書評:奥田知志/茂木健一郎『「助けて」と言える国へ』(集英社新書)〜脳科学者から見る教育界は変!
NHKEテレの「こころの時代」2015年3月8日放送で取り上げられた、
北九州市の東八幡キリスト教会牧師、奥田知志氏の話に興味を持ち、
買って読んでみました。
奥田知志/茂木健一郎『「助けて」と言える国へ』(集英社新書)です。
(過去記事→
NHKEテレ・こころの時代~宗教・人生~「この軒の下で」(2015年3月14日再放送))
「助けて」と言える国へ ──人と社会をつなぐ (集英社新書)
ホームレス支援のプロフェッショナルである奥田氏と、
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」の司会者であった、
茂木健一郎氏との対談です。
初版が2013年ですので、東日本大震災以後です。
例の「絆」が独り歩きしている風潮にも疑問を投げかけています。
ホームレス支援から見える現代日本社会の病理が、
二人の対談を通して炙りだされていきます。
奥田氏の行動の背景にあるキリスト教信仰についても、
非キリスト教徒である茂木氏なりの理解と考察があります。
本題であるホームレス支援の他に、
とても印象に残ったのが2つあります。
1つ目は、タイガーマスク現象(匿名の人が、児相などにランドセルを寄付すること)と、
東日本大震災直後から出てきた「絆」についてです。
対談の中でも何回か出てきますが、奥田氏本人の文章でまとめられていますので、
引用します。
(引用)
人と人が本当に出会い絆を結ぶ時、喜びは倍加する。しかし傷つく。それは避けては通れない。出会った証と思えばいい。長年支援の現場で確認し続けたことは、「絆(きずな)は傷(きず)を含む」ということだ。傷つくことなしに誰かと出会い、絆を結ぶことはできない。誰かが自分のために傷ついてくれる時、私たちは自分は生きていいのだと確認する。同様に自分が傷つくことによって誰かが癒されるなら、自分の存在意義を見出せる。絆は、自己有用感や自己尊重意識で構成される。これが絆の相互性という中身だ。(中略)
社会は傷を分配する仕組みである。自己責任や身内の責任のように、一部の人に傷を負わせるのではなく、再分配する。それが、社会というものだ。タイガーマスクが胸を張って正体をバラすことができる社会をつくりたいと思う。(中略)
絆の傷は人を生かす傷である。致命傷にしてはならない。(中略)絆とは「傷つくという恵み」である。
(同書PP.240〜242より引用終)
ホームレス支援や社会保障に関することを、単に自己責任論や、
匿名での寄付といった形で金だけだして関わらない援助という形で終わらせず、
相互に「お互い様」「情けは人のためならず」という風にしたいという願いですね。
本書で印象に残った2つ目。
これが私にとってすごいインパクトがあるコメントでした。
茂木氏と奥田氏が対談している中、
奥田氏のご子息が不登校になった話が出てきました。
不登校の件について、茂木氏は不登校の子よりも、
教育界の方が病んでいるのではないか、ということで、
次のようなコメントをしています。
(引用)
茂木 僕は、脳科学をやっているので、色々な人を見ていて、ちょっと変な人というのはわかります。でも、不登校の子どもと会っても、大体ごく普通の健康な中学生という感じがします。逆に、学校の校長先生とか教育長さんの話を聞くと病的だと感じることが多いのです。文部科学省の人たちが、学校の先生の教育集会とかに来て話をするのを聞いても、その人たちの方が変わっていると思いますし、学校の先生が教育法の研究発表をすることがあるのですが、それを聞いていると全体的に変だと感じます。子どもたちの目が生き生きとしていましたとか、興味を持って取り組んでいましたとか、そもそも科学的なエビデンスが何もなくて、発表者の主観にすぎない。研究であれば、一部の条件を変えて比較しなくてはいけないのに、洗脳を受けているような印象です。
奥田 なるほど。
(同書PP.106〜107から引用終)
※下線部は筆者による。
今の教育界のいわゆる「研究授業」についての、
実に痛烈な批判が、反論の余地なくこの短いコメントの中に詰まっています。
そう、小学校の研究授業ではよく「生き生きと自分で考える子ども」とかの
研究主題が書かれていますが、一体どれだけ「研究」すれば、
それらは達成できるのでしょうか?
何でそんなに「研究」され続けなければいけないのでしょうか?
(「生き生きと自分で考える子ども」という、
ありもしない「理想の子ども像」を追い続ける、錬金術みたいなもの?
ここまで来ると単に「ドグマ」そのものです。)
「生き生きと」とは、計測したり、科学的に再現できるものでしょうか?
答えは「否!」ですね。茂木氏の指摘どおり、
「そもそも科学的なエビデンスが何もなくて、発表者の主観にすぎない。」のです!
茂木氏は「洗脳を受けているよう」とまで述べています。
インチキエセ宗教「問題解決教」でしょうか?
王様は裸だ、と教師同士では言わない・・・
だからこそ、「外圧」が必要なのです。
そうでなければ現状維持のままで、
教師のインチキ「研究」は続くのでしょうね・・・
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