ピエール・ブーレーズ(Pierre Boulez)氏死去〜指揮者として「巨匠」だったのか?
現代音楽の作曲家で、指揮者としても有名だった、
ピエール・ブーレーズ(Pierre Boulez)氏(以下敬称略)が、
2016年1月5日に死去した、というニュースを読みました。
→仏作曲家のピエール・ブーレーズ氏死去=90歳、現代音楽の巨匠
ご逝去を悼み,謹んで哀悼の意を表します。
すごく好きな指揮者、というわけではなかったですが、
ここ数年、DGのマーラー録音やヘンデル、バルトークの録音で、
ようやくその価値がわかってきました。
(昨年亡くなったアバドも同様でしたが・・・)
死去のニュースを受け、改めて、
家にあるブーレーズ指揮のCD何枚かと、
ポリーニが演奏する、ブーレーズの「第2ソナタ」を初めて聴いてみました。
まずは、「第2ソナタ」の方から・・・
ただただ、義務感から聴いた、としか言いようがないです。
「早く終わらないかな・・・」
まさに「オンガク=音が苦」!
60年代の学生がサルトルや毛沢東の本を振り回しているかのようです。
私の妻も一緒に聴いてくれたのですが、
後で、
「ワタシがデタラメにピアノ弾いたら弾けそうな曲?」
とコメントしていました。
サルかネコがピアノをデタラメに弾いても「音楽」なら、
この曲は立派な「ゲイジュツ」なのでしょうね。
おそらく、作曲家としてのブーレーズの作品は、
10年もしたら(いや、既に?)、
骨董品扱い、博物館行きの音楽となっているでしょう。
指揮者として有名だった作曲家バーンスタインが、
最近では「ウェスト・サイド・ストーリー」の作曲家だけではなく、
「キャンディード序曲」その他の作曲家として評価されるのとは反対に・・・
20世紀後半の「前衛の時代」は、まさに「黒歴史」そのものなのかも?
一方、指揮者としてのブーレーズはどう評価すべきなのか?
今回改めて聴いてみたのは、
◯マーラー:交響曲第9番、交響曲第8番(第1部のみ)(DG)
◯バルトーク:ピアノ協奏曲全集(第2番、第3番のみ)(DG)
◯ヘンデル:組曲「水上の音楽」(第1組曲の途中まで)(SONY)
でした。
マーラー:交響曲全集
バルトーク:ピアノ協奏曲全集
ヘンデル:「水上の音楽」、「王宮の花火の音楽」
最近(2015年12月〜2016年1月8日現在)、
マーラーの交響曲を聴くのを意識的に避けているので、
久々に聴くことになりました。
ブーレーズ指揮によるマーラーの交響曲第9番は、
精緻な演奏ですが、少しも「思い入れ」がない、
蒸留、滅菌されつくした感じがしました。
指揮者の解釈など不要、ただスコアがそのまま響けばいいんだ!
という考えに立てば、まさに「至高の」演奏なのかもしれません。
しかし・・・
マーラーの交響曲第8番第1部は、
この曲のすばらしさを改めて認識させてくれた名盤です。
重低音が物凄い・・・
過去記事→マーラー:交響曲第7番聴き比べ14種類
※第7番についての記事ですが、
冒頭にブーレーズ指揮の第8番を賞賛した文が出てきます。
バーンスタインやテンシュテットを代表とする、
体臭がするようなドロドロ演奏=名演、熱演、という呪縛から、
ブーレーズやアバド、ジンマンの指揮は、
スコア通りに鳴らせば十分に美しい、というのを見事に証明して、
解き放ってくれました。
バルトークのピアノ協奏曲も、
オーケストラの冷静さが際立ちます。
まるでトゥーランドット姫?
(「氷のように冷たいが、周囲を焼き焦がすものは?」)
その冷たさが、ヘンデルではプラスに働いていました。
既に記事を書いていますので、
よろしければお読みください。
→ヘンデル:組曲「水上の音楽(Water Music,Suite)」&組曲「王宮の花火の音楽(Music for the Royal Fire Works, Suite)」聴き比べ5種
思うに、指揮者としてのブーレーズは、
スコアを作曲家の意図どおりに精緻に鳴らすことができる
「職人」だったのではないでしょうか。
実際のオーケストラを使って、コンピューターが演奏しているかのように、
冷徹に響かせることができる・・・これもまた凄い才能ですが・・・
「巨匠」という言葉を、年齢(齢70歳以上?)から言えば、
ブーレーズは指揮者として十分に「巨匠」でしたが、
「解釈を聴かせる」という点では・・・
カラヤンやバーンスタインは「巨匠」に値しますが、
ブーレーズの指揮は、もしかすると10年、20年後には、
人工知能が再現できるのかもしれませんね・・・
ともあれ、スコアそのものの響きを、
あたかもスコアが透けてみえるかのように演奏できた、
という意味では、やはり「巨匠」の名に値する指揮者だった、といえます。
もう少し、ブーレーズ指揮のCDをいろいろ聴いてみたくなりました。
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