公立学校で習熟度別授業の導入はプラスか、マイナスか?~読売新聞北海道版・連載「学力危機」第1部・札幌の格差 (10)を読んで
読売新聞北海道版で連載中の「「学力危機」第1部・札幌の格差」 (10)では、
札幌近郊の北広島市・恵庭市の取組を紹介していました。
北広島市では、今年の春から市内全部の小学校で、
習熟度別授業を導入したとのことです。
恵庭市では、2004年度から市内全ての小学校で司書を配置した、とのことです。
今回は、北広島市の取組と、習熟度別授業のメリット・デメリットを考えてみたいと思います。
まず、記事から引用します。
(引用)
札幌市近郊では自治体ぐるみの学力向上策が進む。
北広島市立大曲小学校5年1組。2学期が始まって間もない8月23日、朝の学級活動が終わると、教科書とノートを持った児童20人が会議室に、8人が児童会室に移動、9人だけが教室に残った。
同小は2年前、3年生以上の算数で、児童の理解度に合わせてグループ分けする習熟度別授業を導入した。導入前、テストの出来の悪さに採点する手が止まった経験を持つ男性教員は「授業で理解したと思っていた子が、全然できていない。今の方式なら、そういう子を見逃さない」。
習熟度別授業には「学力による子どもの差別化につながる」との批判がある。同小では学級懇談会や家庭訪問などで保護者に説明を重ね、自分が「どのグループで勉強したいか」も、子どもの判断に任せた。
この夏休み前のアンケートでは、保護者や児童の8~9割が賛成した。三島哲教頭(50)は「授業に向き合う子どもの姿勢が積極的になった」と効果を語る。
「これまでの授業では学力が二極化する。(複数の教員が教室に入る)チームティーチング(TT)も実施したが、もう一歩進んだ少人数指導で基礎学力を身につけさせたい」(学校教育課)。北広島市では今春から全10小学校が習熟度別授業を導入している。
(引用終)
みなさんは、この記事を読んで、どう思われたでしょうか?
教育に対して先入観を持たない人ならば、
「うちのマチでも習熟度別授業を導入してほしい!」と思うのではないでしょうか?
「学力による子どもの差別化につながる」と問題視するのは、
教師(特に組合系)と、一部の人々ぐらいでしょう。
私も、記事を読んで、最初は導入に賛成の立場でした。
しかし、インターネットでいろいろ調べてみると、疑問を抱きました。
教師や大学教授が書いたものは、おおむね導入に否定的です。
習熟度別授業はかえって学力低下につながる、
というようなことさえ書いている人さえいました。
特に、東京大学の佐藤学教授は、
『習熟度別指導の何が問題か 』(岩波ブックレット)と猛批判を展開しています。
このブックレットへのAmazonのレビューを読むと、
注目すべきレビューがありましたので紹介します。
強烈な皮肉ですね・・・
(引用)
東大でも協同学習を(きりん)
日本の小中学校は習熟度別でないので、平等、高校と大学は習熟度別、能力別になってるので平等でないとのことなので、いっそ、佐藤学先生の勤務先である東京大学もすべての学生を受け入れて、協同学習をされたらと思いました。そうすれば圧倒的多数の中程度の学生には大変効果が出るはずですね。でも、トップと最底辺の学生は課外学習で面倒を見ることになるのですね。東京大学も「公教育」なのだから大多数の利益を守らないといけませんからね。
この本は小中学校の先生のために書かれている本だと思いました。
子どものためを考えて書かれたようには思えませんでした。
親は先生が子どもを個人として見てくれることを願っています。
個人としてスキルアップして欲しいし、その中には基礎学習も集団の中でメンバーとしてやっていく能力も含まれます。基礎学習が出来ない、集団の中のお客様にはなって欲しくありません。
(引用終)
東京大学に行くのも、誰でも入れるような大学に行くのも、
実は「習熟度別」(学力)の結果なのです。
東京大学でも誰でも行けるようになってから、そういう批判をしてほしいものです。
(もっとも、それなら「東大」というブランドは地に落ちてしまいますね・・・)
習熟度別授業に反対する人は、どちらかというと、
「問題解決型授業」に陶酔している人が多いのかな、というのが、
私の印象です。
そして、教師の能力の差を認めようとしない。
また、「協同学習」(バズ学習)を推進しようとしています。
協同学習の考え方そのものは、教科によっては効果的だと私も考えますが、
具体的な効果はよくわかりません。
教師の側からの批判はさておき、
学習する側(ユーザー→児童・生徒)の側からはどうでしょうか?
大切なのは、教師の机上の空論ではなく、
子どもたちの「わかった!」という実感ではないでしょうか。
習熟度別が、単に「おまえはできるからAランク」、
「おまえはできないからCランク」と分けるだけなら、何も意味がありません。
できる子はさらに上を目指し、できない子はまずできるようになる、
という成功体験を積み重ねていくことが肝要だと考えます。
人員配置を手厚くできるなら、少しでも「できない子」を減らし、
「できる子」を伸ばせるような教育こそ望ましいものです。
単なる一斉教育では、すごくできる子・すごくできない子どちらにとっても退屈です。
(わからないから、「荒れ」が出てくるのです。)
わかりすぎるか、わからなさすぎるか、という両極端になるからです。
そういう意味で、北広島市の取組は妥当だと考えます。
「点数を取る」ということに、どうして教師は反対するのでしょうか?
PISAテストだって、結局は点数で判断するわけですよね。
世の中は常に競争なのです。
それに、子どもにとっては、たとえば鉄棒の「さかあがり」や跳び箱だって、
できるようになりたいのです。
「社会ではさかあがりや跳び箱なんてやらないじゃないか。
できなくたって気にすることはない。」という考えがあってもいいと思います。
しかし、その子の保護者が慰めるために言うならともかく、
教師が口にすべき言葉ではないでしょう。
掛け算の九九や漢字の読み書きだって同じなのです。
子どもは、面白いと思えば、もっと知りたくなるものなのです。
習熟度別授業への賛成意見としては、次のブログ記事がわかりやすいです。
・学力改善案(習熟度別クラス)(ブログ「公立学校の現状」)
・習熟度別クラス(「コラム教職教養」)
もっといろいろ知ってみたい方は、次のリンク集ページが便利です。
・少人数指導・習熟度別指導へのリンク集
いずれにせよ、これからの教育は、きめこまやかな対応が求められているわけですね。
「公立学校で習熟度別授業の導入はプラスか、マイナスか?」というタイトルをつけましたので、
私なりの結論を出します。
「子どもの『わかった』を大切にするような、きめ細かい指導をするなら、
習熟度別授業の導入はプラスである」
習熟度別授業は、ユーザー(子ども)の立場にたって考えるのが大事だと考えます。
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ゴロ様、コメントありがとうございます。
ゴロ様のブログ記事は大変参考になりました。
空虚な理論や、大人の余計な同情よりも、
子どもにとっては「わかった!」、「できる!」
という実感こそ必要ですね。
ユーザーの視点に立つ教育こそ望ましいものです。
投稿: てんしちゃん | 2011年9月 4日 (日) 00時32分
ごぶさたしております。
記事の紹介ありがとうございました。
素晴らしい記事ですね。物事は必ず長所・短所の両方向から観察し、そして何が大切かを踏まえた上で結論を出すべきだと思います。
授業は何が大事なのか。もちろん「分かる・できる」ですよね。
格差ができると反対する人に問いたいのは、ならばできる子を放置しても別に構わないのかどうかということです。
投稿: ゴロ | 2011年9月 3日 (土) 01時46分