書評:伊東ひとみ『キラキラネームの大研究』(新潮新書)〜漢字が「感字」になる危機・・・
書店で、書名を見て、思わず手にとり、
すぐに買ってしまいました・・・
伊東ひとみ著『キラキラネームの大研究』(新潮新書)です。
オビには、「苺苺苺」ちゃん、「紗冬」ちゃん、「愛夜姫」ちゃん、
「手真似」くん(※正解は、この記事の一番下にあります。)という、
典型的なキラキラネームが書かれており、
「神様、読めません・・・・・」というコメントが書かれています。
キラキラネームとか、DQNネームといった、難読人名の問題は、
既に何度かこのブログで取り上げてきました。
どちらかというと、批判的に書いています。
しかしこの本を読んでみて、
「だからイマドキの命名は・・・」
と単純にバカにすべき問題ではないことがわかりました。
キラキラネームの「方程式」なるものも紹介されています。
(→第二章 なぜ読みにくい命名をするか)
なにせ、読めない名前というのは、万葉の時代からアタリマエだったわけです。
(第三章「無理読みは伝統だった」、
第四章「言霊がつくったややこしい状況」に詳細が書かれています。)
明治に入ってからも、たとえば森鴎外の子どもたちの名前は、
キラキラネームそのものともいえます。
(ただし、深い漢籍の教養に裏付けられてはいますが・・・)
日本語の訓読みそのものが、ある意味、
既に本来の中国での漢字の読みから逸脱しているわけです。
実はこの本、キラキラネームからスタートしていますが、
万葉の時代から明治を経て戦後の常用漢字の制定、
そして現代の日本語体系の崩壊前夜までの、
漢字と命名について、壮大な「旅」をするような構成になっています。
それにしても、人名漢字には使えないものの、
「膀胱」の「胱」の字を、「月」+「光」だから人名漢字として使いたい、
といった親のセンスにはほとほと呆れました。(P.228〜230)
少し引用しましょう。
(引用)
結局、「腥」は「月」と「星」、「胱」は「月」の「光」、「惷」は「春」の「心」と、どの字も「漢和辞典」的な本来の字義とはまったく無関係に、ただ字面からくるイメージでもって、なんとなくロマンチックで綺麗な字と受け止められているようだ。
こうした要望例を受けて、笹原教授は「近年の命名を見ると、このような意味以前のイメージを重視した、感覚的な漢字使用が目立つ。それに、字画による比較的新しい占いが強い影響力をもっている」と指摘している。(中略)
とすれば、一字一字に語源に基づく意味が込められている漢字の表意性は失われていくのは自明だ。漢字本来の規範と伝統とのつながりから隔絶した世代には、「漢字」はもはや、イメージやフィーリングで捉える「感字」になっているのかもしれない。
(P.229〜230から引用終)
著者が主張する、「「漢字」を「感字」にしてはいけない」という主張は、
単にキラキラネームの抑制のみならず、まさに「日本語社会の行方」にかかっている・・・
(P.244から引用)
本当にそう思います。
この本と併せて、以前紹介しました、
牧野恭仁雄著『子供の名前が危ない』(ベスト新書)もオススメします。
→書評:牧野恭仁雄著『子供の名前が危ない』(ベスト新書)
〜キラキラネームをつける親の深層心理とは?
ちなみに、記事上部のキラキラネームの答えは・・・
「苺苺苺→まりなる」、「紗冬→しゅがあ」、「愛夜姫→あげは」、
「手真似→さいん」でした・・・
読めねぇ〜〜〜
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