書評:鈴木孝夫著『日本語教のすすめ』(新潮新書)
9月5日の読売新聞夕刊の「新刊立ち読み」という書評コーナーで、
『僕の妹は漢字が読める』(かじいたかし著 HJ文庫)
というラノベ(ライトノベル)が紹介されていました。
記事では、
「23世紀の日本では『萌え』文化が社会全体に広がり、美少女の登場する典型的なストーリーを仮名と記号だけ使って書くのが正統派文学で、ごく一部の限られた人しか漢字を読めなくなっている、という設定が秀逸。」
と紹介。
別にこの小説を読む気はありませんが、
「ごく一部の限られた人しか漢字を読めなくなっている」という設定は気になりました。
現代だって、ケイタイをいじくっている中高生などは、
きちっと漢字が読めるのかアヤシイところがあります。
ところで、「ごく一部の限られた人しか漢字を読めなくなっている」という設定、
実は戦後の混乱期のドサクサにまぎれて、本当にそうなるところでした。
最近、「日本の国字をローマ字にせよ!」という方の主張を聞く機会がありました。
現代の漢字かな混じり文は、
あやうくローマ字だけ・カナ文字だけになっていたのかもしれないのです。
(「国語国字問題」を参照)
占領されていた時期だからこそ、自虐的になってそういう運動が沸き起こったのか、
というと、そうでもなく、
戦前から、国字をカナ文字に!と主張する「カナモジカイ」などは存在していました。
とはいえ「カナモジカイ」のHPをぜひ御覧になってください。
最初のところはともかく、漢字を使わない文章を読むのは、かえって面倒です。
先ほどの「日本の国字をローマ字にせよ!」という方は、
いかに漢字かな混じり文がおかしいものか、国際的でないかを力説していました。
私は、その薄っぺらい主張に辟易したのと、
「本当に、漢字かな混じり文はおかしいものなのか?」と疑問を持ちました。
そこで、いろいろ調べてみました。
今回紹介します、鈴木孝夫著『日本語教のすすめ』もその一冊です。
「国字ローマ字化」の主張へのよい解毒剤となりました。
「西洋の言語はラジオ型に対して、日本語はテレビ型だ」とか、
「西欧至上主義からの解放」(P.19~)など、
日本語に対する自信を深めることができます。
諸言語との比較や、日本語というものを考えるにはとてもいい一冊です。
タイトルはもうちょっと工夫してほしかった、ともいえますが・・・
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