書評:菅原裕子著『子どもの心のコーチング』(PHP文庫)
「いま1番売れてる子育て文庫!!」という帯がついていました。
新聞広告で『子どもの心のコーチング』が紹介されていたのを観て、
「ぜひ読んでみたい!」と思っていました。
我が家には子どもはいませんが、
教会学校などで子どもと関わる機会が多いので、
児童理解と、親の心理の理解にとても役立ちます。
第1章では、「親の役割は何?」と題して、
親の役割とは子どもを思いのままに動かすのではなく、
子どもの成長をサポートすることだ、と説いています。
重要な概念として、「ヘルプ」と「サポート」を挙げています。
「ヘルプ」と「サポート」の違いは、というと、
わかりやすいたとえを使って説明しています(P.31)
「飢えている人がいたら、魚を釣ってあげますか?
それとも魚の釣り方を教えますか?」(P.31より)
ヘルプとは、魚を釣ってあげること、
サポートとは、魚の釣り方を教えることです。
「ヘルプは親の自己満足、子どもの人生を横取りする行為」(1章の9)と否定され、
代わって、「親から子への最高の贈り物『サポート』」(1章の7)と、
親がサポートすることが求められています。
考えてみれば、子どもは親の所有物ではありません。
その子には、その子にしかできない人生があります。
ペットならいざしらず、子どもは独立していくのが当たり前です。
障害がある場合は別とすれば、
いつまでも子どもを自立させないような子育ては異常です。
2章では、「子どもに教えたい3つの力」として、
「愛すること」、「責任」、「人の役に立つ喜び」が挙げられています。
最近では、「愛すること」だけで、「責任」や、
特に「人の役に立つ喜び」というのは、あまり言われなくなっていますね。
3章は「子どもを幸せにするしつけ」として、
ルール作りなどが論じられています。
4章は、コーチング的な内容です。
5章は、「親の幸せは自分で作る」と題して、
子どもで自分の幸せを実現してはならない、と説いています。
どういうことか、というと、
「親にも『パラサイト』と呼べる人たちがいます。子どもをヘルプし、子どもの人生に過剰に干渉し、そうすることで自分の人生を充実させようとするのです。このような親は、子どもを自分の自己実現の道具として使います。」
(P.217より引用)
最近、こういう親が多いみたいですね。
最後の「おわりに~『ひび割れ壺』の物語」(P.248~)は、
短いながらも含蓄に富むすばらしい話です。
ここだけでも、この本を読む価値があります。
子育て中の人はもちろん、
子どもの教育に携わるすべての人に勧めたい一冊です。
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