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2010年12月15日 (水)

「練り上げ」どころか「練り壊し」・・・算数の問題解決型授業は「教育」ではなく「狂育」

先日、たまたま某市の教育委員会勤務の方と、お話する機会がありました。
短い時間の中で、たまたまその方が「練り上げ」という語を使って、
あたかも理想的な教育法のように語っていました。
私はこの語を聞いてすぐさま、
「ああ、この人は問題解決型授業の信奉者なんだな」と思いました。
時間が限られていたので、あえてそこはスルーしてしまいましたが・・・

練り上げ」という言葉は、辞書には載っていません。
「練り上げる」という動詞であれば、掲載されています。
計画・文章などを何度も練り直して立派に仕上げる」(広辞苑)などの意味です。
練り上げ」とは、教育界では特別な意味をもっています。
特に使われる分野は、算数です。

教師の側からの、理想の使い方としては、
どちらかというと、哲学用語の「止揚する(aufheben)」に近い意味を持たせたいのでしょう。
多様な意見を出させ、よりすぐれた意見に収斂していく・・・というものでしょう。
しかし実際上の使い方は、児童・生徒が少しわかりかけたものを、
さらに混乱・迷わせることを指します。
(単に「まとめる」ではないことに着目。)

具体的な学習指導案を例に考えてみましょう。
埼玉県さいたま市の教育委員会のHPで公開されている、
学習指導案データベースに掲載されているものから選びました。
(「小学校 算数科指導案」のページで、
練り上げ」というキーワードがついているものが結構あります。)
http://www.saitama-city.ed.jp/03siryo/sidouan/e/e_sansu.html
典型的な問題解決型の授業の一つです。
(なお、私は算数の問題解決型授業を問題にしているのであって、
作成者への個人攻撃の意図はまったくありません。
たまたま、公開されているページに氏名が明記されていただけのことです。)

引用ページは以下です。
http://www.saitama-city.ed.jp/03siryo/sidouan/e/e_sansu/19nendo/4/0150701402%E8%A8%88%E7%AE%97%E3%81%AE%E3%82%84%E3%81%8F.pdf

小4の算数の授業。TT付の教師2人がかりでの授業(おそらく研究授業)。
文章題で、
500円玉を持ってお店に行きました。
190円のチキンバーガーと150円のポテトを買いました。
お釣りはいくらでしょうか。
」という問題に、
1時間かけて取り組む」という教育実践です。

これ、わかる子にはあっという間に、暗算で解ける問題ですね。
たとえ最初わからなくても、解き方の基本を教えれば、
誰でも、解けるようになるはずの問題です。
そもそも、1時間かける必要があるのか、TTまでつける必要があるのか・・・
さらには、「教科書を読む」というところが私が見た限り、1回もありませんね。
「練り上げ」では、わからない児童の困惑顔が目に浮かびそうです。
少しわかりかけてきたのに、また光が遠くなっていく・・・
算数の問題解決型授業、という観点からすれば、
「すばらしい授業例!」となるのでしょう。
(私にとっては、結局何がしたいのか、よくわかりませんでしたが・・・)
しかし、理解の遅い子にとっては、ますます自分の能力のなさを自覚する機会となり、
出来る子にとっては、ばからしくてやってられない・・・
授業案を見て、そんな風に感じました。教師の自己満足ですね。
混乱させるだけなら、誰でもできましょう・・・
また、せっかく習い覚えたことを、どうして定着させようとしないのでしょうか?
それは、学習塾の仕事だ、とでも言いたいのでしょうか?
授業中に、練習問題を何度もやらずに、
どうやって児童は使いこなすことがでいるのでしょうか?
確実に学力低下が期待できそうな「スバラシイ」実践です。

これはほんの1例です。
しかし、日本の教育界を支配する呪縛であるともいえます。
教育委員会や学校長までが、算数の問題解決型授業に意義を唱える教師に対して、
さまざまな形の嫌がらせしたり、圧力をかけたりする場合が多いと聞きます。
また、教科書をきちんと教えようとするのも、
教師仲間では否定的に捉えられる場合がある、とも聞きます。
そうして、教師の犯罪的な指導法により、
算数嫌いが増え、児童は低学力化していく・・・
これは「教育」ではなく、「狂育」です!
日本の教育界から、「練り上げ」なる語がさっさと消えてほしい、と願わずにはいられません。

「問題解決型」の授業は、高校や大学などの高等教育機関で使えば、
有効な授業方法です。特に優秀な生徒には向いています。
しかし、基礎・基本を教えるところである小学校には、まったくふさわしくありません。
(教育大附属小学校などの、優秀な児童が集まるようなところなら別かも知れませんが・・・)
特に、公立小学校の算数においてこの方法を適用するのは、
児童に多大な知的犠牲を伴わせます。
健康にいいからと、小学生にワインを飲むことを強要するのに等しい、
犯罪的な授業方法である、といえましょう。

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コメント

amandaさん、コメントありがとうございます。子どもの算数嫌いを作っている原因の大きな一つが、問題解決型の授業です。1問を1時間かけて解くのは、ごくたまにならまだしも、いつもいつもなら、子どもがイヤになるのは当然です。お子さんのクラスメイトに機会があれば、聞いてみてはいかがでしょうか。

はじめまして。ZAPPERさんのところから来ました。
なるほど・・・と納得です。

うちの一番下(公立小2)が、「授業めんどくさい。」と言っていました。
どうして?と訊いたら、「ずっと同じ問題ばっかり」だそうです。。。
これって、もしかして、この記事の問題解決型授業と同じなのかなと思ってしまいました。指導要領どおりにやらないといけないんでしょうか。
先生が一生懸命やっているだけに、なんか悲しいです。

ゴロ様、コメントありがとうございます。一般的な公立小学校で、算数の問題解決型の授業をしても、学力向上などはかることができないはずです。「児童に『考えさせる授業』をやったぞ!」という教師の自己満足で終わるだけです。そのツケが、学習塾と、家庭の教育費負担増という形でくるわけです。被害者は児童であり、家庭です・・・

問題解決型が基礎・基本を教えるところである小学校にはふさわしくない、その通りですね。
野球でバットを握ったこともない人が、どうやったらホームランを打てるか考えるようなものです。

私も問題解決型を重要視している教師を知っています。
というか、近年の生徒の学力低下を見ると、ほとんどそんな人なんじゃないかと最近思ってしまいます。

結果が出ていないのになぜそこまで自信が持てるのか理解に苦しみます。
まさに狂育ですね。

ブログ頑張ってください。

コメントありがとうございます。「問題解決型学習は百害あって一利なし。」まさに同感です。子供をダメにする教育法です。教師のミエを満足させる以外、価値のないものです。教科書をきちんと教えるだけで、学力はある程度保証されるはずですが、それすらやろうとしないのは、犯罪に等しいといえます。

いつも素晴らしい記事をありがとうございます。
弊ブログにてご紹介させていただきました。
おっしゃる通り、問題解決型学習は百害あって一利なし。
道内においては、教育大附属小中学校でしか通用しない学習指導法と言えるでしょうね。
信奉者の方々には目を覚ましていただきたいものですね。

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