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2013年8月 7日 (水)

BSーTBS・週刊BSーTBS報道部「特集 未来ビジョン」〜小学校英語教育の未来像(2013年8月4日放送)

小学校の英語教育の現状と未来について、
いろいろと考えさせられる内容でした。

2013年8月4日にBSーTBSで放送の、
週刊BSーTBS報道部」という2時間番組で、
CMを除くと約50分近く、小学校の英語教育について特集していました。
「特集 未来ビジョン」というコーナーです。
番組には、現文部科学大臣、下村博文氏も登場してコメントしていました。
私は録画して妻と一緒に視聴しました。
ツッコミどころ満載でした。

小学校の外国語活動(実質は英語)の現状は、
いかにも「ガイジン」といった欧米系のネイティヴ・スピーカーを、
ALT(外国語指導助手 (Assistant Language Teacher))として年に数回招いて、
ピエロみたいなことをさせるのと、
アルファベットの歌、
あと、123456789・・・せいぜい20ぐらいまでの数を覚えたり、
ゲームをやる「英語ごっこ」にすぎません。
(既に記事を書いています→
小学校の外国語活動は本当に必要なのか?~NHK・クローズアップ現代「教壇に立つのはだれ?  ~小学校・英語必修化の波紋~」(2011年5月23日放送)

番組では、「英語ごっこ」状態を打破するために、
先進的な取組をしている、東京都品川区・小山台小学校を紹介していました。
この小学校では、小1のときから英語教育が行われ、
6年生になると、
英語で「桃太郎」の話を身ぶり手ぶりをつけながら語る、
「ジョイントストーリーテリング」の実践がなされています。
提案者のアレン玉井光江氏(青山学院大学教授)
自ら指導にあたっている様子が映し出されていました。

(理論等に興味のある方は、アレン玉井光江氏の著作があります。↓)


ストーリーと活動を中心とした小学校英語


小学校英語の教育法―理論と実践


番組では、下村大臣もこの取組を高く評価していました。
番組自体も、「本気の英語!」とか言って称賛していました。
その「本気の英語」とやらが、ALTの外国人に向かって、
"Do you Know killifish?"(めだかを知っていますか?)だったのは、
拍子抜けしました。
そこの校長先生は「英語ごっこ」から脱却できると自慢げでしたが・・・
番組の岡村 仁美キャスターのコメントでは、
小山台小の児童に英語で会話をしてみたところ、
会話はできなかったそうです。

桃太郎の話を「ジョイントストーリーテリング」できても、
結局それは掛け算九九や学習発表会のセリフを暗唱するのとなんら変わりなく、
これで英語が上達するとか、
コミュニケーション力が上がるわけではないと思います。

続いて番組では、小学校で英語を教える教員の養成についても取り上げました。
民間資格の「小学校英語指導者資格」を習得しようとする主婦の姿も出ていました。
ただ、この資格をとったからといって、
実際に小学校で給料をもらって(ボランティアはともかく)仕事ができるのか、
まだわからないものですね。
結局、どんなに英語の発音がすばらしくてとも、
ネイティヴスピーカーになれるわけはなく、
学校現場では、「ガイジンさん」に劣る存在とされるだけのような気がします。
あと、小学校での英語教育の教科化に備えて、
幼児向けの英会話教室も紹介していました。
学校での英語教育への不信感をある母親に語らせていました。

最後の方では、下村大臣の見解と、
小学校での英語教育を教科化することに賛成・反対する意見が紹介されました。
はっきりいって、賛成派の意見は説得力がありませんでした。
反対派として、NHK等でも活躍中の鳥飼玖美子氏(立教大学特任教授)の意見が紹介されていました。
要旨としては、
①コミュニケーション能力を養うためとして、英語を使う必要がない。
むしろ、コミュニケーション能力は母国語(日本語)をもって養うべき。
②小学校の英語教育教科化は、かえって英語嫌いを増やすだけ。
「記憶力に優れた中学生」でこそ、取り組むべき。

この発言に対して、番組中で下村大臣が、
「記憶力がいいのは中学生より小学生」と指摘しました。
番組だけを見ている限り、確かに下村大臣の方が正しいといえます。

しかし、この番組について調べていると、
実は鳥飼氏の発言は番組編集上かなりカットされていることがわかりました。
週刊BS-TBS報道部 「小学校英語教育の未来像」
(明海大学大津研Blog2013年8月6日記事)
記事から引用します。
(引用)
ここで、賛成派、反対派を代表する論客として、それぞれ、吉田研作さん、鳥飼玖美子さんのインタビュービデオが流されました。ここで、吉田さんは小学校英語に対する考えをきわめて端的に語りました。《なぜ小学校からなのか》という点について、(公立)中学校へ入学するのに入試はないので、小学校では入試のことを考えずに、コミュニケーション力をつけることに専念できるという点を挙げました。

つぎに、教科化については、教科化するのであれば、それに先んじて、現在の英語活動のように、英語に慣れ親しむ機会を確保する必要があること、そのうえで、教科の部分では、基礎的な文法や発音などについても学習できるようにすることで、中学校以降における英語教育への「橋渡し」としての機能を担わせるとしました。

しかし、英語活動を前提としたうえで、「橋渡し」というのが教科としての小学校英語の機能であるなら、現状のように、小学校では英語活動によって「コミュニケーション能力の素地の育成」を図り、その上で、中学校から本格的な英語教育を行うという方式とどういう違いが期待できるのかがよく理解できませんでした。なんども繰り返して言っていることですが、20000校もある公立小学校にきちんとした入門期指導ができる教員を配置することは人的にも、財政的にもきわめて困難であり、どうして、そこまでして、小学校で英語教育をしなくてはならないのか。わたくしには一向に理解できません。

「四人組」の盟友の一人である鳥飼さんの話はわたくしの主張とほぼ寸分の違いもありませんでした(念のために書いておくと、「四人組」は英語教育の現状に強い危機感を持っているという点では共通していますが、現状の問題点の認識や改善法などについては、それぞれの考えがあります)。小学校では「コミュニケーション能力の素地の育成」を図ることが大切であるが、それは子どもたちの母語を利用して行うべきであること、小学校英語は必要性も、益もなく、害ばかりあること、英語教育は「吸収力、理解力、暗記力」に優れた中学生を対象に始めるべきであること、などを述べ、最後に、どうしても小学校で英語をやるのであれば、せめて英語嫌いを生み出さない工夫を凝らしてほしいとまとめました。

ビデオが写し出されたあとで、下村さんが、鳥飼さんが「中学生は吸収力、理解力、暗記力に優れている」と言ったが、それは間違いで、むしろ、小学生のほうが優れていると批判しました。放映された限りでいえば、鳥飼さんの発言はことば足らずであり、下村さんの批判は適切です。鳥飼さんの意図は《外国語学習に必要な認知能力、ことに分析力とそれを支える吸収力、理解力、暗記力に優れた中学生》ということであったのだと思います。

じつは、きょう(8月5日)、たまたまある用務で鳥飼さんに会いましたので、この点について尋ねてみました。返ってきた答えは《じつは、放映された、あの発言の前に、大津さんのいう、「外国語学習に必要な認知能力、ことに分析力とそれを支える」にあたる趣旨のことを述べたのであるが、その部分を編集で削除されてしまったのだ》ということでした。最近は画像処理の技術が進んで、編集しても、そのことがしろうとにはわからないほどです。鳥飼さんの言い分が正しければ、こうした「文脈外し」の編集は鳥飼さんにとっても、番組にとっても、残念なことです。
(引用終)
文脈を無視して発言を都合よく編集するのは、テレビ局の常套手段ですね・・・
(引用元の記事、英語教育の問題点についてよくまとめられていますので、
ぜひ全文をお読みください。)

番組を観ての私の結論は・・・
①小学校での「外国語活動」は不要。税金の無駄である。
②もし英語を教科化するなら、きちんと文法も教えるべきである。
少なくともNHKの「基礎英語1」レベルの内容ができないなら、
やる意味がない。
③コミュニケーション能力は、英語ではなく国語(日本語)で行うべき。

上記ブログ著者、大津 由紀雄氏他による、
英語教育、迫り来る破綻』という本が出ています。
そのうち読んでみようかな・・・

英語教育、迫り来る破綻

(2013年8月24日追記)
上記で紹介した本に関連したインタビュー記事がありましたので、紹介します。
大学のTOEIC、TOEFL重視
小学校英語の教科化…
破綻に向かう英語教育
「英語教育、迫り来る破綻」 大津由紀雄氏インタビュー
2013年08月23日(Fri)  本多カツヒロ (ライター)

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