おすすめWEB記事~精神科医、国際医療福祉大学教授・和田秀樹氏によるいじめ問題への提言(MSN産経ニュース【正論】2012年7月31日)
精神科医・和田秀樹氏が産経新聞の【正論】に、
いじめ問題についての提言を書いています。
⇒【正論】精神科医、国際医療福祉大学教授・和田秀樹
(MSN産経ニュース2012年7月31日記事)
大津のいじめ自殺事件について、
各方面の識者がごもっともなことを書いていますが、
心のケアの専門家であり、
学力向上のスペシャリストである氏の提言は独自性があります。
この文章の要点は、
1.「いじめ自殺」と捉えることは誤り。「いじめ」ではなく立派な校内犯罪。
2.たとえ学校内であっても、犯罪行為には警察が学校に介入できるようにすべき。
3.警察に任せるべきことは任せ、教師は本業に励め。
の3つです。
「いじめ自殺」と報道すればするほど、「模倣自殺」が増える・・・
悲しい現実ですね。
「いじめられた(程度はともかく)」⇒「生きる価値がない」⇒「自殺」・・・
という短絡的・衝動的な行動で自分を「美化」することがないように、
そういう報道は控えるべきだと以前からそう考えていました。
ちょっと非現実的ですが、マンガ・アニメの例で考えてみましょう。
『ドラえもん』でのび太君はジャイアンにいじめられます。
(最近のアニメ版では暴力表現がほとんど削除されていますが、
以前はまさしくジャイアンの暴力で
のび太君が「ボッコボコのギッタギタ」にされる映像がよく出ていました。)
のび太君はどんなにやられてもやられても、失敗し続けても、
生きる希望は失いません。
幼少時からさまざまな差別や偏見に悩まされてきた人や、
耐えられないほどの苦痛を与えられた人はいろいろいるでしょう。
しかし、そういう人がすべて自死を選ぶか、というとそうではありませんね。
和田氏はこう書いています。
(引用)
一つには、報道が自殺を誘発するという問題がある。被暗示性が強い青少年にはその影響が強い。「いじめられて自殺するのは当たり前の心理」「死ねば分かってもらえる」という誤ったメッセージを伝えて、子供の自殺を大幅に増やしかねないからだ。
現実に、東京都中野区の中学生自殺事件が大報道された昭和61年には、小中学生の自殺は前年より5割以上も多くなり、報道が静まった翌年には60年以下の水準に戻った。愛知県の中学生自殺事件が起きた平成6年には、前年より8割も自殺が増えている。
だが、それ以上に問題なのは、中野、愛知、そして大津の事件はいずれも、いじめではなく立派な校内犯罪だという点である。逆にいうと、大々的報道による誘発でもない限り、犯罪の領域に達していない「いじめ」では、子供の自殺にまではまず至らないとさえいえるのではないか。
私も以前、テレビ番組に出演した際に、少女が受けたいじめの内容が集団レイプだったと聞いて戦慄したことがある。いじめなどという言葉を用いて、校内犯罪を、冷やかしや仲間外れなどと同列に扱うことは、教育上もあってはならないのである。
(引用終)※下線部は筆者による。
和田氏の提言の中では、
警察の介入と、教師は本業である教育に専念せよ、
というところに特に共感を覚えました。
学校や教育委員会は、ともすると事なかれ主義に陥りやすいです。
教科書を1年間できちんと終らないようなことが多々ある中、
学校犯罪の処理までやっているなら、学校の機能はストップしてしまいます。
それでは、児童生徒の「教育を受ける権利」が侵害されます。
加害者を罰するのは法に従って、裁判所でやってもらえばいいわけです。
学校が抱えこむから、話がおかしくなるわけです。
(引用)
逆に、犯罪的ないじめにまで、捜査権も処罰権もない教師が対応しなければならないのなら、彼らの精神的なストレスは増すだろうし、教師の本分である学力の向上や子供へのしつけもおろそかになりかねない。警察に任せるべきことは任せて、教師は本業に精を出すべきなのである。
それに、いくら校内であっても犯人を隠匿するのは、とりわけ罰金以上の処罰に当たる罪を犯したことがはっきりしている人間を校内だからといって隠匿するのは、立派な犯罪である。校内で子供が人を殺し、それを教師たちで隠匿したら罪になることぐらい、誰でも納得できるだろう。傷害、恐喝事件であっても、それは同じはずである。教師が犯人隠匿まがいの行為を犯していることが子供たちに知られたら、教育者としてやっていけるのだろうか。
(引用終)※下線部は筆者による。
今回の大津の事件から、教育委員会は不要だとかの意見が出ていますね。
教育委員会が形骸化しているのは事実ですが、
教育と行政はやはり独立していた方がいいと思います。
(戦前の反省をふまえて・・・)
むしろ、大幅な法改正をせずとも、
民意を反映するために、戦後の一時期のように、公選制に戻すとか、
開かれたものにすることで解決できるのでは、と考えます。
公立学校の教員の仕事のうち、
生徒指導(特に問題行動への)に関わるものの一部は、
警察やカウンセラーなど、外部機関の手助けをもっと取り入れるべき、
と私は考えます。
生徒指導(や保護者対応)ばかりに労力が注がれるなら、
本業である教育が疎かになるからです。
(金八先生に出てくるような問題行動を、教師が全部引き受けるなら、
当然、教材研究なんかできっこありませんね・・・)
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