書評:岡本茂樹著『反省させると犯罪者になります』(新潮新書)
なんとも刺激的なタイトルですね。
岡本茂樹著『反省させると犯罪者になります』(新潮新書)を読みました。
長年、刑務所での累犯受刑者の更生支援に関わった豊富な経験から、
悪い事をすればすぐに反省させ、
反省文を書かせるという教育のあり方に一石を投じています。
反省させると犯罪者になります (新潮新書)
新書の帯にある文章を引用しましょう。
(引用)
長年、受刑者の更生を支援するなかで分かってきたことは、彼らを更生させるためには、実は「反省させてはいけない」ということです。
私は彼らに反省を求めません。反省を求めない方法で個人面接や授業を進めていくうちに、彼らの多くは反省していきます。反省させようとする方法が受刑者をさらに悪くさせ、反省させない方法が本当の反省をもたらすのです。このことを、受刑者を支援するなかで、私自身が受刑者から教えてもらいました。それを本書で明らかにしようと思います。
(同書P.6から引用終)
著者の主張の要点は・・・
・犯罪者やいじめっ子らに、「被害者の立場で考えろ」、
「反省しろ」と強要するのは、その場しのぎだけになり、
真の反省にはつながらない。
・むしろ、加害者の視点から出発し、まずはホンネを出させることによって、
加害者は受け入れられている、大切にされていると実感し、
真の反省に至る事ができる。
本書の大半は刑務所受刑者の心理的実態についてですが、
後半では、通常の教育現場でのことも書かれています。
犯罪被害者の方にとっては読むのが酷な面もありますが
(結局、加害者は利己的であり、真に反省することは少なく、
自らの減刑手段として、「反省している」ように見せかけているにすぎない・・・)、
児童生徒の健全な心理的発達を考えるには、逆説的な意味でとても参考になりました。
一読に値する本といえます。
(ここから先は、キリスト教に興味のない方は、飛ばして結構です。)
有名な讃美歌「いつくしみふかき」には、こういう一節がありますね。
♪(イエスに)こころのなげきを つつまずのべて
などかはおろさぬ おえるおもにを
時折、模範的で、感謝と賛美に満ちた祈りが、
むなしく感じられることがあります。
詩編を読むと、賛美と感謝と同じくらい、嘆きが多いことに気づきます。
心の奥底の叫びを、主なる神にぶつけているわけです。
わたしは黙し続けて
絶え間ない呻きに骨まで朽ち果てました。
御手は昼も夜もわたしの上に重く
わたしの力は
夏の日照りにあって衰え果てました。〔セラ
わたしは罪をあなたに示し
咎を隠しませんでした。
わたしは言いました
「主にわたしの背きを告白しよう」と。
そのとき、あなたはわたしの罪と過ちを
赦してくださいました。〔セラ
(旧約聖書詩編32:3〜5新共同訳)
罪を犯したとき、悔い改めも大事ですが、
ありのままの偽らない心を主にぶつけることも大事ではないでしょうか?
『反省させると犯罪者になります』を読みながら、
信仰の面においても、応用できるのではないかと思いました。
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