書評:『リーダーシップのダークサイド―ーー心の闇をどう克服するか』(いのちのことば社)
わたしは言う。
「闇の中でも主はわたしを見ておられる。夜も光がわたしを照らし出す。」
(旧約聖書詩編139:11新共同訳)
人間誰しも、心の中に「闇」(人に見せたくない・見せられない面)があります。
ほかならぬこの私もそうです。
では、教会のリーダー(指導者)ならどうでしょうか?
牧師先生や神父様は違うよ・・・そんなことはアリエマセン!
今回紹介する、
『リーダーシップのダークサイド―ーー心の闇をどう克服するか』(いのちのことば社)
では、アメリカの教会指導者(や政治指導者等)の豊富な事例から、
リーダーの心に潜む「闇の部分(ダークサイド)」を探り、
読者に自己検証テストでどの分野に闇があるかを明確にさせる、
教会のリーダー的役割を果たす人には必読の本です。
著者はゲーリー・L・マッキントッシュ&サミュエル・D・ライマです。
リーダーシップのダークサイド―ーー心の闇をどう克服するか
アメリカでは、80年代にテレビ伝道者の相次ぐ不祥事が起きてしまいました。
本書では触れられていませんが、ヨーロッパやアメリカのカトリックでは、
聖職者による少年少女への性的虐待がようやく告発されてきています。
(前教皇が任期中に退任したのは、健康問題もさることながら、
この問題を抱えきれなかったからだ、とも言われています。)
日本でも、いくつかの教会で、性的不祥事などが明らかにされました。
非常に残念なことです。
一般の信徒が堕落するよりも、聖職者が堕落するほうが、
はるかに深刻な影響を、キリストのからだである教会に与えることができるという、
サタンの策略にのってしまった結果なのでしょうね。
本書では、ダークサイドに見事にハマってしまった聖職者を何人も例に挙げつつ、
リーダーの闇の部分を5つに分けて提示しています。
また、その5つのリーダーにあてはまる聖書の人物も挙げています。
・支配的リーダー(モーセ)
・自己陶酔的リーダー(ソロモン)
・被害妄想的リーダー(サウル)
・共依存症的リーダー(サムソン)
・受動攻撃的リーダー(ヨナ)
それぞれ1章ずつで説明があり、章の終わりに、自己検証テストがあります。
私は教会のリーダーといえるほどではありませんが、
一応、それぞれ自己検証テストをしてみました。
すると・・・
私の場合は、
「共依存症的リーダー」と、「受動攻撃的リーダー」があてはまるようです・・・
ぜひ、教会の聖職者はもちろんのこと、役員や教会学校指導者も、
これらの自己検証テストで自分のウィークポイントを確かめてみては?
本書には、安易な「救い・解放」は書かれていません。
(カリスマ系の本なら、
「高慢の霊よ、イエスの御名によって去れ!」とか言いそうですが・・・)
第3部「闇の部分を贖う」で、4つのステップを提示していますが、
かなり時間がかかりそう・・・
印象的なところは、第14章「霊的な堆肥作り」という所でした。
「堆肥」といえば、ごみとか使い物にならない有機物からなりますね。
(引用)
闇の部分を克服するとは、私たちの個性の中で、あまり魅力的ではない部分から逃げるということではない。また、闇の部分をを克服するとは、私たちの人生からその部分を切除していくプロセスではなく、むしろ私たちの人生の中に統合していくプロセスである。(中略)こうした部分も私たちの個性の一部ではあるが、それは現在の形そのままでは用いられないのである。しかし、それは決して役に立たないわけではない。その部分はまず取り分けられて、変えられる必要があるのだ。実際、その部分には私たちの最も効果的な働きとリーダーシップの鍵を握っていると、私は確信している。この部分が私たちの人生に統合されなければ、私たちのリーダーシップは何となく表面的で、形式的にとどまるだろう。自分自身で作り出し、築き上げたリーダーシップこそが、最高で、最大の賜物である。(中略→Ⅱコリント12章の使徒パウロの例を挙げて)
同じように、私たちは自分の弱さーーーすなわち、私たちの個性のうち、今のところ使えない側面ーーーを進んで受け入れるリーダーである必要がある。そして私たちの内で働き、また私たちとともに働く聖霊を触媒として、神がそのような側面を堆肥とし、霊的な腐葉土を作りはじめるのを見守る必要がある。やがて、この腐葉土の中から、最も力強く実り豊かな働きが生まれてくるであろう。そして、キリストの力は本当に、弱さの中に完全に現れる、とパウロとともに、証しをする時が来るのである。
(同書PP.140〜141から引用終)
要約して言えば、私たちの中の闇の部分さえも、
神様は用いてくださる、ということではないでしょうか?
でもそれは直接的に用いられないのかもしれないし、
支配欲のように直接用いてはいけないものもあります。
弱さを抱えているからこそ、神様の恵みと助けを切に求める必要があるのです。
そう思えば、弱さや闇にさえ、感謝なことです!
すると主は、「わたしの恵みはあなたに十分である。力は弱さの中でこそ十分に発揮されるのだ」と言われました。だから、キリストの力がわたしの内に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。 それゆえ、わたしは弱さ、侮辱、窮乏、迫害、そして行き詰まりの状態にあっても、キリストのために満足しています。なぜなら、わたしは弱いときにこそ強いからです。
(新約聖書コリントの信徒への手紙Ⅱ12:9〜10新共同訳)
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