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2013年10月10日 (木)

書評:三橋 貴明著『経済の自虐主義を排す: 日本の成長を妨げたい人たち 』(小学館101新書)

「経済」という言葉は、元々「経世済民」を略した言葉です。
「経世済民」とは、「世を經(おさ)め、民を濟(すく)う」ということです。
「経済」というと、今では「ビジネス→お金儲け」とか、
個人や企業の利潤追求とかその類を意味していますが、
今回紹介する三橋 貴明著『経済の自虐主義を排す: 日本の成長を妨げたい人たち
(小学館101新書)は、まず「経済」の本来的意義を明らかにし、
その上で、デフレ脱却をはかる(つまり、インフレ化させる)ことをしない、させない、
政治家や知識人、官僚、マスコミを非難しています。
「経済的自虐主義」=日本は人口減少、高齢化しているからもうダメだ、
日本が生き残るにはグローバル化するしかない、
TPPに「無条件降伏」するしか生き残る道はない・・・
このような考えに、論理的・統計的な裏付けをもって、
著者は見事に「NO!」をつきつけています。

国家の「経済」と企業・家庭の「経済」はそもそも異なるのに、
同一視して語る愚かさを何度も何度も繰り返して論破しています。
一流の政治家・知識人であっても、無知か故意かはわかりませんが、
同じものとして語り、「国債が暴落する」とか、
「日本経済が破綻する」と危機を煽る「日本破綻論」者たちを、
著者は「カタストロフィ・ビジネス」(PP.200〜206)と喝破しています。
五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』並、
いやそれ以上の偽予言者だ、と詐欺師扱いしています。

日本人はどうして、こうも悲観論・自虐主義が好きなのでしょうか。
リスクを考えるのは必要ですが、
この手の悲観論を信じてしまうことで、未来を自ら閉ざしているようです。
本書『経済の自虐主義を排す: 日本の成長を妨げたい人たち 』は、
日本全体を覆い尽くしている、
経済的自虐主義・悲観論の厚い雲に風穴を開けるものです。
読んで明るくなれる本といえます。

ただし、安倍首相が、来年4月から消費税増税を決断したのは、
かなり不安材料になりますね。
税収増を目指していながら、かえって消費が落ち込み、
結果的に税収減になるのは、遅かれ早かれ目に見えています。
もう一ついえば、TPPも大きな不安材料です。
著者が思い描くのと逆の、
デフレ期にしてはいけない政策へ向かいつつあるのは、
民主党政権の「呪い」、「時限爆弾」なのかもしれませんね・・・

少し本論から外れますが、
旧約聖書の中に、楽観主義と悲観主義の深刻な対立と、
悲観主義のまさに悲惨な結末が書かれたエピソードがあるのを思い出します。
旧約聖書の「民数記」の中の話です。
イスラエルの神が出エジプトの奇跡を成し遂げ、
約束の地に入る手前、12人の偵察隊を出します。
偵察隊は無事帰還し、民の前で報告します。
12人のうち、10人は悲観主義に犯されていました。
民を不平不満と泣き言に向かわせ、
結局、イスラエルの民が40年間、
荒れ野で彷徨う羽目になってしまった原因を作った人々です。
全能の神の御力があれば、敵は恐れるに足りなかったのに・・・

少々長いですが、聖書から引用します。
「この悪い共同体は、いつまで、わたしに対して不平を言うのか。わたしは、イスラエルの人々がわたしに対して言う不平を十分聞いた。彼らに言うがよい。『主は言われる。わたしは生きている。わたしは、お前たちが言っていることを耳にしたが、そのとおり、お前たちに対して必ず行う。お前たちは死体となってこの荒れ野に倒れるであろう。わたしに対して不平を言った者、つまり戸籍に登録をされた二十歳以上の者はだれ一人、わたしが手を上げて誓い、あなたたちを住まわせると言った土地に入ることはない。ただし、エフネの子カレブとヌンの子ヨシュアは別だ。お前たちは、子供たちが奪われると言ったが、わたしは彼らを導き入れ、彼らは、お前たちの拒んだ土地を知るようになる。しかし、お前たちは死体となってこの荒れ野で倒れる。お前たちの子供は、荒れ野で四十年の間羊飼いとなり、お前たちの最後の一人が荒れ野で死体となるまで、お前たちの背信の罪を負う。あの土地を偵察した四十日という日数に応じて、一日を一年とする四十年間、お前たちの罪を負わねばならない。お前たちは、わたしに抵抗するとどうなるかを知るであろう。主であるわたしは断言する。わたしに逆らって集まったこの悪い共同体全体に対して、わたしはこのことを行う。彼らはこの荒れ野で死に絶える。』」モーセが遣わした男たちは、土地の偵察から帰ると、その土地について悪い情報を流し、共同体全体が彼に向かって不平を言うようにしたが、土地について悪い情報を流した者は、主の御前で疫病にかかって死んだ。しかし、土地を偵察に行った者のうち、ヌンの子ヨシュアとエフネの子カレブだけは生き残った。
(旧約聖書 民数記14:27〜38新共同訳)

経済的自虐主義に満ちたマスコミを信じるならば、
まさに我々日本国民も、自分たちが信じたとおりになってしまうのではないでしょうか?
だからこそ、正しい認識が必要なのです!
ぜひ、本書で名指しされた「経済の自虐主義者たち」のような「偽預言者」に惑わされず、
かえって嘲笑してやるぐらいの気概をもちたいものです。


経済の自虐主義を排す: 日本の成長を妨げたい人たち

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