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2016年3月の15件の記事

2016年3月31日 (木)

シベリウス:交響曲第4番聴き比べ〜ベルグルンド(Berglund)盤3盤を中心に

シベリウスの交響曲の中で、最も難解と言われる、交響曲第4番。
私もつい最近まで、よくわからないので敬遠していました。
しかし・・・
今月初めに記事を書いた通り、
(→レイフ・セーゲルスタム(Leif Segerstam)指揮ヘルシンキ・フィルによるシベリウスの交響曲第4番〜聴く「視点」がようやく見えた!
レイフ・セーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィルの演奏で、
ようやくこの曲の美しさや「愉しさ」さえ、ひしひしとわかるようになりました。
私にとっての「シベリウス・ルネサンス」となりました。
(ただし交響曲に限りますが・・・)
今年の2月末から現在に至るまでに、
あっという間に所有盤が増えました。
現在(2016年3月下旬)、交響曲全集だけで10種類あります。
録音の古い順に名前だけ挙げておきましょう。
(いくつかは今後処分するかもしれませんが・・・)
・バルビローリ指揮ハレ管弦楽団(WARNER)1966〜70
・ザンデルリンク指揮ベルリン放送交響楽団(BERLIN Classics→edel)1971〜79
・ベルグルンド指揮ボーンマス交響楽団(WARNER)1972〜78
・ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィル(WARNER)1984〜87
・ブロムシュテット指揮サンフランシスコ交響楽団(DECCA)1989〜95
・コリン・ディヴィス指揮ロンドン交響楽団(SONY)1992〜94
・オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団(BIS)1995〜97
・ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団(FINLANDIA→タワレコ)1995〜97
・セーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィル(ONDINE)2002〜04
・オッコ・カム指揮ラハティ交響楽団(BIS)2012〜14※SACD

今回取り上げる、交響曲第4番は、上記の全集に含まれる他に3枚あります。
・カラヤン指揮ベルリン・フィル(DG)1965
・ザンデルリンク指揮ベルリン放送交響楽団(avex)1977※SACD
※上記全集盤と同じ録音ですが、SACD化されたものです。
・オスモ・ヴァンスカ指揮ミネソタ管弦楽団(BIS)2012※SACD

それでは、1枚ずつ取り上げていきましょう。
録音年代順ではなく、上からオススメの順です。
セーゲルスタム盤からコリン・ディヴィス盤まではオススメ盤です。
(1枚ものなら、ヴァンスカ/ミネソタ管盤か、
ベルグルンド/ヘルシンキ・フィル盤がオススメです。
全集のファーストチョイスとしては、
ベルグルンド/ボーンマス響盤及びブロムシュテット盤がコストパフォーマンス高です。)

①・セーゲルスタム盤(交響曲全集&ヴァイオリン協奏曲、フィンランディア)ONDINE 2003

第1楽章11:13
第2楽章04:54  
第3楽章11:25
第4楽章10:17
37:50

既にこの盤については記事を書いていますので今回はコメントを割愛します。

②・ブロムシュテット盤(交響曲全集)DECCA 1989

第1楽章10:31
第2楽章4:41  
第3楽章10:59
第4楽章10:09

特筆すべきは、第4楽章に、
作曲者が意図した通りの「鐘(チューブラー・ベル)」を使っていることです。
ただし、どうしてもNHKの「のど自慢」を連想してしまいます・・・
アメリカのオケながら、凍てついた響きを北欧のオケと見紛うほどに醸しだしています。
それでいて、第1楽章の雄弁さも見事です。

③・ヴァンスカ・ミネソタ管盤(交響曲第1番&第4番)※SACD BIS 2012

第1楽章11:59
第2楽章04:17  
第3楽章13:10
第4楽章08:48
38:28

SACDで聴くならこれがオススメです。
過不足ない、模範的な演奏といえます。
ラハティ響のものよりも一層北欧らしさを感じます。

④・ベルグルンド/ヘルシンキ・フィル盤(交響曲第4番&第7番) WARNER 1984

第1楽章09:38
第2楽章04:41  
第3楽章09:55
第4楽章09:47

シベリウスの交響曲第4番の名盤として挙げられることの多い盤ですが、
セーゲルスタム盤などで一度「わかった!」体験をしてから聴くと、
価値がわかると思います。
入門盤としてはオススメできませんが、
極北のシベリウス演奏としての価値はゆるぎません。

⑤・オッコ・カム/ラハティ響盤(交響曲全集)※SACD BIS 2014

第1楽章11:16
第2楽章04:50  
第3楽章11:46
第4楽章09:51
38:07

今回聴き比べた中で、第3楽章が最も秀逸でした。
録音も優秀です。
少し温かなシベリウス?

⑥・ベルグルンド/ボーンマス響盤(交響曲全集)WARNER 1975

第1楽章10:52
第2楽章04:47  
第3楽章11:17
第4楽章10:26

ベルグルンド盤では、
ヘルシンキ・フィルとヨーロッパ室内管の演奏の中間ぐらいにあたります。
この曲の入門編としては、案外最適なのかも・・・

⑦・ザンデルリンク盤(交響曲全集) BERLIN Classics→edel 1977

同一録音のSACDもあります。
ザンデルリンク盤(交響曲第4番他※SACDハイブリッド)avex

通常CDの時間で書きます。
第1楽章10:48
第2楽章04:47  
第3楽章10:05
第4楽章10:23
36:14

北欧というよりは、ドイツ音楽のがっしりとした感じがします。
(ザンデルリンクが指揮すると、ショスタコーヴィチもドイツ音楽風に聴こえます・・・)
SACDハイブリッド盤は既に入手が難しいかも・・・

⑧・コリン・ディヴィス/ロンドン響盤(交響曲全集) SONY 1994

第1楽章10:55
第2楽章04:53  
第3楽章12:17
第4楽章09:13

第4楽章に、鉄琴と鐘(チューブラー・ベル)を併用しています。
カラヤン盤よりも雄弁ですが、シベリウスの本質を踏み外していません。
なお、コリン・ディヴィスの指揮では、他にボストン響や、
ロンドン響との再録音(SACD)がありますが、
私はまだ聴いていません。

・カラヤン/BPO盤(交響曲第4番〜第7番他)DG 1965

第1楽章10:01
第2楽章04:46 
第3楽章12:00
第4楽章09:21

金管の強奏はチャイコフスキーの曲並になっているので、
部分的にはシベリウスらしさが吹っ飛んでいますが、
ベルリン・フィルのうまさには脱帽です。
北欧よりもロシア音楽と割りきって聴いてみたらいいのかも?

・ベルグルンド/ヨーロッパ室内管弦楽団(交響曲全集)FINLANDIA 1995

第1楽章09:18
第2楽章05:02  
第3楽章09:11
第4楽章09:29

ベルグルンド盤ではこの演奏をイチオシにする方も多いようですが・・・
フィンランドらしさや、北欧風情を期待するには向いていません。
純粋音楽としてのシベリウスを堪能するにはオススメかも。

・バルビローリ盤(交響曲全集)WARNER 1969

第1楽章09:56
第2楽章04:46 
第3楽章11:08
第4楽章10:27

温かいシベリウスです。

・ヴァンスカ/ラハティ響盤(交響曲全集)BIS 1997

第1楽章11:36
第2楽章04:29  
第3楽章14:04
第4楽章09:04
39:27

全体的に録音が小さめです。
ミネソタ管盤の方をオススメします。

第4楽章を聴くと、私は雪融けの野を、野うさぎが駆けていく様子が目に浮かびます。
ただ、最後は、こっそり忍び寄る狐か他の肉食獣に、
あっけなくやられてしまう(静かで悲劇的な響きで終わるので)・・・

第1楽章の冒頭は確かに暗鬱な響きですが、
そこを乗り越えれば、きれいな雪景色(?)が待っています。
(第1楽章の最初と第4楽章の最後をつなげてみれば、
作曲者の夢オチなのかもしれませんね・・・)

2016年3月29日 (火)

ブーレーズ指揮による「春の祭典」聴き比べ3盤

2016年1月5日に、
作曲者・指揮者のピエール・ブーレーズ(Pierre Boulez)が逝去しましたが、
それをきっかけに、ブーレーズ指揮の「春の祭典」(1969年録音・SONY)を、
SACDシングルレイヤー盤で聴いてみました。

正直なところ、「春の祭典」は、どちらかというと敬遠していた曲でした。
そもそも異教的ですし・・・
聴くところは「序奏(序曲)」、「春の兆しと乙女たちの踊り」のところまで。
ここまで聴けば十分でした。
迫力あるオーケストラ曲の代表ではあるものの、
聴いていて疲れる曲にすぎませんでした。
一番最初に聴いたのがドラティ指揮デトロイト交響楽団による演奏。
数年前に、NHKBSプレミアムで、
ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団による、
バレエ付の演奏を録画して保存してある程度でした。
(バレエは相当妙な作品ですが・・・)

参考(たぶんNHKで放送したものと同じ公演? Blu-ray)

しかし、ブーレーズ指揮クリーブランド管弦楽団による演奏(1969・SONY)の、
SACD盤を聴いて、この曲に対する評価が一変しました!
「なんて緻密で凄い曲なんだろう!しかも楽しい!」
この演奏を聴いて初めて、「春の祭典」の全体像と、音楽的価値に目が開かれました。

ブーレーズ指揮クリーブランド管弦楽団(1969・SONY・SACD)

実は、この演奏、数年前に、札幌の狸小路にある名曲喫茶「ウィーン」に行った時、
たまたま流れていました。
特大スピーカーから流れてくる音を聴いて思ったのは・・・
「迫力がなくてつまらない・・・」
もちろん音は大音響でしたが・・・

我が家のスピーカーは手のひらより少し大きいくらいで、
何万もするものではありません。
それでも、SACDの音の鮮明さが、
補ってあまりないほどの音の洪水を家中に氾濫させることができます。
1969年盤を一言で形容すれば、「音の大花火大会!」
どれだけ大音響になっても、聴きづらくなるようなところはありません。
(メータ盤やサロネン盤の通常CDでは、重低音でビリビリと振動が来ます・・・)

これに味をしめて、「春の祭典」だけで、今年2〜3月の間に、
13盤も手に入れてしまいました・・・(゚ー゚;
その中で、今回はブーレーズ盤の3枚だけを取り上げます。

ブーレーズ指揮の正規CDは3枚あります。前述の1969年盤の他に、
今年3月になって、1963年にフランス国立放送管弦楽団を指揮した録音が、
SACD(ハイブリッド盤)化されました。(DENON・タワレコ)
タワレコで入手可能。
1991年にクリーブランド管弦楽団を指揮して再録音したものもあります(DG)。
こちらはエソテリックでSACDハイブリッド盤が出ていました(入手が難しいようですが・・・)。

1991年盤は、「古典」としての「春の祭典」という位置づけではないかと思います。
演奏・統率力は見事ですが、あまり印象に残りません。
(模範的すぎるというか・・・)

1991年盤

エソテリックのSACDハイブリッド盤

一方、最も古い1963年盤は、衝撃的でした!
こちらは「ゲンダイオンガク」としての「春の祭典」が際立っていました!
「理路整然」の1991年盤と対比するなら、「魑魅魍魎」という表現がピッタリかもしれません。
音の鮮明さに、戦慄と恐怖が入り混じった、すさまじい演奏です!
怪獣映画の音楽みたいな印象さえ抱きました。
「ゴジラ」(1954)や「サイコ」(1960)の、白黒映画故の恐怖感みたいなものが、
演奏からビシバシ伝わってきました。
「春の兆しと乙女たちの踊り」のところだけとれば、
1969年盤よりも迫力があり、奇っ怪です。

あえて言えば、ブーレーズ盤2枚(1963年盤、1969年盤のSACD)と、
ムーティ盤(WARNER)、
ロバート・クラフト盤(NAXOS)と、
もう1枚(ドラティ盤かメータ盤かゲルギエフ盤あたり)あれば、
「春の祭典」は十分だと思います。

参考
ムーティ盤

ロバート・クラフト盤(フィルハーモニア管弦楽団)

ところで、「レコード芸術」2016年4月号では、
「春の祭典」のベスト1CDとして、
最近の録音である、クルレンツィス指揮ムジカエテルナ盤(SONY)が挙げられていました。
この盤も持っていますが、ベスト1CDに挙げるまでのものではないと思いました。
(ジャケットは面白いですが・・・)

参考
クルレンツィス盤

2016年3月28日 (月)

映画「竹取物語」〜途中からSF大作?

2016年3月26日に、BSジャパンで、
1987年の日本映画「竹取物語」が放映されていました。
主演は沢口靖子。監督は市川崑です。
三船敏郎や中井貴一、石坂浩二など豪華出演者が脇を固めていました。

最後の方に「未知との遭遇」に出てくるような巨大UFOが現れ、
平安時代を背景としたSF大作っぽくなったのが、
ユニークといえばユニークですが、
時代絵巻を見事にブチ壊している、とも言えました。
(それなりに楽しめましたが・・・)
2時間の作品ですが、途中は少し飛ばして視聴しました。


高畑勲監督の「かぐや姫の物語」(2013)と見比べてみるのは・・・
ちょっと酷ですね。
この作品は、下のDVDパッケージの画像を見れば、
事足りるかもしれません。


2016年3月27日 (日)

アニメ映画「言の葉の庭」

NHKBSプレミアムで、2016年3月25日に、
アニメ映画「言の葉の庭」が放映されていました。
録画して視聴しました。

とにかく風景描写が緻密で繊細、
雨の描写が美しすぎる!!!!
対して、人物の描写(特に、ユキノ)は、少々幻想的でした。

何年か前の、桜が花咲く時期に、新宿御苑に行きましたが、
その時そこで観た風景(桜を除いて)が、丁寧に描かれているのにも驚嘆しました。
新宿駅近辺の描写も、たぶん見慣れた光景のはずが、
ここまで精密に描かれると、美の領域に入ります。
スタジオジブリの「耳をすませば」と同様に、身近な風景に美を感じました。

もはや、アニメという枠を超えて、映像詩であり、
川端康成とかの短編小説の世界にまで達している、
見事な芸術作品であり、
それでいて、物語としても十分魅力的でした。

NHKBSプレミアムで先に放送された、
「秒速5センチメートル」、「ほしのこえ」と見比べてみても、
この「言の葉の庭」が最も優れていると思いました。
(「秒速5センチメートル」も傑作ですが!)

ストーリー展開にはあまり関係ないのですが、
サントリーの「金麦」と「モルツ」の缶がやたら目立っていました(NHK的に大丈夫?)。

描写・展開とも非の打ち所のない作品でしたが、
唯一気になったのが、ユキノ役の花澤香菜さんの声でした。
美しい声ですが、少し幼い感じもしましたし、
もう少し低めの声の方が適役だったのでは、と思いましたが、
一方で、花澤香菜さんのその声だからこそ、
タカオとの「心の近さ」を表すことができたのでは、とも思いました。

雨の逢瀬の場面、タカオとユキノの距離が少しずつ縮まるところ、
ラスト前に「ユキノさん」「先生」という言葉で表される、微妙な心の距離・・・
そして、秦基博の歌う「Rain」を背景にしたシーン・・・
映像と音の使い方の巧みさが絶賛に値します!

ケイタイやスマホで言葉のインフレ状態担っている中、
あえて、古風な万葉集で返歌するというところも粋でした。

この作品について多く語れば語るほど、
何か言葉が追いつかないようなもどかしさがあります。
百聞は一見に如かずです。


2016年3月22日 (火)

映画「ローラーガールズ・ダイアリー」(原題:Whip It)

2009年の米映画「ローラーガールズ・ダイアリー」(原題:Whip It)が、
NHKBSプレミアムで、2016年3月22日に放映されました。
監督は、ドリュー・バリモア(Drew Barrymore)。
主演はエレン・ペイジ(Ellen Page)です。
ドリュー・バリモアの初監督作品です。
原題と邦題が全然違います。
無理に訳すると
「ホイップしろ」?
「ホイップ」というのは、ウィキペディアによると、
(後方のスケーターの勢いを付けさせるために手で引っ張って前方へあおり出す技)
とのこと。
※正直言って、映画を観てもこの技はよくわからなかったのですが・・・

あらすじをKINENOTEから転載します。
(引用)
17歳の女子高校生ブリス・キャベンダー(エレン・ペイジ)は、テキサスの退屈な田舎町ボディーンで生まれ育った。母親ブルック(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は美人コンテストにハマっており、かつて自分が出場したミス・ブルーボンネット大会で優勝することだけが娘の人生の成功だと信じていた。そんな生活に違和感を覚えるブリスは親友パシュ(アリア・ショウカット)と、少し都会の隣町オースティンに出かける。そこでローラーゲームと出会ったブリスは、女性らしさとは無縁でワイルドにぶつかり合い、個性を称え合うローラーゲームの世界にすっかり魅了される。ブリスは家族に内緒で年齢を偽り、負けん気は強いが勝利の少ないチーム、ハール・スカウツの新人発掘トライアルに参加する。天性のスピードで入団を認められたブリスは、昼は学校とダイナーでのウェイトレスのバイト、夜はローラーゲームの練習というめまぐるしい日々を送り始める。敵対するチーム、ホリー・ローラーズのアイアン・メイビン(ジュリエット・ルイス)のような凄まじいライバルとも臆することなく対峙したり、バンドマンのオリヴァー(ランドン・ピッグ)と恋におちたりしながら、ブリスは新しい世界でヒロインになりつつあった。しかし彼女の活躍は、内緒にしていた家族の耳に届いてしまう。
(引用終)

主人公・ブリスがのめりこんでしまう、
「ローラーゲーム」("Roller Games" or " Roller derby")とは、
ローラースケートを履いての「チーム格闘技」です。
競争とプロレス的要素が混じった、いかにもアメリカ的なスポーツです。
細かいルールは観ていてもはっきりとはよくわかりませんが、
理屈抜きで、女同士の肉弾戦と駆け引きを楽しむことができました。

物語の中盤で、ローラーゲームをしていることが両親にバレてしまいます。
そこからの母親との和解(というよりは、新しい生き方を認めてもらうこと)が、
この物語のもう一つの見せ場でした。
最後はちょっとあっけない終わり方でしたが・・・

DVD

参考記事
超映画批評『ローラーガールズ・ダイアリー』65点(100点満点中)

2016年3月21日 (月)

アニメ映画「秒速5センチメートル」〜コーヒー牛乳からブラックコーヒーへ?

NHKBSプレミアムで、2016年3月8日に、
新海誠監督の「秒速5センチメートル」を放映していました。
録画して視聴しました。
アニメ作品としては有名なのは前から知っていましたが、
借りてまで観ようとは思っていなかったので、
ちょうどいい機会となりました。
録画してから観終わるまで、少し時間がかかりました。

秒速5センチメートル(Blu-ray)

第1話「桜花抄」では風景描写の緻密さに驚嘆しました。
冒頭の桜のシーンは特に美しいです。
駅や電車の車内など、実写版にした方がいいのでは、と思うぐらいの、
ここまでやるか!という徹底したリアルさがありました。
時間と距離というどうにもできないものへの焦燥感と、
ようやく再会出来た甘美さ・・・
ラストシーンは、やはりアニメならではの描写が生きていました。

第2話「コスモナウト」は、主人公・遠野貴樹への、
澄田花苗の片思いが実に切なかったです。

正直、風景描写の緻密さはともかくとして、
第2話までであれば、この作品を傑作とは思わなかったでしょう。
第3話「秒速5センチメートル」こそ、
この作品を「傑作」の名に値するものにならしめています。

主人公・遠野貴樹が社会人になって、東京で働いています。
(新宿駅近辺の描写がリアルすぎてスゴイ!)
一応、つきあっていた彼女はいたものの、
心の中では、篠原明里が忘れられない「永遠の女性」になっている・・・
そんな中で、貴樹と明里はある時、踏切のところですれ違います。
第1話、第2話と違って、主人公の部屋の薄汚さとか、
冷たい大都会とかの方が目立ちます。

この作品の白眉は、もちろんラスト5分ほどの、
山崎まさよしの「One more time, One more chance」が流れるところです。
そのシーンはセリフがなく、
主人公の心情を歌が見事に代弁しています。
そして、歌とともに、2人の過ぎ去った年月が巧みなカットで描かれます。
歌と映像のシンクロは驚異的!(桜木町とかは別として・・・)
その苦さは、フランス映画「シェルブールの雨傘」のラストシーンに比することができるのでは、
とさえ思いました。
あるいは、♪「あの素晴らしい愛をもう一度」・・・
永遠と思われるほどの恋でも、時間と距離には勝てなかった。
その残酷さ、無常さと、自分自身の過ぎ去った青春の日々を重ね合わせて、
不覚にも涙が出てきました・・・

One more time,One more chance 「秒速5センチメートル」Special Edition

第1話「桜花抄」はコーヒー牛乳、
第2話「コスモナウト」は砂糖入りミルクなしのコーヒー、
第3話「秒速5センチメートル」はブラックコーヒーのテイスト?
(変なたとえでゴメンナサイ・・・)
あるいは協奏曲の第1楽章、第2楽章、第3楽章にもたとえられるかもしれません。
ちなみに私は、ブラックコーヒー派デス(*^-^)
(よほどまずければ別ですが・・・)

この作品のコミック版、小説版が出ているのは知っていましたが、
あえて、映像作品だけで完結していると思うので、たぶん手にとることはないでしょうね・・・

2016年3月18日 (金)

書評:松谷信司著『キリスト教のリアル』(ポプラ新書)〜晴佐久神父は日本のキリスト教界のヨシュア?

書店で見かけて、すぐさま買った本です。
松谷信司著『キリスト教のリアル』(ポプラ新書)を紹介します。
著者の松谷信司氏は、キリスト新聞社の季刊『Ministry』編集長です。
本の4分の1、前半の第1部「日本におけるリアルなキリスト教」は、
(少なくとも既にキリスト教信徒の)私にとっては、あまり目新しいところがない、
用語解説みたいなところですが、
「キリスト教って、どんな宗教?」という一般の方からすると、
コンパクトにまとまっている記述だと思います。

一般の人にとっても、
既にキリスト教の教会に通っている人(信徒、未受洗者問わず)にとっても、
興味深いのは、第2部「牧師・神父から観た日本におけるリアルなキリスト教」でしょう。
正確に言うと、「・・・リアルなキリスト教」(教会・信徒)ではなく、
「・・・リアルな牧師・神父」が内容です。

カトリック多摩教会の晴佐久昌英神父、
日本基督教団原宿教会の川上咲野牧師、
日本福音ルーテル東京教会の関野和博牧師
単立ともにチャペルの森直樹牧師、
そして、著者の松谷信司氏による対談で、
「なぜ牧師・神父になったのか」、
休日や趣味、結婚、給料、定年など、
教会ごとの違いや、その牧師、神父の考え方の違いが明らかになり、
なかなか興味深かったです。

日本のキリスト教伝道がはかどらない理由として、
この本でも一般的な説がPP.17〜19でも述べられていますが、
4名(松谷氏は司会役なので除外)のうち、
意外にもカトリックの晴佐久神父のみが、
希望的な発言をしていますので引用します。
(引用)
晴佐久   (中略)日本の教会は死につつあるなんて声があるけど、とんでもない。実はまだ、始まってもいないんだと思う。生き生きした教会があって、それがだんだんしぼんでいったのなら「死につつある」と言えるけど、まだ始まってすらいない。モチベーションを持ったキリスト者がどんどん広まっていくという300年くらい先のイメージが私にはあります。(PP.158)
晴佐久   私はいつも言っているのですが、信者の数は福音を語った数に正比例します。これは自分の実感で、間違いなくそうです。福音というのは、「あなたは救われている」とか、「神様はあなたを本当に愛しているよ」とか、「大丈夫だよ」という、はっきりとした神様からのメッセージ。今、それを必要としている目の前の人にまごころから宣言すると、必ず救われます。だから私に言わせれば、信者が増えないのであれば、それは福音を語っていないから、あるいは福音ならざるものを必死に語っているからでしかない、ここだけは確信がありますね。これまで28年間の経験で、信者が減るという経験をしたことがありません。常に福音をもっと語る、もっと露出する、もっとわかりやすくいろんなかたちでみんなに伝えるという工夫をし続けていくと、もう次々と、それなら一緒にやっていきたいとか、そういう集まりに私も加わりたいという人が現れる。(以下省略)(PP.168〜169)
(引用終)

他の3人は「牧師だってフツーの人間だよ」という主張をするのが精一杯ですが
(別に、他の3人の牧師を批判しているわけではありません、悪しからず・・・)、
晴佐久神父だけどうしてこんなにキラキラ輝いているのか・・・
晴佐久神父は、日本のキリスト教界にとって、
まるで、旧約聖書民数記13、14章の、
ヨシュアとカレブのような存在だと思いました。
(エジプトを出たイスラエルの民が、約束の地であるカナンに入る前に、
12人の斥候を送ります。
12人のうち、10人は約束の地に攻め入ることについて否定的なコメントをします。
ヨシュアとカレブだけは主が共におられるなら大丈夫だ、と主張しますが、
民は否定的なコメントの方を信じ、主の力を信じなかったので、
結果として、イスラエルの民は40年の間荒野を放浪することになります。)
日本のキリスト教伝道の失敗をあれこれ分析するのが無駄だと言うつもりはありませんが、
できない理由をあげつらうより、できることを進める方がすばらしいですね。

ビジネス関係の本にこんな話がよく出てきます。
靴を履く習慣のない土地に行った二人の靴セールスマンの話です。
一人は、「あの土地には靴を履く習慣がないから、靴を売るのは無理です。諦めましょう。」
もう一人は、「あの土地には靴を履く習慣がないから、これから靴を売り込むチャンスです。」
靴を履く習慣がない、という分析はどちらも同じですが、
それをマイナスととるか、チャンスととるか・・・
日本のキリスト教伝道だって同じだと思います。

4人の対談の中で、もう1箇所、心に残ったのは、
「一度は見てほしい教会&聖地」という話題のところです。
他の3人は、フランスのルルドや南スイスのラサ、
テゼ共同体を挙げていますが、
晴佐久神父は、
(引用)
晴佐久    この教会がすごい」ということで言えば、うちの多摩教会。あまりよその教会の実態を知らないというのもありますが、ここは聖なる場所だと感じるのは、実際に人が救われているから。本当に苦しみにとらわれていた人が、目の前で解放されて喜びの涙を流す現場をこれほど日常的に見られる教会は、多摩教会においてほかはないと思っています。(PP.177)
(引用終)
どこか遠い聖地ではなく、自分の教会がまさに聖地になる!
こんなことを堂々と言えるのが凄い!

この本で「キリスト教」はぼんやりとしか見えないかもしれませんが、
牧師・神父の姿は身近に感じられるようになるはずです。
キリスト教関係の出版社ではなく、
一般の出版社から出されたことを歓迎します。

おまけとして・・・
第一部の中の「誤解されがちな教会用語」(PP.57〜65)の中の一節。
(引用)
・福音(エヴァンゲリオン)
  汎用人型決戦兵器ではありません。「良い知らせ」という意味のギリシャ語で、新約聖書ではイエス・キリストの宣教と生涯、宣教の内容を意味するようになりました。

(以下省略)(PP.63)
(引用終)※下線部は筆者による。
ちなみに、新約聖書の「使徒」は世界を破壊しませんよ(*^-^)

2016年3月14日 (月)

NHKEテレ・クラシック音楽館「スクロヴァチェフスキ指揮 読売日本交響楽団演奏会」(2016年3月13日放送)

読売日本交響楽団の演奏といえば、
日テレ&BS日テレの、「読響シンフォニックライブ」という番組で、
オンエアされますが、
ミスターSことスクロヴァチェフスキ指揮だからこそ、
NHKが触手を伸ばしたのでしょうね。
2016年3月13日放送の、
NHKEテレ・クラシック音楽館では、
2016年1月21日・東京芸術劇場で収録された、
スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団による、
ブルックナーの交響曲第8番を放映していました。
(コンサート・プログラムによると、「究極のブルックナー」!)
録画はしましたが、結局リアルタイムで視聴しました。

御年92歳にも関わらず、最後まで立って指揮する姿は壮観でしたが・・・
私自身、今ブルックナーの作品にそれほどのめり込めないので、
(20代前半の頃は大、大好きでしたが!)
美しい曲だとは思いましたが、「歴史に残る」とかの形容までは、
ちょっとできなかったかも・・・
なかなかの力演だとは思いましたが・・・
(十分合格点な演奏でした!)
ギュンター・ヴァントや朝比奈隆指揮による、
最晩年の神々しいブルックナー演奏までには至っていないかもしれません。
(あとは好みの問題でしょうね。)
おまけとして放送された、
ブルックナーの弦楽五重奏曲のアダージョ楽章を、
スクロヴァチェフスキ自身が編曲して、N響を指揮した、
「弦楽のためのアダージョ」はなかなかの佳曲でした。
(タイトルから、バーバーの作品かと思ったのですが・・・)

スクロヴァチェフスキ指揮のブルックナー演奏は、
以前、ザールブリュッケン放送交響楽団との「第6番」を所有していたことがあります。
(その頃は、「Arte Nova」というレーベルでしたが・・・古!)
第2楽章のアダージョ楽章がとても美しかったです。

交響曲第6番

ブルックナー交響曲全集

読売日本交響楽団との第7番〜第9番のCDも出ているようです。

後期3大交響曲


ところで、最近聴いたブルックナー演奏で、
意外にもなかなかステキだと思ったのが、
ブーレーズ指揮ウィーン・フィルによる、
交響曲第8番です。

交響曲第8番

ブルックナーといえば、「宗教的」、「神秘的」、「雄大な大自然」・・・
といった形容詞がすぐ浮かんできますが、
ブーレーズの演奏はそのどれにもあてはまりません。
HMVのあるレビューでは「無神論者のブルックナー」などと酷評されていますが、
マーラーでの演奏と同様、先入観を捨てて、
スコアを忠実に鳴らすとこうなる、という、
唯一無二の演奏です。
神々しさはありませんが、否定してもしきれない、
音楽そのものの美しさ、天才性が見事に表れている演奏だと思います。
ヴァント指揮ベルリン・フィルとかも持っていますが、
なんとなく気軽に聴く感じではないので、
ブーレーズの指揮はカジュアルに聴くことができます。
(それが本来の聴き方としていいかは別として・・・)

2016年3月13日 (日)

NHK・『花は咲く〜アニメスター・バージョン』(2016年3月12日から随時放送)のアニメ登場順

NHKの復興支援ソング『花は咲く』。
アニメスター・バージョンが2016年3月12日からオンエアされました。
歌は山寺宏一&水樹奈々。
ステキな歌声でした。
それ以上に、日本を代表するアニメが5分間の歌の中に勢揃い!
驚異的でした!
パッと見ですと、なぜここでこのキャラが出てくるの、
という感じですが、歌詞の字幕と対象させると、
「なるほど!」と納得しました。

録画しておいたので、一時停止をかけながら、登場順を書きとめました。

ジャングル大帝
ちびまる子ちゃん
ONE PIECE
うる星やつら
赤毛のアン
宇宙戦艦ヤマト(旧)
新世紀エヴァンゲリオン
鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST
NARTO
けいおん!
機動戦士ガンダム
名探偵コナン
ドラえもん
ふしぎの海のナディア
ルパン三世カリオストロの城
サイボーグ009(「009 RE:CYBORG」)
科学忍者隊ガッチャマン
クレヨンしんちゃん
あしたのジョー
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
巨人の星
ふたりはプリキュア
AKIRA
魔法の天使 クリィミーマミ
マクロスF(劇場版マクロスF~サヨナラノツバサ~)
ドラゴンボールZ
攻殻機動隊(GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 2.0)
サスケ
妖怪ウォッチ
忍たま乱太郎
進撃の巨人
ヤッターマン(旧)
ラブライブ!
フランダースの犬
火の鳥
鉄腕アトム
未来少年コナン
ポケットモンスター
(計38作品)

※私は「あの花・・・」だけはわかりませんでした。

妖怪ウォッチなど何作品かは、この歌のためのオリジナル映像でした。
NHKスゴイ!

2016年3月12日 (土)

さっぽろスイーツカフェ、2016年8月21日で閉店・・・

札幌はおいしいスイーツ店が多い街です。
いろいろな名店の味を1つの店で食べることができるのが、
大通駅地下街オーロラタウンにある、「さっぽろスイーツカフェ」です。
月替りで、市内の5店(月によって変動あり)から、
その店の看板スイーツが出品されます。
たとえば、2016年3月なら、「パティスリ-カカオ10g」、「べんべや」といった、
車でないと行きづらい場所に店舗がある店のケーキを食べることができます。
(「べんべや」には一度行ったことがありますが・・・)
私ども夫婦はこの店が好きで、月に2回は通っています。
複数の店のケーキを同時に頼んで、
なおかつおいしい紅茶やコーヒーとの「ケーキセット」にすることもできます。
土日に「さっぽろスイーツカフェ」に行くと、
いつも混雑しています。
最近では外国人観光客も多く訪れています。
店で500円以上購入するごとに、スタンプカードに1つ押印してくれます。
スタンプが10個貯まると300円引きになります。
有効期限は1年間なのですが、先日(2月末)に行くと、ある異変がありました。
店員さんが1年間の有効期限を手書きで直しました。
「8月21日」・・・
その時は理由を聞きそびれてしまいましたが、
今月に入って、妻と一緒に行った際に、思いきって店員さんに聞いてみました。
すると・・・
「(2016年)8月21日に閉店する」とのことでした・・・

私ども夫婦にとっては、あれこれのケーキ店に行かずに、
手軽にいろいろな味を楽しめる、「さっぽろスイーツカフェ」がなくなるのは、
大変残念なことです。
「閉店しないで!」!!!!
札幌でスイーツ食べるならココ!とオススメできる店なのに・・・
閉店までせっせと通いたいものです。
(できれば閉店を撤回して!)

2016年3月 7日 (月)

『俺物語!!』11巻に小樽のJR塩谷駅が登場!

アルコ(作画)、河原和音(原作)の『俺物語!!』(集英社)。
コミック11巻を読みました。

11巻

この巻の前半は、主人公の猛男や、砂川、大和といったメインキャラが、
修学旅行で北海道に来る、という話です。
小樽運河や札幌駅などが作中に出てきますが、
一番おもしろかったのは、
猛男と大和が小樽駅から列車で札幌駅に向かうのを、
間違って長万部行きの列車に乗ってしまったのに気付き、
塩谷駅で次の列車を待つところでした。

小樽は私の地元ではありませんが、
何度も行ったことがあるので、
よくぞ塩谷駅(無人駅です・・・)を取り上げてくれた!
と思いました。
ちなみに、塩谷駅は小樽駅の隣の駅ですが、
小樽駅からは約8kmほど離れています。
『俺物語!!』ではよく猛男が猛スピードで走る場面がありますが、
さすがに8kmは無理か・・・

2016年3月 6日 (日)

書評:清水茜 作『はたらく細胞』(01,02)(講談社)〜体の中の大スペクタクル!

あなたは、わたしの内臓を造り
母の胎内にわたしを組み立ててくださった。
わたしはあなたに感謝をささげる。
わたしは恐ろしい力によって
驚くべきものに造り上げられている。
御業がどんなに驚くべきものか
わたしの魂はよく知っている。

(旧約聖書 詩編139:13〜14新共同訳)

小学生の頃、叔母から頂いた、学研の学習まんがをよく読んでいました。
『◯◯のひみつ』という類ですね。
いろいろな科学的な事を、マンガで学ぶことができました。
今回紹介する、
清水茜 作『はたらく細胞』(01,02)(講談社)は、
見方によっては、学研の学習まんがの系統に入るのでしょうが、
人体の不思議さを見事なエンターテイメントにしています。

1巻

2巻

1巻の表紙の、白い男性が白血球、赤い女性が赤血球を擬人化したものです。
(コードネームはあるものの、名前はないです。)
この2人を軸に、様々な細胞の働きと、
侵入者(細菌やウイルスなど)が来た時の「戦い」が描かれています。
ストーリーがなさそうな所から、
よくこれだけのファンタジーを引き出したものだと、思わず感心しました!
人体って、こんなにスゴイことを、24時間ずっとしているの?
生きていることに感謝です!
第1話の肺炎球菌との戦い、第2話のスギ花粉との戦い(ステロイド!)、
第8、9話のがん細胞との戦いなど、とてもスリリングな展開で、
読み応えがありました!
ぜひ、NHKEテレあたりで、アニメ化してほしいです。

余談ですが、進化論的な考え方で言えば、すべては「偶然」の産物ですね。
しかし、テレビやジェット機がある日突然、「偶然に」できたものではないのと同様に、
これだけ複雑精緻な「人体」いや、もっと言えば細胞1つでさえ、
ただの「偶然」(どれだけ長い年数がかかったとしても・・・)出来たというのは、
それこそ「信仰」にすぎないのではないでしょうか。
遺伝情報だって、1つのミスでさえ、致命的なものになるのです。
環境適応能力(そういう意味での「進化」なら私も認めますが・・・)を含めて、
創造者(クリエイター)が存在する、と考えた方が、
より合理的だと私は考えます。
「どうやって?」という現象を解明するのは科学の仕事ですが、
究極の意味での「どうして?」を説明することは、
科学の仕事ではありませんし、それをするなら、
科学が「信仰」になってしまう、オカルト化するということです。
(それこそ、信仰や哲学の世界です・・・)

2016年3月 3日 (木)

レイフ・セーゲルスタム(Leif Segerstam)指揮ヘルシンキ・フィルによるシベリウスの交響曲第4番〜聴く「視点」がようやく見えた!

シベリウスの交響曲の中で、最も難解・晦渋とされるのが、
交響曲第4番Op.63です。
何回か聴いても、暗くて憂鬱な感じがするので、
曲の魅力がよくわかりませんでした。

先日、シベリウスのヴァイオリン協奏曲の記事を書きました。
(→BS日テレ・読響シンフォニックライブ〜オスモ・ヴァンスカ指揮、エリナ・ヴァハラ独奏によるシベリウスのヴァイオリン協奏曲(2016年2月27日放送)
その関係で、家にあるシベリウスのヴァイオリン協奏曲のCDを聴き直していました。
(現在、4盤所有中。)
聴き比べの記事
(→シベリウス:ヴァイオリン協奏曲Op.47
〜ヒラリー・ハーン(Hilary Hahn)のDG録音他
)では、
それほど高評価ではなかった、
レイフ・セーゲルスタム(Leif Segerstam)指揮ヘルシンキ・フィル&
ペッカ・クーシスト(Vn)の演奏も、もう一度聴きました。
(シベリウス:交響曲全集&ヴァイオリン協奏曲の中の1枚)

レイフ・セーゲルスタム(Leif Segerstam)指揮ヘルシンキ・フィルによる、
シベリウス:交響曲全集&ヴァイオリン協奏曲(4枚組)
ペッカ・クーシスト(Vn)

ついでに聴いてみようと思った、交響曲第4番が、
実は超名演だったのです!
ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィルや、
カラヤン指揮ベルリン・フィルといった、一般的な名盤では、
決して垣間見ることのできなかった、この曲の真の魅力が、
ようやく見えた気がしました。

例えて言えば、ステレオグラム(立体視するための絵)で、
ある状態・視点でみると、立体的な字や絵が浮かび上がって見えてくる、
そんな感じでしょうか。
(私はニガテですが・・・)
凍てつく暗い夜の中にも、天空にはオーロラが舞っていたり、
少しずつ春の訪れが近づいていたり・・・
第4楽章では、雪原の中で少しずつ雪融けがある中、
うさぎたちが跳び跳ねているような光景が見えてきました・・・

念のため、家にある他の盤でも同じように感じるのか
(何かヴィジョンが見えるのか)、聴き比べてみました。
我が家にあるのは、上記の他に3盤です。

パーヴォ・ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィル(EMI)
(交響曲第1〜4番、2枚組)

カラヤン指揮ベルリン・フィル(DG)
(交響曲第4〜7番他、2枚組)

バルビローリ指揮ハレ管弦楽団(WARNER)
(交響曲全集他)

結論から言うと、まず、バルビローリ盤は冒頭少し聴いただけで、
もうパスと思いました・・・
流麗なカラヤン盤でさえ、
シベリウスの魅力の「狭き門」は閉じたままでした。
ベルグルンド盤は、セーゲルスタム盤に近いものの、
今まで通りの、晦渋である、
という印象の域からぬけ出すことはできませんでした。

北国の漆黒と白銀の美しさを見る「視点」を、
ようやくセーゲルスタム盤を聴いて、つかむことができたように思えました。
ここ数日、頭の中には、第4楽章の冒頭を中心に、
いくつかの旋律の断片が流れています・・・

2016年3月 2日 (水)

書評:溝部脩著『青年と読むマルコによる福音』(ドン・ボスコ社)

先月(2016年2月)、
札幌市内のキリスト教書店「オアシス札幌店」に立ち寄った際、
手にとって、買った本です。
(プロテスタント中心の書店ですが、
最近ではカトリック関係の本も置いています。)
溝部脩著『青年と読むマルコによる福音』(ドン・ボスコ社)を紹介します。
著者はカトリック高松教区名誉司教です(でした)。
ここ最近、寝る前に少しずつ読んでいます。
1章が適度な長さで、読みやすく、かつ福音的です。
実はまだ読み終わっていないのですが、
たまたま女子パウロ会のHPを見たら、
著者が2016年2月29日に逝去されたことを知りました。
訃報 溝部脩さん80歳=カトリック高松司教区名誉司教
ご逝去を悼み,謹んで哀悼の意を表します。

Requiem æternam dona eis, Domine, et lux perpetua luceat eis.
(主よ、永遠の安息を彼らに与え、絶えざる光でお照らしください。)

さて、本の紹介に戻りましょう。
この本は、著者が2年かけて青年たちと一緒にマルコ福音書を読み解いた記録、
とのことです。
がちがちのカトリック教理で折伏、というのではなく、
仏教の話や映画『ベン・ハー』や『ローマの休日』の話、
宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の全文引用があったり、
宗教改革者カルヴァンの話も半ば肯定的に紹介されたりしていました。
(PP.24)
実に柔軟な心で、青年たちにとって福音書を身近なものにしようとする、
優しい語り口が魅力的です。

本文から一部引用してみましょう。
マルコ5章の出血病を患う女の話についての記事からです。
(引用)
 この女はイエスのことを聞いて、この人しか自分を救ってくれる方はいないと信じて、町に入ってきて、イエスに近づいたのでした。そして「後ろのほうからイエスの衣に触れた」(5・27)のです。この種の病気の人は汚れた者とみなされていたので、公に触れるのを彼女はためらったのでした。しかし、「イエスの衣にさえ触れることができれば、救われる」(5・28)と信じていたのでした。彼女は病が治されるというより、自分の状況から救われるということを願っていたのでした。病気にかかって以来、自分を悩まし続けたすべてのことから立ち直りたいと希望していたのでした。ともかく新しい人生を歩みたかったのです。イエスは、この女の強い心に動かされて、「娘よ、あなたの信仰があなたを救った」と告げます。その瞬間に出血病が治りました。イエスは、彼女が強く願ったから、その信じる力によって治ったと告げたのです。
 「すがる」とはこういうことです。この人しかいないという思いの丈を、思い切りぶっつける行為です。治っても治らなくても、との「のらりくらり」のお願いではありません。何がなんでも治してもらいたいという必死の思いなのです。現代人の私たちに一番欠けているのは、この必死の思いかもしれません。「このくらいで」、「まあまあ」で引き下がってしまうのです。いつもあいまいで、何でもいいのです。従って必死になって祈るという意味が理解できないのです。
 きっとこの女は初代教会で、集会の折にでも、自分が触れたイエスの感触を話して聞かせたことでしょう。それが聖書に残っていきました。聖書のこの箇所を味わって読むと、その女の息遣いが私たちにも伝わってくるようです。

(PP.68〜70から引用終)

今のところAmazonでは取扱いがないようです。
キリスト教書店で入手可能です。

Mizobe

2016年3月 1日 (火)

2016年2月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧

2016年2月のページビュー(PV)数ベスト10記事は以下のとおりです:
(※トップページを除く)
ベスト3までは記事リンクをつけています。

一位.「学び合い学習」は日本の義務教育崩壊を招く!
~おすすめ記事『【解答乱麻】 TOSS代表・向山洋一 亡国の教育「学び合い学習」』
(MSN産経ニュース2012年11月24日掲載)

二位.どの聖書が一番いいか?(新約聖書編)
三位.インクルーシブ(インクルージョン)教育は子どもにとって本当に幸福なのか?~
おすすめブログ記事「脱インクルージョン教育」(ブログ名:斜に構えてみる)

四位.マーラー:交響曲第7番聴き比べ14種類
五位.ウコンは肝臓に悪い?~NHK・ためしてガッテン
「肝臓の健康を守れSP」(2011年6月29日放送)

六位.NHKEテレ・ハートネットTV 山田賢治のヒトとなり
「春香クリスティーンさん」(2016年2月1日放送)

七位.ピアノ五重奏曲の甘口辛口〜ドヴォルザーク、シューマン、
フォーレ、ショスタコーヴィチ、ブラームス、フランク・・・

八位.オキナワ旅行記リターンズ2015夏(その1)〜旅行の経緯と1日目〜
九位.ブラームス:交響曲第1番聴き比べ12種〜カラヤン盤5種を中心に・・・
十位.NHKBS1・BS世界のドキュメンタリー「銃社会アメリカ ある牧師の挑戦」
(原題:The Armor of Light)(2016年2月16日放送)

先月は音楽関係の記事が3本ランクインしました。
二位の「どの聖書が一番いいか?(新約聖書編)」は、
初めてベスト3以内入りでした。

あっという間に2月は終わり、いよいよ3月・・・
2016年、北海道の3月初日は猛吹雪でした・・・
今月もご愛読よろしくお願いします。

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