ストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲聴き比べ~ハーン、カントロフ、D・オイストラフのCDで
2011年12月下旬に、DENONの「クレスト1000」第11回シリーズとして、
ジャン=ジャック・カントロフ(ヴァイオリン(以下Vn))独奏による
ストラヴィンスキーのVn協奏曲
(カップリング:チャイコフスキーのVn協奏曲)のCDが発売されました。
宇野功芳氏の『改訂新版 宇野功芳のクラシック名曲名盤総集版』で紹介されていましたが、
長らく廃盤扱いとなっていたものでしたので、再発売には期待していました。
改訂新版 宇野功芳のクラシック名曲名盤総集版
今年の1月にようやく入手し、さっそく期待して聴いてみたのですが・・・
第1楽章から重たく、あまり曲の世界に入っていけませんでした。
第1楽章の途中で聴くのを断念しました。
何度か聴くのをチャレンジしたのですが、やはり印象は変わりません。
宇野センセイがベタボメの盤なのに・・・
私は、昨年ヒラリー・ハーンによるストラヴィンスキーの同曲のCDを聴いてから、
すっかり気に入り、上記のカントロフ盤ならさぞスゴイのかな、と期待していましたから、
ちょっと残念でした。
我が家には、この曲のCDが3枚あります。
上述のカントロフ盤と、ヒラリー・ハーンのCDと、
クルト・ザンデルリンク&ベルリン放送交響楽団の5枚組CDに含まれているものです。
ヒラリー・ハーン盤(カップリング:ブラームスのVn協奏曲」)
D・オイストラフ(Vn)/ザンデルリンク指揮ベルリン放送響(5枚組)
※3枚目に含まれています。
(CD1のショスタコーヴィチのVn協奏曲第1番、交響曲第5番と、
CD5の内田光子のピアノによるモーツァルトのピアノ協奏曲第24番が名演!)
結論から言うと、3枚の中でオススメできるのは、
ヒラリー・ハーンのCDのみです。
第1楽章の早めのテンポによる快活感、第3楽章のゆったり感、
日光が燦燦と輝くような第4楽章・・・
どこをとっても、曲の楽しさ、愉悦感を十分に伝えています。
このCDで、初めてストラヴィンスキーのVn協奏曲の魅力がわかりました。
ちなみに、3種類のCDの各楽章の演奏時間を比べてみましょう。
(ヒラリー・ハーン盤)
第1楽章 4:51
第2楽章 4:27
第3楽章 6:06
第4楽章 5:32
(カントロフ盤)
第1楽章 5:26
第2楽章 3:53
第3楽章 4:38
第4楽章 5:45
(D・オイストラフ/ザンデルリンク盤)
第1楽章 5:32
第2楽章 4:29
第3楽章 4:50
第4楽章 6:10
比べてみると、ヒラリー・ハーン盤は第1楽章、第3楽章で
他の2枚と大きく異なります。
特に第1楽章は他の2枚がモタモタ感があるのに対して、
ヒラリー・ハーン盤は推進力があります。
Vnの音色がまさに「結晶化」したような感じで、音楽そのものだけが響いてきます。
かといって、テクニック一辺倒かといえばそうでもなく、
第3楽章の叙情性は特筆に値します。
もともとそれほど規模が大きくない作品なので、
ネヴィル・マリナー指揮
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールドの軽やかな音が
プラスに働いています。
少しも重苦しくなく、みずみずしい響きがします。
ヒラリー・ハーンのCDは、メインがブラームスのVn協奏曲なのですが、
こちらは残念ながらオーケストラの音色がマイナスに働いています。
ブラームスの曲なのにオーケストラが薄っぺらい響きなので、
もっぱらストラヴィンスキーのVn協奏曲を聴くためのCDと割り切ったほうがいいです。
ベートーヴェンやチャイコフスキー、メンデルスゾーン、ブラームス、シベリウスなどの
Vn協奏曲ほど知名度が高くない作品ですが、
隠れた名曲ですので、ぜひご一聴を!
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