D・フィッシャー=ディースカウ氏、死去~20世紀最高のバリトン歌手
2012年5月19日の朝刊を読むと、
「ドイツのバリトン歌手のD・フィッシャーディースカウ氏死去」
という小さな記事が載っていました。
ご逝去を悼み,謹んで哀悼の意を表します。
最も好きな声楽家を挙げてください(現役であるかどうかを問わず)、と質問されたら、
私なら迷わず、フィッシャー=ディースカウの名を挙げます。
そのビロードのような美声と超人的なレパートリーのすごさを否定できる人はいないでしょう。
彼が歌うシューベルトの歌曲集CDを何度も聴いて、
彼のマネをして歌いたくなり、ドイツ語(の読み)を覚えたものでした。
(易々と歌っているように聴こえるので、ついマネしたくなります。
本当はものすごい芸当なのに・・・)
シューベルトの三大歌曲集(「美しき水車小屋の娘」、「冬の旅」、「白鳥の歌」)は、
最近でこそテノールのイアン・ボストリッジの歌唱という新たな解釈を見いだしたものの、
やはりフィッシャー=ディースカウの声が基準となるものです。
フィッシャー=ディースカウの録音は膨大です。
私はそのわずかを知っているに過ぎません。
その中から、思い出に残る名演奏CDを3枚挙げます。
シューベルト:歌曲集「冬の旅」
フィッシャー=ディースカウは公式録音だけで、
7回も「冬の旅」を録音しています。
このCDはその中で最もベストといえます(他の録音も甲乙つけがたい名演ですが・・・)。
マーラー:さすらう若人の歌
若き日のフィッシャー=ディースカウが、
巨匠フルトヴェングラーの指揮のもと、まるで彼のためにこの曲が書かれたかのように、
曲そのものと一体となった鮮烈な歌唱を聞かせてくれます。
モノラル録音ですが、そんなことを忘れさせてくれるようなすごい録音です。
バッハ:マタイ受難曲 ハイライツ (カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団1958年録音)
私にとって、フィッシャー=ディースカウの代表的録音といえば、
この1枚です。
第2部 第75曲:アリア「わが心よ、おのれを潔めよ」のバスアリア。
これだけでも、このCDを聴く価値があるといえます。
何十回聴いたことか・・・
「マタイ」全体の中で最も好きなアリアです。
「マタイ」は十種類以上の盤を聴いていますが、
このアリアでフィッシャー=ディースカウ以上の歌唱は聴いたことがありません。
おまけとして、ユーモラスな歌唱としては、
バッハの「コーヒー・カンタータ」の録音や、
オルフの「カルミナ・ブラーナ」(ヨッフム指揮)を挙げておきます。
特に「カルミナ・ブラーナ」での歌唱はスゴイ!
謹厳な父親が泥酔して失態を晒しているかのような・・・
オルフ:カルミナ・ブラーナ
フィッシャー=ディースカウの著書も紹介します。
自伝 フィッシャー=ディースカウ―追憶 (国際フランツ・シューベルト協会刊行シリーズ)
未読ですが、大著ですね・・・機会があれば読んでみたいです。
ワーグナーとニーチェ (ちくま学芸文庫)
こちらは読んだことがあるような記憶が・・・
(フィッシャー=ディースカウは「ニーチェ歌曲集」なるCDも確か出しています。)
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rukeさん、コメントありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: てんしちゃん | 2012年5月20日 (日) 21時45分
てんしさん。初めましてクリスチャンで作詩家です。様々な分野を勉強中で、てんしさんのブログは感謝です。クラッシクの紹介、また聞いてみます。
投稿: ruke | 2012年5月19日 (土) 15時19分