TT(チームティーチング)は足し算ではなく掛け算なのでは?~読売新聞北海道版の連載「学力危機」第2回(2011年8月22日)を読んで
読売新聞北海道版の連載記事「学力危機」の第2回目(8月22日)冒頭には、
TT(チームティーチング)についての実態が書かれていました。
(引用)
「これでは学力は上がらないな」
札幌市東区で働く40代の男性教員は、市内の別の小学校に勤務していた昨年、全学年の授業を見て思った。2人目の教員として教室に入るチームティーチング担当だった。
例えば、算数の宿題の答え合わせ。四捨五入のやり方を忘れている子が複数いた。担任は、宿題の出来が全体的に悪かったのに気づき、「また宿題のプリントを出す」と言って授業に入った。「なぜ間違えたのかを教えずに反復だけさせてもわかるようにならない」
別の学級では、担任が割り算の説明をしてから、計算問題に取り組ませた。1問目でつまずく子がいるのに、授業が終わると全員に「できなかった分は家でやりなさい」と指導した。
職員室で教え方が話題になる機会はほとんどなかった。「自分の授業の欠点に気づけない。授業中に『子どもにできるようにさせよう』という意識が薄い」
(引用終)※下線は筆者による。
教育界では、数を増やせば(あるいは減らせば)学習効果が上がる、
という「思い込み」が多いのではないでしょうか。
たとえば、教員の数を増やせ!、とか、
1学級を35人以下に減らせ!とか・・・
(どちらもある意味では当然のことなのですが・・・)
今回取り上げたTTも、教師が2人がかりで教えるから、学習効果が上がる、
という前提で、安易に導入され続けているものといえます。
読売新聞の記事にあるようなTTなら、児童の側からすると、あまり効果がないと思われます。
せいぜい、教師の責任が分散されて、
T1(メイン教師)の肩の荷が少しラクになるぐらいでしょうか・・・
TTは、教師が2人いるから、1+1=2、といった足し算効果ではなく、
むしろ、掛け算効果なのではないか、と考えます。
(1人がメインで、1人はサブですし、サブは補助的な役割を果たすだけです。
しばしば、躓きがちの子にかかりきりとなって、
結局大多数には関係なく終わる場合が多々あるようです。)
たとえば、標準的な指導力を1.0として、
指導力が1.5の教師が2人組んでTTをするなら、
1.5×1.5=2.25となり、2人分以上の効果を挙げることができるでしょう。
しかし、指導力が0.9の教師が二人組んでTTをするなら、
0.9×0.9=0.81と、元の数字以下になるかもしれません。
これは数字のオアソビですが、私が言いたいことは、
安易なTT頼りは授業改善につながらないのでは、ということです。
小学校の算数に限っていえば、
問題解決型学習をやめて教科書をきちんと使う学習をやるだけでも、
余計なTTなど必要なくなると思われます。
釧路の公教育の現状打破を目指す情熱的なブログ「情熱空間」で、
先日TTに関する記事がありましたので一部引用します。
「「忙しい」が言い訳」というすばらしい内容です。
ぜひ全文お読みください。
(引用)
もはや、クラス20~30人規模が一般的と言える学校現場において、「忙しい」を言い訳にしている団体。お馴染みの日教組・北教組でありますが、「教員は実に多忙である。学習指導を充実させるためにTT(チームティーチング)要員の増員を求める」としているのが北海道においての北教組。馬鹿言ってんじゃねぇ!たかだか20~30人の子どもを教えきる力がない人間に同じレベルのチューターをつけたところで、まともにできるわきゃねぇだろ。アホなことを言ってねぇで、てめぇの足元を見やがれってんだ。まず、一人ひとりの指導力を上げろ。30人をきっちり教えきれるようになってから、それから物を言えってんだ。
事実、TT形式にして指導するも、「一人の子につきっきりになって、以前と何ら変わらない」そういった声をよく耳にします。最近の教員は、とても忙しい。「とても」かどうかは分かりかねますが、たしかにお忙しいことは存じております。でもね、できる社員ってのはね、「忙しさ」を言い訳にはしないんだよ。むしろ「忙しさ」に感謝してそれを楽しんでいるほど。彼らは「忙しい」を言い訳にする連中を見るとね、「ほら、また始まった」と思って心の中では軽蔑をしているわけなんだよ。できない言い訳を語らせたならば、小中学生であっても実にお見事なもの。しかし、肝心の彼らを指導する側が同じであったならば、いくら何でもまずいでしょ。と言いたいわけです。「忙しい」の言い訳は、無能の証しなり。ってことね。
(引用終)
日本の公立学校教員の世界は、
ある意味、共産主義社会のような面があります。
絶えず授業力向上に努めている人も、指導力のない教師も、
たとえば採用年齢等が同じだったら、給与も同じ、とか・・・
やってもやらなくても結果は同じ、という結果平等主義です。
安易な方や停滞に向かいやすい、といえます。
(だからこそ、児童・生徒にも、結果平等主義を押し付けようとするのでしょうか?)
たとえば、全国学力テスト等のクラス平均の結果に応じて、
給与が何%かアップする(もしくはダウンする)とかのインセンティブ(報奨金)を儲けるなどの、
健全な競争原理を導入するか、
TOSSの「TOSS授業力量ライセンスシステム」のように、
客観的な基準で授業力検定を行うなど、
授業力・指導力を目に見える形にするなどの工夫をすべきではないでしょうか。
これは暴論ですが・・・
今やインターネットの時代なのですから、
思い切って、スーパー教師による模範授業を全国に動画配信して、
現場教師はどうしてもついていけない子を専門に教える、というのはどうなのでしょうか?
基礎学力が全国的に保障されるのでは?
既に放送大学や、
大学予備校の東進ハイスクール(東進衛星予備校)がやっていますね。
(教員組合の大ブーイング必死!)
なお、読売新聞北海道版の連載「学力危機」に関する前回の記事はコチラです。
「札幌市の教育の学力危機を暴けるか?
~読売新聞北海道版の連載「学力危機」(2011年8月21日~)」
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ZAPPERさん、コメントありがとうございます。
教員2人が実質各1人ずつにかかりきりになる状況はさすがに異常ですね。
TTの意味が問われます。
指導力向上・研鑽はもちろんのこと、教員採用システムそのものの改善と、
ある程度の成果主義の導入が必要なのでは、と考えます。
投稿: てんしちゃん | 2011年8月25日 (木) 00時07分
ご紹介ありがとうございます。
現役の小学校教員から伺ったのですが、TTと言いながらも、教員二人がそれぞれ一人の生徒に付きっ切りになって、実質はその機能を果たしていないケース(逆にクラスが騒々しくなる場合も多いとか)が実に多いそうです。いまどきの小学校のクラスは20人~25人程度が主流なのですが、そんな少人数すら教えきれない方が実に多いとのこと。TT以前に、まずは授業技術を磨きなさい。あたり前の結論なのですが…
投稿: ZAPPER | 2011年8月24日 (水) 10時18分