「カンダタ」化する日本国民~福祉国家デンマークとの比較
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』の話はご存知ですね。
一応、あらすじをWIKIから転載しますと・・・
釈迦はある時、極楽の蓮池を通してはるか下の地獄を覗き見た。幾多の罪人どもが苦しみもがいていたが、その中にカンダタ(犍陀多)という男の姿を見つけた。カンダタは生前に様々な悪事を働いた泥棒であったが、一度だけ善行を成したことがあった。小さな蜘蛛を踏み殺そうとしたが思いとどまり、命を助けてやったのだ。それを思い出した釈迦は、地獄の底のカンダタを極楽へ導こうと、一本の蜘蛛の糸をカンダタめがけて下ろした。
極楽から下がる蜘蛛の糸を見たカンダタは「この糸をつたって登れば、地獄から脱出できるだろう。あわよくば極楽に行けるかもしれない」と考える。そこで蜘蛛の糸につかまって、地獄から何万里も離れた極楽目指して上へ上へと昇り始めた。ところが糸をつたって昇る途中、ふと下を見下ろすと、数限りない地獄の罪人達が自分の下から続いてくる。このままでは糸は重さに耐え切れず、切れてしまうだろう。それを恐れたカンダタは「この蜘蛛の糸は俺のものだ。お前達は一体誰に聞いて上ってきた。下りろ、下りろ」と喚いた。すると次の瞬間、蜘蛛の糸がカンダタのぶら下がっている所から切れ、カンダタは再び地獄に堕ちてしまった。
その一部始終を見ていた釈迦は、カンダタの自分だけ地獄から抜け出そうとする無慈悲な心と、相応の罰として地獄に逆落としになってしまった姿が浅ましく思われたのか、悲しそうな顔をして蓮池から立ち去った。
自分だけ地獄から救われようとして、他の人を蹴落とすようなことをすると、
結局地獄から救われなかった・・・
エゴイズムの無残な結果を表しています。
ところで、日本国民はどうでしょうか・・・
「○○手当」とか補助金とか減税とか、
「自分だけ」助かろう、儲かろう、国から金をせしめてやろう、そういう浅ましさで、
自分だけの幸せを求めると、
かえって国債の増加など、じわじわと自分の首を絞めるような結果になりつつあります。
コストカットのために生産拠点を海外に移して、
日本国民の雇用を不安にさせるような企業も同罪ですね。
このまま、「カンダタ」のような人を増やすことが、日本の幸福を増すのでしょうか?
10月1日に日本テレビ系で放送された、
『考えられない!?禁断ワールド~日本人の常識崩壊SP~』という番組を少し視聴しました。
そのなかで印象に残ったのは、デンマークの人のコメントでした。
デンマークは福祉国家なので、税金は高いです。
それでも、「自分だけ幸せになるより、みんなが幸せになる方がいい。」
(正確な引用ではないですが・・・)というコメントをしていました。
もちろん、ごく一部のデンマーク市民のコメントをもって、
デンマーク国民全体の意見とすべきではないでしょうが、
こういう意見がごく普通に出る、というのはすばらしいことです。
社会主義国家でさえ、なしえなかった理想ですね。
「世界一幸福な国」と言われるのは当然です。
実際、社会保障がきちんとなされるのであれば、
富をもろもろの不安を抱えながら蓄えなくてもいいわけです。
税金を払ったら、できる限り取り戻したい、という日本国民と、
自分もほかの人も幸福であれば、別に税金を取り戻そうとも思わないデンマーク。
どちらが幸福でしょうか。
(日本のモノつくりは安売り競争で対抗するよりも、ヨーロッパのブランドもののように、
付加価値・安心・信頼で勝負する方に転換すべきでしょう。)
宮沢賢治は、
「世界全体が幸福にならないかぎりは、個人の幸福はありえない。」
というすばらしい名言を残しました。
その同じ国民が、餓鬼畜生のようなあさましい心でいいのでしょうか?
「受けるよりも与えるほうが幸いである。」
(新約聖書 使徒の働き20:35新改訳)
「受ける」よりも「与える」心、
仏教で言えば、「布施」の心。
こういう人が少しでも増えるなら、日本の国にもまだ希望はあります。
蜘蛛の糸はまだ切れていませんよ・・・
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