ベルリオーズ:幻想交響曲”Symphonie Fantastique”聴き比べ6盤(※第3楽章を除く)〜クレンペラー(63)、カラヤン(74)、ショルティ(72)、アバド(83)、ムーティ(84)、C・デイヴィス(74)・・・
ベルリオーズの代表作「幻想交響曲」。
1855年版の作曲家自身のプログラムによると、
「病的な感受性と激しい想像力に富んだ若い音楽家が、恋の悩みによる絶望の発作からアヘンによる服毒自殺を図る。麻酔薬の量は、死に至らしめるには足りず、彼は重苦しい眠りの中で一連の奇怪な幻想を見、その中で感覚、感情、記憶が、彼の病んだ脳の中に観念となって、そして音楽的な映像となって現われる。愛する人その人が、一つの旋律となって、そしてあたかも固定観念のように現われ、そこかしこに見出され、聞えてくる。」
クラシックの曲の中でも、最もアブナイ経歴のある曲ですね。
第1楽章から、ワーグナーのライトモティーフと同じ発想の、
イデー・フィクス(固定楽想)が現れ、全曲を貫きます。
この曲の中で、最も好きなのは、第2楽章です。
続いて第4・第5楽章。次に第1楽章。
あまり好きではないのが、長たらしい第3楽章です。
今回の聴き比べでは、第3楽章を省いて聴きました。
(第1楽章→第2楽章⇒第4楽章→第5楽章・・・と聴いても、
違和感はありません。)
クラシックの曲だからといって、まじめに全楽章通して聴く必要はないわけです。
(コンサートならともかく・・・)
聴きどころは、第2楽章のロマンティックさと、
第4・第5楽章の迫力です。
第5楽章の不気味さも毒々しい魅力があります。
第5楽章で特に好きなのが、
鐘の音と、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」(Dies irae)が出てくるあたりです。
第5楽章の金管群の音の迫力、不気味さは、
なぜかスター・ウォーズの世界(いろんな宇宙人が出てくるところ)を想起します。
今回取り上げるのは6盤です。
オススメ順に紹介します。
指揮者・オケ名・録音年・レーベル・特記事項・カップリングの順です。
盤によって多少曲名が違いますが、中身は同じです。
アバド盤まではオススメです。
◎クレンペラー指揮フィルハーモニア管(1963)旧EMI HQCD
第1楽章16:11
第2楽章6:36
第3楽章18:04
第4楽章5:00
第5楽章10:41
流麗さでいえば、カラヤン盤がベスト1ですが、
クレンペラー盤は別格な存在です。
例えて言えば、カラヤン盤以下の各盤が、
BMWとかアウディなどのスポーティーな車だとしたら、
クレンペラー盤は、ロールスロイスかベンツといったところでしょう。
クレンペラーの指揮は、「幻想」とはほど遠い、
醒めた目で曲の細部の美しさを魅せてくれます。
第5楽章の鐘の音は、フツーかな・・・
◎カラヤン指揮ベルリン・フィル(1974)DG
第1楽章14:21
第2楽章6:13
第3楽章16:40
第4楽章4:32
第5楽章10:46
流麗さ(特に第2楽章)と、第5楽章の鐘の音がベストです。
初めてこの曲を聴くなら、この盤をオススメします。
第5楽章の鐘の音は、真夜中の時計塔から不気味に響いてくるようで、
夜のロンドン(行ったことはありませんが・・・)の光景がなぜか目に浮かんできます。
カラヤンは他に2回この曲を録音していますが、未聴です・・・
◯ショルティ指揮シカゴ響(1972)DECCA
カップリング ベルリオーズ:序曲「宗教裁判官」
第1楽章15:19
第2楽章6:10
第3楽章16:30
第4楽章4:51
第5楽章10:04
とにかく豪快な演奏を聴きたいならオススメです。
CDジャケットからしてマッチョでパワフル・・・
音の原色がスピーカーから溢れでてきます!
車で言えば、ランドローバーやJEEPとかハマーとか・・・
鐘の音は、この盤もフツーかな・・・
ショルティは90年代に再録音していますが、未聴です・・・
◯アバド指揮シカゴ響(1983)DG
第1楽章15:18
第2楽章5:57
第3楽章16:33
第4楽章6:22
第5楽章3:10+1:56+2:47+1:46(9:33)
とても若々しい、フレッシュな演奏です。
第5楽章の鐘の音は、広島の平和の鐘を使っています。
鐘の音自体は、この盤のが最も美しいです。
アバドはベルリン・フィルへの最後の客演でも、
幻想交響曲を演奏しています。
最近ベルリン・フィルの自主制作盤が発売されました。
(参考)クラウディオ・アバド ~ ザ・ラスト・コンサート
◯ムーティ指揮フィラデルフィア管弦楽団(1984)WARNER
第1楽章15:35
第2楽章6:10
第3楽章16:03
第4楽章6:45
第5楽章9:43
第5楽章の鐘の音が、???です。実に惜しい・・・
幻覚の中で聞こえる歪んだ鐘の音?
鐘の音以外では標準的な演奏といえます。
第5楽章の最後は何か音でボコボコにされるような大迫力!
ムーティ指揮ではシカゴ響を振った盤もありますが、未入手です。
(たぶん手に入れることはないでしょうが・・・)
◯コリン・デイヴィス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管(1974)Pentatone SACD
※原盤はPhilips
Philips原盤
第1楽章15:15
第2楽章6:11
第3楽章17:08
第4楽章6:48
第5楽章9:51
評判が高いので、思いきって、Philips原盤の通常CDではなく、
ハイブリッドSACDを買ってみたのですが・・・
少しおとなしい演奏です。
(歪みやクセのない、ニュートラルな演奏というか・・・)
SACDならではの音の迫力も期待していたのですが、
迫力なら通常CDであるショルティ盤の方がずっと上です。
コリン・デイヴィス指揮では他にウィーン・フィルを振った盤、
ロンドン交響楽団を振った盤もありますが、未入手です。
(たぶん手に入れることはないでしょうが・・・)
この曲の名盤は、ミュンシュ指揮パリ管弦楽団の演奏とされていますが、
以前持っていて手放したので、今回は改めて再購入はしませんでした。
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