「天上の声」が欲しかったデュリュフレのレクイエム~NHKBSプレミアム・特選 オーケストラ・ライブ N響コンサート -第1727回定期公演-(2012年7月1日放送)
日曜朝のお楽しみ、NHKBSプレミアムの「特選オーケストラ・ライブ」。
今回は、N響の第1727回定期公演でした。
曲目は以下のとおりです。
オネゲル:交響詩「夏の牧歌」
ショパン:ピアノ協奏曲第2番へ短調作品21
デュリュフレ:レクイエム作品9
指揮は尾高忠明さん。
ショパンのピアノ独奏はピアノはギャリック・オールソンさん、
デュリュフレのメゾ・ソプラノは加納悦子さん、
バリトンは三原剛さん、
合唱:新国立劇場合唱団でした。
収録は2012年5月12日、NHKホールです。
オネゲルの「夏の牧歌」とショパンのピアノ協奏曲第2番はすばらしい演奏だと思いました。
「夏の牧歌」はあまりなじみのない作品ですが、
精緻な演奏によってさわやかな魅力が十分引き出されていました。
ギャリック・オールソンという名は恥ずかしながら今回初耳でした。
オーケストラ共々、
ショパンなのにまるでベートーヴェンのような硬派な演奏を繰り広げていました。
しかしそれがマイナスかというと、むしろプラスに働いていたと思います。
生クリームでいっぱいのショパン像ではなく、
ビターチョコレートのようなショパン像を示してくれた、なかなかよい演奏でした。
今回の放送での白眉といえましょう。
ギャリック・オールソンさんのCDとBlu-rayを一部紹介します。
どちらもショパンの曲を演奏したものです。
Preludes & Nocturnes [Import, From US]
Garrick Ohlsson Plays Chopin: Art of Chopin [Blu-ray] [Import] (2012)
さて、今回の放送で最も期待していたのが、
デュリュフレのレクイエムでした。
フォーレのレクイエムと同じ構成をとった20世紀の宗教曲の傑作です。
私としては、フォーレのレクイエムよりも好きなレクイエムです。
グレゴリオ聖歌のレクイエムを使っています。
どんな演奏になるのだろう・・・
番組冒頭では、指揮者の尾高さんがこの曲への思いいれを語っていました。
しかし聴いた結果は・・・
タイトルに書いたとおり、「天上の声」が欲しかったかな~という感想でした。
新国立劇場合唱団の声は、声楽的にいえば、確かにすばらしいです。
しかし、この曲の特に女性パートは、天から響いてくるような、
超・人間的なものでないと、美しく聴こえません。
全体的に、宗教曲というよりは、オペラのように聴こえました。
(ニーチェ流に言えば「人間的な、あまりに人間的な」でしょうか・・・)
オーケストラはすばらしい響きを出していたのに・・・
オーケストラだけなら、過去に聴いた演奏の中でも最高に属します。
たとえば「聖なるかな」のところなどは迫力満点でした!
この曲は、女性パートにボーイ・ソプラノを使った方がより神秘的に聴こえます。
(例外は、後で紹介します聖ヤコブ室内合唱団の女性ソプラノだけでしょう・・・)
デュリュフレのレクイエムを初めて聴いたのは、今から20年近く前です。
作曲家自身の指揮によるフルオーケストラ版です。
冒頭から、永遠の光の世界に入るかのような、
実に神秘的で美しい曲だな~と感動しました。
中世の大聖堂のバラ窓のような・・・
(何年か前にたまたま聴く機会がありました。
さすがに、古い録音だな~とも思いましたが・・・)
有名絵画でこの曲を表すとしたら、
エル・グレコの「オルガス伯爵の埋葬 」あたりでしょうか?
(中世の大聖堂の方がふさわしいかも?)
オルガス伯爵の埋葬 (Entierro del conde de Orgaz)
作曲家自身の指揮による演奏
Durufle: Requiem / Quatre Motets [Import, From US]
フォーレのレクイエムで名演奏を残しているコルボの指揮
デュリュフレ:レクイエム
以前、フォーレのレクイエムとデュリュフレのレクイエムがセットになって、
ソプラノパートはボーイソプラノが歌っている盤がありました。
こちらは伴奏がオルガンだけでしたが、とても美しいものでした。
現在は廃盤のようです。
Durufle;Requiem [Import, From UK]
デュリュフレのレクエイムのCDで最も美しいのは、
BISレーベルで発売されていた、
聖ヤコブ室内合唱団によるものです。
こちらも伴奏はオルガンだけです。
宇野センセイ絶賛の1枚です。
宇野功芳の音盤棚「これがUNO!」 Vol.7
・・・とはいえ、デュリュフレのレクイエムをプログラムに選曲した、
指揮者の尾高さんとN響には感謝!
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