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2010年9月27日 (月)

NHK・ETV特集「ハーバード白熱教室@東京大学 日本で正義の話をしよう」(9月26日放送)

9月26日放送のNHK・ETV特集は、
「ハーバード白熱教室@東京大学 日本で正義の話をしよう」と題して、
今話題のサンデル教授による東京大学での特別講義、全3時間余を、
1時間半に編集したものを放送していました。
かねてから期待していた通りの、知的興奮がありました。
参加者の多くが若い人たちでしたが、
「さすが東大!」とうならせるような発言が多かったのはよかったです。

全体的な印象としては、「講義」という名の即興コンサート、
音楽のないコンサート、という感じでした。
番組の中でもある参加者が「オーケストラの指揮者のようだった。」とコメントしていましたが、
私もそのような印象を受けました。
クラシックでたとえるなら、サンデル教授の「指揮」によって奏でられる、
東大+一般人「オーケストラ」による、
バルトークの「管弦楽のための協奏曲」、
あるいはJ・S・バッハの「ブランデンブルク協奏曲」といったところでしょうか。
各人の意見を引き出し、自在に主題を次々と展開していくところは見事でした。
哲学すること、議論を重ねることがこれほど面白いものか、と改めて思わされました。

日本では、ディベートの文化がないため、
ともすると議論は属人的となり、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」的な論法になりがちです。
議論によって全人格まで否定してしまう・・・
これでは、議論にならないでしょう。
ヨーロッパなどでは、会議でどれだけ激しく対立した議論をしても、
会議が終れば仲良し、というのはよくあることのようです。
議論と人格を分けるからです。
そういう文化を育まねば、テレビで見たような光景は、
とうてい望めないでしょう。

サンデル教授の講義は、2コマにわたりました。
最初は、「イチローの年俸は日本の教師の平均所得の400倍、
オバマ大統領の42倍。これは公正か?」という問いから始まり、
具体的な例をあげながら、多様な意見を巧みに引き出しつつ、
功利主義、カントやアリストテレスの考えを紹介していました。
議論そのものとしては、後半のものよりも、こちらの方が面白かったです。

2コマ目の授業は、家族への忠誠心や愛国心、
前の世代の過ち(戦争など)を今の世代が謝罪すべきか、
といった問題が提起されていました。
特に、日本人は謝罪好きですから、
たとえば東アジアの国々(特に中国と韓国)にどこまで謝り続ければいいのか、
いろいろと考えさせられました。
こちらの論議は、なんとなく神学論争的雰囲気が否めませんでした。
戦前は何でも悪、アジアで日本は悪いこと「ばかり」をしていた、という「信仰」と、
未来志向的な考え方では、水と油みたいでした。
(日本の歴史認識問題については、また別の機会に書いてみたいと思っています。)

サンデル教授にあてられて発言した人たちは、
どの人もそれなりに立派な意見と根拠(「なぜなら・・・」)を述べていたのには感心しました。
日本の教育においても、正答だけを問う教育から、
答えと根拠をきちんと述べるような教育
(フィンランド等では当たり前のことですが・・・)に転換する必要がありますね。

結局、サンデル教授の授業は、答えがありませんでしたが、
それでいいのでしょう。
自分にとって何が「真実か」、これは各人で問い続ける必要があるからです。
余韻を残して、「講義」というコンサートは幕を降ろしました・・・
「アンコール」がぜひ欲しいところですね。

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