリングのマーラー:交響曲第9番は名盤ですが、
「未完成」はオマケと考えていいかもしれませんね・・・
標準的な演奏・・・
それ以上でもそれ以下でもありません。
« NHKEテレ・クラシック音楽館 「ティルソン・トマス指揮 サンフランシスコ交響楽団」(2016年12月11日放送)〜ユジャ・ワン(Yuja Wang)のショパン ピアノ協奏曲第2番〜 | トップページ | クリスマスの風景・札幌2016〜イルミネーションを中心に »
「おすすめサイト」カテゴリの記事
- noteに投稿しました~「Serenity Prayer(平安の祈り)」(自作曲)のX投稿と楽譜(2024.06.10)
- noteに投稿しました~「あしあと」(自作曲)のX投稿と楽譜(2024.05.13)
- noteに投稿しました~「詩篇100(自作曲)」のX投稿と楽譜(2024.05.11)
- 2022年12月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧(2023.01.12)
- 2022年11月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧~附:2022年11月19日~20日の小樽・ニセコ旅行の写真ベスト(2022.12.05)
「音楽」カテゴリの記事
- noteに投稿しました~「Serenity Prayer(平安の祈り)」(自作曲)のX投稿と楽譜(2024.06.10)
- noteに投稿しました~「詩篇100(自作曲)」のX投稿と楽譜(2024.05.11)
- 2022年12月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧(2023.01.12)
- 2022年11月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧~附:2022年11月19日~20日の小樽・ニセコ旅行の写真ベスト(2022.12.05)
- 2022年10月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧(2022.11.03)
「NHK」カテゴリの記事
- 2022年2月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧(2022.03.01)
- 映画「イーグル・ジャンプ」(原題:”Eddie the Eagle”)※2022年2月13日NHK総合で放送(2022.02.13)
- 道東旅行記2021年12月30日~2022年1月3日(帯広市、釧路市、鶴居村)(2022.01.05)
- 2021年12月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧 ※謹賀新年2022(2022.01.04)
- 大雪や 宴の後の 美しさ(2021年12月18日)(2021.12.18)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
« NHKEテレ・クラシック音楽館 「ティルソン・トマス指揮 サンフランシスコ交響楽団」(2016年12月11日放送)〜ユジャ・ワン(Yuja Wang)のショパン ピアノ協奏曲第2番〜 | トップページ | クリスマスの風景・札幌2016〜イルミネーションを中心に »
影の王子様、コメントありがとうございます。
ウィーン・フィルの日本公演2016、
ご老体2人を担ぎ出すより、
もう少し若い世代の指揮者を使った方がよかったのでは、
という内容でしたね。
ベーム/ウィーン・フィルの名盤情報、
機会があったら聴いてみたいと思います。
投稿: てんしちゃん | 2016年12月22日 (木) 17時09分
こんばんは。
ウィーン・フィルのガラ・コンサート
10月に地上波で第1・2部を観ました。
メータも小澤も80歳越え、もはや昔の冴えは微塵もなく
観ていて辛いものがありました。
「未完成」のご感想、同意です。
CDではインマゼール、バーンスタイン、ヴァントがお気に入りです。
ここにないのではベーム&ウィーン・フィルのライブが良いです。
ただし、客席ノイズがあります。
演奏はとても儚さを感じさせる名演です。
投稿: 影の王子 | 2016年12月22日 (木) 00時03分