NHKBSプレミアム「名曲探偵アマデウス」・モーツァルト「ピアノソナタ第11番”トルコ行進曲付”」~名曲探偵アマデウスの再放送、終わりなの~?
今回の「名曲探偵アマデウス」は、再放送で、
モーツァルトのピアノソナタ第11番「トルコ行進曲付」でした。
事件ファイル#79「ばあや見参!消えた家宝の行方」。
ウィーンの天出家の教育係(=ばあや)が来て、
家宝のゴールドディスクを捜してくれ、との依頼。
モーツァルトのピアノソナタ第11番を通して、
名曲探偵天出臼夫の知られざる過去が次々と明かされる、といった回でした。
再放送終了にふさわしい(?)内容だったかもしれません。
番組では、小倉貴久子さんのピアノ演奏が紹介されていました。
なかなかいい演奏だと思いました。
また、作曲家の千住明さんによる解説もなかなか興味深かったです。
有名な第3楽章のトルコ行進曲に、オーケストラの響きがする、という指摘。
「のだめカンタービレ」でのだめがこの曲を演奏する際に、
軍楽隊のパレードが見える、というシーンがありましたが(第14巻lesson82)、
そんなイメージを彷彿とさせました。
のだめカンタービレ14巻
さて、第3楽章のトルコ行進曲だけなら、キワモノ盤が3つありますので、
紹介しましょう。
第1に、グレン・グールドによる演奏です。
止まりそうなぐらい遅いテンポで、しかもスタッカート気味に弾いています。
およそモーツァルトの曲が求める様式感とは異なる演奏ですが、
「名演」(というよりは怪演)として知られています。
宇野センセイはこの演奏を絶賛しています。
(引用)
(グールドの演奏は)「『モーツァルトにおいては、絶対にこのように弾いてはいけない』ということを全部行なって、しかも成功を収めている。音をポツポツ切った非人間的な弾き方!普通の人がこのまねをしたら下手くそで聴いていられないだろう。
ところがグールドは逆手を使い、わざと機械的に弾くことによって、メルヘンの世界を創造したのだ。ちょうどザルツブルクのマリオネット。このグールドのピアノを伴奏に、おもちゃの兵隊が行進したら、どんなに愉しいだろう。
しかも彼はそのメルヘンティックな表現の中に孤独感をさえたたえているのだ。メカニックに弾きながら、最も人間的な淋しさを描き出したグールドは、まさに天才の名に値する。このCDを初めて聴いたとき、僕はなぜかヘルマン・ヘッセの『メルヒェン』の第一話「アウグストゥス」の最後の場面を思い出したのであった。」
(『宇野功芳のクラシック名曲名盤総集版』P.87から引用)
宇野功芳のクラシック名曲名盤総集版
ヘルマン・ヘッセ『メルヒェン』(新潮文庫)
(※高校生の時に何度も読みました・・・)
ただし、グールドのモーツァルトは悪評高いものですので、
他の楽章についてはさすがに宇野センセイも酷評・・・
グールドによるモーツァルトのピアノ・ソナタ集CDを買うのは、
よほどのグールド好きでないとオススメできません。
グールドのさまざまな録音からエッセンスを集めた、
「イマージュ」というCDの2枚目に含まれていますので、
そちらで聴くことをオススメします。
(私も持っています。)
イマージュ
第2は、同じく宇野センセイおすすめの、
アンドレアス・シュタイアーによる演奏です。
フォルテ・ピアノによる演奏だから、いかにも古楽器の古めかしい演奏かな、
と思ったら大間違い!
「トルコ行進曲」中間部はジャズみたい!
最初に聴いたときはかなりオドロキました。
(ただ、何度も聴くと面白さは半減・・・)
アンドレアス・シュタイアー盤
第3は、私の好きなピアニスト、ファジル・サイによる、
「トルコ行進曲”JAZZ”」です。
現代にモーツァルトが生きていたら、サイの演奏のように自由奔放に弾くのでは?
こちらは何度聴いても楽しい演奏です。
ブラック・アース(ファジル・サイの自作自演CD)
※5曲目が「トルコ行進曲”JAZZ”」です。
テレビでも取り上げられた演奏ですね。
トルコ行進曲“JAZZ”~伝説の東京ライヴ!(DVD)
ピアノソナタ第11番全体のオススメCDは、
ファジル・サイの演奏(フツーに弾いています。)と、
内田光子の演奏です。
昔は内田光子盤が愛聴盤でしたが、
今はもっぱらファジル・サイの演奏で聴いています。
内田光子盤は内向的で、サイ盤は聴いていて愉悦感にあふれています。
ファジル・サイ盤
内田光子盤
ところで、「名曲探偵アマデウス」の再放送、終ってしまうのですね・・・
非常に残念です。
熱心に観ていた番組だったので・・・
同じような思いを抱いている記事を紹介します。
ブログ「ミニ音楽評」の
「名曲探偵アマデウス 本当に終ってしまうのか」(2012年3月12日記事)です。
NHKさん、民放では「題名のない音楽会」という例外を除いて、
「名曲探偵アマデウス」のような番組は作ることができませんので、
ぜひ、「名曲探偵アマデウス」の新しいシリーズか、
あるいはもうちょっと違った形でもいいですので、
クラシックの名曲を分析しつつもわかりやすい番組を作ってください!
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