« 書評:谷岡一郎著『「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ』 (文春新書) 〜人間、この騙され易き者・・・ | トップページ | 第65回さっぽろ雪まつりの写真(2014年) »

2014年2月 5日 (水)

佐村河内守氏の作曲偽装騒動

今朝(2014年2月5日)のNHKニュース「おはよう日本」を視聴していると、
思わず「えっ、ウソ!?」と唸ったニュースが飛び込んで来ました。
佐村河内守氏の作曲は別人が作曲した、というものでした。
食材偽装の次は、作曲偽装???
聴覚障害の作曲家 別人が作曲(NHKニュース)
東日本大震災の後、草の根的に聴き広がっていた、
交響曲第1番HIROSHIMA」や、
フィギュアスケートの高橋大輔選手がオリンピックのショートプログラムで使用する、
ヴァイオリンのためのソナチネ」も、本人の作ではないとのことでした。
(関連ニュース)
佐村河内さん楽曲は別人作=番組制作のNHKも謝罪〔五輪・フィギュア〕
佐村河内氏の“影武者”が6日に会見 「18年間…お詫びしたい」
別人作曲、レコード会社が見解…CD&DVDは出荷・配信停止
作曲家 佐村河内守氏につきまして(日本コロンビア)

私自身、佐村河内守氏の作品については、
既に2つも記事を書いています。
NHKEテレ・佐村河内守 魂の旋律~交響曲第1番“HIROSHIMA”~(2013年4月27日放送)〜障害者の芸術、というカテゴリーではなく・・・
高橋大輔選手の圧巻の演技と佐村河内守さんの「ヴァイオリンのためのソナチネ」〜フィギュアスケートNHK杯2013・男子シングル・ショートプログラム

私は、交響曲第1番HIROSHIMAを聴いて、醒めたコメントを書きました。
(詳細については上記拙記事をご覧ください。)
聴覚障害があるかないかと、作品の価値は別だと思ったからです。
(たとえばベートーヴェンの曲を聴くのに、
彼がほとんど耳が聴こえなくなっていたかなど、
取るに足らない問題に過ぎません。
いや、そんなことは、彼の作品を聴いている時に思うことはまずありません。)

一方で、この曲を聴いて、当時感動した人も大勢いるわけですよね。
Amazonで「交響曲第1番HIROSHIMA」を調べると、
早速の手のひら返しの悪罵コメントが2月5日以降多数・・・
それはともかくとして、感動はウソだったのでしょうか?
それとも、「聴力障害にも関わらず書き上げた感動作!」という、
一種のマインドコントロール、プラシーボ効果に酔っていただけなのでしょうか?
あるいは、本当に、音楽的価値があったからなのか・・・
(だとしたら、真の作曲者こそ、賞賛されるべきなのでは?
聴力障害とかの肩書・憐れみを誘う文句がないと、
価値がないとでもいうなら、それこそ障害者差別ではないでしょうか?)

私は、昨年(2013年)のフィギュアスケートNHK杯で、
高橋大輔選手が使った「ヴァイオリンのためのソナチネ」が、
ステキな曲だと思ったので、CDを購入しました。
改めて、このCDの2曲「無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌ」と、
「ヴァイオリンのためのソナチネ」を聴いてみました。
少なくとも、「ヴァイオリンのためのソナチネ」については、
作曲者が誰であろうと、どういう経緯で作られたものであろうとも、
ステキな曲だ、という評価は変わりませんでした。
以前自分で書いた文章を上記記事からそのまま引用します。

(引用)
佐村河内守さんの「ヴァイオリンのためのソナチネ」を聴くのは、
今回が初めてでした。
作曲者名を伏せたら、
フォーレやフランクなどの19世紀フランスの作曲家の作品かな?、
と間違えるそうになるほど、ロマンティックで優雅、かつ可憐な曲ですね。
高橋大輔選手の演技とともに、音楽の素晴らしさにも感動しました!

(引用終)
この文章を書いた事に後悔はありません。
私は自分自身の耳を疑いたくないですから・・・

世には作曲者が実は別人だったとしても、
愛聴者が多い曲もあります。
たとえば・・・
「モーツァルトの子守唄」(実際はフリースという作曲家)
「アルビノーニのアダージョ」(実際はジャゾットという作曲家)
あと、「愛の喜び」などで知られるヴァイオリニストのクライスラーの作品で、
「◯◯(大作曲家名)の様式による△△」(クライスラー編曲)の「◯◯」は、
実は根拠がなく、クライスラー自身の作曲だったことが後で明らかになっています。
要は、美しければ、それでいいのではないでしょうか・・・
(「アルビノーニのアダージョ」、結構好きです!)

今回の騒動で問題になるのは、
代作者がいたことよりも、障害を売り物にしていたことでしょう。
また、NHKも昨年(2013年)のNHKスペシャル等できちんと取材していたのか、
検証が必要なのではないでしょうか?
玉川大学の野本教授まで持ちだしてきて、絶賛していたほどですから・・・
作曲の過程をCGを使って解説していましたが、
あれらはすべて「モンキービジネス」だった、ということになりますね。
(ついでにいえば、NHKの「進化」関係のCG映像だってそうです。)
NHKを媒介に、日本中がお涙頂戴詐欺にまんまとハメられたわけですね・・・
(佐村河内守氏は交響曲第1番HIROSHIMAを作曲した経緯について、
本まで出版しています。買わなくてよかった・・・)

あと、よりによってソチ五輪前に、こんな醜悪な話が出たのは、
高橋大輔選手にとってとんだいい迷惑ですね。
作曲者名はともかく、音楽の価値は信じて、
全力で頑張ってほしいものです。
(関連ニュース)
<五輪フィギュア>高橋選手、SP曲の作曲者欄削除
高橋大輔SP曲変更せず…関西大がメッセージ

(2014年2月6日追記)
「佐村河内守」名義の真の作曲者(ゴーストライター)である、
新垣隆氏の記者会見記事を読みました。
新垣氏によると、そもそも佐村河内守氏は障害者と「偽装」し、
作曲家としてそもそも楽譜を書く能力がないことを指摘しています。
すなわち、「作曲家」とかその他のことも、イメージ作りにすぎない、
「偽装」だった、というわけですか・・・
もはや、民事訴訟だけでは済まない事態に発展するのかもしれませんね。
彼をここまで有名にした、NHKの報道も実に問題です。
(おすすめ記事)※水谷潔牧師のブログ
弱者偽装、弱者利用、弱者冒涜としての佐村河内問題
(ブログ名:命と性の日記~日々是命、日々是性)
【佐村河内さん代作会見詳報】(1)「私は、佐村河内さんの共犯者です」
(全8本)
※興味のある方は最初の記事からたどれば最終記事まで読めます。

« 書評:谷岡一郎著『「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ』 (文春新書) 〜人間、この騙され易き者・・・ | トップページ | 第65回さっぽろ雪まつりの写真(2014年) »

おすすめサイト」カテゴリの記事

スポーツ」カテゴリの記事

ニュース」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

音楽」カテゴリの記事

NHK」カテゴリの記事

コメント

「題なし」の及川様、コメントありがとうございます。
ホテルの食材の偽装問題のことについて触れていただいたことはまさにその通りだと思いました。芝エビかバナメイエビか、なんていうのはホテルで「優雅な夢のひと時」を過ごすには、どうでもいいことなのです(もちろん、本来ウソはよくありませんが・・・)。同じように、音楽も、作曲者が誰かよりも、その曲自体がすばらしいかどうかが大事だと思います。たとえば、ワーグナーの私生活はお世辞にも品行方正とは程遠いし、思想的にはユダヤ人差別に禍根を残しましたが、それと音楽の価値は別です。偽装だから価値がない、というのは、貧弱なブランド志向の裏返しにしかすぎません。私も高橋大輔選手とコーチがそれでも「ソナチネ」を使う、という決断をしたのは見事だと思っています。

話は変わりますが、貴ブログの新記事、楽しみにしていますので、たまに書いてくださいませ。あと、ショスタコーヴィチに関するシリーズ記事、とても参考になっています。最近、ショスタコーヴィチの「ピアノ五重奏曲」をよく聴いています。リヒテル&ボロディンSQの演奏です。ぜひこの曲についても記事を書いてください。

てんしな?日々さん

「題なし」の及川です。ご無沙汰しています。
私は、このニュースに接して以来、報道のされ方とかバッシングのされ方に、言いようのない違和感を覚えています。まだ1日しか経ってませんけどね。
で、てんしな?日々さん! よくぞ書いて下さいました。まさに本稿でご指摘のことなんですよ。有名になりCDも売れている作品の批判をされるのは勇気の要ることだと思います。

食品偽装以来、何でもかんでも偽装となれば叩きに叩くという風潮もありますよね。でも、あの問題とも共通していますが、要は中味や出来映えの問題なんですよね。ホテルのメニューで言うと雰囲気とか夢とかもあるはずです。

この人の作品、全く聴いてませんでしたが、皮肉なことに、この話題を扱うバラエティなどで極めて部分的にではありますが、短時間流れるようになりました。
で、その中ではありますが、端的に言って交響曲は作品として落ちると感じましたが、「ソナチネ」はいい曲だと思いました。高橋大輔選手がこの曲を選んだセンスと、時間の制約があるにしても、続けて使うとしたコーチの見識を讃えたいです。

大きく問題を捉えるならば、今に名前を残しているクラシックの作曲家だって、本当の処はどこまで自分で書いたか疑わしい処がありますよね。大雑把なガイドを示した上であとは助手または奥さんにやってもらったり、楽譜屋さんと打ち合わせしたり・・・。ベートーヴェンはさすがに全てを書いたと思いますが。

知られている例として、山口百惠の「蒼い時」。ゴーストライターの手になる作品だというのが既に定説化しています。突き詰めていくと、そんなものも「偽装」だということになってしまいます。

ちょっと私のブログを休載していますので、自分の記事は当面なく、従ってトラックバックもありませんが、余りにも共感できる記事でしたので、コメントさせて頂きました。

私の休載の理由は、健康問題でもやる気の問題でもなく、単に「音蔵館」収録曲の改良に集中しているだけのことです。改造中ですがよろしければ http://tkdainashi.music.coocan.jp/ にお立ち寄りください。

この記事へのコメントは終了しました。

« 書評:谷岡一郎著『「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ』 (文春新書) 〜人間、この騙され易き者・・・ | トップページ | 第65回さっぽろ雪まつりの写真(2014年) »

2025年2月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28  

カテゴリー

にほんブログ村

  • クラシックCD鑑賞
  • にほんブログ村
無料ブログはココログ