N響北京公演とアバド/ベルリン・フィルの『大地の歌』(2012年10月28日・29日放送)
日中国交正常化40周年を記念して、北京で行われたN響特別公演。
2012年10月28日早朝のNHKBSプレミアム「特選 オーケストラライブ」にて放送されました。
2012年9月1日、北京・国家大劇院での収録です。
まだ尖閣諸島国有化(9月11日)による騒動・反日デモが行われていない時ですから、
「友好」の記録としては貴重ですね。
曲目は、
武満徹「ハウ・スロー・ザ・ウィンド(1991)」
チャイコフスキー「ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23」
ラフマニノフ「練習曲集“音の絵”作品33から 第2番」
チャイコフスキー「交響曲 第5番 ホ短調 作品64」でした。
指揮は尾高忠明。ピアノ独奏は中国人ピアニストのサ・チェン(Sa Chen)。
武満徹のは最初から敬遠して聴いていません。
「ピアノ協奏曲第1番」は、冒頭のホルン強奏のところの映像がかっこよかったですが、
ピアノが凡庸でした。
途中で観るのが退屈になりました。
この曲(特に第1楽章)はマルタ・アルゲリッチとかホロヴィッツ級のソリストでないと、
冗長になってしまいますね。
冒頭のところはどんなピアニストでもすばらしい演奏になってしまうのですが・・・
「日中友好」でつきあった程度の演奏かな・・・
N響が本気モードだったのは、チャイコフスキーの交響曲第5番でした。
重量感ある演奏でした。
なかなか聴きごたえがありました。
「どうだ、これが日本のオーケストラの実力だ!」とアンサンブルの精緻さ、
迫力を示したような名演奏だったといえましょう。
2012年10月28日深夜(10月29日早朝)には、
アバド指揮ベルリン・フィルによる、
マーラーの「交響曲第10番から アダージョ」、「大地の歌」の放送がありました。
NHKBSプレミアム・プレミアムシアターの後半です。
よく調べると、この演奏、既に昨年の6月18日に放送済なのですね・・・
(参考)⇒NHK-BS『アバド&ベルリン・フィルの大地の歌(マーラー100th)』:番組情報。 (ブログ名:mimi-fuku通信)
上記ブログでは絶賛されていますが、さて、実際に聴いてみると・・・
「大地の歌」よりも、「交響曲第10番から アダージョ」の方がすばらしい演奏だったと思いました。
「交響曲第10番から アダージョ」は、
今までバーンスタイン指揮の演奏で何度か聴いたことがありますが、
フニャフニャしてよくわからない(ベルクのヴァイオリン協奏曲の方がよっぽどマシ?)、
弱々しい感じ・・・で、その真価はわかりませんでした。
もちろん、部分的にキレイなところはあるものの・・・
しかし、今回のアバドの演奏を聴いて、初めて「美しい曲なんだ!」とわかりました。
未完のトルソーのようなこの曲、全体像はやはり不明確です。
それでも、ベルリン・フィルの驚異的なアンサンブルによって、
刹那的な美しさの断片が続いているのだ、と気づきました。
全体を通してマーラーが何を言おうとしているか、ということを気にせずに、
ひたすた美しい響きの連続に耳を傾けているだけでいいのかもしれませんね。
「大地の歌」は、テノールがヨナス・カウフマン、
メゾ・ソプラノはアンネ・ソフィー・フォン・オッターです。
ヨナス・カウフマンの歌唱は、「大地の歌」よりも、
ヴェルディの「乾杯の歌」(椿姫)の方が似合いそうでした。
若々しく健康的な歌声ですが(クレンペラー盤のヴンダーリヒに似ていますね)、
酒で身を持ち崩したような不健康さ(ワルター盤のパツァーク)にはほど遠いので、
少し損な役割だったように思えます。
メゾ・ソプラノのアンネ・ソフィー・フォン・オッターはさすが、という歌唱でしたが、
第6楽章の”ewig"(永遠に)のところでも感動とはほど遠いように思えました。
これはアバドの指揮だからでしょう。
精緻なアンサンブルを作るには優れていますが、
音楽に没入、というタイプ(たとえばバーンスタイン)ではないからです。
とはいえ、聴きやすく、健康的でドロドロしない演奏であったのは確かです。
(感動するかはとにかくとして・・・)
この演奏のDVD等はまだ出ていないようです。
(2012年10月末現在)
「大地の歌」のオススメ盤は、今はクレンペラー盤です。
CD1枚分の値段で、2、4、6、7、9、「大地の歌」が聴ける6枚組で、
大変オトクですよ!
「復活」も名演!
クレンペラー盤
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