「いじめ」ではなく「犯罪」~大津の中学生自殺事件に思う
2012年7月11日夜、NHKを観ていると、「ニュース速報」として、
「大津の中学生自殺 学校と市役所捜索」というテロップが入りました。
最初に思ったのは、「ニュース速報にすべき内容なのかな?・・・」でした。
⇒学校と市教委を捜索=大津中2自殺で滋賀県警
この事件に関して、報道されている範囲でいえば、
自殺した生徒が通っていた中学校と、
大津市教委の対応、そしてようやく重い腰を上げた滋賀県警のいずれも、
「犯罪」を必死になって隠蔽しようとする姿勢しかみられません。
詳しいことはそのうち明らかになるでしょうから、
「真犯人はコイツだ!」みたいなことを書くつもりはありません。
中学校や市教委が、誠意ある対応を最初から見せていれば、
日本全体にとっては「小さな火種」で終っていた事件でした。
(ご遺族の方の心中は察して余りありますが・・・)
しかし、隠蔽に次ぐ隠蔽、不誠実な対応が、
問題を大きくしてしまいました。
NHKのニュース速報で流れるような事態になってしまったので、
大津市の教育長や中学校長、担任らは重大処分を免れないでしょう。
(被害届を受理しなかった警察の職員も厳重処分されるべきでしょう。)
ところで、以前から思っていたのですが、
「いじめ」という言葉は、本来暴行事件や恐喝の範疇に入るものを、
子ども同士のオフザケに矮小化しています。
大津市の事件で言えば、もはや「いじめ」ではなく、立派な「犯罪」なのに!
「いじめ」という呼称を止め、きっちりと「犯罪」であることを示すべきです。
「大津の中学生自殺は「校内犯罪」だ 暴行、恐喝を「いじめ」とすり替えるな」
という記事を読みました。大変共感を覚えました。
記事の主張の中心部を引用します。
(引用)
大澤氏によると、かつては教育の場で「社会的人間の形成」が重視され、いじめが起きても教師が加害者の生徒を叱り、二度と繰り返さないような措置を施して「根元」を断ち切っていた。だが時代とともに「善悪」を教える風潮が薄まり、加害者への措置も講じられなくなったと指摘する。学校教育法では、教育上必要があれば加害者に対して懲戒(11条)や出席停止(35条)を命じられると定める。ところが文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(2011年8月4日付)を見ると、2010年度に全国の小中学校で出席停止が下された74件中、いじめを理由にしたのはわずか6件。最も多かったのが「対教師暴力」の21件だった。
文科省は1995年、「いじめの定義」として「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの」とした。これを2006年、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」と改めた。暴行や恐喝といった犯罪行為が「『いじめ』という言葉にすり替えられ、しかも定義があいまいになっている」と大澤氏。深刻な犯罪の意味合いがぼかされて、「ふざけ合い」「単なるケンカ」として処理されうる流れになってしまっていると憤る。
(中略)
大澤氏は全国各地でいじめに悩む親子の相談を受けている。自身のつらい体験について、「息子がいじめられていたのを見ていた同級生が担任に報告したにもかかわらず、現場に行かずに放置していたのです」と振り返る。こうなれば、いじめの行為はますますエスカレートしがちだ。「いじめの実態を知ろうとしない。そうしておけば後から『学校側は把握していなかった』と言えるからです」と続け、「これは文科省の方針のせい」と怒りを隠さない。大津市の場合も、学校側は「見て見ぬふりをしていた」と生徒から声が上がっている。市教育委員会はいじめがあったことを認める一方で、自殺との因果関係は「判断できない」としている。
教育評論家の森口朗氏に聞くと、大澤氏と同様に今回の加害者側の行為を「校内犯罪」と断定する。一方で最近は未成年でも、加害者が罪に問われる事例が「ようやく出てきました」と話す。
本来であれば、悪質な「いじめ」が発覚したら被害者側と学校が連携して警察に被害届を出すのが望ましいと森口氏。そのうえで、実態を明らかにするために証拠を固めることが重要だという。複数の証拠に基づいて告発すれば、警察も動かざるをえなくなるからだ。
だが大津市のケースでは、学校側が協力的とはいえない。その場合に被害者側は、マスコミに訴えかけるなど別の方策をとる必要がある。さらに、「都道府県レベルで『いじめ防止条例』のようなものを制定し、教師がいじめの実態の隠ぺいに加担したら処罰する内容を盛り込んではどうでしょうか」とも提案する。学校側に腰を上げさせるためにも、ある程度強制的に「校内犯罪撲滅」への手段が必要というわけだ。
(引用終)
余談ですが、冒頭に書いたテレビのニュース速報を見て、
私はトルストイの民話の一つを連想しました。
『火を消さずにおくと』という物語です。
小さな争いごとが、大きな災いの元になる、というお話です。
⇒『火は早めに消さないと』(ブックレビュー記事)
トラブルは小さいうちに解決した方がいいですね・・・
火は早めに消さないと (Forest books) [大型本]
トルストイの民話
トルストイ民話集 人はなんで生きるか 他四篇 (岩波文庫) [文庫]
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