NHKEテレ・こころの時代~宗教・人生~「この軒の下で」(2015年3月14日再放送)
NHKEテレの「こころの時代」
(毎(日)5〜6時 再放送毎(土)13〜14時※2015年3月現在)では、
時々キリスト教の牧師や神父などを取り上げてくれます。
2015年3月14日再放送(本放送は3月8日)の回では、
「この軒の下で」と題して、
北九州市の東八幡キリスト教会牧師、奥田知志さんを特集していました。
ホームレス支援活動で知られ、
過去にはNHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」でも取り上げられました。
(私はその回は観ていませんが・・・)
番組では、ユニークな木造建築の「軒の教会」のコンセプトと、
奥田牧師の活動を、インタビューを交えて紹介していました。
日本の家屋及び社会的あり方として、失われつつある「軒」。
「軒」を取り入れた、社会に開かれた教会(堂)の姿。
あと、困窮者のためのシェルターや、
路上生活者でいわゆる「無縁仏」になっている人を記念する、「記念堂」。
一番感銘を受けたのは、洗礼(バプテスマ)を受けるための、
「バプテストリー」(洗礼槽)が、高いところではなく、
床下にあるところでした。
私も、以前、札幌バプテスト教会(旧会堂時代)で、
講壇の上部に位置するところにあるバプテストリーで、
バプテスマを受けるのを見たことがあります。
会衆全員から見える位置にありました。
しかし、番組の中で、奥田牧師は、
キリストの謙卑(フィリピ2章)を引き合いに、
「バプテスマとは、天にのぼっていくのではなく、
低みへ下っていくのだから、バプテストリーを低い位置にした。」
というような事を述べていました(発言の引用は正確ではないですが・・・)。
なるほどと思いました。
後半は、ホームレス支援についての話でした。
教会員が、社会活動についていけなくなり、
教会から離れていくことが増えるなど、
決して順風満帆な歩みではなかったことが語られます。
日本のキリスト教会(カトリック・プロテスタント・正教会)において、
よく出てくるのが、「伝道か、社会活動か」というヘンな二者択一です。
「みことばへの奉仕」とか「霊的」=社会活動を行わない?
「宣教とは社会活動だ」?
まず、社会活動そのものは、決して「宣教」ではありませんし、
キリスト教会固有の活動でもありません。
(社会活動をする宗教団体はたくさんあります。)
反戦平和の政治活動や、沖縄の基地移設反対運動、
国旗国歌に反対することや、
ホームレス支援活動を行うのが、
キリスト教会の宣教だ、という風潮には私は「否!」と言います。
ニセモノの福音です。
しかし一方、「教会」と「この世」を分けて、
世の中に関心を持たず、
身近で困窮している人がいてもそしらぬ顔で通りすぎてしまう・・・
(イエス様の「善いサマリヤ人」のたとえそのものですね。)
そういう信仰は果たしてホンモノでしょうか?
私の兄弟たち。だれかが自分には信仰があると言っても、その人に行いがないなら、何の役に立ちましょう。そのような信仰がその人を救うことができるでしょうか。もし、兄弟また姉妹のだれかが、着る物がなく、また、毎日の食べ物にもこと欠いているようなときに、あなたがたのうちだれかが、その人たちに、「安心して行きなさい。暖かになり、十分に食べなさい」と言っても、もしからだに必要な物を与えないなら、何の役に立つでしょう。それと同じように、信仰も、もし行いがなかったなら、それだけでは死んだものです。
(新約聖書ヤコブの手紙2:14〜17新改訳)
古くから議論される「信仰」と「行い」の対比ですが、
そもそも「信仰」と「行い」の二元論ではないのです。
「信仰によって救われる」(「信仰によって(のみ)」の「のみ」は余計語!)のは、
確かなことですが、信じる(信じて救われる)ならば、生き方そのものが変わるはずです。
信仰と行いの一体性は、使徒ヤコブのみならず、
対極とされる(本当は違うのに)使徒パウロも述べています。
キリスト・イエスにあっては、割礼を受ける受けないは大事なことではなく、愛によって働く信仰だけが大事なのです。
(新約聖書ガラテヤ人への手紙5:6新改訳)
私たちは神の作品であって、良い行いをするためにキリスト・イエスにあって造られたのです。神は、私たちが良い行いに歩むように、その良い行いをもあらかじめ備えてくださったのです。
(新約聖書エペソ人への手紙2:10新改訳)
使徒ヨハネは、もっとはっきり「救われた人の生き方」を述べています。
私たちは、自分が死からいのちに移ったことを知っています。それは、兄弟を愛しているからです。愛さない者は、死のうちにとどまっているのです。
世の富を持ちながら、兄弟が困っているのを見ても、あわれみの心を閉ざすような者に、どうして神の愛がとどまっているでしょう。子どもたちよ。私たちは、ことばや口先だけで愛することをせず、行いと真実をもって愛そうではありませんか。
(ヨハネの手紙Ⅰ3:14,17〜18新改訳)
番組の中では取り上げられませんでしたが、
東八幡キリスト教会のHPにある、
「東八幡キリスト教会の使命(ミッション)」中の、
「3、腰にてぬぐいをしイエスに従う―隣人に仕える教会 」と、
「4、まちの教会となる―開かれた教会 」のところは感銘を受けました。
「腰にてぬぐいをし」は、ヨハネ福音書13章のところにあります。
手ぬぐいをとって弟子たちの足を洗われたイエス様・・・
しもべ(奴隷)の仕事をするまで自らを低くされたイエス様に倣い、
私たちも、愛に生きるのは、当然のことでしょう。
観念的な愛(ニーチェ流に言えば、「遠人愛」!)ではなく、
それぞれの置かれた場所で、愛を具体的に実践することが、
生きた信仰の証といえます。
番組を観て、東八幡キリスト教会のHPを拝見し、
奥田牧師について調べてみて、
奥田牧師の本を読んでみたくなり、
本を2冊注文しました。
『もう、ひとりにさせない わが父の家にはすみか多し』(いのちのことば社)と、
『「助けて」と言える国へ ──人と社会をつなぐ 』(集英社新書)
(※脳科学者・茂木健一郎氏との共著)です。
もう、ひとりにさせない わが父の家にはすみか多し
「助けて」と言える国へ ──人と社会をつなぐ
東八幡キリスト教会のHPはぜひご覧になってください。
昨年(2014年)に行われた献堂式の様子については、
「東八幡キリスト教会献堂式」(ブログ名:佐久間庸和の「天下布礼日記」)
という記事がとても充実しています。
(佐久間氏は冠婚葬祭会社「サンレー」の社長でありつつ、大学の客員教授でもあり、
「一条真也」というペンネームで、多数の本を書いている方です。
私も以前、代表的著書の『ロマンティック・デス―月を見よ、死を想え 』(幻冬舎文庫)
という本を読んだことがあります。現在絶版?)
キリスト者ではない方から見た、東八幡キリスト教会の姿です。
まさに「世の光」となって、地域で輝いている教会ですね・・・
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