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2013年6月25日 (火)

書評:スコット・マクナイト著『福音の再発見 -なぜ"救われた"人たちが教会を去ってしまうのか』(原題:"The King Jesus Gospel : The Original Good News Revisited")(キリスト新聞社)〜問題意識は高いが、画竜点睛を欠くかも?

スコット・マクナイト(Scot McKnight)著、中村佐知訳
『福音の再発見 -なぜ"救われた"人たちが教会を去ってしまうのか』
(原題:"The King Jesus Gospel : The Original Good News Revisited")
(キリスト新聞社)を読みました。

キリスト新聞社のHPでの本書の紹介
いのちのことば社Gospel Shopでの本書の紹介

表紙の「なぜ、多くの若いキリスト者が、今日教会を去ってしまうのか」に注目して、
買ってしまいました。

本書では、「”救われた”はずのクリスチャンが、どうして教会を去るのか」、
という今日的な課題と、
「本当の福音とは何か」という2つの重要な問いかけがなされています。
メインはもちろん後者の問いです。
著者は、「福音」とは、今日の多くの教会で共通理解されているような、
「個人的救い」ではなく、ましてや「信仰義認」でもない、と指摘しています。
(P.27〜32の事例A・B・C)
つまり、キャンパス・クルセードの「四つの法則」で展開されるような「福音」は、
使徒達が説いたものとはほど遠い、というわけです。
(確かに、「四つの法則」で事足りるなら、
旧約聖書なんて必要ないデスネ・・・)
では、本当の「福音」とはどういったものなのでしょうか?
著者は、新約聖書コリントの信徒への手紙Ⅰ15章にある、
使徒パウロの福音の要点を元に、これこそ福音だ、
というものをまとめています。
元になる聖書箇所をまず引用しましょう。

最も大切なこととしてわたしがあなたがたに伝えたのは、わたしも受けたものです。すなわち、キリストが、聖書に書いてあるとおりわたしたちの罪のために死んだこと、葬られたこと、また、聖書に書いてあるとおり三日目に復活したこと、ケファに現れ、その後十二人に現れたことです。
(新約聖書コリントの信徒への手紙Ⅰ15:3〜5新共同訳)

そこから、
(P.64から引用)
イエスは死んだ。
イエスは葬られた。
イエスはよみがえられた。
イエスは現れた。

(引用終)とまとめています。

この要点のみならず、旧約聖書の預言の成就もあわせて、
聖書全体から福音を物語る必要がある、と主張しています
(かなり乱暴な要約ですが・・・)
(参考)
(イエスは)そして、モーセとすべての預言者から始めて、
聖書全体にわたり、御自分について書かれていることを説明された。

(新約聖書ルカによる福音書24:27新共同訳)
そして、著者なりに「福音とは?」どういうものかを提示しています。
(P.210〜216「福音の概略」)
「四つの法則」ならものの数分で説明が足りるところを、
著者のいう「福音」は朗読するだけで10分ぐらいかかるでしょうし、
キリスト教的素養がない中で理解できる人はごくわずかではないでしょうか?
(途中で「「それについては、いずれまた聞かせてもらうことにしよう」と言った。
(使徒言行録17:32新共同訳)というのが続出?)

著者の「本当の福音とは?」と、
安易な「救われた」人達とは?、ということについては理解できましたが、
この本の読後感は、あえて言えば「???」という感じでした。
確信や信仰の喜びを実感する、というのにはほど遠いものがありました。
なぜでしょうか?

正しく福音を認識する、聖書全体を学ぶ、正しい正統信仰を持つ、
教会暦や使徒信条といった信仰の遺産を再評価するなど、
いろいろ書かれてはいますが、
この本において決定的に欠けているのは、聖霊様の御力です。
聖霊様抜きで、著者が主張するような「正しい」福音を語ったとしても、
説得力に欠けるものではないでしょうか?
仏陀やクリシュナの伝説、ギリシャ神話や『古事記』などの神話、
あるいは『論語』や『妙法蓮華経』と、
イエス・キリストの「物語」を並列的に並べるだけのようなものに思えます。

わたし(キリスト)は道であり、真理であり、命である。
(新約聖書ヨハネによる福音書14:6新共同訳)
ということは、まさに「聖霊によらなければ」実感できないのです。
(参考)
聖霊によらなければ、だれも「イエスは主である」とは言えないのです。
(新約聖書コリントの信徒への手紙Ⅰ12:3新共同訳)

そういう意味で、深くて問題意識を提示したものの、
聖霊様の働き、という「画竜点睛」を欠いてしまった、というのが、
本書の実に惜しいところでした。
ただし、「福音とは何か」というのを問い直すのと、
今日的な福音の提示に疑問を持つ方にとっては良い本だと思いますので、
一読する値はあると思います。

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