ショスタコーヴィチ:交響曲第10番聴き比べ(ただし第2楽章のみ)9盤
ショスタコーヴィチの交響曲第10番。
私にとってはまだまだ謎が多い曲です。
以前、ムラヴィンスキーやカラヤン指揮の演奏で聴いたことはありますが、
第2楽章を除いて、特に心に残るものがない、というのが、
正直な感想で、実は今もそれほど情況は変わっていません。
最近、アンドリス・ネルソンス (Andris Nelsons)指揮、
ボストン交響楽団(後述)のCDで、ようやく全曲聴き通せた程度です。
もしかすると、そのうち第2楽章以外の価値が私にもわかるのかもしれませんが、
今のところ、音楽的に魅力的な第2楽章だけについて、
聴き比べをしてみました。
第2楽章は、音楽的に描かれた独裁者スターリンの肖像、などと言われていますが、
そういった先入観抜きに聴いてみると、スリリングな魅力があります。
オルフの「カルミナ・ブラーナ」の冒頭や、
ヴェルディの「レクイエム」の「怒りの日(ディエス・イレ)」冒頭部のような、
「怖いけど愉しい」みたいなイメージではないでしょうか。
ショスタコーヴィチの作品、政治情況がどうだったとかよりも、
純音楽的に聴かれていいものだと思っています。
はじめにお断りしておきますが、
今回は交響曲第10番の第2楽章のみについての評価です。
(もしかすると、他の楽章も合わせてトータルでは評価が変わるのかもしれませんが・・・)
なお、この曲の演奏の本命である、
ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルの演奏のCDは、
現在新品が入手困難なようです。
(私は古本と中古CDには手を出さない主義なので・・・)
※Youtubeでおそらく違法アップロードした演奏を聴くことはできますが、
さすがにそれを当ブログで紹介するつもりはありません。
それでは聴き比べです。
オススメ順に紹介します。
指揮者・オケ名・レーベル・録音年月・
スペック(通常CD,SACD ハイブリッドorシングルレイヤー、Blu-ray Audio)、
2ch Stereo or Surround etc...) 、
カップリング曲の順です。
☆5.0は満点、0.5点刻みで、☆3.0以上なら推薦盤です。
※第2楽章の演奏時間にのみ下線を弾いています。
◯アンドリス・ネルソンス指揮ボストン交響楽団(DG)
2015年4月
通常CD
カップリング曲 「パッサカリア」(「ムツェンスク郡のマクベス夫人」より)
☆4.5
第1楽章 25:39
第2楽章 4:22
第3楽章 12:44
第4楽章 13:54
通常CDなのに、すごく録音がよく、これならSACDなんて必要ないのでは、
と思ってしまうほどです。
細部までよく聴こえ、なおかつ迫力もある、第1にオススメしたい演奏です。
◯カラヤン指揮ベルリン・フィル(DG)
1966年11月
通常CD
カップリング ストラヴィンスキー:交響曲 ハ調
☆4.0
第1楽章 21:47
第2楽章 4:05
第3楽章 11:16
第4楽章 11:39
あのカラヤンが、ショスタコーヴィチ作品の中でも、
この交響曲第10番だけしかレコーディングしていないのは、
実に興味深いですね。
しかもカラヤンはデジタル録音の時代にも録音しています(後述)。
一般にはデジタル録音の方が名盤とされていますが、
少なくとも第2楽章についてだけ言えば、
この1966年録音の方が暴力的で迫力満点です。
◯フランク・シップウェイ(Frank Shipway)指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
1995年5月
SACDハイブリッド(SACD Stereo/SACD サラウンド/CD)
カップリング 「馬あぶ」組曲OP.97
☆4.0
第1楽章 23:23
第2楽章 4:02
第3楽章 11:31
第4楽章 13:43
フランク・シップウェイという指揮者、今回初めて知りました。
Amazonでは高いですが、タワレコとHMVでは2016年11月23日現在、
SACDなのに590円!という爆安価格で販売されています。
値段あたりのコストパフォーマンスは最高です。
音の明晰さでは前述のカラヤン盤以上かもしれません。
力強さではカラヤン盤に迫るほどです。
なお、カップリングの「馬あぶ(GADFLY)」組曲の第2曲、
「ロマンス」はとても美しい曲です。
あのショスタコがこんなロマンティックな曲を書いたの?と驚くほどですよ。
「ロマンス」だけなら、ニコラ・ベネデッティ(Nicola Benedeti)のアルバム
「シルヴァー・ヴァイオリン(The Silver Violin)」での演奏がとても甘美です。
(参考)
◯ダヴィッド・オイストラフ指揮ベルリン交響楽団(現:ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団)
harmonia mundi
1972年
通常CD
※5枚組CDの中の1枚。メインはクルト・ザンデルリンクの引退公演のCD。
☆3.5
第1楽章 25:14
第2楽章 4:01
第3楽章 13:10
第4楽章 11:59
クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン交響楽団のCDの中に、
なぜかダヴィッド・オイストラフ指揮のが紛れ込んでいる、という感じでしたが、
なかなかの演奏だと思います。
ただ、何盤もの演奏と聴き比べると、少し色褪せて聴こえてしまったかも・・・
◯インバル指揮東京都交響楽団(EXTON)
2012年4月
SACDハイブリッド(SACD Stereo/CD)
カップリング なし
☆3.5
第1楽章 22:27
第2楽章 4:35
第3楽章 11:39
第4楽章 13:25
SACDの割には音の迫力がイマイチかも?
◯カラヤン指揮ベルリン・フィル(DG)
1981年2月
通常CD
カップリング なし
☆3.0
第1楽章 22:30
第2楽章 4:09
第3楽章 11:38
第4楽章 13:03
交響曲第10番の名盤として挙げられる盤の一つですね。
ジャケットのデザインセンスは抜群です。
しかし、1966年の演奏と比べてみると、少しおとなしくなった感があります。
◯ルドルフ・バルシャイ指揮ケルンWDR交響楽団(ブリリアント・クラシックス)
1996年10月
通常CD
※ショスタコーヴィチ交響曲全集
☆3.0
第1楽章 23:14
第2楽章 4:31
第3楽章 12:08
第4楽章 12:17
バルシャイ指揮のショスタコーヴィチ交響曲全集を持っていますが、
未だに「これはスゴイ!」と思えた瞬間がない・・・
各方面で絶賛されていますが・・・
◯クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン交響楽団(現:ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団)
(BERLIN Classics→日本ではキングレコード)
1977年2月
通常CD
カップリング なし
※私が所有しているのは輸入盤ですが、2016年11月2日に、
国内盤のUHQCDが出ました。
☆3.0
第1楽章 24:20
第2楽章 4:37
第3楽章 12:39
第4楽章 13:41
ロシア音楽というよりは、まるでブラームスの延長のような、
どっしりとした演奏となっています。
それがショスタコーヴィチに適しているかどうかはまた別問題かもしれませんが・・・
◯ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団(MARIINSKY)
2009年2月、2010年6月
SACDハイブリッド(SACD Stereo/SACD サラウンド/CD)
カップリング 交響曲第3番
☆2.5
第1楽章 22:52
第2楽章 4:26
第3楽章 11:32
第4楽章 12:57
SACDの割には音の迫力がありません。
MARIINSKYレーベルのゲルギエフ指揮によるショスタコは、
今のところ、ハズレ続きかな・・・
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