ベートーヴェン:交響曲第4番聴き比べ7種〜トスカニーニ、クレンペラー2種、ムラヴィンスキー、クライバー、ヴァント、ジンマン・・・
2015年2月初めに、
カルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団による、
ベートーヴェンの交響曲第4番のCDを手に入れました。
タワレコでORFEOレーベルのバーゲンをやっていたからです。
かなり前に一時期所有していたことがありましたが、
元々ベートーヴェンの交響曲第4番自体、
カゲが薄い存在なので、曲の魅力に気づかないまま、
オサラバとなっていたわけでした。
クライバーの演奏は元々スポーツ的で、
颯爽とした感じがあります。なかなか聴き応えがありました。
そこで、久しぶりにベートーヴェンのこの曲を、
手持ちのCD7枚で聴き比べてみようと思い立ちました。
(パーヴォ・ヤルヴィのDVDや、
NHKで放送されていたマリス・ヤンソンスや、
ノリントンなどの演奏も比較の対象としたいところでしたが、
今回はCDに限定することにしました。)
実は以前、ベートーヴェンの交響曲第4番については1つ記事を書いています。
→ベートーヴェンの「交響曲第4番」聴き比べ~
ノリントン&N響、パーヴォ・ヤルヴィと過去の名盤
しかし記事を読み返してみると、
厳密な意味での聴き比べになっていないようにも思えましたので、
今回改めて記事を書くことにしました。
ベートーヴェンの「4番」は、第3番「英雄」と第5番「運命」に挟まれて、
目立たない感じがしますが、
シューマンはこの曲を評して
「二人の北欧神話の巨人(3番と5番)の間にはさまれたギリシアの乙女」
と例えたと伝えられているそうです。
私にとっては、少なくとも第5番「運命」より聴いた回数は多いです。
なぜなら、第5番は緊張感が高く、ストレスを感じるほどですが、
第4番は優美で聴きやすいからです。
第1楽章の序奏の部分が少し退屈な気がしますが、
そこを抜けたら一気に大草原や冒険の世界が拡がっているように感じます。
小説で言えば(かなり不適切なたとえかもしれませんが)、
E・ブロンテの『嵐が丘』の冒頭30頁くらいみたいなものかもしれません。
退屈な部分を超えるとめくるめく世界が拡がっている・・・
今回の聴き比べCDです。録音の古い順に並べます。
◯トスカニーニ指揮NBC交響楽団(1951)SONY(旧RCA)
※ベートーヴェン交響曲全集の中の1枚。
第1楽章;9:54
第2楽章;8:46
第3楽章;4:58
第4楽章;6:57
MONO録音ながら、聴いていると、ド迫力故に、
音質の悪さなど忘れてしまうような、筋肉質な名演です。
「ギリシアの(可憐な)乙女」なんてイメージではなく、
ミケランジェロが描いた筋肉質の聖母マリア(聖家族)を連想するほどです。
今回紹介するCDの中では、熱血度No.1かもしれません。
往年の巨匠のスゴさをぜひ堪能してみてください。
◯クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団(1957)WARNER(旧EMI)
※ベートーヴェン交響曲全集の中の1枚
第1楽章;12:27
第2楽章;10:01
第3楽章;05:50
第4楽章;07:30
◯クレンペラー指揮バイエルン放送交響楽団(1969)EMI
※カップリング;ベートーヴェン:交響曲第5番
第1楽章;13:58
第2楽章;11:35
第3楽章;06:58
第4楽章;08:43
クレンペラーの指揮は2種類あります。
(残念ながら、宇野センセイおすすめの、
ウィーンPOとの競演盤はまだ聴いたことがないデス・・・)
クレンペラーの指揮にかかると、「ギリシアの乙女」は、
まるでブルックナーの音楽のような、壮大な音宇宙を展開します!
今回聴き比べた中で圧倒的な存在感を示していました。
ベンツやBMWというよりは、それらを超えて、
大型リムジン車か、はたまた豪華列車か・・・
クライバーやジンマンの演奏とそもそも同じ曲なのかを疑うほどです。
スゴすぎて言葉を失いそう・・・
フィルハーモニア管弦楽団盤、バイエルン放送交響楽団盤、
どちらか1枚と言われれば、迷わずバイエルン放送交響楽団盤です。
ただし入手は少し難しいかも・・・
もう一言付け加えるとすれば、日常的に聴くには不向きかもしれません。
そう、あたかもブルックナーの交響曲1曲分(概ね70〜80分)を聴いたかのような、
聴き手のエネルギーをも要求される超名盤だからです。
◯ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(1973)Altus
※カップリング;リャードフ:バーバ・ヤガ他
第1楽章;9:07
第2楽章;9:40
第3楽章;5:38
第4楽章;6:44
1973年5月26日、東京文化会館でのライブ録音です。
以前はとても好きな演奏でしたが・・・
クールな中にベートーヴェンの本質が香り立つようです。
クレンペラー盤を別にすればオススメに値するCDです。
◯カルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1982)Orfeo
第1楽章;9:33
第2楽章;9:29
第3楽章;5:31
第4楽章;5:02
今回の聴き比べ記事を書くきっかけになったCDです。
スポーツカーでアウトバーンを疾走するような爽快さがあります。
難点は、序奏部が今回紹介したCDの中で一番退屈なところだけでしょうか・・・
テニスコートで白い歯がキラリ!みたいなカッコイイ(良くも悪くも)演奏です。
ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団(1987―1988)
※ベートーヴェン交響曲全集の中の1枚
第1楽章;12:07
第2楽章;09:50
第3楽章;05:56
第4楽章;06:57
ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団(1998)SONY(旧ARTE NOVA)
※ベートーヴェン交響曲全集の中の1枚
第1楽章;9:59
第2楽章;8:14
第3楽章;5:20
第4楽章;6:27
ヴァントとジンマンは芸風が違いますが、
印象が薄かったので一括りにして書きます。
たぶん、本来の「ギリシアの乙女」のイメージに近い、
こじんまりとした演奏です。
指揮者の(余計な?)解釈ではなく、
作品そのものを夾雑物なしで聴きたいときにはオススメの演奏かもしれません。
ただし、ジンマン盤は時折「あれっ?」と思うようなフレーズが出てきます。
奏者の即興演奏なのでしょうか?
今回のオススメCDはやはりクレンペラー盤です。
その他に、ムラヴィンスキー盤、クライバー盤、お好みでトスカニーニ盤があれば、
もう十分かもしれませんね・・・
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