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2012年9月14日 (金)

悪質な『キリスト教入門』(島田裕巳著、扶桑社新書)~タイトルに偽りアリ!

書店の新書コーナーの新刊本をざっと眺めていると、
こんな本がありました。

キリスト教入門

タイトルを見て、「誰が書いたのだろう?」と手にとってみると・・・
著者は宗教学者の島田裕巳氏。
なぜこの人が、『キリスト教入門』なる本を書いたのか、アヤシイと思いましたが、
やっぱり予想通りでした・・・

キリスト教入門

タイトルこそ『キリスト教入門』となっていますが、
タイトルに偽りアリで、惑わされてはなりません。
ざっと立ち読みしただけでも、これは『()キリスト教入門』なのでは?と思いました。
タイトルと中身が乖離した、悪質な本です。
これなら、『キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』』(講談社α新書)
といった本の方がまだマシでしょう。
タイトルを見て、キリスト教信仰を求めようとする人なら買わないと思うからです。
(ニーチェの本の意訳本みたいですね。ニーチェ思想の方がよっぽど危険なのに・・・)

(参考)
キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』

楽天ブックスに、この本の主な内容と章見出しが出ていますので、転載します。

第一章 なぜキリスト教は上から目線なのか
第二章 ユダヤ教から生まれたはずなのに
第三章 イエス・キリストとは何者なのか
第四章 キリスト教は本当に一神教なのか
第五章 キリスト教のマーケティングとイノベーション
第六章 プロテスタントのイノベーションの仕組み
第七章 なぜキリスト教はイスラム教と対立するのか
第八章 キリスト教はどうして日本で受け入れられなかったのか

著者はまず第1章で、聖書の日本語訳において、
神(主)、キリストに「敬語」を使っているのがおかしい、と食ってかかります。
それを「上から目線」、「選民思想」などといって、攻撃をしかけます。
日本にキリスト教が広がらない原因の一端だ、みたいな指摘をして、
あざけっているかのように思えました。

それなら、仏典や『論語』では、
お釈迦様や孔子先生に敬語を使わないのでしょうか?
今、手元にある『現代語の法華経』(庭野日敬著)という本をパッと開いただけでも、
お釈迦様や○○菩薩の数々に、きちんと敬語を使っています。

(参考)
現代語の法華経


そもそも、日本語では、目上の方にきちんと敬語を使うのが基本です。
目上の人が発言したなら、「言われた」や「おっしゃった」と表現すべきものです。
ましてや、神様や仏様が発言された(ここでも敬語を使いますが)なら、
最上級の丁寧な言葉を使うべきものでしょう。
なんでもフラット、直訳にすべき、というのは、研究者のメモ程度ならイザ知らず、
広く普及すべき文書としては不適切です。

確かに、聖書にはいろいろな読み方があります。
文学や歴史書としての読まれ方も認められるものでしょう。
しかし、聖書そのものは、
イエス様の言葉にあるとおり、
あなたたちは聖書の中に永遠の命があると考えて、聖書を研究している。
ところが、聖書はわたし
(=イエス・キリスト)について証しをするものだ。
(新約聖書ヨハネによる福音書5:39新共同訳)
すなわち、信仰を前提にして初めて、真価を表すものですし、
聖書そのものがキリストを指し示す、キリストを明らかにする書なのです。

島田氏はオウム真理教でさえ肯定的に評価するぐらいの人です。
宗教学者といいながら宗教オンチの人なのではないでしょうか?
的外れな批判と言えます。

この本は、
「キリスト教はいかに私(=島田氏)にとって魅力のない宗教か」
というのを書いただけの本です。
(第八章などは特にひどい・・・)
おそらく、『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書)のヒットを知って、
キリスト教で一儲けしようか、程度で書いたのかもしれません。
島田氏の著作の傾向や過去のオウム真理教支持発言を知る人なら、
キリスト教の本として、まともに相手にする価値のない本だといえます。
(もっとほかのタイトルなら、気にもしないし、
勝手に言いたい放題言っていても、私は気にしなかったでしょう。
この本の最大の問題点は、タイトルそのものです。
せっかく「キリスト教って、どんな教えだろう?」
と手にとった初めての本がもしこれなら・・・)

たぶん、島田氏にとっては、
イエス様の言葉
わたしは道であり、真理であり、命である。
わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない。

(新約聖書ヨハネによる福音書14:6新共同訳)
のような言葉こそ、鼻持ちならないのでしょうね・・・

ちなみに、『ふしぎなキリスト教』は「ふしぎに」ヒットしていますね。
立ち読みしただけですが、なかなか面白い視点・論点はあります。
しかし、生きた信仰というよりは、死んだ信仰を取り扱っているだけで、
表層的な内容だと思いました。
(ただし、上述の『キリスト教入門』よりははるかにマシです。)

ふしぎなキリスト教

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