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2011年2月 7日 (月)

ようやく気づいた魅力~ベートーヴェン・三重協奏曲

ベートーヴェンの三重協奏曲、正式には、
ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲ハ長調 作品56」は、
つい最近まで、私にとっては、価値のない曲でした。
だいぶ前、宇野功芳センセイおすすめの、この曲の名盤とされる、
オイストラフ(ヴァイオリン)、ロストロポーヴィチ(チェロ)、リヒテル(ピアノ)と
カラヤン指揮ベルリン・フィル(EMI)の演奏を聴いて、
その時は、「空虚な曲だ」と思いました。
第1楽章を途中まで聴いて、つまらないので聴くのをやめた気がします。
それ以来、この曲を聴くことはありませんでした。
(図書館の視聴コーナーで聴きました。購入したことはありませんでした。)

数年前、DGの輸入版CDで、ブラームスのヴァイオリン協奏曲のおまけに、
三重協奏曲が入っているCDを購入しました。
アンネ・ゾフィー・ムターのソロと、カラヤン指揮ベルリン・フィルによる、
ブラームスのヴァイオリン協奏曲の演奏では名盤とされるものです。
購入して以来、ブラームスのヴァイオリン協奏曲はしばしば聴きましたが、
三重協奏曲を聴くことはありませんでした。

先日、ブラームスのヴァイオリン協奏曲のそのCDを聴きながら、
家で作業をしていました。
いつもなら、三重協奏曲を演奏しないよう、あらかじめプログラム再生をセットしておくのですが、
その時はしていなかったので、ブラームスの曲の後に、三重協奏曲が流れました。
「まぁ、聴いてみるか・・・」とBGM代わりにそのまま再生し続けました。
すると・・・
実にさわやかな曲でした。
特に第3楽章の主題、ピアノが軽やかに、小鳥がさえずるかのように弾くところなど、
実に楽しげで美しいと思いました。
演奏は、カラヤン指揮ベルリン・フィルと、
アンネ・ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)、ヨー・ヨー・マ(チェロ)、マーク・ゼルツァー(ピアノ)です。

この曲を初めて知ってから十数年、ようやく「時」が訪れた、という感じでした。
ここ数日間、1日に1回は聴いています。
もちろん、この曲は、ベートーヴェンの他の協奏曲ほどには、
「すごくスキ」という存在にはならないでしょうけど・・・
肩肘張らずに、気楽に聴くことができる演奏です。

ようやく曲の価値がわかった今、
例の「名盤」の価値もわかるのでしょうか?
興味を持って、聴き比べを行いました。

EMI盤を「旧盤」、DG盤を「新盤」としましょう。
演奏時間は、両盤ともそれほど差がありません。
カラヤン指揮ベルリン・フィルというのも変わりませんね。

旧盤は、意気込みが違います。実に迫力があります。
カラヤン指揮ベルリン・フィルも、重戦車のような迫力を見せるところが多々あります。
まるでミケランジェロの筋肉隆々とした「聖家族」のようです。

 

20110207_seikazoku_2

 

一方、新盤は、もっと気楽に、室内楽のピアノトリオとオーケストラの掛け合いを楽しむかのように、
肩の力が抜けた味わいがあります。

この曲で一番好きな第3楽章を比べてみると・・・
旧盤はソリスト3者とも実に雄弁で、掛け合いのスゴさを楽しむことができます。
一方、新盤は実に軽やかで、旧盤に比べるとかなりおとなしい感じです。
両者は油絵と水彩画ぐらいの違いがあります。
しかし、水彩画が油絵に劣る、というわけではないように、
あとは好みの問題ですね。
気楽に聴き流すなら、新盤の方がいいでしょう。
火花散る名人芸を聴きたいなら、旧盤がオススメです。
ただ、この曲の本質は、実は「愛らしさ」なのかもしれませんね・・・

なお、新盤のゼルツァーというピアニスト、調べてみると、
どうやらこのCD以外には目ぼしい録音がないようですね・・・

旧盤では、カップリングされているブラームスの二重協奏曲の方も素晴らしい名演です。

音楽の食わず嫌いは、時にもったいないものだ、というのを改めて実感しました。

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