書評:平野耕一著『ソーン・バード』(プリズム社)~ダビデの生涯を霊的視点で俯瞰
東京ホライゾンチャペルの平野耕一牧師が2011年に出版した本、
『ソーン・バード(Thorn Birds) 痛みの先に輝く希望』(プリズム社)を読みました。
ソーン・バード
「ソーン・バード」とはそもそも何か、著者自身の言葉を引用します。
Amazonの「内容紹介」掲載のものです。
(引用)
オーストラリアの荒原に生息し、外敵から身を守るために、いばらの茂みの中に巣を作りヒナを育てる鳥は、そのからだがいばらに刺されるたびに、清らかな美しい声をあげて鳴くので、ソーンバード(とげ鳥)と、人々は呼ぶという。
私がこの鳥の話を読んだその瞬間に「ダビデのことだ」と口走ったが、「いつか『ソーン・バード』というタイトルで、ダビデの生涯を描きたい」とあこがれをいだいた。それから三十年も過ぎて全く忘れていたが、突然ある集会において、長年記憶の底に沈んでいた「ソーン・バード」への思いがよみがえってきた。そのとき、「ソーンバードを書きなさい」という霊のうながす声を聞いたように思う。私の心に沈んでいた記憶を引き出したできごとを話そう。
(引用終)
※本文P.3と同じ文章。
幾多の戦いや危機、堕落を乗り越えて、
なおも神への確信の讃美を歌ったダビデ。
旧約聖書の「詩篇」には、「ダビデによる」とされる詩がたくさんあります。
平野牧師は淡々とした筆致で、「ソーン・バード」としてのダビデの生涯を、
信仰的な視点で俯瞰して描き出します。
また、著者自身の信仰体験からの話も時折入っています。
(平野牧師の本は、
新約モノよりも旧約モノの方がイキイキとしているように思います・・・)
ダビデを「信仰の偉人」として描くよりも、
むしろ、私たちと同じように現実世界で戦い
(戦場だけが「戦いの場」ではなく、ビジネスの世界でも「戦い」は日常的ですね。)、
傷つき、悩み、時には大きな過ちを犯す、普通の人間としてのダビデ・・・
しかし、それらの事を通して、神様への讃美がますます高められていくのは、
私たち平凡なクリスチャンには道しるべとなりますね。
ダビデがイスラエルの王となってからの事を描いた、
九章「霊とまことの礼拝者」と、
その後の失敗と悔い改めを描いた、
十章「懺悔・死角・最後の情熱」のところは特に読み応えがありました。
ダビデの生涯を信仰的にどう捉えるかを知りたい人にはオススメです。
文章自体、とても読みやすく、ページ数もそれほど多くありませんから、
手軽に読むことができます。
最後に、本書から詩篇103について書かれた部分を引用します。
(引用)
「主の良くしてくださったことを何一つ忘れるな」(詩篇103:2)
何を感謝したのであろうか。
咎が赦された。第一に感謝したことは罪の赦しで、これ以上の喜びはない。
いやされた。彼は魂に多くの傷を受けた男で、戦士ゆえにからだの傷も多かった。病にもなった。心にも多くの傷があった。しかし、主はすべてをいやしてくださった。
命拾いした。ダビデほどくり返し死と直面した人はいない。ゴリアテから、数多くの戦場で、サウル王から、家臣から、友から、部下から、自分の息子からも、命を狙われた。死の穴に幾度も落ちたが、そのたびに救いの手が伸びてきた。
恵みとあわれみ。ダビデは自分が偉大にされたのは、ひとえに恵みとあわれみによることを知っていたが、それこそ賛美と感謝の原動力であった。
良きもので満たしてくださる。ダビデが得たすべてのものは、自分の力によるのではなく、恵みの御座から流れてきた。
活力が湧いてくる。礼拝はからだに活力を与える。「若さは鷲のように、新しくなる」という体験をした。この霊的体験を、私はある年齢を過ぎてはっきり自覚するようになった。若さを失い、体力が衰えて、それを補う霊の力を知るようになった。
肉と霊の原理が働いていて、肉が弱ると霊の働きに頼らざるを得ないので、高齢になって霊の力は肉の弱さを越えることを実感し始めるからだ。
霊の働きは、特にクリエイティビティにおいて現れる。自然の力においては、若ければ若いほど想像力と創造性が豊かだが、霊の世界では反対で、ダビデの創造性は歳とともに深く豊かになっていった。そうならば、クリスチャンは引退する頃にむしろ活発になっていける。
この詩篇は、主の「あわれみ」、「情け深さ」、「怒るにおそいこと」、「恵みの豊かさ」、「徹底した赦し」、「契約を守られること」などを極めて美しいことばで描いている。
(本書P.138~140から引用)
ちょうど、詩篇103を通して、ダビデの生涯を簡潔に要約していますね。
(私は詩篇103がとても好きです。)
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