書評:三橋 貴明・さかき 漣 作『コレキヨの恋文 新米女性首相が髙橋是清に国民経済を学んだら』(小学館)
「日本政府はこれまで、皆さんを苦しめるような政策ばかりを続けてきました。(中略)
所得水準が下がり、雇用が失われ、更には自ら命を絶たれる方が増えたのは、間違いなくデフレの深刻化が大きな原因です。それにもかかわらず、政府はデフレ対策を怠ってきました。それどころか、増税や公共投資の削減など、デフレを促進する政策を遂行したのです。本当に・・・・・・」(中略)
「本当に、本当に、ごめんなさい・・・・・・日本政府が間違えた政策を打ち続け、皆さんに塗炭の苦しみを味わわせ、沢山の方々が自ら人生を終わらせてしまわれました。これは、日本政府が皆さんに与えてしまった人災に他なりません」
(『コレキヨの恋文』pp.174〜175から引用終)
デフレ経済の立て直し、TPP脱退など、
日本の政治経済にとって本当に必要な提言を、
誰にでもわかりやすく小説の形で書いています。
三橋 貴明・さかき 漣 作『コレキヨの恋文』(小学館)を読みました。
コレキヨの恋文(書籍版)
読むきっかけは、同じ著者による三部作
(コレキヨの恋文、真冬の向日葵 、希臘から来たソフィア)の最後、
『希臘から来たソフィア』の紹介記事をWEBで読んだことでした。
→日本は本当に“ダメな国”なのか? 国家の本質を知る小説
興味深い内容だな、と思いましたので、
せっかくなら、第三作目の『希臘から来たソフィア』からではなく、
第一作の『コレキヨの恋文』から読んでみようと思いました。
実に読みやすく、2日ほどで通勤中に読み終えてしまいました。
この小説を分類するとしたら、どれに該当するのでしょうか。
経済小説ともいえるし、
SF小説ともいえるし(部分的なタイムスリップ)、
ファンタジー小説、
あるいはルソーの『エミール』のような思想小説ともいえます。
現代のデフレ時代と、1920年代〜1930年代前半の、
髙橋是清が首相、蔵相として活躍した時代が似ている、というヒラメキから、
現代を読み解くカギとしての過去から学ぶ仕掛けとして、
過去の人物(髙橋是清)と現代の首相(もちろん架空人物ですが)が出会う、
という物語です。
物語そのものは料理を載せる器のようなものでしょう。
そこに盛りつけられた料理=あるべき政治経済の姿、
特に国の税収・国債とその使途についての提言は実に明快です。
財政削減・増税・TPP加入はマスコミの論調では既定路線ですが、
実はもってのほかだ、と著者は主張します。
マスコミの公務員叩きや、民主党時代の「仕分け」、
もっと遡れば、小泉元首相の「構造改革」、橋本元首相の消費税増税・・・
いずれも、財務省のもくろみとは真逆に、
日本経済を疲弊させ、
多くの人々の失業・雇用不安、果ては命まで奪いました。
まさに、冒頭に小説のセリフを引用したとおりです。
本書は確かに理想論かもしれませんが、
抵抗勢力と化した政治家、既得権を守ろうとする官僚、
無責任に不安を煽るマスゴミに事実をもって対処していけば、
本書最後の方に出てくるハッピーエンドな日本が実現できるはずです。
そのためには、本書が多くの人に読まれることを望んでやみません。
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