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2012年8月 4日 (土)

書評:アルフォンス・デーケン著『心を癒す言葉の花束 』(集英社新書)

タイトルに偽りなし、まさに『心を癒す言葉の花束』」とあるとおり、
明日への希望が開かれるような、珠玉の一冊です。

 

心を癒す言葉の花束

 

先日、書店の新刊コーナーをふと見ていたら、
この本を見つけました。
著者はアルフォンス・デーケン氏。
上智大学名誉教授で、カトリックの司祭です。
迷わず手にとり、すぐに買い求めました。

 

40の珠玉のコトバ(聖書や有名人の言葉、著者自身の言葉など)を基に、
見開き4ページずつで構成されるエッセイ集です。
著者の専門分野である「死生学」の考え方と、
キリスト者・哲学者としての深い思索から、
深い闇の中に陥った心にやさしく寄り添いつつも、
確かな希望の光を与えてくれます。
順番に読むのが一番いいと思いますが、
どこから読んでも「効きます」!

 

特に東日本大震災の被災地で苦しむ人を意識した文が多く、
被災地に住む人にも、そうでない人にも、
慰めをもたらす言葉が多いです。

 

被災地応援のキャッチフレーズで、「がんばろう!東北」というのが使われていますが、
この本のP.62~65にある
「死別を体験した方への言葉かけ・九つのNGワード」の筆頭に、
「がんばろう」が挙げられています。
(「がんばろう!東北」とか、「」といったスローガン、
そろそろ再考の時期では?)

 

(引用)
 肉親を喪った人たちは、「がんばろう!」と励まされるのが、いちばん嫌だと口を揃えて言います。つい安易に使ってしまいがちですが、言われた側としては、口先だけの安っぽい励ましにしか聞こえません。また、言われなくとも必死でがんばっているのですから、これ以上どうがんばれと言うのか・・・・・・、ともっと落ち込みます。 (P.62から引用終)

 

その他のNGワードは、
②「泣いてはダメ!」
③「早く元気になってね」
④「私にはあなたの苦しみがよく理解できる」
⑤「あなただけじゃない」「あなたのほうがまし」
⑥「もう立ち直れた?」
⑦「時がすべてを癒すから大丈夫」
⑧「(亡くなった方が)長い間、苦しまなくてよかったね」
⑨「悪業の報いだ」「先祖のたたりだろう」
とのこと・・・(P.63~65から引用)
特に⑨なんかは最低ですね!

 

著者自身の苦しみのエピソード
(幼い妹の死、終戦後すぐに祖父が米軍に誤って射殺されたこと、自身のガン・・・)も豊富で、
単に机上の空論ではなく、切実な中から出た言葉であることがひしひしと伝わります。
「にもかかわらず(ドイツ語で"trotzdem")」
人生を肯定する、ユーモアの心を持つことの大切さを美しい日本語で優しく語り掛けます。
私自身、最近悩みが多く、そういう中で、この本から大いに慰めを受けました。
クリスチャンでない人にも、
混迷や暗闇の中で生きる意味と希望を見出す灯火となるような本です。
聖書の次の言葉も本書に引用されていますが、まさに真実ですね。
そればかりでなく、苦難をも誇りとします。
わたしたちは知っているのです、
苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。

(新約聖書ローマの信徒への手紙5:3~4新共同訳)⇒P.28に掲載。

 

 

アルフォンス・デーケン神父の著作との出会いは、
曽野綾子氏との共著『旅立ちの朝に―愛と死を語る往復書簡 』(新潮文庫)でした。
死を通して生と向き合い、ポジティブに生きる、という姿勢に感銘を受けました。
以来、主だった著作は読んでおります。
死という重苦しいテーマから、
最後にはユーモアと笑いという軽やかな精神の飛翔に向かい、
どれも読後感はさわやかで充実しているのがデーケン神父の著作の特徴です。

 

旅立ちの朝に―愛と死を語る往復書簡 (新潮文庫)

 

 

その他で、手に入れやすく、読みやすい著作をいくつか紹介します。

 

よく生き よく笑い よき死と出会う(新潮社)

 

新版 死とどう向き合うか(NHK出版)

 

ユーモアは老いと死の妙薬(講談社)

 

キリスト教書店で手に入る(Amazonでも扱いありますが・・・)本も紹介します。

 

キリスト教と私 (聖母文庫)
※キリスト教・カトリック入門の初めの一歩にオススメです。

 

デーケン教授の東西見聞録(サンパウロ)
※デーケン神父のサブテーマである「音楽」についても知ることができます。
なお、『心を癒す言葉の花束』P.235~236には、
(引用)「最期のときは、神に感謝の祈りを捧げて、マーラーの第二交響曲「復活」を聴きながら、天国に行きたいと願っています。」(引用終)という一文が書かれています。
確かに、マーラーの「復活」の終楽章は感動的ですね・・・
(マーラーの全交響曲の全楽章の中で、最も感動的だと思います。)
ちなみに、私が持っている「復活」のCDは、ショルティ指揮シカゴ交響楽団のと、
クレンペラー指揮フィルハーモニア響、そしてバーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルの3枚です。
迫力ではショルティ盤がスゴイですが、感銘ではクレンペラー盤がすばらしいです。

 

ショルティ盤

 

クレンペラー盤

 

Mahler: Symphonies Nos. 2, 4, 7 & 9; Das Lied von der Erde; Lieder [Box set, Import, from UK]

 

Bernstein: Mahler Symphonies [Box set, Import, from UK]

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