ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ4盤〜マツーエフ、アルゲリッチ、ユジャ・ワン、アシュケナージ・・・
2013年晩秋に、よく聴くようになったのが、
ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30です。
映画「シャイン」でメインテーマとなっている曲ですね。
私が今注目しているピアニストの一人、ユジャ・ワンが、
この曲とプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番を録音したCDを出したので、
予約して手に入れたのと、
ロシアのピアニスト、デニス・マツーエフのCDを手に入れたのがきっかけです。
(カップリングは「パガニーニの主題による狂詩曲」)
ただし、マツーエフの盤は、ピアノ協奏曲第3番のためではなく、
むしろ、「パガニーニの主題による狂詩曲」のために買ったものでしたが・・・
現在我が家にある、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番のCDを、
収録の古い順に紹介し、各楽章の収録時間も記載します。
・アルゲリッチ盤(1982)DECCA(旧PHILIPS)
アルゲリッチ(P)、シャイー指揮ベルリン放送交響楽団
(カップリング:チャイコフスキー・ピアノ協奏曲第1番)
第1楽章 15:27
第2楽章 10:59
第3楽章 13:53
・アシュケナージ盤(1985)DECCA
アシュケナージ(P)、ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(カップリング:ラフマニノフ・パガニーニの主題による狂詩曲)
第1楽章 17:31
第2楽章 11:31
第3楽章 14:26
・マツーエフ盤(2009)MARINSKY
マツーエフ(P)、ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団
(カップリング:ラフマニノフ・パガニーニの主題による狂詩曲)
第1楽章 17:40
第2楽章 10:34
第3楽章 12:32
(輸入盤)
(国内盤)
ユジャ・ワン盤(2013)DG
ユジャ・ワン(P)、
グスターボ・ドゥダメル指揮
シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ
第1楽章 15:50
第2楽章 10:38
第3楽章 14:17
(輸入盤)
(国内盤)※2013年12月4日発売予定
※輸入盤と国内盤のカバー写真が全然違うのに注目!
あえて順位をつけるとしたら・・・
1位:マツーエフ盤
2位:アルゲリッチ盤
3位:ユジャ・ワン盤
4位:アシュケナージ盤
4位のアシュケナージ盤から。
今回聴き比べをするまで、
実はこのCDのアシュケナージによるピアノ協奏曲第3番の演奏は、
全く聴く気がありませんでした。
このCDは、もっぱら「パガニーニの主題による狂詩曲」
(以下「パガニーニ・ラプソディ」)を聴くだけのものでした。
改めて聴いてみると・・・
他の3盤に比べると、ピアノがあまり目立ちません。
オーケストラに埋もれているかのような感があります。
ピアノ対オーケストラという形ではなく、
どちらも混然一体となった演奏といえましょう。
ただし、安全運転的な演奏がお好きな方向けのものかもしれませんね・・・
3位のユジャ・ワンの演奏は、相変わらずピアノのテクニックがスゴイ!
ロシア的要素は皆無ですが、往年のホロヴィッツを思わせるような、
テクニックを見事にエンターテイメントに昇華させている演奏といえます。
全体的には、明るいラフマニノフ、という感じでしょうか・・・
もっといえば、スポーツ的な演奏とさえいえます。
スポーツカーで爽快に突っ走るような躍動感?
ユジャ・ワンのファンにはオススメですが、
ロシア的ほの暗さ、ロシア的憂愁のようなものはほぼありません。
セカンドチョイス、サードチョイスぐらいにはいいと思います。
カップリングのプロコフィエフのは・・・
コメントはさし控えます。
ところで、輸入盤と国内盤のジャケットが違うことになりそうですね。
輸入盤のは、かなり「個性的」(悪く言えば「悪趣味」)ですが、
国内盤のは、かなり穏当なものになっています。
悪趣味ジャケットも、彼女の魅力なのでは・・・とさえ思いますけど・・・
1位、2位は実は甲乙つけがたい演奏です。
どちらか1枚、と問われれれば、
現在の私ならマツーエフ盤を選びますが、
この曲が好きなら、マツーエフ盤、アルゲリッチ盤どちらも揃えて損はないですよ。
アルゲリッチ盤は、この曲の魅力に初めて開眼させてくれたものです。
初めて聴いたのは、NHKFMの放送でした。
たまたま車の中でFMを流していた時に耳にし、
「このピアニストは天才だ!」と思わずうなってしまいました。
すぐさまアルゲリッチの演奏とわかり、「さすが〜」と思いました。
アルゲリッチ盤が今までの愛聴盤でした。
オーケストラも素晴らしく、特に第1楽章終盤あたりの美しさは絶品です。
第3楽章の躍動感、カタルシス効果も絶大です。
本来の、漆黒を思わせる曲が黒光りしているような感じでしょうか・・・
1位は、マツーエフ盤です。
SACDハイブリッド盤となっています。
ピアノ・オーケストラ共に素晴らしく、
「これぞロシア!」という見事な演奏です。
音の響きは、特に第3楽章が迫力あります。
低音の響きがスピーカーからはみ出てきます・・・
カップリングの「パガニーニ・ラプソディ」は、
ピアノ協奏曲第3番をさらに上回る超名演です!
今までは、前述のアシュケナージ盤が最高と思っていましたが、
ついに、これを上回るものに巡り合えました!
どこまでも広がっていく第18変奏の美しい「アンダンテ・カンタービレ」・・・
涙が出てくるような演奏でした・・・
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「題なし」の及川様、
コメント及び当ブログ経由でのCD購入ありがとうございます!
コメントの中にあった、
ラフマニノフのP協奏曲3番弾き振りというのは、
小説やマンガならともかく、現実的にはムリですね。
(弾き振りはせいぜいベートーヴェンまでで十分です。
弾き振りかどうかよりも、すばらしい演奏かどうかが大切ですね。)
ユジャ・ワン&デュトワ・N響によるパガニーニ・ラプソディは、
N響アワーか名曲探偵アマデウスのどちらかで観ました。
確かに名演でしたね。
ただし、アバドと組んだCDの方はイマイチでしたが・・・
投稿: てんしちゃん | 2013年11月18日 (月) 22時38分
てんしな?日々さん
「題なし」の及川です。
てんしな日々さんの「耳」ないしは「感性」を信頼して、マツーエフ盤を買いましたよ! このページからアマゾンに入って。
お薦めに従って大正解でした。この曲の愛聴盤が1枚増えることとなりました。
敢えて私の感想を付言すると、「3番」は確かにアルゲリッチと並ぶ名盤かと思いましたが、「パカ゜ニーニ」はそれほどでもないか、と。
「パガニーニ」は私の大好きな曲で、初めて涙が出るような経験をしたのは、ユジャ・ワンがデュトア指揮のN響と共演したときの演奏でした。
この辺りのことを書いた記事があります。お立ち寄り頂けますと嬉しいです。
http://homepage3.nifty.com/tkoikawa/music/opus/paganinirhaps.htm
蛇足ですが、「3番」は発表当初、「こんなもの弾けるわけがない」と、当時のピアニストの多くから総スカンを食ったようですね。けど、ラフマニノフが自ら演奏して見せて、「弾ける」ことを証明したのだとか・・・。
ただ、それでも評判はいまひとつだったらしく、彼自身が最もうまく行ったと思った演奏は「マーラー指揮! のNYフィルとの演奏たせったとか。
後にホロヴィッツがラフマニノフにこの曲の演奏について助言をもらい、演奏するようになって初めて人気が出ていったのだとか。
中々の難曲のようですが、この曲を何と弾きぶりする! という指揮者が出てくる小説があります。私が「ミニ書評館」で常推薦とした本です。
もちろん、こんな曲、弾きぶりができるわけがありません。
http://dainashibekkan.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-ab23.html
大阪音大を卒業した妹にスコアを見せて確かめたら、やはり「それは無理」だと断言しました。
小山実稚恵さんも、最近FMでこの曲の話をされていて、「とにかく難しい。どのように弾いたらいいのかを考え考えしながらでないと、曲をさらうこともできない」という主旨のことを話しておられました。
投稿: 「題なし」の及川 | 2013年11月17日 (日) 01時30分
「題なし」の及川様、コメントありがとうございます。
アルゲリッチはまさにピアノの女王様でしたね。
特にチャイコフスキーのP協奏曲第1番は絶品ですね!
(ホロヴィッツを例外とすれば、他の演奏は聴きたいと思わないほどです・・・)
ラフマニノフのP協奏曲第3番も、彼女の演奏がなければ、
恐らく価値に気が付かなかったと思います。
ブックマーク記事読みました。ありがとうございます。
ラフマニノフの自作自演盤、P協奏曲2番で聴いたことがありますが、
あの難曲でさえあっさりと弾いてしまっているので、少し物足りなさを覚えました。
マツーエフの名は、私も最近知りました。
マツーエフのピアノ目当てというよりはむしろ、
ゲルギエフの指揮で、しかもSACDハイブリッド盤だからこそ買ってみたものです。
結果は大当たりだったわけです。ぜひ聴いてみてください。
投稿: てんしちゃん | 2013年11月13日 (水) 22時45分
てんしな?日々さん
「題なし」の及川です。
不思議なもので、私もアルゲリッチとの「出会い」はFMから流れてくる音によるものでした。チャイコのP協でしたけどね。次の「出会い」は初来日のときのテレビ放送で、ショパンの3番のソナタを弾いたときでした。それ以来、ずっとファンです。
また、ラフマニノフの3番に開眼させてくれたのもアルゲリッチです。
この演奏を聴いてしまうと、他の演奏を聴く気には中々なれません。
アルゲリッチに対する思いを書いたページがあります。お時間あればお立ち寄り頂くと嬉しいです。
http://homepage3.nifty.com/tkoikawa/music/players/argerich_chopin3.htm
それと、この曲、ラフマニノフの自作自演盤も見逃せないと思ってます。アルゲリッチとラフマニノフと、この2枚しか聴きません。アシュケナージも持ってますけどね。
マツーエフという人は知りませんでした。てんしな日々さんがお薦めならば、聴いてみてもいいかも・・・。
投稿: 「題なし」の及川 | 2013年11月12日 (火) 00時06分