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2015年4月の9件の記事

2015年4月30日 (木)

NHKEテレ・大心理学実験2(2015年4月30日放送)〜レギュラー番組化すると面白いかも?

NHKEテレで、以前から「大科学実験」という番組がありましたが、
今度は「大心理学実験」ですか・・・
2015年4月30日放送のNHKEテレ・「大心理学実験2」という番組を観ました。
(ちなみに「1」は2015年1月1日放送とのこと・・・知らなかった(;д;))
NHK「大心理学実験」関連情報(日本社会心理学会 広報委員会)

今回取り上げられたのは、「恋愛」における「吊り橋効果」と、
「プレッシャー」について。
吊り橋効果の再現実験と、比較のために揺れない橋での同じ実験。
男性では吊り橋効果は覿面でしたが、女性ではあまり効果がないのかも・・・
さらに比較実験として、男女ともにドキドキする効果をしてみては?

ある意味、実験参加者を「騙して」心理実験をするわけですが、
社会心理学では、よく使われる手法だそうです。
しかし、実験終了後にきちんと実験の趣旨を説明します。
先に紹介したサイトでは、次のように説明しています。
(引用)
番組で紹介されたどの実験にも共通しているのが,当初は参加者に実験の「真の目的」を伝えず,実験終了後に初めてそれを伝える,という手続きです.前者が「デセプション deception(騙す)」,後者が「デブリーフィング debriefing(真の目的を伝える)」と呼ばれ,社会心理学の実験ではよく行われます.社会心理学は,人が置かれる状況を操作する(変化させる)ことによって生じる態度や行動の変化を知ることに関心があります.しかし,参加者が,状況が「操作されている」ことを知ってしまうことは,それはそれで態度や行動を変化させてしまうでしょう.デセプションは,真の目的を伝えることによって参加者に実験参加に対する「構え」が生じてしまい,それが結果に影響することを避けるために必要な手続きなのです.しかし,当然参加者を「騙したまま」で実験を終えてはいけません.必ず,デセプションが行われたこと,それが必要であったことについて丁寧に説明してから,データ使用について承諾を得る手続きが必要とされます.社会心理学の実験は,こうした手続きが行われて初めて研究として成立します.また,研究実施前には,大学や研究機関における倫理審査を受け,デセプションが必要以上に参加者の心身に影響を与えないものであること,不快であれば途中で離脱する自由が保障されていること,誠実なデブリーフィングが行われることなどが第三者によって確認される決まりにもなっています.
(引用終)

なるほど〜
レギュラー化したら面白そうな番組ですが、
「大科学実験」同様、手間暇かけて作った方がいい番組なのかもしれませんね。
だから、粗製乱造よりも、1ヶ月〜数ヶ月に1本程度の放送が妥当なのかも?

2015年4月27日 (月)

書評:池上彰 著『超訳 日本国憲法』(新潮新書)

池上彰さんが日本国憲法全文を解説すると、
こんなにわかりやすくなるものか、とオドロキの本でした。
2015年4月20日初版の『超訳 日本国憲法』です。

以前、必要に迫られて憲法に関する本を何冊か読みましたが、
はっきり言って、退屈かつ苦痛でした。
しかし、池上彰さんの解説及び「超訳」によって、
何か初めてヴェールを剥ぎ取られたような感がありました。

難しい法学の講義のようにではなく、
テレビでおなじみの、豊富なニュース事例を具体的に挙げての逐条解説は、
日本国民なら右派左派中道問わず、
一読の価値はあると思いますし、
社会科(公民・政治経済)を勉強中の生徒・学生や、
各種公務員試験に受験予定の人にもわかりやすいと思います。

憲法各条のうち、
古めかしい表現や難解箇所を「超訳」してわかりやすくして、
日本国憲法にかかる蜘蛛の巣を見事にはらいのけてくれた業績には拍手喝采です。
(なお、すべての条文を「超訳」しているわけではありません。)

憲法を語る上で最も争点となっている、第9条については、
すべての戦争を放棄したという解釈と、
自衛権は保持した(政府解釈)、という解釈の2つに基いて、
2通りの「超訳」が掲載されています。

本文から引用します。

(引用)
まずは、すべての戦争放棄バージョンです。

《第九条 日本国民は、正義が守られ、混乱しない国際社会を実現することを誠実に強く求め、あらゆる戦争を放棄する。国際紛争を解決する手段として、武力を使って脅すことや武力を使うこともしない。
② 武力は使わないと宣言したのだから、陸軍も海軍も空軍も、その他の戦力も持たない。国が他国と戦争する権利は認めない。》

 一方、政府の解釈を訳せば、次のようになります。
《第九条 日本国民は、正義が守られ、混乱しない国際社会を実現することを誠実に強く求め、侵略戦争を放棄する。武力を使って脅すことや武力を使うことは、国際紛争を解決する手段としては放棄する。しかし、自衛権までは放棄したわけではない。
② 侵略戦争や国際紛争を解決するための武力による脅し、武力行使はしないので、そのための陸軍や海軍や空軍や、その他の戦力は持たない。国が他国と戦争する権利は認めない。だが、自衛のための力を持つことまでは否定しない。》

(『超訳 日本国憲法』PP.47〜48から引用終)

単に憲法の全文を逐条解説のようなことをして終わり、ではなく、
今を、そしてこれからの日本の未来を読み解くために、
時事的な話題である、「集団的自衛権と日本国憲法」というテーマで、
1章を設けています。
集団的自衛権の議論の際に、安倍首相が使ったレトリックについて、
このように述べています。

(引用)
 安倍首相は、集団的自衛権の必要性を強調する記者会見の中で、日本人母子を保護した米軍の艦船が攻撃された場合、自衛隊は米軍の艦船を守ることを認めるべきだと主張しました。
 ところが、アメリカ国務省領事局のウェブサイトを見ると、「緊急時にアメリカが救出するのは米国籍の市民を最優先する」と書いてあります。さらに「市民救出のために米軍が出動するというのは、ハリウッドの台本だ」とも。つまり、安部首相が例に挙げた「米軍が日本人の母子を救出」というのは、二重にありえない設定なのです。
 感情論に訴えて自己の主張を通そうとするのは、よくある手法ですね。

(同著PP.199から引用終)
こういうお粗末なレトリックを見抜けず、なし崩し的に解釈改憲に進んでいる、
今の日本の政治は、危機的な状況にあるといえないでしょうか?

この『超訳 日本国憲法』には、おまけとして(?)、
北朝鮮、中国、米国の憲法もそれぞれ1章あてて取り上げています。
中国は、黒見出しで「憲法を守ると逮捕される国」というのがありました。
(同著PP.211)
憲法と現実との乖離を少し皮肉を交えて書いています。
しかしこれは「中国だから」「北朝鮮だから」「米国だから」
で笑って済ませる話ではないと思います。
我々が政治に無関心になればなるほど、政治家はやりたい放題で、
戦争ができる国が「豊かな国」で、報道の自由はなくなり、
福祉を切り捨て、大企業に有利な世の中になり、
いつの間にか労働者の賃金が東南アジアや中国の内陸部並になるのかもしれません。
あるいは、米国流に、自分を守る権利としての銃所持まで出てくるかもしれません。
私は闇雲に「憲法を守れ!(改憲反対)」と主張する気はありませんが、
正式な手続き(国民投票)抜きで、政府の勝手な解釈改憲次第で、
白を黒というような世の中になってほしくはないと願っています。

2015年4月13日 (月)

NHK・ニュース シブ5時「学力トップクラス 福井の子どもの学び方」(2015年4月13日放送)

NHKの夕方のニュース番組「ニュース シブ5時」で、
2015年4月13日に、
「学力トップクラス 福井の子どもの学び方」という特集を放映していました。
録画して視聴しました。
全国学力テストで小中ともトップクラスの成績を誇る福井県の、
学力向上の秘密とは・・・

番組ではいくつかの要因を挙げていました。
1.宿題の多さ。
宿題をやり遂げるのに帰宅してから1時間以上かかることも多いそうです。
修学旅行から帰ってきても、振り返りを原稿用紙何十枚も書かされるとか・・・
2.無言掃除
ぞうきんで丹念に床やトイレなども掃除する。
ぞうきんがけだけで10分間程度。その間、私語は厳禁。
これが、イヤなことでも忍耐強く頑張ることができる基礎になっているそうです。
3.共働き家庭が多いが、
家庭(祖父母→実父母)がしっかりと子どもの家庭学習に目を光らせている。
(家庭の安定!)
4.教師を尊敬・信頼している。
5.教師間の連携・研鑽が充実している。

都道府県別統計とランキングで見る県民性」というサイトによると、
2014年度の小学生通塾率では、福井県は33位、39.9%とのことです。
ちなみに最下位は秋田県。なのに学力テスト全国1位・・・

我らが北海道は・・・
これ以上書くと、愚痴になるだけですね・・・
札幌市は市長が変わりましたが、
まだまだ民主党天下=北教組やりたい放題が続きそうです。
教員にとっては一安心???
(保護者にとってはため息か・・・
いやいや、最初からセンセイ方にはあまり期待していないので・・・)
でも札幌市以外なら・・・
少しずつですが、学力向上への取組が進行中です。

2015年4月10日 (金)

BS-TBS 林修・世界の名著 #1「戦争と平和」(トルストイ)(2015年4月9日放送)〜著名人が語る名著の魅力

2015年4月9日からBS-TBSで放送が始まった、
林修・世界の名著」。
林修先生が著名人と対談しつつ名著の魅力を語る番組です。
第1回のゲストは東京都知事の舛添要一氏。
トルストイの大作『戦争と平和』を語り合いました。

名著を語る、という番組としては、
現在、NHKEテレの「100分 de 名著」がありますが、
あちらは名著のエッセンスをコンパクトに「学ぶ」という要素が強いです。
一方、この「林修・世界の名著」では、
本の全体像はつかめないものの
(今回の『戦争と平和』であれば、
一応は主要登場人物の相関図などが紹介されていましたが・・・)
著名人(今回なら、舛添知事)が、紹介する本のどういうところが好きなのか、
本を読んだ時のエピソード
(今回であれば、大学受験勉強の後深夜に読み進めて、寝不足になったことなど)を、
興味深く語っているところが魅力でした。
林修先生が無理やり好きなマンガの話に持ち込むところは少し笑えましたが、
聞き手としてなかなかだと思いました。

こういう教養を深める番組は大歓迎です。
ところで、私は高校生の頃、『戦争と平和』に挑戦してみましたが、
描写の細かさと人物の多さに辟易して1巻の100頁も読まずにギブアップ・・・
この番組を観てから妻が一言・・・
「映画を観た方がいいんじゃないの?」
妻も興味深く視聴していました。

メインスポンサーは聖教新聞ですが、
なかなかいい仕事だと思いました。
欲を言えば、字幕放送だったらもっと素晴らしいのでは?

2015年4月 9日 (木)

BS11・響け!ユーフォニアム 第1話(2015年4月8日深夜〜放送開始)〜楽器の描き方と演奏シーンが魅力!

BS11で京都アニメーション制作の「響け!ユーフォニアム」が、
2015年4月8日深夜(9日)からオンエアとなりました。
この作品、アニメ化を知ったのは、今年の2月頃でした。
ある書店の文庫コーナーを見ていた時に、
偶然、原作の小説が平積みされてあったのを見つけ、
オビを見ると、
京都アニメーションで4月からアニメ化されることが書いてありました。
これは楽しみ!と思いました。
なにせ、吹奏楽とクラシック音楽関係者ぐらいしか知らないと思われる、
「ユーフォニアム」をタイトルに持ってくるだけでも、
なかなか意識が高いな、と思わせました。
(といいつつ、さすがに原作を買って読むまでは至りませんでしたが・・・)

実際の放送は、録画して観ました。
背景や楽器(演奏シーン含む)の映像が緻密で美しく、
なおかつ、メインキャラクターがカワイイですね。
演奏シーンでは、音の外し具合(下手さの表現)がいい意味で絶妙でした。
(高校に入学してすぐのシーン)
しかも選曲が、「暴れん坊将軍」のOP曲!
なんとも微妙・・・
部活のシーンのチューニングの所もスゴイ!
(チューニングを聴いてメインキャラの3人のうち2人が「ヘタ」と判断・・・)

演奏シーンだけでなく、主人公の心情描写の繊細さも魅力です。
あと、舞台となっている宇治の背景描写も、
まさに行ってみたくなる感じかもしれませんね。
(横断歩道の押しボタンのさびれ具合の描写がスゴすぎ!)
背景だけで言えば、同じ京アニの「氷菓」みたいな感じになるのでしょうか?
(新たな「聖地」誕生?)

私自身はクラシック音楽が好きとはいえ、
どちらかというと吹奏楽(部)はあまり興味がない分野でした。
チューニングとかマウスピースの吹き方といった、
吹奏楽にあまりなじみのない視聴者にも興味が持てるようなシーンもあり、
そのうち「けいおん!」シリーズによる「軽音楽」ブームみたいに、
吹奏楽ブームが到来するのでは、と予想してしまいました。
学園モノのアニメといえば、最近は魔法か暴力かハーレムものばかりですが、
久々に積極的に観てみたいと思える作品かな、と感じました。

原作の小説第1巻です。
なんと、現役大学生が書いたのですね!
機会があれば読んでみたいと思います。

【TVアニメ化】響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ
(宝島社文庫 『日本ラブストーリー大賞』シリーズ)

関連記事(番組HP等を除く)です。
【響け!ユーフォニアム】第1話 感想 京アニの本気!!劇中歌に暴れん坊将軍てww
宇治舞台に吹奏楽部の青春描く 同大生で作家の武田さん
響け!ユーフォニアム : 異色の吹奏楽アニメの裏側 京アニ監督が語る

2015年4月 7日 (火)

マーラー:交響曲第10番聴き比べ(2)〜第1楽章「アダージョ」のみの演奏7種

マーラーの交響曲第10番、
今回は第1楽章「アダージョ」のみの演奏を取り上げます。
前回はデリック・クックによる全曲版を取り上げました。
全曲版(クック版その他)による演奏が増えて来ている一方、
国際マーラー協会では第1楽章のみを全集版として収録・出版しています。
マーラー自身のオーケストレーションに依らないからです。

 

第10番の全曲版各種を聴きながら、
私は西洋美術史に残る、ある作品をつい連想しました。
さて、下の写真は、ある超有名な芸術家の未完の作品です。
誰の作品だと思いますか?
(西洋美術に詳しい方ならカンタンすぎる問題ですが・・・)
もしかして、モダンアート?

 

 

250pxmichelangelo_piet_rondanini

 

 

答えは、ミケランジェロです。
「ロンダニーニのピエタ」という、
最晩年のミケランジェロがまさに倒れる直前まで制作を続けていた、
と言われる未完の作品です。
もしこれが他の芸術家の作品だったとしたら、
単に「出来損ない」で片付けられる、無価値なものだったでしょう。
しかし、ミケランジェロ作ということで、
この作品は消えない価値を持つようになりました。
(ちなみに、約20年ぐらい前、ミラノで実物を見たことがあります。
この作品を知ったのは、
ロマン・ロランの『ミケランジェロの生涯』という本によります。
残念ながら現在絶版・・・
ロマン・ロランの著作は、もはや読まれなくなっているのでしょうね。)

 

マーラーの第10番も、未完ながら、
まさに「ロンダニーニのピエタ」のように、
正真正銘マーラーの作品として当然認知されるべきであるし、
できれば第1楽章のみならず、
いずれかの全曲版によって鑑賞されるべき作品であると確信しています。

 

とはいえ、第1楽章「アダージョ」だけでも十分な美しさを持っているのも事実。
クック版その他の補筆版ではなく、
マーラー自身のオーケストレーションを重視したい、
という指揮者の主張も一理あります。
後述の、テンシュテット指揮ウィーン・フィルによる演奏のライナーノーツには、
このような文が書かれていました。

 

(引用)
あるとき私(注:ヘンリー・フォーゲル氏。記事の執筆者。)は彼(テンシュテット)に尋ねた。デリック・クックによるこの10番の完成版を演奏することが心によぎったことがあるかと。とてもできないと彼はいい、極めて興味深い返答なのだが、マーラーが実際作曲し校訂した冒頭のアダージョのみがこの楽章にふさわしい価値あるものなのだと答えた。 (引用終)※訳者不明。

 

なるほど・・・

 

それでは、今回取り上げる7盤を紹介します。
録音の古い順に並べます。
(なお、全曲版として演奏されたもの(前回記事)は、
今回取り上げません。
第1楽章で完結するものとして演奏するのか、
全曲版の第1楽章(スタート地点)として演奏されるかという扱いの違いは、
意外と大きいのでは、と考えるからです。)

 

◯バーンスタイン指揮ウィーン・フィル(1974)DG 25:57
※カップリング 交響曲第8番

 

 

◯バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1975)SONY 26:28
※交響曲全集旧盤の1枚

 

 

◯テンシュテット指揮ウィーン・フィル(1982)Altus 29:52
※カップリング ベートーヴェン:交響曲第3番

 

 

 

◯マゼール指揮ウィーン・フィル(1985)SONY 26:16
※交響曲全集の1枚

 

 

◯アバド指揮ウィーン・フィル(1988)DG 24:25
※カップリング 交響曲第1番

 

 

◯ベルティーニ指揮ケルン放送響(1991)旧EMI 26:04
※交響曲全集の1枚

 

 

◯ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団(2010)DG 24:04
※カップリング 子供の不思議な角笛

 

 

図らずも、7枚中4枚がウィーン・フィルとなってしまいました。
それでは、順位をつけてみましょう。

 

1位 ベルティーニ盤
2位 マゼール盤
3位 バーンスタイン・NYP盤
4位 テンシュテット盤
5位 ブーレーズ盤
6位 アバド盤
7位 バーンスタイン・VPO盤

 

1〜3位はこの曲が好きならぜひ持っていた方がいいと思う盤です。
4〜7位はお好みでどうぞ、ぐらいかな・・・

 

ベルティーニ盤、マゼール盤はこの曲の美感を最大限まで引き出しています。
特にベルティーニ盤は、全曲版を聴いてみたい、というきっかけになった演奏です。
マーラーと妻アルマの愛憎劇が浮かんでくるような感じがします。
マゼール盤、バーンスタイン・SONY盤、テンシュテット盤は、
いずれも第1楽章だけで十分完結している、と言わんばかりの熱演です。

 

力演はテンシュテット盤です。
この中で最も長い時間粘っていますね。
最もドラマティックな演奏といえます。
ただ、演奏時間が短ければ「味が薄い」かというと、そうでもないのです。
あまり思い入れが乏しいアバド盤も十分な美演ですし、
ブーレーズ盤は、この曲を解剖するかのような精緻さで、
見事に作品の価値を引き出しています。

 

ブーレーズ盤は1度だけ聴くと素っ気ないだけに聞こえますが、
何度か聴くと作品そのものが指揮者の体臭なしに全貌を現します。
鑑賞というよりは、楽曲分析にピッタリの演奏といえます。
ただ、マーラーの「第9」の続編というよりは、
なんだかシェーンベルクの「浄夜」の一歩手前のような作品という印象も受けました。
(ブーレーズ盤はタワレコで安売りしていたので、
この際に手に入れてみました。以前なら見向きもしなかったはずですが・・・
同時に第2番、第8番のCDも入手しました。
第8番についてはそのうち書いてみたいと思います。)

 

バーンスタインのDG盤は、録音がぱっとしないのが残念です。
交響曲第8番のオマケと考えた方がいいと思います。
以前の私にとって、
マーラーの第10番「アダージョ」といえばこの盤だったのですが、
だからこそ、理解と共感を妨げていたのかもしれません。

 

ただ、どんなに第1楽章「アダージョ」が美しくても、
そこで止まらず、ぜひとも全曲版を通して聴くことに挑戦してほしいものです。

2015年4月 6日 (月)

美少女戦士セーラームーン・新旧アニメ版見比べ

ついにNHKがBSでセーラームーン(第1作)を2015年4月6日から放映・・・
折しも、民放(北海道ではテレビ北海道)でも4月6日(5日深夜)から、
新作の「美少女戦士セーラームーンCrystal」を放映開始・・・
(BS11では4月12日から。)
ということで、別にセーラームーンファンではないですが、
ついつい録画してどちらも観てしまいました。
実は旧作の第1話は今回初めて観ました。
(もうその当時はあまりアニメは観ていなかったのですが・・・)
当時幼児だった姪が好きだったので、たまに一緒に見ていたことがあります。
(第1シリーズではなかったと思いますが・・・
その姪も、既に社会人です。時が経つのは早いものですね〜)
NHKがまさか「セーラームーン」を放映するとは・・・
これも時代の流れを感じてしまいました。
(最近だと、暴力的な映画もBSで放映するようになっていますしね・・・)

旧作の1話と、新作の1話はまったく同じ話ですが、
細部は違います。
(OPとEDがももクロとか、そういうことではなく・・・
あと、CGを多用しているというのも除きます。)
覚えている限りで大きく違うところを列挙すると・・・

・ルナとの出会い
(旧作)子どもたちにいじめられていたところを助けた。
(新作)うさぎが登校途中でルナのしっぽを踏んでしまった。
・タキシード仮面との出会いの服
(旧作)普通の服(上はジャケット)
(新作)タキシード(←目立ちすぎるだろ!と思わずツッコミ)
・妖魔との戦いにおけるタキシード仮面の役割
(旧作)バラの花を投げて助ける
(新作)「今がチャンスだ」と声をかけるだけ

あと、旧作がかなりコミカルテイストで主人公も少し幼さが見られたのに対して、
新作はコミカル色はほぼなく、キャラが崩れるところは無く、
パッと見ると身長180センチメートル以上あるのでは、と思われる描かれ方で
完全な大人体型のプリンセスという感じでした。
(廊下に立たされるシーンから推測してみたのですが・・・
違っていたらゴメンナサイ。)

良くも悪くもやはり日本の代表的なアニメの一つなのだな、
と実感した次第でした。
旧作の1話目で、妖魔がやられるところは、
東映の特撮ヒーローものみたいで(逃げればいいのに逃げない、というお約束・・・)、
思わず笑ってしまいました・・・

2015年4月 1日 (水)

マーラー:交響曲第10番聴き比べ(1)〜クック版4種+バルシャイ版+インバル指揮2種〜実はマーラー版「幻想交響曲」?

マーラーの未完成の大作、交響曲第10番。
マーラーの死によって完成できなかった作品です。
デリック・クックによる補筆完成版の存在は昔から知っていましたが、
作曲者以外の人が大幅に手を入れた作品は聴くに値しないと思い、
全曲版は意図的に聴くのを避けていました。
今回は第1楽章「アダージョ」だけの演奏は取り上げず、
全曲盤のCDのみを取り上げます。
(全曲盤と第1楽章「アダージョ」だけのものでは、
かなり扱いが違ったものになります。)
なお、第1楽章「アダージョ」のみの記事はまた別の機会に書きたいと思っています。

 

だいぶ前から、第1楽章「アダージョ」だけの演奏は聴いていました。
バーンスタイン指揮ウィーン・フィルの演奏です。
きれいな曲だが、弱々しい(というか、オーケストレーションが薄いというか)
感じが否めず、ごく稀に聴く程度でした。
あのバーンスタインをもってしても、味付けのしようがない?

 

(参考)バーンスタイン指揮VPO(DG)

 

 

※第8番とのカップリング。

 

評価を変えるきっかけになったのは、
マゼール指揮ウィーン・フィルの演奏です。
マーラーの第9のオマケ程度にしか思っていませんでしたが、
第9の第4楽章アダージョに並ぶ価値があるのだと気づくことができました。

 

(参考)マゼール指揮VPO

 

 

※第9番とのカップリング。
ちなみに私が現在所有しているのは全集版。
上記CDがすばらしかったので、全集版に買い替えました。

 

(参考)マゼール指揮VPO全集盤(大地の歌を除く)

 

 

さらに、不完全な形でもいいから全曲を聴いてみたいと思ったのが、
最近(2015年3月)入手した、
ガリー・ベルティーニ指揮ケルン放送交響楽団による、
マーラー交響曲全集によってでした。
この全集では、第1楽章「アダージョ」しか収録されていませんですが、
すごく美しい曲であることを改めて確信しました。

 

(参考)ガリー・ベルティーニ指揮ケルン放送響の全集盤

 

 

そこで、思いきっていくつかの盤を買って聴いてみました。
参考にしたのは以下のサイトです。
→①マーラー 交響曲第10番(全曲盤) 所有盤ディスコグラフィ →②マーラー 交響曲第10番 ---補筆版を容認するか否か--- →③マーラー : 交響曲第10番(デリック・クック版) 特に①のサイトは、全曲盤を38種類も持っていて、
一つ一つに適切なコメントを書いておられるようなので、
購入に際しては大変心強い「ガイドブック」的存在となりました。

 

 

今回取り上げるCDは以下の5枚です。
(2015年4月11日追記 インバル指揮2種を追記済)
録音の古い順に並べます。
(その他に全曲版としては、
ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団による、
カーペンター版も所有していますが、今回は割愛します。
カーペンター版は評判ワルイですね・・・
さすがに未だに聴く気になれないのでパス!
ただし、第1楽章だけなら別の機会に取り上げようと思います。)

 

◯クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン交響楽団(1979)
※デリック・クック版第3稿第1版使用

 

 

第1楽章 23:09
第2楽章 13:04
第3楽章 04:02
第4楽章 11:14
第5楽章 21:48

 

◯ジェームズ・レヴァイン指揮フィラデルフィア管弦楽団(1978〜80)
※デリック・クック版第3稿第1版使用

 

 

※第1、3、4〜7,9、10番の選集。

 

第1楽章 24:39
第2楽章 11:57
第3楽章 04:18
第4楽章 12:41
第5楽章 28:32

 

◯サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィル(1999)
※デリック・クック版第3稿第2版使用

 

 

第1楽章 25:11
第2楽章 11:24
第3楽章 03:55
第4楽章 12:06
第5楽章 24:47

 

◯ルドルフ・バルシャイ指揮ユンゲ・ドイチェ・フィル(2001)
※バルシャイ版

 

 

第1楽章 25:53
第2楽章 11:41
第3楽章 04:15
第4楽章 11:02
第5楽章 20:59

 

◯ダニエル・ハーディング指揮ウィーン・フィル(2007)
※デリック・クック版第3稿第2版使用

 

 

第1楽章 25:50
第2楽章 11:08
第3楽章 04:01
第4楽章 11:59
第5楽章 25:02

 

第10番全体を通して聴いて、
やはり聴き応えがあるのは、当然第1楽章です。
私にはマーラーの妻アルマの肖像のように思えます。

 

Almamahler1909a

 

冒頭のヴィオラの旋律は、マーラーがついウトウトしつつ、
夢の世界に入り込むようなイメージなのでしょうか?
(勝手な想像でゴメンナサイ。)
非常に静謐で美しい調べは、まさにアルマとの愛の日々の回想なのでは?
しかし、不穏な調べが出てきて、絶叫調(ホラー映画級!)に到達するところは、
見てはいけないもの(=妻の不倫)を見た激しい心の叫びにも思えます。
青ひげ公の館?
それでも、愛さずにはいられない苦悩・・・
そして第2楽章以降に続きます。
それはまるで、マーラー版の「幻想交響曲」なのかもしれません。
ベルリオーズの幻想交響曲がどんどん悪夢にハマっていくように、
マーラーも煉獄やら地獄をさまよい続けるのかも・・・
第4楽章の最後と第5楽章冒頭の太鼓の音
(どちらかを省略して演奏されることもありますが)は、
天国または異世界の扉の音のようにも聴こえました。
幻想交響曲は魔女が跋扈する悪夢で終わりますが、
マーラーの第10番はこの世、そして妻との死別と、
来るべき救いの世界で終わります。
だからこそ、第1楽章「アダージョ」だけで終わっては、
全貌を知ることができないのでは、と思えるようになりました。
第4楽章には、「大地の歌」の引用がでてきますよ。

 

上記に挙げた版に順位をつけると・・・
(断りがない限りデリック・クック版です。)
1位:バルシャイ指揮ユンゲ・ドイチェ・フィル盤(バルシャイ版)
2位:ハーディング指揮ウィーン・フィル盤
3位:レヴァイン指揮フィラデルフィア管弦楽団盤
4位:ザンデルリンク指揮ベルリン交響楽団盤
5位:ラトル指揮ベルリン・フィル盤
でしょうか・・・
この曲が好きなら、1位〜4位までの盤は持っていて損はありません。

 

 

バルシャイ盤は録音も優秀で他の演奏よりも華やかな印象を受けます。
第1楽章だけとっても、もっとも甘美かもしれません。
にぎやかで雄弁です。
第5楽章は、実にたくましい響きがします。
これからもっと演奏されてもいい版だと思いました。

 

ハーディング盤は、キワモノとみられがちなクック版も、
ついに「古典」の評価を受けるにふさわしいものと認識されたのでは?
と思えるような、おそらく今後のこの曲の演奏の標準になるような盤になると思います。
全体的に幽玄なイメージです。

 

レヴァイン盤も美しい演奏です。
レヴァインといえば、健康的なエンターテイナーというイメージしかありませんが、
ここでは類稀な芸術性を十分に発揮しています。

 

ザンデルリンク盤も演奏、録音共に優秀です。
ラトル盤は期待していたのですが、少し期待外れな感じがしました。

 

そのうち第1楽章「アダージョ」だけの記事を書く予定です。 ちなみに、この第10番全曲盤は、残念ながら妻からは不評でした・・・(;д;)

 

(2015年4月11日追記)
「題なし」の及川様からコメントがあり、
インバル盤をオススメでしたので、
フランクフルト放送交響楽団を指揮した旧盤(1992)と、
東京都交響楽団を指揮した新盤(2014)をどちらも買い求めて聴いてみました。

 

旧盤

 

 

第1楽章 22:50
第2楽章 11:04
第3楽章 03:58
第4楽章 11:04
第5楽章 21:53

 

新盤

 

 

第1楽章 23:04
第2楽章 12:06
第3楽章 04:06
第4楽章 11:27
第5楽章 21:24

 

どちらも録音が優秀です。
しかし断然、SACDである新盤の方が迫力があります。
第4楽章最後と第5楽章最初の大太鼓ドン!!という響きは、
心臓に悪いかも・・・

 

彫りの深さはやはり新盤の方が優れています。
ただし、録音が鮮明なため、指揮者の唸り声まで克明に聞こえてしまいます・・・
(唸り声も音楽だ、とか、
グレン・グールドの演奏で「免疫」ができてるよ、というなら別ですが・・・)
旧盤では唸り声は聞こえません
(あるのかもしれませんが、少なくとも、気になりません。)。
旧盤は全体的に少しひんやりとした響きがします。
新盤は指揮者の汗が見えてきそうなぐらい熱い響きがあります。

 

ハーディングの指揮と比較するなら、
ハーディング盤は静、インバル新盤は動という感じかもしれません。
完全に情念とかドロドロさが消毒されて、
響きの美しさだけが残ったハーディング盤か、
適度に情念やドロドロ感が残されたインバル指揮か・・・
あとはお好みですね。

2015年3月のページビュー(PV)数ベスト10記事一覧

2015年3月のページビュー(PV)数ベスト10記事は以下のとおりです:
(※トップページを除く)
ベスト3までは記事リンクをつけています。

一位.NHK札幌・北海道クローズアップ「心に響く本を~ある“本屋の親父”の挑戦~」
(2015年2月27日放送)

二位.NHKEテレ・クラシック音楽館「N響コンサート 第1798回定期公演」
(2015年3月8日放送)〜ソリストにユジャ・ワン(Yuja Wang)登場!

三位.NHKEテレ・こころの時代~宗教・人生~「この軒の下で」
(2015年3月14日再放送)

四位.「学び合い学習」は日本の義務教育崩壊を招く!
~おすすめ記事『【解答乱麻】 TOSS代表・向山洋一 亡国の教育「学び合い学習」』
(MSN産経ニュース2012年11月24日掲載)

五位.書評:奥田知志/茂木健一郎『「助けて」と言える国へ』(集英社新書)
〜脳科学者から見る教育界は変!

六位.NHKBSプレミアム・プレミアムドラマ「お母さま、しあわせ?」
(2014年12月21日放送)

七位.どの聖書が一番いいか?(新約聖書編)
八位.NHKBSプレミアム・女優 満島ひかり まだ見ぬ世界へ~シェークスピアに挑む~
(2015年2月25日放送)

九位.児童・生徒の本当の実態が書けない通知表の空虚さ・・・
十位.ピアノ五重奏曲の甘口辛口〜ドヴォルザーク、シューマン、フォーレ、
ショスタコーヴィチ、ブラームス、フランク・・・

十位.NNNドキュメント’13
「口は悪いが腕はいい…自閉症の子を救う男わが子に起きた奇跡」
(2013年2月18日放送)

先月は1位から3位までNHKネタが独占でした。
特に1位の記事は、最初に記事を書いた時(2015年2月27日)には
それほどPV数がなかったのですが、
3月16日にNHKの「おはよう日本」で記事の書店が取り上げられてから、
突如PV数が200以上となりました。
まさにNHK効果ですね。
あと、NHKEテレの「こころの時代」を観て記事を書いた、
奥田知志牧師関連の記事が2つともランクインしました。
ツイッターで奥田氏本人が取り上げてくれました。
感謝申し上げます。
(私はツイッターはやらないのでRTできなくてゴメンナサイ・・・)
10位は同数でしたので、2記事とも載せました。

今日から新年度ですね。
札幌では桜はまだですが、今月末には咲くらしいです。
今月もご愛読よろしくお願いします。

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