NHK・クローズアップ現代「大人がハマる“数学ブーム”の謎」(2011年7月27日放送)
数学に再チャレンジしてみようかな、と視聴者に思わせるような内容でした。
7月27日放送のNHK・クローズアップ現代では、
「大人がハマる“数学ブーム”の謎」と題して、
数学にハマル大人たちの様子などを紹介していました。
番組HPから、放送内容を転載します。
大人の“数学ブーム”が続いている。出版界では「語りかける中学数学」がこの5年間で10万部を突破。高等数学の世界へ誘う「オイラーの贈物」、「ガロアの群論」といった難解な数学の本もそれぞれこの1年で2万部を超える勢いだ。カルチャーセンターや個人塾など社会人向けの数学講座はキャンセル待ちの状態も出ているという。今、多くの大人が数学に求めるもの。それはかつて中高時代に挫折した「何重もの論理の積み上げ」を体感したいという思いや、数学者の「ひらめきの秘密」を知りたいという気持ち。混迷する不安定な社会にあって、確かなものに接したいという願いと、想定外の事態でも進むべき道を切り開ける強さを身につけたいというニーズがあるという。いったい人々は数学にどのような世界を見ているのか? ブームの謎を探りながら、一般社会人をもとりこにする数学の魅力に迫る。
番組では、最近売れている数学の本として、
『語りかける中学数学』(高橋一雄著 ベレ出版)他をまず紹介しました。
また、『オイラーの贈物―人類の至宝eiπ=-1を学ぶ』(吉田武著 東海大学出版会)に沿って、
2ヶ月以上かけて「オイラーの等式eiπ=-1」に挑んだ50代のサラリーマンを紹介していました。
その情熱と集中力には敬意を表したいものです。
番組でイメージ映像として使われていたCGは実に効果的でした。
公式が頂点となった数千ものステップの「石」からなる高山・・・
この「オイラーの等式」は、
小説・映画の『博士の愛した数式』で取り上げられていましたね。
実にエレガントでフシギな公式です。
私も映画『博士の愛した数式』を観て、
数学のフシギさに目が開かれた一人です。
原作を読んだ後、何冊かの数学関係の本を読みました(後述)。
番組の話に戻ります。
番組後半では、数学の問題解決力を実務に生かした経験が取り上げられていました。
アメリカの数学者G・ポリアの『いかにして問題をとくか』(丸善)にある、
複雑な問題を「これに似た問題を知っているか」
という既存の知識の応用によって解く問題解決の発想法を、現実問題に応用しました。
東大のボート部にいかに新入部員を呼び込むか、という「難問」を見事に解決しました。
(数学関係ないじゃん!別にこの本じゃなくてもいいような気がしましたが・・・)
ところでアメリカの数学者G・ポリアといえば、
日本の教育界では「数学の問題解決学習」の祖とされています。
本来大学生向きの数学を、なぜか日本では無謀にも小学生の算数でやっています。
「問題解決型」といいつつ、やらせっぱなしでしかない、
算数・数学嫌いを生み出す最悪の指導法です。
しかし、番組の上記のところを観て、
これはポリアが悪いのではなく、
日本の小学校教師たちが愚かなだけだ、ということに改めて気づきました。
ポリアは、「これに似た問題を知っているか」と、
まず既存の知識を大切にしているはずです。
(数学の公式一つとっても、人類の英知の結晶なのです!)
既に数学の基礎知識があってこそ、応用問題が解けます。
それなのに、タブラ・ラサ(白紙)に近い小学生に、
いきなり問題を解け、と1時間に1問だけ解かせるのは、
犯罪的な教え方といえましょう。
わかる子どもには1分で解けるかもしれませんが、
わからない子どもには何時間考えてもさっぱりわからないのです。
(小学校における算数の問題解決型の授業のひどさについては、
「算数の問題解決型学習~学力「崩壊」の決め手」という記事を書きました。)
知識をきちんと教えてこそ、応用や真の問題解決ができるのです。
この番組を観た小学校の教員のみなさん、
「やっぱり算数は問題解決型でなくては!」と思ったら、とんでもない誤解ですよ。
算数の問題解決型授業では、
番組最後で、ゲストの竹内薫さんが言っていた、
「子どもの算数・数学嫌いをなくす」ことは、決してできません。
むしろ、増やすだけです。
「自分で考えろ!」と子どもを迷わせて楽しむこと(ギョーカイ用語で「練り上げ」)をやめてください。
教えることを放棄しないでください!
(これについては、
「「練り上げ」どころか「練り壊し」・・・算数の問題解決型授業は「教育」ではなく「狂育」」
という記事を書きました。)
さて、最後に・・・
私が読んだ数学関係の本で読みやすく興味深いものを何冊か紹介します。
藤原正彦・小川洋子共著『世にも美しい数学入門』 (ちくまプリマー新書)
美しい文章で、数学の魅力を伝えています。
サイモン・シン著『フェルマーの最終定理』 (新潮文庫)
フェルマーの最終定理に挑んだ人々をドラマティックに描いています。
数学もエンタテイメントになりえるのだ、と思わされました。
マーカス・デュ・ソートイ著『素数の音楽』 (新潮クレスト・ブックス)
素数の神秘と、素数の謎に挑んだ人々のドラマ・・・
おまけとして・・・
結城 浩著『数学ガール』(ソフトバンククリエイティブ)
この本は小説ですが、小説でもムズカシそうかな、と思い、
マンガ版から「入門」してみたところ、
見事にザセツしてしまいました・・・
ちなみに著者の結城浩氏は聖霊派のクリスチャンです。
(「異言を伴う聖霊のバプテスマ」という見事なWEB記事を書いています。)
(原作・小説版)
(マンガ版上巻)
マンガはいろいろ出ているようです。
同じ著者は、とてもオカタイ本も書いていますね・・・
「プログラマの数学」
みなさんも、数学の神秘的な世界に足を踏みいれてみてはいかがですか?
「♪まったく役に立たないの 数学で・・・」
(「青春の役立たず」爆風スランプ
サンプラザ中野作詞・作曲:中崎英也)などという偏見を捨てて・・・
(30代以上の人じゃないと分からないネタでしたね・・・)
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