書評:片山ユキヲ作『花もて語れ』1~4巻 ~ 朗読の魅力の伝道師
最近、書店のコミックコーナーで、
『花もて語れ』というマンガを見つけました。
「朗読コミック」というふれこみでした。
1巻には、「声には色や、匂いや、重さがある。そして力がある。」
というキャッチフレーズと、「声優の坂本真綾さん大推薦の朗読コミック!!」
という帯がかかっていました。
(帯の裏面には、もう少し詳しいコメントが書いてありました。)
なんとなく、「面白そうかも?」と思い、買って読みました。
1巻の第0話では、主人公の佐倉ハナが小学校1年生の頃、
朗読と出会うきっかけの話として、
学芸会でグリム童話の『ブレーメンの音楽隊』のナレーション役で
大成功を収めたエピソードが描かれていました。
第1話以降は、主人公が社会人となってからの話です。
本題は第2話から始まる『やまなし』(宮澤賢治の童話)の朗読から。
『やまなし』といえば、小学校6年の国語の教科書に掲載されている作品ですね。
誰もが知っている(はずの)作品です。
当然、私も読んだことがありますし、小学校では、音読もしたはずです。
しかし、この作品が描く、『やまなし』の朗読は、
あえて哲学用語を使って思わず”Que sais-je ?”(クセジュ⇒我何を知るか?)
と叫びたくなるような内容でした!
たとえば、『やまなし』冒頭部のこのセリフ・・・
「クラムボンはわらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
「クラムボンは跳ねてわらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
黙読すると、「クラムボン」が何であるかとか、たいして気にせず、
先に読み進めてしまいますね。
何の感動も疑問もなく、新幹線のように通過してしまいそうな文章です。
しかし、『花もて語れ』では、ここを鮮やかに読み解きます。
(詳しくは、ぜひ作品そのものを読んでいただきたいので、あえて詳述しません。)
分析の根拠にも驚きました!
結局、1巻に続いて残る2~4巻も一気に買って読むことに・・・
1~4巻では、他に『花咲き山』(斎藤隆介作)、
『トロッコ』(芥川龍之介作)といった、
小中学校の国語や道徳で取り上げられる作品の朗読が展開されます。
みなさんの多くが一度は読んだ(黙読、朗読)はずの作品ですね。
ホントに朗読はここまで表現・分析ができるの?と思わされるほど、
驚嘆すべき読み解きがありました!
2巻で、引きこもり中の社長令嬢・満里子のセリフに、
「この朗読の感想は、とてもじゃないけど今は言えないわ・・・・・・」(P.73)
というのがありますが、
まさに、この作品を読んだ感想そのものだと思いました。
地下鉄の中で3巻を読んだときには、しばらく目を閉じて、
じっと涙がこぼれないようにガマンしたほどでした・・・
久しぶりに、すばらしい感動を与える作品にめぐり合うことができました!!!
朗読って、誰でもできそうですが、こんなに奥深いとは・・・
朗読という芸術に開眼させられました。
朗読の魅力を伝える伝道師というべき作品です。
国語を教える先生なら特にご一読をおすすめします。
この作品、マンガをアニメやドラマにすることは可能でしょうが、
作品が求める朗読を実演できる声優・俳優は果たしているのでしょうか?
そんなことまで考えてしまいました・・・
花もて語れ 1
花もて語れ 2
花もて語れ 3
花もて語れ 4
この作品は朗読協力・朗読原案として、東百道(ひがしももじ)さんが、
共著者扱いとなっています。
「感動を作る・日本朗読館」というブログを書かれています。
著書の『朗読の理論―感動をつくる朗読をめざして 』は近々読んでみたいと考えています。
朗読の理論―感動をつくる朗読をめざして
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